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真璃の偽日記

『休日の予定』

春休みが終わってしばらく経ち、
新しい生活にも慣れてきた頃。

フェルゼンはどう?
新学年に馴染んできたのはいいけれど
そろそろ、日々に新鮮さを感じなくなってきた?

そんなの、もったいない!
いつも心はフレッシュでいなくちゃ。
新しい世界を見つけ出して、触れ合って、よろこび。
敏感なのは、いいことよ。
退屈な日々なんて、いつでも隙を見て入り込んでしまう。
何事も楽しまなくちゃ。

春の花も
初夏の花も同じなんて言ったら
いっしょうけんめい咲いている花たちに
失礼だもの。
毎日の、きれいなところを
見つけ出しましょ。

マリーのきれいなところは
肌!
それから、
フェルゼンに似た目元!
さらに、
人を導く行動力。
ついてきて。
一歩進んで
三日で三歩。
あら!
そんなペースじゃあ
不満だわ。

マリーは新しいクラスでも女王様。
小学生からはクラス替えがあるって聞いたけど
幼稚園にはないの。
だから、同じままのクラス。
女王の座を競い、高めあうライバルたちもまた
この一年、よろしくね。
スポーツ万能の
リカちゃん。
おはなしの得意なみんなの中心、
アッコちゃん。
気立てが良くて人気者の
ももこせんせい。
マリーも負けていないのよ。
かけっこでも、
人の心をつかむ話術でも、
男を惑わす美貌でも。
そうでしょ、フェルゼン?
ピアノの腕前と歌声だけは、せんせいにかなわないけど
歌は虹子と、特訓中。
虹子せんせいは、意外とスパルタよ。
フェルゼンも、虹子には覚悟しておいたほうがいいかもね。
見ていて。
マリーは今のままで収まる器ではないわ。
厳しい試練を乗り越えて、
リカちゃんも、アッコちゃんも、ももこせんせいも
マリーにはかなわないってびっくりさせてあげるの。

それにしても、リカちゃんは大きくなったら
おうちのリカお姉ちゃまみたいに
元気が抑えきれないようになるのかしら?
それはないか。
リカお姉ちゃまほどには、なかなかなれない。
タフな幼稚園児の妹たちを相手にして
同じくらいの元気で張り合える中学生。
おまけに、ぐんぐん成長している真っ最中の年頃よ。
フェルゼン、マリーも伸びてると思うの。
でも身長の伸び幅では、心の成長は計れない。
マリーとリカお姉ちゃまと、どちらが本当に
フェルゼンにふさわしい女の子になるか。
焦って決めてはダメよ。

毎日を生き生きと過ごすのは素敵なこと。
驚いてばかり。
ちょっと大変。
聞いてよ!
こないだ春休みが終わったと思ったら
お姉ちゃまたちは、もうゴールデンウィークの相談をしているの。
早いわ!
早すぎるわ!
でも、
早く準備をしないと
予約でいっぱいになってしまうの!
ゴールデンウィークの魔力。
誰もが心うきうき。
人より先にと、急いでしまう。
もう少しのんびりしたらいいのにね。
わかるけど。
毎日をキラキラさせたい、
刺激をいっぱい詰め込みたい。
マリーだって遊びに行きたい。
今度は、
遊園地がいい!
子供だからこそ、無心になって
無邪気に遊びまわれる
そんな経験も必要でしょう?
でも、混んでるかな。
女王になったらその力で貸切にしたいけど。
ゴールデンウィークを楽しみにしているのは、女王だけじゃない。
あんまり横暴なことをしたら、革命だって起きてしまうわ。
遊園地革命。
あの女王は、遊園地をひとりじめして命を落とした。
歴史書にそんなふうに記されてしまうなんて!
本当は、家族みんなで楽しみたくて
愛のためにしたこと。
でも、そんな気持ちは歴史は伝えない。
いいの。
マリーの愛は、家族がわかってくれている。
信じている。
それで、マリーは満足。
フェルゼンも、マリーからの愛を疑わないで。
いつでもあなたへの愛が一番だということを。
運命が結んだ今度の関係に、何も間違いはない。
歳が離れているのは、
フェルゼンが立派になる頃には
マリーがちょうどよくかわいくなっているから。
人の長い歴史、愛のために死なねばならない女王もいるだろうけれど
マリーはフェルゼンのお嫁さんになりたいから
革命が起きないよう
遊園地は貸切にしない!

ゴールデンウィークの希望があるなら
早めがいいみたいよ。
海外旅行とか、予定に組み込めるし。
うちでは無理かしら。
小さい子が多いから。
それに、ベルサイユ宮殿に行っても、別に何にもない。
今のマリーだと、そんなに興味ない。
だってマリーが住む場所は、家族がいるこの家。
わざわざ出かけていく先じゃないものね。

また家族旅行ができるのかな。
刺激的な毎日と、
楽しみなゴールデンウィークが
革命なしでも、マリーの命を輝かせる。
愛が燃え上がるの。

真璃の偽日記

『女王は知っている』

マリーは知っているの。
冬の気候は三寒四温。

もしかしたらマリーも
将来はお天気お姉さんになるのかしら?
毎日、大喜びで海晴お姉ちゃまの活躍を見ているし。
好きなのかもね。
天気が。
ていうか。海晴お姉ちゃまが。
朝の生放送は、家族に向けて
おはようといってらっしゃいの愛の言葉。
カメラを通しても変わらない、いつもの優しさ。
誰かがお天気お姉さんを受け継がなければいけない
宿命を背負った家族──
ではないけど、
やっぱり、家族に継いで欲しいみたいだし。
マリーがカメラの前に立ったら、
あふれ出る気品は隠し切れないで、全国に伝わるわね。
いいのかしら。
その影響を受けて、日本の朝食がフランスパンになってしまっても。
パンがなかったら、作り置きのクグロフを食べる習慣がついても。
怒られてしまうわ。
日本の伝統を伝えるお母さんたちから。
でも、我が家の肝っ玉母さんの春風お姉ちゃまと蛍お姉ちゃまも
和食は得意だし、洋食も定番。
そうだ!
観月もお天気お姉さんになって、交互に番組を担当すればいいわ。
朝の和食と洋食のバランスも取れて、いいじゃない?
だけど観月はちゃんと天気図を見て予報するかなあ。
科学で解明できないものから天気を教えてもらってるようだって
吹雪お姉ちゃまが頭から煙を出していたわ。
煙は例えだけど。
観月と仲がいい謎の生き物なんて見たら、マリーだって煙くらい出したくなるわよ。
マリーも知らないことがあるの。
観月の予報はけっこう当たるけど、
あれってお天気お姉さんに向いてるっていうことでいいの?
マリーが知らないことはまだあって、
冬場、寒い日と暖かい日は交互に来るっていうけど
今は冬でいいの?
今日は寒くなったわね!
もう3月も終わりだって言うのにね。
だから、こんな日は家の中で過ごす休日。
せっかくの春休みではあるけれど、
たまにはこうしてゆったり、優雅な時間を過ごすのもいいわね。
ティーカップから立ち上る香りを楽しみながら、
と思っても、小さい子には、いつも熱いお湯で淹れる紅茶は危ないし、
それに、甘くないから小学生以下の子はだいたい苦手。
立夏お姉ちゃまも、もうすぐ中学生になるのに、飲み物は甘いのを選ぶわ。
コーヒーには角砂糖を三つ、が食後の口癖。
でもコーヒーを選ぶだけ、中学生を意識してるのかもしれない。
マリーたちは牛乳が好き。
あったまるの。
休日に、牛乳の香りに包まれて、っていうのはどうも風情がないけど。
こんな柔らかな日は、牛乳はともかく、女王らしく過ごしてみたくなるというもの。
他の子たちも、本を読んだり、春らしく詩を書いたり。
そんなわけで、今日はみんなで、ラブレターを書いたわ。
フェルゼンにも届いた?
海晴お姉ちゃまは、お天気お兄さんを期待する手紙を書くって言ってたけど
そんな手紙だった?
修行を付けてあげるのが楽しみだって。
手取り足取り、微に入り細に入り。
いいなあ。
見込まれてるのね、フェルゼン。
そうなったら、どんな天気予報を見せてくれるのかしら。
マリーが気に入るような、
家族への愛にあふれた予報をお願いね。
優雅でも、泥臭くても、
フェルゼンらしい愛情予報ならそれが一番。
でも今日は、私たちから愛を送りたい気分だったけどね。
さくらや虹子の直球の言葉と違って、
大きなお姉さんになると、文章を推敲するようになるの。
推すか、敲くか。
ねえフェルゼン、そんなのどっちだっていいと思わない?
そりゃあ、気持ちが伝わるほうがいいし、
虹子や青空あたりは、字というより半分くらい絵だし。
さくらは、ちくらだし。
観月はやけに難しい字を書くし。
フェルゼンに、愛している気持ちが届くといいな、
って思って、文章をわかりやすくしようとするとしても。
だけど、大事なのは、何を伝えたいかであって、
どうやって伝えるかなんて、二の次よ。
好きなものは好き!
他の言葉ではあらわせない、この気持ち。
好き、好き、
いつまでも一緒にいてね。
マリーがお天気お姉さんになったら
わりとはっきりした予報になる?
晴れよ!
雨よ!
ズバッと!
降水確率50パーセントなんて廃止よ!
ゼロか、100か!
愛しているか、そうでないか!
フェルゼンには、そうでないってことはないから、
愛してる!
マリーは100パーセントの愛しか伝えられないみたい。
こんなんじゃ、お天気お姉さん失格ね。
やっぱり女王になろうっと。
それで、愛する人とふたりで永遠に過ごすの。
手紙は優雅だけど、
もう言っちゃった。
どんな立場だって、愛を言葉で伝えるときは相手の目を見つめるのが一番ね。

真璃の偽日記

『キャンディー』

生まれ変わっても続く
永遠の愛は
この世の中にあるけれど、
いくらなめてもなくならない
奇跡のキャンディーは
どこにもないの。

マリーは女王でもあるけれど
まだ幼稚園の年長さんだし
甘いものが必要なのよ。
それなのに、小さいからたくさん食べたらいけない
この理不尽。
なんてこと──
女王でも思いのままにならないことって
たくさんあるわね。
とはいえ、
人の上に立つものは、ちょっとくらいのことで
へそを曲げたりしたらいけないの。
忍耐強く、強い意志を持って
民衆を導いていかなければ!
それができないなら、
革命を起こされて
つゆと消える運命。
前世のマリーは、すこーしだけわがままだったの。
もっと人々を大事にするべきだったわ。
美しい宝石も、華麗な芸術も、
毎日汗を流して働く人たちが
世の中を支えているから成り立つのだということを
もう忘れたりしないわ。
パンがないときは
自分の身を捧げて──
僕の顔をお食べ!
って、言ってあげられる優しい女王にならなくちゃ。
子供らしい知識も、将来の役に立つものなのね。
捧げるのは、あんぱんの顔じゃなくて慈愛というところは注意。
無邪気にマンガごっこしている小さい子達じゃないんだし、
マリーのかわいらしい顔を自由にできるのは
愛する人だけじゃないとね。
フェルゼンの愛の証、
今日の記念日に受け取ったわ。
さくさくとした食感も楽しく、
ふわっとバターの甘い香りが広がる
おいしいクッキー。
素敵よ、苦労して探したんじゃないの?
フェルゼンは、無骨な男の人。
不器用なところもかわいいタイプで
女の子に振り回されて──
本当は、しっかりしているところもあって
決めるところは決める、マリーのりりしい恋人。
きっと、このクッキーは、愛を示すために
世界中を走って必死で探し求め、
嵐の街を駆け巡り、
革命の戦火を潜り抜け、
ライバルと剣を打ち交わし、
愛のために海を泳いで渡り、
ぼろぼろになりながらも、疲れた体を引きずって
ついに届けた情熱の結晶。
いいのよ、謙遜しなくても。
マリーには全部わかっているんだから。
本当は違うとしても、
もしも必要なら、実際にそんな困難に挑むことになったとしても
ためらわないだろうって──
そんなフェルゼンの愛は、ちゃんと伝わったわ。
だから女王としてするべきことは、
ちゃんと見ていてどれだけ立派だったか、教えてあげること。
この家族はあなたがいなくては成り立たないと。
マリーはまだ小さい女王で、
甘いものも
愛情も
大人の人よりもたくさんもらわないといけないでしょ?
今度も女らしいマリー・アントワネットになるために、
体も心も、成長中。
フェルゼンと愛し合って経験を積み重ねたマリーだもの。
これから大きくなれば、もう姉妹の誰も追いつけないくらい
魅力的になるわ。
前世のマリーも絶世の美女だったけれど
愛されて育って、比べ物にならないくらい美しく立派になるんだから。
フェルゼンは、そんなマリーにふさわしいただ一人の男性。
こうして家族として生まれて、長い時間を過ごせることに感謝。
大きくなったときに、運命の人に出会えるか不安に思うことももうない。
そして、家族だから、結び合う絆は永遠だと信じ合える。
二人を引き離すものはもう何もないわ。
いいえ、あったとしても、負けるものですか。
バレンタインに誓い、
ホワイトデーにもこうして誓って、
また来年もしましょうね。
恋人同士の、永遠の誓い。
もしもこの生涯に
フェルゼンがギロチンにかけられそうになっても
マリーが必ず駆けつけて
女王の威厳で解放させるわ。
なめてもなくならない
不思議なキャンディーよりも尊いもの。
マリーとフェルゼンは、もう手にしているの。
でも、もしも本当にそんなキャンディーがあるのなら
マリーのために命をかけて手に入れてくれるわね。
甘いものが必要な子供のうちに届けてもらうのが理想なんだけど、
一番に大事なのはフェルゼンそのものなんだから、
今すぐになんて無理は言わないわ。
二人で、一生をかけて探していくのもいいかもしれないわね。

真璃の偽日記

『寒いったら!』

寒い、
寒い!

こんなに寒くなると
蛍お姉ちゃまに作ってもらった
女王の首巻きでも
女王の腹巻きでも
女王の毛糸のパンツでも
限界があるわ。

何かおかしいと思ったのよ。
これ女王? って気はしていたのよ。

でも、
これがなかったら
危ないところだったのよ。
おもらしして普通のパンツに着替えさせてもらったさくらが
くしゅん!
くしゅん!
幼稚園で遊んでいても聞こえてくるくしゃみに
もう心配で心配で。

おもらしなんてするもんじゃないわね!
さくらのパンツのくまさんも、今日は涙でぬれたように洗濯でびしょびしょ。
おぼうしのくまさんのほうは、雨とさくらの鼻水でびしょびしょよ。
さくらも早く大きくなればいいのに。
どうすれば大きくなるかって?
さくらも、マリーの妹なんだから
結構とんでもない人の生まれ変わりだったりするのかしら。
自分の生まれに目覚めればいいの?
観月は別に特別な生まれじゃなくてもしっかりしてるかな?
ま、そんなこと全然なくてもかわいいさくらだけど。
もうしばらくはマリーが面倒を見ていないといけないわね。
元気に遊んで、おいしいもの食べて、
お兄ちゃんに守ってもらって
すぐに大きくなると思うわ。

それにしても、
寒い日って嫌ね。
でも、フェルゼンが抱きしめて暖めてくれるから
嫌でもないわ。
ねえ?

やっぱり、
女王に必要なものは、
心のこもった献上品もあるけど
そればかりではなく──
いつもそばにいて
困ったときには私が何も言わなくても
さっと進み出てきて
助けてくれる
優しいナイトがいてくれないと。
いつでも──
幼稚園でも──

そうしたら今日だって、
フェルゼン!
さくらのパンツを用意しなさい!
って、格好良く言えたんだけど。
あったかいパンツよ。
蛍お姉ちゃまが心をこめて作ってくれるパンツよ!
フェルゼンがマリーやさくらたちのために
心をこめてたたんでくれたパンツよ!

と言いたいけど
フェルゼンにも都合があるものね。

いつになったら
フェルゼンは私のために永遠の愛を誓って
ずっとそばにいてくれるのか──
いつになったら熱く抱きしめて
離さないでいてくれるのか──
こんなゆううつなお天気の日は
女王も少し物思いに沈んでしまうのよ。

さ、
なぐさめて。

上手にね?
心をこめてね。

寒さを吹き飛ばして、
毛糸のパンツもいらなくなるほど
熱く熱く、
マリーの体を
ぽかぽかにするまで
愛をささやいて。

寒い冬に二人で暖めあいましょう?

たとえ、うまくできなくても
マリーは氷柱お姉ちゃまみたいに
フェルゼンを叱ったりしないわ。
愛の形は人それぞれ。
表現の仕方もいろいろよ。

フェルゼンと二人、様々な愛を語りつくすまで
今度のマリーは、女王をやめるわけにはいかないの。
ずっと、あなただけの女王でいるわ。

真璃の偽日記

『ベルサイユ宮殿』

今朝は寒かったわね。

どうせなら、
きのうの朝にでも冷え込んでくれれば、
また雪遊びができたのに。

一月に、ずいぶん雪が降ったときがあったでしょう?
あのとき、お庭を見ながら思ったの。

これだけの雪があれば、
ここにベルサイユ宮殿を建てられるんじゃない?

もちろん、雪で作るのよ。
マリーはまだ小さいし、本物のベルサイユ宮殿は大人になるまで
ちゃんと我慢するわ。

前のときは思いつくのが遅かったけど、
今度雪が降ったらどうしようか、ちゃんと計画は立ててあるの。

本物の宮殿にはない、
マリーとフェルゼンが愛を語り合うための離れも
どこに建てるか決めておいたし。
フェルゼンが作るのを手伝ってくれたら
きっとこのマリーを満足させるものができるわ。

でも、降らなかったものはしょうがないか。
マリーがおねだりしたら、フェルゼンは命を投げ出してでも
雪を降らせてくれるだろうけど
おうちには寒いのが苦手なお姉ちゃまがたくさんいるもんね。
それに、フェルゼンが命を捧げるのは
今度は二人が、革命も引き離せない強い絆で
生涯を共にすることなんだから
ベルサイユ宮殿くらいで命を捨てていたらたまらないわ。

そういうことだから、
フェルゼンには別のベルサイユ宮殿を建ててもらいます。
積み木、ブロック、あやとり、なんでもいいわ。
大丈夫よ、あんまり上手じゃなくても、
フェルゼンが作ってくれるならそれでいいの。
マリーも革命の前はずいぶんいろんな宮殿を見てきたものだけど、
隅々まで完璧なものなんて一つもなかったわ。
ま、世の中にはあるかもしれないけど、
足りない部分を作り手の情熱で補うほうが、マリーの好みなの。
例えば、マリーへの愛を込めるとかね。
だから上手にできなくてもいいけれど、
ちゃんとマリーが喜ぶようにがんばって作るのよ。
フェルゼンの愛が試されるわね。

遊んでいる時間も限られるし。
こんなに寒いと、みんな早々に布団に引っ込んじゃうのよね。
マリーたちの部屋は、
夜の間に寒がる子がよその布団にまでもぐりこんでしまうの。
朝になったら、ちっちゃい子が猫だまりみたいに密集してるわ。
そこまでしなくても、ちゃんと布団に入って大人しくしていれば
あったかくなるのにね。
仕方がないから、部屋のリーダーのマリーがめざとく
放り出された布団をかけ直してあげなくちゃ。
子供の世話が性に合ってるのかしら?
まだ女王様にはなれないけど、お嫁さんや愛人にならなれそうね。

でも、明日の朝も寒くなるみたいよ。
フェルゼンは一人部屋で、寒かったり寂しかったりしない?
男の人に生まれるのも、こういうときは悲しいわね。
マリーが男装してフェルゼンの部屋に忍び込んで行きたいけど
そうもいかないものね。
大人になったら部屋を自由にしてもらわなくちゃ。
お姉ちゃまたちをがんばって説得してみるから
それまでの辛抱と思って、今は我慢してね。
代わりに、少しでも暖かくなるように──
小指だけでもね。

二人が永遠の愛で結ばれた暁には──
フェルゼンが寂しいときにはいつでも暖めてあげるって
約束してあげる。
もちろん、
マリーが寂しがっているときや
困っているときには
すぐにフェルゼンが駆けつけてくれるの。
約束しましょう。
この約束をいつまでも信じられるよう、
マリーはこれからもずっと、フェルゼンを愛し続けてあげる。

これで小指と、心が暖かくなった?
続きはマリーが大きくなってからよ。

真璃の偽日記

『せつぶんパーティ』

明日は節分ね。

楽しいことはみんなマリーのためにあるの。
フェルゼンもマリーを楽しませてね。

節分のメインになるもの。
それは──
まめ。

……

まめって!

もっと他になかったのかしら?
せっかくのマリーのためのイベントなのに。

投げるなら、トマト投げが派手でいいと思う。
マリーの中にも、立夏お姉ちゃまに似てラテンの炎が眠っているのかしら?
日本であんなことをしたら怒られるけど、いつか体験してみたいわ。
つぶれたトマトまみれになって倒れるとき、
この命が燃え尽きてもあなたのことを忘れない……
ごっこできるし。
でもあれ、当たると予想以上に痛いって聞いたこともある。
やっぱりいいかな……

他に投げるものといったら
パイ?
それだとお笑いになっちゃう。
まあ、マリーは庶民の気持ちがわかる気さくな女王だから
お笑いになったらそれはそれで楽しめると思うけど。

ねえフェルゼン。
節分の日に投げるものって、もっと何かないの?
もっと情熱的な感じにしたいの。

嵐のようにうなりをあげて
飛び交うまめ!
頭を抱えていちもくさんに
逃げていく鬼!

まめ……
どうも、あんまり絵にならないわ。
もうひとつ、華が欲しいところよね。
別に節分ぽくなくなってもいいから
マリーに似合うお祭りにできないかなあ。

何がいいかしら。
やっぱり、マリーが一番大事にしているのは愛だから
愛の贈り物……投げちゃダメか。
何よりもマリーに似合う
マリーの日があるとしたら、
それはマリーの特別に大事な日。
フェルゼンがマリーに愛を告白してくれたから?
マリーの手料理をおいしいって言ってくれたから?
身長が伸びたから?
フェルゼンのくちびるに、マリーの顔が届くようになるまで。
空中を飛んで愛を届けるものは、投げキッス?
ウインク?
愛の言葉がいい?
そうなったらフェルゼンは、もう逃げられないわね。
フェルゼン、いつをその日にしてくれる?
マリーの一生の記念日を決めるのは、いつでもフェルゼンなの。

ま、そんなマリーの日の構想は置いといて。
やるとなったら本気で楽しむのが
マリーのやり方よ。
明日は覚悟しておいてね。
まさか、まめの日がこんなに華やかになるなんて!
と思わせるまで、マリーは張り切ってしまいそうよ。

今年もフェルゼンは、まめをぶつけられる鬼の役?
大変だけど、ひとりはいないと始まらない、大切な役目。
マリーも愛にこの身を捧げて、フェルゼンと鬼をしてみようかな。
愛のために同じ苦しみを分かち合い、
まめをぶつけられ、手に手をとって逃げ出した先は
愛する者たちに許される
二人だけの楽園──
どこにいても、それは私たちが愛の名のもとに
心をこめて、助け合う場所。

どこか浪花節も混じってきたわ。
やっぱりマリーの中には、生まれ育つ日本を愛する心もはぐくまれているのね。
故郷フランスのことを忘れがたいと思っていても
いま過ごしている時間が、マリーを変えていくの。
そう、あなた色に
高貴な女王を染め上げていくわ。

でも、日本のお祭りはいいものだけれど
いわしの頭を飾る風習?
あれもなんとかならないかな。
ちょっと怖いし。
派手にしようと思っても
リボンもフリルも似合わないし。
いわしよりケーキが好きだし。
そういえばマリーは、いわしの骨をとるのがじょうずなのよ。
まさか、きれいに残したいわしの頭が私たちの厄を取り除いてくれるなんて。
手先が器用な乙女は、ちょっと複雑な気分よ。
少し困るけど、欠かせないらしいもの。
蛍お姉ちゃまもいっしょうけんめい準備してるわ。
マリーにはまだピンと来ないけど。
きっと、いわしの頭って、大人の節分なのね。

明日はマリーといっしょに、優雅な節分を過ごしましょ。
楽しみね。

真璃の偽日記

『マリーのすてきな午後三時』

ふわふわスフレは
かわいいスフレ。

ねえ、不思議に思ったことはないかしら?
それとも、一度も疑問に思ったことのない
かわいいフェルゼンなのかしら?

どうして我が家のおやつやデザートには、
あの、
やさしくふんわり、
とろけてやわらか、
ぬくもりと夢のような甘さが
スプーンひとつでおくちいっぱいに広がる、
あのスフレがめったに並ばないのか、
って──

変でしょう?
これには、ちゃんとした理由があるのよ。

それは──
おやつを食べる機会が多いこの家では、
作りおきが冷凍保存できる
スポンジケーキやバターケーキにパイ生地、
作りやすいタルト生地やクッキーが
便利だということ。

さらにもうひとつ、
おやつの時間がまちまちになるのが普通で、
たまに海晴お姉ちゃまやヒカルお姉ちゃまみたいに
食事の時間がずれることもあると、
できたてあったかのふっくら感が命のスフレよりも
冷めてから食べるシューにエクレアにプリン、
夏場のお供にムースやババロア、
温かなお菓子は焼き芋にたい焼き、スイートポテトのがっつり系が人気だし、
冬場についついとってしまうカロリーを思うと、そうなるわよね……
まあ、マリーのお願いがあればもちろん聞いてもらえるんだけど、
あの素朴なスフレは我が家では意外と高嶺の花なの。
フェルゼンなら分かる? この気持ち。
それとも、マリーの親しみやすさのおかげで、遠い憧れにため息をこぼす経験はないのかしら?

だから、お姉ちゃまたちがいつも帰って来れない三時には、
冷蔵庫のクグロフを分けるのも楽しいけれど、
早くオーブンが使えるようになったらいいと思うの。
マリーのお手製のスフレをみんなの前に並べてあげられたら、
さあ召し上がりなさい、
熱いから気をつけてよくふぅふぅしてね、
あさひちゃんにも、はい、ふぅふぅ、
あったかくて柔らかくて、
マリーの愛がしみこんだ女王様の味でしょう?

って、その頃にはあさひちゃんは
ずいぶん大きくなっているのかしら?

ねえ、フェルゼン。
マリーはもうホイップクリームを塗るお手伝いもできるし、
粉砂糖を振るうお手伝いもできるし、
こう見えて器用なのよ。
神様が与えてくださった才能も、時には恨めしいもの──
私がオーブンを使ってもいい日は
まだまだ、遠い先のこと。

もし私が最初に自分でおやつを作ったその時は、
フェルゼンはどこにいても飛んできてくれるわね?

今晩のメニューは、待望のスフレ。
かわいい、ふわふわよ。
スフレの型は一人分。
専用のものなんだけど、オーブンに入れる都合もあって、
優雅なレリーフに欠けるのが、気になるところ。
マリーの提案で、チョコレートスフレに粉砂糖をかけるときに
型紙でバラの花の形を飾るの。
もしフェルゼンも試したいなら
バラより、クマさんのほうがいい?
麗お姉ちゃまに言って、特別に電車の型紙を使わせてもらう?

おいしくて、家族みんなで嬉しくて、
そんな飾りは必要ないかもしれないけれど、
でも、マリーは思うの。
もしこれから、私がまた王妃になって、
フェルゼンは今度はマリーと真実の愛で結ばれた王様になって、
いつまでもいつまでも幸せに暮らす二人が、
自分たちが過ごす日々を懐かしく思い返すときがあるとしたら、
それは豪華な結婚式や戴冠式、
子供の生まれた日や、初めての日、たくさんいろいろ初めての記念日、
大事なバレンタインにクリスマスの忘れられないイベント、
そういうのよりも、もっと強く、印象的に浮かび上がるのが
ちょうど今、私たちの過ごしている
ふだんの、こういう身近な日じゃないかしら?
豪華なケーキの記念日に、素朴であたたかなスフレの日。
みんな、忘れられないものよね。

女の子が着飾るのも、きっとそうだもの。
お姫様になるだけじゃない──
ドレスアップに工夫をして、女の子は毎日変わる、
蝶になる、花になる、
猫になる、うさぎちゃんになる、
大切な日の贈り物になる。
もしかして、ラッピングのリボンをほどくようにフェルゼンは
裸のマリーを召し上がってしまえばいいのかもね?
包み紙がなくても、きらきらマリーの
いちばんのドレスが本当は、あなたを思う心だと
伝わるように──

スフレは何を入れても合うものだけれど、
あずきのスフレって、
ううん、おいしいんだけどこのごろ素材が偏ってるような……
お正月に何かあったのかしら?
霙お姉ちゃまに弱みを握られたわけじゃないわよね?
蛍お姉ちゃまは、あれで脅しには屈しないしっかりしたところがあるし、
何より、策略をめぐらす霙お姉ちゃまなんて想像がつかないし。
この時期のことだし、バレンタインに備えて考えていることがあったりなんて
まさかね?
ま、いいか。
バレンタインでもいつでも、
フェルゼンの心を誰よりも捕らえるのは、必ずマリーなんだものね。


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