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春風の偽日記

『はじめて』

春風の王子様は
おふくろの味、
お好きでしょうか?

王子様にとって、おふくろの味って
具体的には
どんなものがそうなのかしら?

ハンバーグやコロッケも味わいがあるけれど
飽きない素朴な味のほうが
毎日おうちで食べるには落ち着けるかも?
おみそしるや
サトイモの煮つけ
だったりするのかな?
春風に作ってほしい
おふくろの味。
王子様のためなら
もう、いつでもお嫁さんになれます。
春風はためらわずにあなたに人生を捧げて
一生、苦楽をともにします。
あなたと一緒に子供を育てて
にぎやかな家庭を築くの。
子供にたくさんのことを教えてもらいながら
お母さんの春風になります。
できるのかな。
春風は本当は、とても弱虫なの。
一人では寂しくて、何をしたらいいかわからなくなってしまう。
誰かがいてくれなかったら、泣いてしまうの。
いつも臆病で、つまらないことで怖がって
消えてしまいそうに震えている。
幸せな家庭にいても、こんな春風だもの。
たぶんつらいこともたくさんあって
いつも笑顔ではいられないのではないかしら。
不意に深い理由もなく差し込む、不安の影。
怖いけど、でも。
あなたがそばにいてくれるなら。
苦手なことがどれだけあっても
家族を愛する気持ちだけは
誰にも負けないと思うから。
弱くて頼りないお母さんだとしても
必ず、愛情豊かな生活をしていけます。
それだけは、
他の何ができなくたって
誰よりも愛することならできる。
これから何が待ち受けているとしても、
もう気持ちは決まっています。
いつでもお母さんになれます。
それとも今の春風では、
まだ早い?
私の王子様から見たら
子供のおままごとに見えてしまう?
そんなことないです……
きっと、そうじゃないです。
春風はいつのまにか
もう一人前の女の人で
何も知らない子供ではないんです。
あなたと出会ってから、春風は何もかもが変わっていく。
あなたが春風を、そんなふうにしたんです。
春風を一人の大人の女性に変えることができる人は
世界であなたしかいない。
こんなに広い世界を、あんまり知らない恥ずかしい春風でも
出会った瞬間にすぐわかってしまったこと。
春風があなたに
恋をしたということ。

そこで。
今日のお料理は、おふくろの味の定番の
肉じゃが。
カレーの材料も余っていたから
春風が腕をふるって
王子様の家庭の味になるように
心をこめました。
肉じゃがは
男の人に喜んでもらえる家庭的な料理だと聞くけれど
春風はもうだいぶお料理のレパートリーをそろえていて、
肉じゃがだけではこんなに食べ盛りの子がいっぱいの家族を支えていけない。
このかわいいみんなのために、だいぶお料理は作れるようになって
肉じゃがだって、普段から作っている慣れたメニューのいくつかと同じみたい。
これでどうだ! という衝撃の一品ではないような。
恋人たちの肉じゃがに求めている、付き合い始めたばかりの初々しさが足りないというか
新鮮味がないでしょうか?
春風もこんなにおいしいお料理を作れるんだね、と王子様に喜んでもらうには
迫力が足りないかな……
でも、蛍ちゃんみたいな挑戦的なびっくり料理は
春風はちょっと苦手かもしれない。
実を言えば、驚きのメニューばかりではなく
どこにでもありそうな当たり前のお料理を作りながら
それが一番の幸せに感じられるキッチンが、
春風の夢でした。
いま、蛍ちゃんがお料理を担当できる日が少なくなって
人手不足を補うために、小さい子たちはがんばっている。
特別に上手ではなくても
家族のために新しいことを毎日覚えて
大好きなお兄ちゃんに喜んでもらっているのを見ていると
うらやましいな、
春風も小さい頃に王子様がいてくれたら
きっと毎日喜ばせてあげられたのに。
と、ちょっとさみしい。
時間を巻き戻すことは、誰にもできません。
あ、もしかしたら、頭のいい吹雪ちゃんならいつかできるのかもしれないけれど
春風には無理なこと。
今よりもまだ幼くて夢見がちで
とても小さかった春風が
海晴お姉ちゃんのお料理姿がとってもかっこよく見えて
自分も、家族のためにできることがあるのかなと考えていた子供の頃。
もみじみたいな手のひらと、おままごとばかりしていた細い腕は
まだフライパンも包丁もちゃんと握れるほどではなかったのに。
家族みんなに心配をかけたっけ。
あのとき、春風よりも小さかった蛍ちゃんは
よくわかっていなかったみたいで、エプロン姿がかっこいいって言ってくれたけれど。

春風は、
今の小さい子たちが苦労しているよりも
たぶんもっとずっと
昔はお料理ができなかったんです。
習いはじめたばかりのころ。
海晴お姉ちゃんも、人に教えるほど得意ではなかったし
もし得意だったとしても、たぶん教えるのがそれほど上手なお姉ちゃんではないし……
焦げる目玉焼き。
フライパンからこぼれる卵焼き。
立夏ちゃんや小雨ちゃんみたいな
食べてくれる人のおなかが不安になりそうな失敗をしてきました。
あのとき、王子様がおうちにいたら
失敗したって決して悲しいばかりじゃなくて、
がんばる春風に優しい言葉をかけてくれたかも?
少しずつ上達してきたら
最近、妹たちに見せている笑顔みたいに
自分のことみたいに喜んでもらえたかも?
いま、こうして上手に作れるようになった春風は
王子様と、たくさんの大事なはじめてを共に過ごせなかったことを
残念に思ってしまう。
みんながはじめてのお料理を見せてあげている。
春風も、運命の愛する人が来てくれるまで
待っていればよかった!
いつか必ず、春風だけのたった一人の王子様と出会えるはずだと
昔からずっとずっと信じていたんだもの。
きっと、体のどこかでわかっていた。
家族の絆が知らせていたんです。
ものごころがついたときから感じていたと思うの。
愛する一番の人が、もうこの世に生まれていること。
それは、やがてこの家に来てくれて
家族としてずっと一緒に過ごす人だと
最初から気がついていたみたいです。
とっておけばよかったな、
春風のはじめてのお料理だとか
家庭的な肉じゃがを食べてもらって
これでいつでもお嫁さんにもらえるね、
って王子様に言ってもらえること。
夢のよう!
あーあ、そんなことがあったらよかったのにな。
でもそうなったら、春風のかわいい妹たちが
おなかをすかしてしまいます!
変なことを考えてしまって、
悪い春風です。
いけない春風は、王子様も嫌いですか?

元気にがんばっている小さい子たちを見て
王子様とうれしい思いを共にしていると
突然気がついたの。
春風はこうして、王子様のとなりで
小さい子たちの成長を見ていく幸せがあるんじゃないかしら?
不器用で心配だった妹たちが
だんだん一人前になっていったり
よく失敗して慰めてあげる時間を
あなたと喜べる毎日も
春風の経験したことのないはじめて。
こんな幸せを、
これからもたくさんあなたと過ごせるのではないかしら?
うれしい!
きゅん!
昔こんなふうだったらよかったな、なんて
後ろ向きに振り返っているなんて
それどころじゃない!

私の王子様。
春風は、あなたと過ごすはじめてが
この先数え切れないほどたくさんあることを
知っています。
何も難しいことを知らない春風でも、
そのくらいは簡単に気がつくんです。
あなたに、今の春風が見せたことのない姿をたくさん見てもらって
恥ずかしい思いもするだろうということ。
ときどき、自信のない部分を知られてしまって
悲しくなることがたくさんあることも、もう知っている。
でも王子様は、そんな春風とこれからもいてくれる。
うれしい時間をすぐそばで過ごしてくれる。
いっぱい一緒に喜んでくれる。
春風はわかっている。
あなたが家族でいてくれて、春風のこれからのはじめてを共にするの、
何度でも、
あなたに知られていない場所なんてすっかりないと思っていても
春風はいつもあなたと、知らない何かを見つけていく。
慣れているはずだったキッチンに立っているだけで
いくつも見つかる、あなたとのはじめて。
怖がりで悲しいことが多くても、
力が足りないことばかりでも。
春風の過去を巻き戻したくなってしまっても、
大好きな家族にいけない嫉妬をしてしまうことがあったって、
あなたといられることが
春風はうれしい。
私は、はじめてを
あなたと経験していく。
これから、何度でも。
決して尽きない
新しい幸せ。
春風が毎日一生懸命作ろうとしている
平凡な幸せの毎日のどこかに、
春風の見たことのない幸せを
あなたと見ているのだろうと思います。
今日の肉じゃがはどうだったかしら。
王子様の家庭の味になれそう?
今はもう、あまり新鮮さがないかもしれないけれど
春風は、あなたといると毎日がはじめての日々。
あなたも春風と同じ気持ちになってほしくて
何もできない子供の頃のように
いま、春風は不器用にがんばっています。
どうか、これからも末永くよろしくおねがいします。
愛しい愛しい
世界で一番大好きな
春風の王子様。
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