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氷柱の偽日記

『クリスマスまで』

明日から私もアルバイトに行くから。
そのつもりでよろしく。
そう、あの洋菓子店。
蛍ちゃんがいるお店とはライバル関係にある、あの。
まあ、別にライバルだから選んだわけじゃない。

海晴姉様たちは、ずいぶん心配しているみたいね。
私のこと。
それは、家の手伝いではまったく役に立っていなかったわ。
霙姉様は、私がアルバイトをするなら家庭教師はどうかと言ってる。
それもひとつの意見ではあるけれど、
人を教えるのもちょっと。
私に向いているかというと、
うーん……
というか、別にお金が欲しくてアルバイトをするわけじゃない。
いや、別に──
蛍ちゃんがうらやましいなんてことは全然ないから。
下僕を取られたなんて思っていない。
だいいち取られたってどうでもいいし。
むしろ、こんなので役に立つならいくらでも使えばいい。
気が利かないから今までは私が教え込んであげていたけど
ちょっとは使い道があるようなら、遠慮なんていらないでしょ。
下僕も喜ぶわよね。
どんどんどうぞ。
お迎えのボディガードとしては、こんなのでも男だもんね。
いないよりはずっといいわ。
日が暮れるのが早い時期だし。
あなたもちゃんと蛍ちゃんを守ってよ。
私のほうは、
蛍ちゃんより狙われにくいと思うし、
放っておいてもいいから。

言っておくけどね、
あなたに何か料理のことで文句を言われたからとか、
そんな理由でアルバイトを始めるわけじゃない。
うぬぼれないで。
そりゃあ、キッチンでみんなの先頭に立つ下僕を見ていたら
何なのよ偉そうに、っていらいらしたものだけど。
私にまで指図してきて、
遠慮がちだったのは多少は身の程をわきまえているとしてもね。
まったく。
家族のピンチを救ってくれるのはいいのよ。
あんまり家事が得意じゃないとしても、
そこそこできるみたいだから。
なんとも思わないわよ、私はお手伝いしかできなくても。
聞いた話だと、
今日は海晴姉様にいいことを教えてもらったそうね。
お手軽な料理のコツとか。
野菜を上手に煮込んで栄養バランスをとるとか。
小さい子が聞いたら泣き出しそうなことを。
好き嫌いしないで食べられるようになるのはいいことね。
いろいろ教えてもらったら
私があんまり料理に向いていなくても、手伝うくらいはできるはずなのよ。
もちろん。
普通にできる。
でも、なんかそれは違うなって。

下僕と並んでキッチンに立っていると
なんでいい歳をしてこんな調子で仲良しをやっているんだろうって
恥ずかしくて、うっとおしいと思うこともある。
自分ができないことばかりだから居心地が悪かったりするのも、確かにそうかもしれない。
それはそれとして。
いま考えているのは別のことなの。
蛍ちゃんがアルバイトに行くようになって。
あのお店は普段からおいしいパンを作ってくれるのに
クリスマスケーキなんてわざわざ用意する必要あるのかな、って。
疑問を感じていた。
そんなのいらないと思うんだけど。
考えていたら、ケーキのことで思い出した。
昔は蛍ちゃんのお菓子作りもあんまり上手じゃなかったわ。
はじめたばかりなんだから、誰だってそう。
蛍ちゃんもだった。
ケーキの作り方をおぼえて、はじめてのクリスマスは張り切っていた。
春風ちゃんが手を貸そうとするのも断って。
顔にもエプロンにもクリームをくっつけながら、真剣に打ち込んでいたっけ。
結構いいものができたの。
おいしかったよ。
今から思い出したらそんなに大したものじゃないかもしれないけれど
ちゃんとしたクリスマスケーキ。
本物のクリスマスケーキだねって騒いだのを憶えてる。
本物って何よ、とか思いつつ。
お店で売ってるみたいだってみんなで褒めたっけ。
蛍ちゃんも嬉しそうだった。
その時に私が思ったことが、
おいしいな、とかではなかったような気がする。
おいしかったんだけど、それよりも。
それまでの蛍ちゃんの料理をたくさん知っていたから
あんまり上手じゃないはずなのに
なんでこんなに一生懸命だったのか、不思議だったな。
お店で売ってるケーキのほうが見栄えはするかもしれないけど
これがおうちのクリスマスケーキなんだな、みたいな。
小さかった私はその時、
これが家族で過ごすクリスマスなんだなと初めてわかったような、
少なくとも記憶にあるのはそれが最初。
その前にも春風姉様の上手なクリスマスケーキは作ってもらっていたはずなのにね。
今年、蛍ちゃんはアルバイトの立場ではあるけど、
本当にお店で売ってるケーキを作る人になった。
それ以来、なんだか考えがすっきりまとまらないというか。
お店であのケーキを作るんだなと考えたときの私の複雑な気持ちとか
自分が今作っている下手な料理を見て、いま家族が何を考えているのかとか。
クリスマスって、なんだろうとか。
やっぱり、その日だけ特別なんてことはありえないと思うんだけど。
こういうの、わかってもらえるかな。
説明している私も実はよくわからないから、伝えるのは無理かな。
でも、ここ数日考えていて、
ゆうべは海晴姉様に、一晩じっくり考えるように言われて。
今朝、このことを話したときには、
海晴姉様はなんとなく納得した顔をしていて
アルバイトのお願いは、反対はされなかった。
だから、
下僕にわからないようなら、
あのとき一緒にいなかったからなのかもしれないから
今年のクリスマスは、ちゃんと一緒に過ごすのよ。
それまでの準備もね。
でないと、こういう時にまだるっこしくて仕方がないんだから。
今日はアルバイトの面接のあと、どれくらいできるか形だけ仕事を試すことになったわ。
ここ一週間、手伝ってきた経験もあって
そこそこ人並みの仕事はできそうだから大丈夫。
明日には学校にアルバイトの届出をして、放課後にまた行って働く日を決める予定。
もし下僕が、ご主人様がいなくて寂しいと情けないことを言うつもりなら、
蛍ちゃんと同じ日にしたらますます人が少なくなって、泣いてしまうかもしれないし
少しは考慮してあげてもいいわよ。
25日当日は必ず夕方には帰ってくるから、それは心配しないで。
アルバイトはそれまで。
それから、これ。
せっかくだからおみやげ。
私は蛍ちゃんみたいに、お店の人に期待されているわけではないから
もらったんじゃなくて、自腹で購入したもの。
20個入りチョコレートアソート。
こんなの、今回だけだからね。
特別よ。
あさひはまだ食べられないから、ひとつはママの分。
あなたは、小さい子たちがちゃんと順番に選んだあとね。
お兄ちゃんなんだから、そのくらいがまんしてよ。
あなたの作る料理は、家族にはそれほど評判が悪いわけじゃない。
そんなにうれしいものなのかな。
私がいない間、みんなのことを頼める?
ユキのこともちゃんと見てあげてよ。
私もアルバイトがない日は家にいるからね。
たまには、下僕が手を抜かないように指導もしてあげないといけないし。
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