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霙の偽日記

『げんきな』

家族が寝静まったあとで
少しだけ夜更かしをして
海晴姉と静かに会話を交わす
短い時間。

立ち上る湯気をふたりで挟む距離。
会話の内容はなんとなく
近況報告にとどまることが多い。
自分自身の状況よりも、家族の過ごしていた今日を話題の中心にして
結論を出すこともせずに会話を続けていると──
それぞれが伝え合う問題に、同じ解答を用意しているように思えるときもある。

秋の夜長もそろそろ、寒さが本格的に増してきて
そんな時間も切り上げ時が日に日に早くなる。
年長の二人だけ、秘密のような会話であっても
大事な話し合いはしない。
ただわずかな時間、場所を分け合っているだけにも思える。
この静かな暗がりを。
宇宙の小さな一隅を、家族という理由で共通のものにしている。
向かい合う私たち。

話は誰に隠しているわけでもなく、遠慮しているわけでもない。
小声になるのは普段の我が家が嘘のような夜を過ごしていることだけが理由。
伝え合う内容も、声を出すこともなくほほえみがこぼれるような。
あるいは、苦笑してしまうような。
このごろの短い会話で、よく話題になるのが
なぜ小さい子たちは寒くなっても、あんなに元気に庭に出て行くのかという疑問だ。
考えれば考えるほど答えが出ない、不思議な話だ。
自分たちも幼い頃は、あんなにはしゃいで飛び回っていたのだろうか。
そんな欲求を持っていたのか、まるで記憶にない。
宇宙の大きさも、形あるものの空虚もいまだ知らず
思いのままに振舞うことだけに夢中だったわずかな時間の中。
家族と自分を区別する必要などなく
喜びを与えてくれる家族が、その頃は自分の肉体の一部であった。
幸福であることは何も意識しないままに。
記憶はあまりないが、私も子供の頃は別に難しいことは考えていなかったはずだ。
あの子たちのように無邪気だったのだろう。
子供の頃、私もまた──
秋の深まりを感じるこの気温でさえ
臆すことなく薄着で庭へ駆け出して行ったのだろうか。
すぐに体が暖まるはずだと、何の疑問も抱かぬ無邪気な目をして。
どうも自分でもそんな姿が思い浮かばないのだが。

昨日までの晴天とはうって変わり、
近づいてくる冬の気配をより強く感じる曇り空。
それなのに、女の子だから大丈夫だろうと根拠のない自信を抱いて
ミニスカートのまま庭に飛び出して追いかけっこをしている立夏を見たら
それは海晴姉も、毛糸のパンツを提案したものか私に相談してくることだろう。
寒さに懲りるような様子もなく、
まだ動き足りないようで
おやつのお手伝いをしている間も、台所でむしろ邪魔になるのではないかというくらい
はしゃいでいる。
冬篭りの準備をはじめた自分の体型に動揺しているようだが
あれだけ活動していれば、肉体が更なる栄養を要求するのは自然だろう。
心配なのは、寒さで体調を悪くしてしまうこと。
たくさん食べて体を動かすことには何も不安を持つことはない。
それを見て、私たちが迷うのは立夏の責任ではない。
あんなに活動的な妹が身近になると、深い思索を楽しもうとする私などは
ただ単にさぼっているだけに見えてお手伝いを増やされないだろうか。
海晴姉は、自分もそんなに変わらない年齢だからもう少し勇気を出してもいいのではないか、
まだ短いスカートを楽しんでいい年齢なのでは、と
いいのかどうなのかなんとも言いづらい影響を受け始めている。
立夏の真似は誰にもできないと思うが
かわいい姿をたくさん見て欲しいと願い、行動するあのひたむきさを
まぶしく見つめてしまう気持ちはわかる。
その行動力に憧れるかどうかは、海晴姉と私では意見が異なるようだが。
あんなに好きな人にかわいく思ってもらいたがって
お前を元気にしたいと、それなりに考えている。
もし心を動かされるのならば、
たまには遠慮も悩みも何もなしで、立夏を褒めてやるといい。
かわいいとか、
明るい服が似合うとか、
色気はあまり、本人が意識しているほどには発揮されていないようで
生足やパンツが悩殺の威力を持ち合わせているか、私には判断できないが。
努力している部分をちゃんと見ていてくれたら
やっぱり嬉しいんじゃないかと思う。
海晴姉も、もし思い切った決断をして青春の日々を求めようとしたならば
そこに意識しているのは立夏だけじゃなくて、お前の存在が大きいようだから
素直に、思ったままを伝えたらいいのではないか。
私のことも、どうだろう。
私が求め続ける沈思も、時には評価に値するはずだ。
そう、たとえば──
宇宙の広大さとか、
暗黒の美しさとか。
うーん……
やっぱり、あまりにも理解がある弟も少し困るな。
お前もまだ子供の年齢なのだから、立夏とはしゃいでいてほしいのかもしれない。
難しい話は、姉たちに任せておけばいい。
目的もなく家族への愛を語り合う、みんなより年上の私たち。
静かな暗闇に溶けていくような穏やかな時間が
迷いも、喜びも多い姉であり続けるために、何かの意味を持っているのだろう。
こんな大人の仲間に入りたいのならば、
子供の時代に、子供らしく
無邪気な経験をたくさん積み重ねてからだな。
私もたぶん、そうしていたのだ。
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