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麗の偽日記

『ふだんの』

また台風が近づいてきた。

ニュースで見たわ。
もう大変な雨が降っている地域もあるって。

こんな途方もない大雨では
今度も鉄道ダイヤが乱れて
私の胸を締め付けるのね。

わかっている。
それどころじゃないってことは。

海晴姉様も、テレビ局の急なお仕事が増えて
帰ってこられなくなるかもしれない。
私にも注意をしてきた。
妹たちと、
立夏ちゃんと小雨ちゃんをしっかり見ていてあげてね!
年齢的にどこかおかしくないかしら?
それとね、
お兄ちゃんたちと協力するように!
だって。
怖がっている子がいたら、なだめてあげるように。
外に出て行こうとする子がいたら、止めないといけない。
学校の帰りに寄り道をしているようなら、叱ってでも連れて帰らないと。
言ってることはわかるけど。
なんで私に?
まあ寄り道しないようには
私も言われた。
ということは、みんなに言ってるのかな。
お兄ちゃんたちと協力して、と。
立夏ちゃんにも、
麗ちゃんを見てあげてね、とか。
私が立夏ちゃんに頼ることなんてあるのかは疑問ね。
誰が頼りになるのかは、今のところ正確に判断できないとしても、
海晴姉様が家に帰ってこないのは、充分にありえるのだから。
気がかりだってことはわかるわ。
口うるさく言われなくたってわかってるとふくれたい気持ちを抑えて。
家族が安全でいられるよう守りたいのは、私だってできればそうしたい。
さっき、海晴姉様は、泊り込みに持っていくお弁当について
おにぎりの具は真剣に相談していた。
なんだか緊張感がないみたいにも見えるけれど
食事をしっかりとらないと力が出ないのは確かだから……
小学生が言っても仕方ないかも知れないけれど
あまり体に無理はしないでほしい。
それから、こちらも自分たちでできるだけのことはするから安心してほしいと。

9月の避難訓練で、近くの小学校に集まったの。
もしこのあたりで台風の大きな被害があったら
私たちが避難するのはあの場所。
私──
慣れない場所はあんまり好きじゃない。
もちろん、災害の時にそんなことを言ってる余裕なんてあるわけない。
でも、電車が止まってしまうだけでも
不安になってしまうのに。
最新のシステムで、どんなに努力を重ねていても
自然の猛威の前では立ち往生するしかない電車のことを思うと
当たり前の日常が途切れる感覚が、ますます突き刺さってくるようで
やけに心細くなってしまう。
そんな時に、知らない場所で避難なんてすることになったら……
めったにあることではない。
かといって、絶対にないと断言することはどこの誰にもできない。
備えは大事。
立夏ちゃんと小雨ちゃんの通ってる小学校だから、少しは馴染みがあるとはいえる。
私が野蛮な男の子たちと同じ学校に通うなん考えたくないから
いまさら、知らない場所だと気後れしたってどうにもならないけど。
立夏ちゃんはもう通っていないんだった。
中学生になって、半年も経つんだっけ。
本人は進学して一歩大人になったと言うけど
成長している気がしないのよね。
放課後、たまに早く帰ってきたときは
まだ小学校で遊んでいる星花ちゃんや夕凪ちゃんたちを迎えに行って
自分も一緒に泥や砂や雑草にまみれて帰ってくる。
あれで中学では女の子らしくておしゃれだって一目置かれているという話。
それともこれは、教えてくれた蛍姉様や春風姉様の見間違いかもしれないわ。
私には、立夏ちゃんが中学校の校庭でも男の子みたいにサッカーをしている姿しか想像できない。
体いっぱいで楽しそうに学園生活を送っているのが、何の苦労もなしですぐ目に浮かぶ。
立夏ちゃんたちが通っている学校だから、
多少は馴染みがあると言っていいかもしれないし
共学でも男の人は少ないみたいだから、そこはまだましなのかな。
いいか、それはまだ先の話。
覚悟が山ほど必要になりそうな気もするし
できれば、まだあまり考えたくないわ。
今の日常が変わってしまいそうなこと。
それは台風のような恐ろしい事態と全然違うと、理性ではわかる気はするんだけど。

日常とは違うイベントで、こちらは楽しみにしている子が多い。
もうすぐハロウィン。
何事もなく、みんなで迎えられるようにしたいわね。
私はお菓子には興味がないというか
ときどき立夏ちゃんの食べかすがやっかいに思えるのだけど
家族全員参加の厳命がある以上、
仕方ないから参加するわよ。
少しは食べたいし……
だから仮装も我慢する。
私はふたご座。
双子を扱った有名な文学であるウィリアム・ウィルソンの作者である
エドガー・アラン・ポーの代表的な短編が
黒猫。
だから黒猫の衣装で参加することになりました。
なんだかずいぶん本来のコンセプトから離れているんだけど。
ふたご座はカストルとポルックスだったはずなのに、いったいどこへ行ったの。
それに、ウィリアム・ウィルソンは双子じゃなくてドッペルゲンガーの話だと
聞いたことがあるような。
読んでいないから、反論はしにくいわ。
一応、ポーで有名な詩の大鴉とどっちがいいか選ばせてくれた。
鴉っぽくするとガッチャマンみたいなコスチュームになるって言ってたわ。
ガッチャマンは知らないし、予想もしていない変な方向に進んでしまったら困る。
黒猫は、前に着たことがあるからわかっているだけで……
別に自分から望んで黒猫を選んだわけではないの。
好みを主張できるほどにコスプレに興味が出たわけではないのだから
麗ちゃんがそんなに黒猫が好きならはりきっちゃうって
はしゃいでいる蛍姉様には、
あなたからそれとなく伝えておいて。
違うから。
無難に済ませたいだけだから。
あんなに嬉しそうにされると言いにくいだけで。

ウィリアム・ウィルソンは、自分の知らない場所で
自分同じような人間が生活していたという話だって聞いたわ。
私の知らないもう一人の自分がいたとしたら
どんな様子なんだろう。
もしかしたらその子は
好きなだけ電車に乗りに行けるような生活をしているかもしれないわ。
たぶん、その子にも姉妹が18人もいたり
いきなりお兄ちゃんが出来たりしているんでしょう。
その子が私なら、やっぱりそんな生活をしていると思う。
でも、それだと私以外の家族も全員がふたご座になってしまうか。
やっぱり、どこかにもう一人の私がいるということはなくて
ここにいる私だけ。
黒猫に仮装する運命を避けられなかったり
妹たちや、年上の立夏ちゃんの面倒を見ている生活があるだけ。
仕方がないから、私もどれほど電車に心が揺れたとしても
明日ばかりは寄り道は控えて、早く帰らないといけないわ。
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