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霙の偽日記

『繁栄』

寄せては返す潮騒と
ぎらぎら照りつける太陽。
海を求める妹たちのおたけび。
砂粒までもが意思を持って燃え上がろうとしているかのような
夏の光景を見ていると、
なんだかこのまま
全てが塵になることまで忘れて
生命が脈動を伝えながら
連綿と続く永遠を信じてしまいそうになる
活気に溢れた浜辺に
私は立っている。

本当は、歓声が届きそうな
あの高い空の向こうには
静寂の絶対零度を抱く宇宙が
広がっていて、
大きすぎるように見えるこの星も
いつかは一粒の塵に変わっていくことが
疑いなく決められているのだと
知っているはずなのに。

繰り返す波の鼓動が
未来永劫まで
いつか人間が子々孫々を伝え、
やがて消え去るその時を越えてなお、
ずっと──
変わらずこうして
揺るぎのない営みを続けているような
そんな気がしてくる。

生命の活動を感じるのは
海が命の源だというばかりではなく。
溢れるエネルギーをこの見に受け取るのは
太陽の光が私たちを育んだためとは限らず。
命あるものの繁栄を祝福するこの気持ちは
ただひとつきりの理由、
今ここに生きることを信じて
持てる命を限界まで燃やし尽くそうとする
家族たちの過ごし方を見てのこと。

ここは、無の回帰を思わせる要素が
勢力を失う傾向にあるのかもしれない。
形ある何もかもが遠い未来に滅びを迎えるはずなのに。
暗黒に思いを馳せるあの魅惑すら溶かしつくすのか。

野生に返り、
滅びなど知らないで
ただ刻み込まれた本能のままに
繁殖を続ける
そのような快楽も、この地にはあるのだろう。
広大な地球を知り、向かい合う
家族たちの歓喜がそれを伝えているようだ。
オマエも──
野生に戻ってみたっていいはず。
魂の叫びを見せつける家族に、
あのうるさい氷柱も、きっとこの海の前では文句なんて言わない。
保証はしないが。

海水浴初日の今日、
海に向き合う姿勢は家族それぞれ。
波にくるぶしをひたして歩くだけで
満足する者、
おびえてその先へ進めない者、
海が穏やかな様子を注意深く観察して
いよいよ兄や姉の手を取って
泳ぎの練習を始める者や、
最初から迷うことなく駆け出して行く者、
いろいろだ。
砂浜を活動範囲にしていても、
ビーチボールを追いかける者もいれば
砂遊びにひたすら飽きず興じる者、
ビーチパラソルの下で寝転がって過ごすのが
目的の者、さまざま。
私は日差しを避けて、
家族に何かあったときにはすぐに飛び出せるよう
待機する役目。
決してぐうたら弛緩しきっているわけではないが
そんなふうに見えることは否定しない。
しかし、いつでも鷹の目を光らせている。
もしも波間に、家族の誰かが
ポロリの瞬間を迎えるのを見つけたら
流された水着を届ける準備は
万全だ。
今年は何人が、背伸びをして水着を選んだことだろう。
あるいは、家族たちの集う浜辺に起きる小さなイベントを
避けられないような水着を?
それは、やがて確実に訪れる
この地にとっては、滅びよりも似合いの瞬間なのだろう。

家族みんなが心地よく疲れきって
夕食の後は眠そうにしているのは揃って同じ。
一日の終わりを惜しんで抵抗しようとしたり、
素直に睡魔に襲われるまま陥落を果たしたり、
それでも、明日になれば
疲れなど忘れて、また海に出て行くのも
同じなのだろうと願いながら
今夜は眠ることにしよう。

せっかくの星空だが、
月明かりの下で、遥かな宇宙の真理に思いを馳せる夜は
しばらくは堪能できそうにないな。
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