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霙の偽日記

『虫歯』

全ては塵になる。
だが、虫歯で塵になったという話は
最近あまり聞かないので──

私は歯医者へ治療に行かねばならない。
なんということだ。

かつては、小さい妹たちの歯を
磨いてやったものだ。
まさか私がこんなことになるとは。
油断していたはずはないのだが、こうなった。

ズキズキと鈍痛が繰り返して、
歯茎の奥まで侵略していく。
私の意思に関係なく深く押し入り
神経はなすすべもなく降伏する。
さらり身を翻し痛みが立ち去っていくかと思うと、
ほっとする間も与えられず
また無遠慮に、予告なく訪れる浸食──

この宇宙とは、
儚い塵が寄り合って
ほんのつかの間だけ形を成し、
定めを受け入れ塵に戻っていく
止めようのない循環。
時に現れ、
時に消え行く──
ただそれだけが真理だ。
私の口中にも宇宙が生まれ、
痛みは定めに従い、現れては消える。
塵に等しいミュータンスが
消え去るだけの宿命に儚い抵抗をしている。
彼らもまた、寄せては返す痛みのようにいつか滅びる。
今の私には、儚く消えるものたちを
いとしく思う余裕があまりない。
いったい私は何を言っているのか。
なんで口の中に宇宙が生まれるのだろう。
どうも痛みのせいで少しおかしくなっているようだ。
冷静な思考は彼方へと消え去り、
やがて儚く消え去るこの肉体だけが
私を支配していくのだ。
ああ、
あまり快感じゃない。
こういうのは、私が言う滅びと
ちょっと違う気がする。
なんだろう。

家族とは、
必ずしも平穏な関係を保てるわけではない。
時にはぶつかり合うこともある。
小さな塵でありながら自らを主張しようとする。
弾き合い、結びついていく。
そんなもの、たいしたことではないのにな。
私たちの喜びも悲しみも、宇宙の前では何の意味もない。
それでも、塵は互いを求め合うことをやめないのだ。
こうして苦しんでいる私に
優しい言葉をかける家族がいてもいいと思う。
オマエもそう思ってみたらどうだろうか。
たまには甘え、慰められるのもまた宇宙の塵の活動ということで
いいんじゃないだろうか。
なぜ歯を磨いていたのにこんなことに──
つまみ食いが度を過ぎたのだろうか。

妹たちの見本になるべく、
先頭に立って歯を磨いてきたものだが、
どうやらもう、立派な姉として
家族の見本にはなれないようだ。

とはいえ、
家族を引っ張っていく頼もしい背中を
春風やヒカルや
オマエに期待するのは
まだ少々不安があるな。
姉として、
弟や妹に甘えることはあっても
そう簡単に越えられてしまうつもりはない。

オマエがどんなふうに育てば、私を越えたと認めてやれるか
それはオマエが考えなければいけない。ヒントはやらない。
もしかしたら、私も意地を張って、
越えられたことをいつまでたっても認めないかもしれない。
だが、もうしばらくはいらない心配だ。
まだまだかわいいところばかりでできているような弟や妹たちに、
もう少し、私がかっこいいところを見せてやる場面もあるだろう。

せめて、この虫歯をごまかさず
恐れることなく歯医者に向かい、
堂々と治療を受ける背中を
小さい妹たちに見せてやろう。
それが、虫歯になった私が
家族に示してやれる姿だ。

あの恐ろしい治療に
私が力尽きるときが来たら──
愛していると家族に伝えてくれ。
まあ、歯の治療ではなかなか死なないと思うが。
それから、もちろんオマエも愛する家族だ。
しかし、こんな状態に便乗するのはロマンがない。
またの機会にしよう。
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