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文化祭

はてなに書いた分をまとめて。
・麗
今日も良く晴れてよかったわね。
せめて雨でも降ってくれたら
行かなくてもいい理由ができたのにね。
姉様たちの学校で文化祭が行われる日。
日曜日なのにご苦労様。
わざわざ休日をつぶして見に来る人もいるっていうんだから酔狂だわ。
別に、私だって興味がないわけじゃないし
小雨ちゃんから吹雪ちゃんまでの年の子は生徒会印の食券も五枚もらって、
小さい子と分けて、どこのお店でも使っていいと言われているから
全然楽しみでもない、というわけでもない。
嫌だって言っても聞いてもらえないから
少しはいいところも見つけ出さなきゃ。
五枚の食券。
これで全部。
どうして普段から、家族ではなんでも素直に話をしたらいいって言うのに
学園祭なんて別に行きたくない、って本当のことを言ってもダメなの?
もういいわよ。
知ってるもの。
私たちの家は、こんなに家族が多いんだから
何より大事なのはみんなが仲良くできること。
けんかをしても泣かされてしまっても
いつも一緒なんだと、お互いを思うこと。
きょうだい仲良く、がルール。
わかってます。
本当は、私がどうしても嫌だと言えば
文化祭の一日がみんなの特別な日でも
人生に関わる大問題とも違うのだから。
行かなくてもかまわないって
本気で嫌だと伝えれば、海晴姉様もわかってくれる。
でも、小雨ちゃんと星花ちゃんの二人くらいしか頼りにならないのに
わんぱくな小さい子たちの引率を全部任せるなんてできないから。
嫌なことから逃げるのだって気に入らない。
本当に嫌なことだったら……
どうしても絶対に許せなかったら……
あなたはもし、ずっと昔の私がもう少し自分の気持ちを話すことができていたら
この家から出て行ったの?
でも、家族がいてほしいって話になったんだもの。
一緒がいいって言っているんだもんね。
文化祭のことよ。
楽しみにして待っているって。
氷柱姉様だけは、劇は見に来なくていいって主張していたけど。
どうしても見たいなら仕方ないって最後にはすっかり妥協もしていたけど。
実際は、学校に家族が来たら恥ずかしいものなんじゃないの?
私はみんなが運動会に来たときはそうだったけど?
気は進まないけど、
でも誘ってくれたんだから。
少しは打算もあるのは知ってる。
この機会に将来通うかもしれない学校に慣れておいたらいい、くらいならともかく
単にお客さんが多ければうれしいだけかもしれないし
もしもの時は、家族だから気兼ねなくお手伝いを頼めるとか
食券と一緒に渡されて、外さないで歩くようにと言われたのが
赤と白のストライプの目立つ色合いでできた
生徒会役員の文字がある腕章に
セロハンテープで簡単に貼り付けた紙の
案内・迷子誘導お手伝い係。
いいように使われそうなのはわかっている。
確かに毎年行ってるから学校の構造は少しなら知ってるわ。
もしも案内で困ったことがあったらどんどん他の生徒に頼っていいって言われたし。
億劫になる理由はいっぱいある。
まあ、年に一度のことだし。
この際、もらった食券で元がとれるかわからないけど
基本的に今日は小さい子の引率のついでと思って
もう何もかも面倒くさい仕事はまとめて任される覚悟を決めたわ。
少しは楽しめるといいけど。
一応、四時には小学生以下の子は揃って帰宅。
それまでは付き合います。
最後の大イベントってうるさいミスコンとキャンプファイヤーまで残らないでいいのは助かるわ。
霙姉様は、私なら特別にミスコンに出てもいい順位に食い込めるんじゃないかって言うけど
でも、家に帰る時間は守らないとね。
ルールはルール。
ミスコンとやらは辞退させていただきます。
私が木花に入学する頃になったら、帰宅時間の理由では断れなくなるか。
そのくらいまでには別の言い訳を考えておくわ。
今からこの学校に進むって決まったわけじゃないけどね。
もし仮に、今日の学園祭がそんなに嫌なことばかりじゃなかったとしても
一日くらいのことでは決め手にはならないから。
ほんの短い今日だけのこと。
だから私も
たった一日くらいなら、うんざりするお祭り騒ぎも我慢するわ。

・氷柱
文化祭の開会式なんて形式的なものがあっさり済んだらすぐ
私たちのクラスも、体育館ステージで劇を演じて
ばたばたしたスケジュールも、なんとかこなしたわ。
なんで文化祭ってこんなに開会式が形だけなんだろう。
あってもなくてもいいことを仕方なく、みたいな。
もう体育館に集まった生徒みんな、この日のために準備してきたことをついにって
ぎらぎらしているから、誰も大人しく開会式なんてやっていられないのかもね。
さて、聞くまでもないけど
どうだった?
ご主人様の勇姿に言葉も出なかった?
そうでしょう。
やっぱりね。
あ、それだけよ。
劇の話はもういいから。
この素敵なご主人様が、これから文化祭を一緒に回ってあげると言うんだから
あなたは幸せ者よね。
なに、おばけ屋敷?
あなたは一生首輪をつながれている犬なんだから、主人のほうが大事に決まってるでしょ。
下僕でも連れまわしていれば
少しは気が晴れるかもしれないし。
ええ、劇はうまくいったわよ。
何一つ問題なく。
文化祭の劇は片づけまでがひとつの仕事。
全員で協力して、大道具小道具を教室に運び込んで
最後に隣で模擬店をするクラスに注文しておいた飲み物が行き渡ったら
全員で成功を喜び合い、これで私たちの青春の学園祭も、
今年はもうクラス発表は終わり。
後は自由行動。
暇じゃないし、誘ってくれる友達もいるけど、優しいご主人様は下僕と一緒にいてあげるわ。
というか、ついてきて私の言うことを何でも聞いて
全部忘れることに協力しなさい。
もちろん、このあと小さい子と合流するけど
それまでは何も文句を言わず付き従うように。
いつまでもこんな気分で学園祭を歩くつもりなんてないから。
立夏のネタバレで先に知らされたサプライズ計画。
考えたけど、本番間近になって配役の変更はさすがに無理だからって言ったら
そうだよね、練習どおりが確実だよね、
氷柱ちゃんは意外と急な事態に弱いもんね、だって。
どういうこと?
別に私は、苦手だから嫌だというつもりじゃないの。
ただ、普通に考えたら今までどおりが無難というだけで
やろうと思えばできないわけないじゃない。
ちゃんと説明したのに
それでも疑って、本当に? 無理だよ、なんてしつこいから
なんなら、実際に演じて証明してもいい。
いきなり配役の変更?
お姫様役?
やってやろうじゃないの。
そこまで言われて引き下がれるものですか。
この天使氷柱に不可能なんてありえないわ。
よく見ておきなさい!
って。
……
劇は完璧だったでしょ?
ただ、後で考えたら
うまく乗せられたような
まんまと策にはめられたような
そんな気が少しだけしないでもない……
ええ、きっと考えすぎよね。
さすが氷柱ちゃんだって大評判だったし。
最初の予定とは違ったけど
とても自分が演じるとは思わなかった、愛を長々と伝える恥ずかしいお姫様役も
なんなくこなせる自分の才能が怖いくらいだわ。
それだけ。
いいわね。
もう、この話はおしまいよ。
あなたのご主人様の恐るべき才能に対する畏怖だけを心に刻んで残しておけばいいの。
劇の内容なんてもうすっかり忘れてしまったわね?
ほら。
私が行くというんだから、黙ってついてくればいいの。
あの劇の内容は、
全部お芝居だから。
誰かに伝えたかったわけじゃない。
私なら、ぜんぶ想像だけで完璧な脚本を作れるの。
好きになった人がいるからなんだ、
王子様のモデルもすぐわかったよ、って
クラスの友達はみんな節穴の目をしているわ。
いったいどこの誰がこんな人を好きになるっていうの。
そんなわけないって
あなたもちゃんとわかってるでしょう?

・真璃
たこ焼き、おでん、焼きそば、お好み焼き、
イカ焼き、りんごあめ、チョコバナナ、わたがし、
ついでにヨーヨー。
さっきまでの西洋風のお姫様は
すっかり浴衣が似合いそうな庶民的な女の子に早代わりね!
あーあ、美人さんだったのに。
いえ、今でも美人な氷柱お姉ちゃまだけど。
お姫様は
お祭りを楽しんでる?
マリーたちはまだ買い物をしていないの。
プラネタリウムと占いの館にある軽食を見込んで
食券はとっておいてあるのよ。
でも、食べきれないみたいだから分け合いましょ。
一人で全部なんてもったいないことしないで
小雨お姉ちゃまから、あーちゃんまで
この人数で分ければ大した量じゃないわね。
フェルゼンも大変ね。
見た感じでは、どうやら氷柱お姉ちゃまが
逆らうな、みたいにかわいいおどしをしかけたのではない?
食べきれないとわかっていても
フェルゼンの愛情を感じたいのよ。
舞台の上のお姫様とは別人みたいだけど
女の子だったら好きな人に甘えてみたいのは、
高貴だからとか、美人だからとかいっても変わらないわよね。
歯に青のりも挟まるもの。
女王だってそう。
わがままをいっぱい言ってみないと好きな人の気持ちを確認できないような
ちょっといいすぎてしまったかもって不安になる感じ、わかるわ。
氷柱お姉ちゃまがどんなふうに誘ったか、想像がつくわよ。
学園祭を二人で回るデートが楽しみでうずうずしちゃう、
お兄ちゃん大好き!
なんてこと、なかなか言えない難しい年頃だもんね。
きっと、大好きなお兄ちゃんにどうしてもついてきてほしくて
ちょっと厳しく当たっちゃって
今さら嫌われてないか不安になって、わがままをきいてもらえるか確認しているの。
それでまた自己嫌悪に陥って、また素直になりにくい気がして。
細かいことなんてどうでもいいのに。
あの劇で演じていたように
好きな人に好きって言うだけでいいの。
現実だと相手の返事が怖くなってしまうなんてね。
若い女の子なら、そんな時期だってあるわよね。
かわいかったなー、あの時のお姫様。
氷柱お姉ちゃまの本当の気持ち、伝わってくるみたいだったわ!
え?
劇の話はしないほうがいいの?
そうね、変にへそを曲げられても困るものね。
今日は一生懸命みんなが準備して
待ちに待った文化祭の日。
フェルゼンたちがどれだけがんばったか、きっと全部じゃないけれど
マリーはいっぱい見て、たくさんの活躍をわかっているつもり。
今日はみんなで楽しみたいもの。
残念だけど、あんまりからかうのはやめておいてあげましょう。
氷柱お姉ちゃまが上手に伝えられないみたいだから
しょうがないからマリーが言ってあげる。
だって、マリーは相手の返事だとか
嫌われたら、とか思って怖がったりしないの。
フェルゼンにはこの気持ちが届くはずだって
根拠も何もなくたって、そういうものなんだと信じている。
もしも、伝えた気持ちの性でぎくしゃくすることになってしまっても
素直になれなくて、好きだといえないなんて
そんなことはどうしたってできない。
好きだと思う気持ちは、いくら隠そうとしたって
どうせ、どうやったって伝わってしまうものね。
マリーは怖くなんてない。
だから本当の気持ちを全部伝えてあげられる。
もうフェルゼンは知ってると思うけど
マリーはいつもフェルゼンのことを愛しているわ。
いままでも、これからだっていつまでも永遠に変わらない。
氷柱お姉ちゃまの愛情表現がちょっと面倒くさくても
フェルゼンのことが好きだってマリーにもわかるのよ。
だから、ちょっと困らされてしまっても大目に見てあげてね。
それから、ちゃんと言ってあげた?
氷柱お姉ちゃまに、大事なこと。
嫌がるような顔をするかもしれないけど。
この日のためにがんばってきたんだから
絶対、フェルゼンが言葉にして伝えてあげたらうれしいはずだわ。
氷柱お姉ちゃまが一生懸命練習して演じた
お姫様がとってもかわいかった、
がんばったね、って
言わなくても伝わっているかもしれないけど
ちゃーんとはっきり口に出さなくちゃね。
そのほうがうれしいに決まってる。
素直な気持ちなんだから
氷柱お姉ちゃまだって、ちょっと恥ずかしくたって、
そういつまでも怒ってなんかいられないわよ。
それから、フェルゼンも
今日のためにがんばってきたものね。
お疲れ様。
クラスのおばけ屋敷の様子はどう?
こういうの苦手そうなヒカルお姉ちゃまに任せっぱなしでは不安だと思うの。
ええ、わかったわ!
もしも氷柱お姉ちゃまがまだ甘えたりなくてフェルゼンを話したくなくても
どうしてもクラスに戻らないといけない用事があるなら
こっちは受け持ってあげる。
大丈夫よ。
あんなにいっぱいおごってもらえて、そろそろ氷柱お姉ちゃまだって
厳しい顔ばっかりしていなくても嫌われない頃合かなって
迷っていると思うし。
きっともうすぐよ。
大好きな下僕の働きを、認めてあげるのも。
一言だけでも、精一杯に。
そしたら、少しだけ本当の気持ちをまっすぐに届けてくれた勇気を
フェルゼンは難しい駆け引きは何もなしで飛び跳ねて喜んでいいと思うわ。
あんなに素直な気持ちでお姫様を演じたのに
舞台を下りて目の前に向き合ったら、ぜんぜんそんなふうになれないなんて、
氷柱お姉ちゃまもいつまでも怖がりで、困ったお姉ちゃまね。
でもこんなふうにしてちょっとだけ言葉にしながら慣れていくわよね。
顔を合わせてしまうと、うまく言葉にできない
そんな時期があったって
ずっとずっとこれからも大好きなままで、いつまでも気持ちは隠しきれないんだもの。
もうすぐ氷柱お姉ちゃまも、ほんのちょっとは素直になる。
いつになるかは知らないけど、その時が来るまでは
フェルゼンは、素直にまっすぐ愛を伝えるマリーだけのものね。
氷柱お姉ちゃまがどんなに素敵なお姫様になって、ライバルとして争うことになったって
絶対に負けないんだから。
フェルゼンに一番誰より愛しているって言葉を贈るのはマリーなの。
いつか、強大なライバルたちと競い合って
この愛を証明するときが楽しみね。

・ヒカル
あ。おかえり。
ここは家でもないのにおかえりはちょっと変な気がするけど
うちのチビたちはどうだった?
分けてくれたって?
氷柱が。
そうなのか。
氷柱は、いいお姉さんなんだな。
私にとっては、まだ小さい妹だけど
大勢から信頼されてるもんな。
劇でもかっこよかったし。
……
ううん、なんでもない。
ただちょっと思ったのは
私もさっきまでおばけ屋敷で
きっちり顔色の悪いメイクまでして、おどかす役を任されたんだけど
ばーって出て行ったら。
……さすがに、さくらの絵本みたいに
ばけばけばー、だとおかしいかなと思って。
かといって、わおーってうちのチビたちを脅かすみたいに出て行っても
たぶんそれは幽霊じゃないよな、
お客さんが目の前まで来て急に戸惑ってしまった。
そういえば練習の時は、がおーってふざけて
本番ではしっかりね、って笑ってもらったものだけど
他のみんなは練習ではどんな声を出していたかな。
幽霊らしいうらめしそうな演技をしていたけど
うらめしいって……
どうやるんだっけ?
いざ自分でとなったら、頭が真っ白になって
何も思いつかないまま勢いで飛び出したら
ばあーって。
……
今思い出しても、
いったい私は何をやっているのかと
まったく意味がわからない行動だった。
おばけだけど……
驚かないよな。
ばあーっ。
こう。
で、そこにいたのは、私のことを知ってる後輩だったから
すぐばれちゃって。
ヒカル先輩が!
おばけだなんて!
こんなに近くまで顔を寄せて驚かせてくれるなんて!
感激です!
お友達も連れてきます!
絶対また来ます!
みたいな……
喜んでもらえてよかったけど
たぶんこれは、おばけ屋敷の楽しさではないよな。
そのあとしばらく盛況になったのは
私目当てのお客さんばっかりで
結局怒られてしまった。
もう、ヒカルちゃん!
驚いてくれるお客さんがいなくなったじゃない!
リストラです!
そんな経緯で、
メイクもすっかり落として
普段と変わらない学園祭らしくない制服で
今はこうして受付を担当しているんだ。
まさか自分が、まったくおばけのできない体質だったなんて……
将来死んだ後にどうやって化けて出たらいいんだろう。
そもそも別にうらめしくないし、化けて出ないと思うけど
ああ、ふがいないな。
はりきっておばけを買って出たのになあ。
クラスの出し物に貢献して
文化祭を盛り上げたかったのにな。
お祭りが始まったざわざわした空気にちょっとうかれていたのに
私は、じっと座ってる仕事しかできなかったんだな。
そうだ、みんなに言われたけど
お客さんを呼ぶ力だけはあるようだから、
あとで学園祭を見て回るときはおばけの格好で歩いてほしいって。
これからうちのみんなに合流しようかと思ったけど
おばけのままではさくらがびっくりするだろうか?
そういえば、観月が気になっていたらしい古本バザーはもう行ったのかな。
毎年あのあたりだけ人気が少ない静かな空間なんだ。
怖がってしまわないか?
今年は氷柱が付いていてあげるみたいだから
別に、怖いメイクをしたままの私が一緒に行動しなくてもかまわないかな。
毎年の学園祭では
見に来てくれたうちの小さい子たちを楽しませてやろうと思って
良さそうなところを歩いても
どうしても、私ばっかり有名だから話が長くなって
引き止められてしまって。
なかなか小さい子の相手ができなくなると
私が学園祭を楽しむジャマになっているような気がしはじめて。
結局、用事があるって適当なことを言ってその場を離れてしまう。
みんなを小雨に任せて
特にすることもなく、人の少なそうなところを探して一人で見て回るのが
いつもの学園祭だったな……
私はいいお姉ちゃんじゃあないんだな。
氷柱がいい子に育ってよかった。
これからはあいつに任せられるから、私は気兼ねなく一人になれる。
春風と蛍はクラスの出し物にいつも熱心だし
海晴姉も忙しそうだった。
霙姉はよくわからないな。
暇だったとしても、私が誘ったらやっぱり迷惑になってしまうかな。
今年はこれからどこを歩いて回ろうかな……
あれ?
そういえば、今はオマエがいるんだったな。
いつもは緊張した声で話しかけてくる後輩たちも
オマエと歩いていると、まず最初に
その人は誰なんですか!?
と、厳しい顔で迫ってくるけど
家族だって答えたら、それで納得して
でも、そのままなんとなく黙りがちになってしまう。
やっぱり長い間女子のほうが多い学校だから、男子に慣れていないのかな。
あの子たちには悪いけど
ひょっとしたらオマエと回ったら
今年は普段より自由に学園祭の空気を吸えるんだろうか?
そうだな。
物は試しだ。
オマエ、今日一日は私の魔除けになる気はないか?
ずっと近くにいてくれたら
もしかしたら私にとって今までで一番、文化祭を楽しめる日になるかもしれない。
一番というか
今日こそは、生まれて初めて、
普通に文化祭らしい体験ができる……
なんだかそんな予感がしてきたぞ。
まだ少し時間は早いかもしれないけど
今日こそ模擬店を回っても
私だけのための特別なメニューばかりじゃなくて
他のみんなと同じ普通の焼きそばを売ってもらえるかもしれない。
一緒に食べるんだって、オマエの分と二人分を頼んだら
わざわざ特別メニューなんてこと、
きっとないもんな。
オマエは普通の
私だって……
たまには、普通のどこにでもいる生徒みたいに学園祭を回ってみたかった。
いいだろうか?
今日は一緒にいてもらっても。
もしも、オマエがそんなふうに私に魔法をかけてくれたら。
って、これはさっきの氷柱の甘い物語の続きみたいだ。
こんなふうに影響を受けるなんて
私の柄じゃない──けど
普通の高校生なら、甘いラブストーリーに少しは影響を受けるものだよな。
たまには、誰でもするようなことをして過ごしてみたかった願いが
今日は叶うだろうか。
オマエもどうせこれから春風たちのクラスを回るんだろう?
だったら一緒に行こうよ。
途中で気が向くままに寄り道をしてもいい。
もう、行く先々で呼び止められたりしないで
学園祭を気兼ねなく見て回れる
今日はそんな日になる、
そうだよな。
受付はすぐに代わってもらえるし
オマエがおばけ屋敷のおばけを交替するのも
午後からでもかまわないって言ってた。
小さい妹たちが大勢来るのを知ってるし、気を使ってくれたんだろう。
客入りが収まる午後なら、うちの大人数がおばけ屋敷に押し寄せても問題ないし。
チビたちと合流するまでしばらく二人でいようよ。
そろそろお昼が近いから
まずは私たちも腹ごしらえをしてさ。
大丈夫、ついて来てくれたらお礼に私がおごるから。
さあ、行こうよ。
今日は、どこにでも行けるんだ。

・霙
なんだ、ヒカルと一緒にいたのか。
ヒカルはあまり文化祭が好きじゃない気がしていたんだがな。
なにしろ体育祭ではりきるものだから
もしかしたら脳まで筋肉でできているのではないかと
半分本気で心配していたんだ。
意外と普通だったんだな。
しかしオマエは今日、
同じクラスだからヒカルと歩いて回るというのか?
私なら、文化祭の出し物をだいたい知っているし
オマエも喜んで付いてくると予想していたが。
他の誰にもできない楽しいことを教えてやってもいい。
それはもちろん、
なんでもおいしく食べてくれる姉に、自分のお勧めを紹介してやって
和むという何よりの喜びだ。
そうか、ヒカルがいるのでは予算も増えすぎる。
私一人に尽くす文化祭と言うわけにはいかないな。
うん、ヒカルも私のかわいい妹だから
この日を好きな人と歩ける喜びを奪わないでいてやろう。
もう一人付いてくる人がいるのは、まあ気にするな。
私も今日、オマエと
事前に調整しておいたから。
クラス発表の学校新聞なら
今日になって、受付する係は暇だから
号外を刷って配布すれば宣伝になると思いついたようで
もちろん私も、それは考えていたから
当日に何か突発的な企画が始まったら、それは希望者に全部任せるということで
あらかじめ機材も準備して、もしもの場合は役に立てて暮れと伝えてある。
これで当日はクラスに戻らずにぶらぶらしていても平気だし
先を見越した周到な準備がみんなから感謝される一石二鳥の計画だ。
え? もっと前に計画を出しておけば
当日になったばたばたしないで済んだだろうって?
そういえばそうだな。
ああ、うっかりしていたな。
しかし、そのうっかりのおかげでこうしてオマエと文化祭を歩く時間が取れたのだから
人生はいったい何が幸いするかわからないものだな。
それから生徒会の仕事は
もう今までだいぶ忙しく計画を練って
オマエたちの面白おかしい姿を見ることができるよう、準備をしてきたので
当日はそれぞれを担当する生徒に全部任せても問題ないように進めてある。
何もかも一部の人が決めて運営したのでは
生徒全員で作り上げる文化祭ではなくなってしまうからな。
もしトラブルが起こっても、それを仲間たちで協力して乗り越えるのも大事だ。
ときにはいがみあっても、今日の文化祭を楽しむ目的が同じなら
失敗だらけでもいい。
学園生活の大きなイベントで学ぶ大切なことは数限りないはずなんだ。
生徒会はひたすら裏方に徹するのが役目。
何もでしゃばる必要はない。
私が受け持った今日唯一の仕事は、
生徒会の腕章に、妹たちと同じ案内係りの札をつけて歩いて
何か困っている人がいたら、声をかけてもらうのを待つだけ。
でも、それだって学校外の人を相手にする役目になるだろう。
生徒たちは、それぞれがこの文化祭での責任を自然に意識するように
進んで自主性を発揮できるよう全ての準備に意識してきたつもりだから
あまり生徒会役員を頼りにする人もいないと思う。
もう文化祭は生徒会の手を離れて、転がりだしている。
今日は学校の全員が、自分たちだけで作り上げるお祭りなんだ。
一人一人にその自覚があると私は信じている。
そうなっている今日を思って、今まで努力してきたんだ。
まあ、生徒会のメンバーが忙しそうに駆けていく後ろ姿に声をかけると
今日は会長と遊んであげている暇はないから
せめて少しでも役に立つように、腕章だけは外さないで
そのへんを見回ってきてください!
と、なんだか厄介払いされたような気もしないでもない対応だ。
まあ、お前と文化祭を歩ける喜びに比べたら
ちょっとひっかかることがあっても、そんなものは宇宙の地理に等しい。
ところで、今日の開会式の話はちゃんと聞いたか?
生徒会主催のイベントも、もう私とは関係なく動き出した。
学校のどこかに隠したお宝券を見つける宝探し。
一度だけ食券代わりに使えるほか、
もし見つけ出した人には、後夜祭で何かいいことがあるはず。
見本の券はこれだ。
表には輝く金色の宝の文字が大きな丸の中に、裏側は白い紙。
広げても手のひら大くらいしかない
どこにでも隠せそうな大きさだが
必ず、誰にでもすぐ目に付く場所にさらけ出されているという。
隠した者たちは自信を持って約束している。
そうだ、実は私もどこにあるか知らない。
見つけたらどんなごほうびがあるのかも任せてある。
やはり、お菓子の詰め合わせかな。
定番だからな。
よし、
これを探すために
学校中を橋から端まで歩き回らねばならないかと思うと
食べ歩きにも気合が入るな。
この大きさでは、逆にチラシや張り紙のような大きなサイズの場所に偽装することはできない。
裏側は白紙だから、こちらを利用して隠した可能性はありえる。
白紙の面に何かが書いてある可能性は、隠した人間も否定していない……
というか、今日の発表の時はあからさまに匂わせていたな。
うーん、食券や入場チケットなどに紛れ込ませるなら、関わっている人の協力が必要か。
宝探しに参加できないようになってしまうな。
隠した券は一枚きりではないが、多くもないという。
まあ、歩いて回るうちにひらめくかもしれない。
私にとっては、食券やお菓子詰め合わせよりもこの楽しい時間がごほうびだ。
もちろん、もっとたくさんごほうびがあっても何も問題ないな。
体にエネルギーを詰め込めば、頭のめぐりも良くなるだろう。
心配するな、ヒカルもいるからまとめておごれなんて言わない。
おこづかいを節約する名目で、ひとつをオマエと分け合うのも夢だったんだ。
今日は難しいことは何もかも忘れて楽しもうと思う。
お前も今のうちから覚悟を決めておくんだぞ。
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