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吹雪の偽日記

『旅する夜』

昼の12時頃から目立って降り始めた雨は
私の家族たちの帰宅時間に渡って降り続いたため、
今日の夜は帰宅時の寒さが何度か話題になりました。

また、それ以上に多く聞かれたのは
雪の話題。
より精密に言えば、
雪の降る時刻に関する話題です。

夕方を過ぎても雪にならない天候に、
不満を持つ姉妹もいたようです。
キミはそれほど不満はなかったようですね。
やはり、あまり雪は降らないほうがいいと思いますか?
電車が止まる心配もあります。
家族が夕方の天気予報に釘付けになっている最中に、
関東平野の一部で五センチ、関東北部では十センチ程度の積雪が予想されるとの予報に
このあたりは雪遊びができるほど積もらないと嘆いた立夏姉を
慰めているときのキミは、
できれば一緒に遊びたかったらしい発言もありました。
積もるほど降らないことが予想できていたから
今日の天気を容易に受け入れたのでしょうか。
帰宅時の足や、寒さの不安よりも
家族と遊べるかどうかが基準である様子は、
キミにとって雪はどのような解釈で受け止める現象なのか、
そのような基本的な部分も未知であることを知らせる。
今もって私に、キミが複雑な謎と疑問の凝縮であることを実感させる。
私はクリスマスの歌が苦手であっても、
キミがどのような態度でクリスマスの到来や
それにちなんだ歌を見つめているのか観察できるのならば
参加してもよいのではないか、と考えたことはあります。
いえ、しませんが。
そういえば、霙姉の話によると、
学校のハンドベル部に病気で欠員ができて、
今からでも助っ人を歓迎しているとの話ですね。
年齢も性別も不問とのこと。
合唱と協力する曲があるため、土曜日と日曜日には合同練習があるとか。
募集しているのは、練習すれば誰でもできる簡単なパートの担当だそうです。
いえ……
しません。
本当です。
それはともかく。

雪だるまが作れるほどではないとしても
木の実の赤い目と葉っぱの耳をつけたうさぎが作れるくらいなら。
明日の朝に少しは積もっているだろうと
自分の目で確認してからベッドに行きたい。
そのような期待を口にして、
お風呂のあともカーテンの隙間をあけて雨模様を見つめていた子供たち。
くっつきあって、押し合って
しゃがんで丸まって、固まりあう後ろ姿。
氷柱姉は、もうこれでちっちゃいけものたちみたいな眺めだから
うさぎを作るまでもないんじゃないか、と
よくわからない理屈で、小さい子を早く寝床へ追いやろうとしていました。
屋外の冷気が伝わる寒い窓に張り付く子たちに
せめて暖かくしてほしいと、湯気の立つミルクを運んでいたのは蛍姉。
一目でも初雪を見ることができたらと張り切っていた姉妹も
ひとりまたひとり、眠り込んだくたくたの状態で部屋に運ばれて行き、
もし降ったら、寝ていても起こしてねと話し合ったことを思い出しながら
最後に残った私が、このリビングのカーテンの隙間から
ついに雪に変わりはじめた天候を見ています。
今年も私たちの住む場所に、初雪がやって来ました。
熱い飲み物が苦手な私に、
風邪を引かない栄養をとるように用意されたはちみつ入りのレモネードは
何度かのおかわりのあと、
蛍姉の就寝後の今、もう空のカップのどこにもありません。
約束をしたと言っても、雪を待っていた子たちを今から起こして回るのは問題でしょう。
この日記を届ける頃には、私はベッドに入っていると思います。
蛍姉に注意されたとおりに、
カップの片づけを済ませ、
歯磨きももう一度きちんとしてから
布団をかけて暖かくして休んでいるはずです。
あるいは、この日記を読んだキミが
私を探しにリビングに来ることを期待して
もうしばらく、この場所に残っているかもしれません。
その時のために用意する飲み物は
私に合わせてレモネードでいいのか
それとも、温かいミルクやホットココアなどは
こんなに寒い時刻なら私にも用意できるのか、考えています。
また、私が部屋に戻った後に
もしも後からキミが来るとしたら、無駄足にならないように
蛍姉の注意を忘れたふりをして、空のカップを置きっぱなしにして
片付けの仕事を残しておくといいのか。
ただ一人で見ているには、あまりにも不思議な思いがする景色。
雪がこんなに白い理由は、
不思議な妖精のしわざなどではなく。
観月が言うように、さくさくと雪を踏みしだいて山を行く雪女がいるからでもなく。
単に光の性質だと知っている。
光は波長によって七色の可視光線に分解され、
水がプリズムの役目を果たして虹が発生するのと比べて
雪は透明度の関係から、不完全に通過した光が混じり合い
人間の網膜に白色として捕らえられる。
説明してみればなんでもないメカニズムなのに
私が見ているこの風景は
やけに特別に思えて
誰かと眺めていられたら、と考えている。
理由はわかりません。

こんなにも特別に見える雪も、
見慣れてしまう頃には春が来て、
なかなか見ることのない遠いものになっていく。
それまでの冬の期間に
この不思議な景色に、私は本当に慣れることがあるのか、
初雪を迎えた今は、まだ正確な予測ができません。
あるいは冬の長さは、慣れるには短い時間なのか。
それとも私は、雪の夜の神秘的な眺めが気になっているのか。
雪を見た自分の中に発生している、理解できない感覚の答えを知りたいのか。
答えが出なくても、ただ誰かと話をしたいだけなのか。
雪の夜が人に特殊な感覚を与えるその理由を、私は知らない。
隣にいたらと思い浮かべる人が決まっているのはなぜなのかもわからない。
次第に多くの謎が明らかになっていくこの世界において
いまだに解明できないものがここにもあるようです。
雪に見慣れるには短いようであっても
寒さを増す季節には
私が心配するべきことは他にあるのではないか、とも考えています。
それは、雪だるまを作れるかだとか、
恐ろしい雪女の到来ではなくて、
電車が止まってしまう心配も、もうすぐ必要なのだろうけれど。
並んで雪を待っていた小さい子たちが暖かくして眠っているか
この気温を体感していると、気になっている。
であるならば、
やはり私が待つならば、温かい飲み物を作っておくべきなのかもしれない。

この日記をキミが読み終えたときに
私が存在している場所はいったいどこなのか。
いったい何を手に、その場所にたたずんでいるのか。
もしも出会えたのならば、初雪についてどんな会話を交わすのか。
私が今いちばん伝えたいことは何なのか。
あの名高いシュレディンガーの例えを思い出すまでもない日常的な風景なのに
観測者を待っている私には予想がつかない。
であるならば、私もまた量子と変わらないのか。
このような雪の夜には、霙姉が言っているように
宇宙に比してあまりにも小さな人間の存在を思えばいいのか。
雪の夜に私が話したいのは、そのことではない気もします。
明日の朝には、わずかに積もった雪も、変わり始めた雨で溶けてしまう予報。
心を奪うこの景色を離れて、ベッドへ向かう決心がつくまでの間に
果たして答えは出るのか。
そもそも、一人で考えていたら答えが出るのか。
私はそれすらも知らない。
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