アルケイディア&キュクレイン

アルケイディア&キュクレイン TOP  >  2014年02月

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ヒカルの偽日記

『2月』

2月になって
少し経って。
新年で一息ついて
ゆっくりしていた頃には
ずいぶん先だと思っていた
イベントが次々と
近づいてくる。
もうラブライブのライブの日。
ライブビューに行けたら
よかったな。
でも、妹たちを連れては行けないからな。
私たちだけで行ったら、小さい子がむくれるだろうし。
それに、このへんも大変な雪。
交通の影響も大きいし
とってもあったかくして
とっても足元に注意して
とっても気をつけて
早めの移動を心がけて、無理はしないように
気をつけてくれたらいいな。
雪はまた別のイベントにも
ちょっぴり心配事。
材料の買出しに行けないみたいだ、って。
それはまだほんのちょっと、先のことになるけど。
2月といえば
真っ先に思い浮かぶイベントは
節分!
だった、私たちの小さい頃とは
雰囲気は
ずいぶん変わってしまった。
大きくなった子が増えたから?
それともやっぱり
贈りたい相手が
この家族みんなのところに
やってきたから?
あるいは、
ただ単に
盛り上がるイベントが
いっぱいあるのが
好きなのだろうか?
いつもの年と同じように
今年も、さくらは
節分の日に
幼稚園で泣いて
帰ってきて
お兄ちゃんにぎゅっとしがみついて
ちからいっぱい
離れない。
こんなに怖がりで、
お兄ちゃんが大好きで。
守ってくれるやさしいお兄ちゃんがいるなら
それは、結婚しないと、って思ってしまって
気持ちが盛り上がることも
あるのかもしれない。
さくらをなぐさめるためだけでも
ないと思うけど
今年の節分の主役は
豆ではなく
蛍の特製、
恵方ロールケーキ。
恵方を向いて丸かぶりはできなくても
家族に幸せがやってくるように
祈りを込めた
節分が過ぎて。
いよいよ
こちらが今の時期のメインイベント、みたいに
寒い家の中にも
ぐんぐん増して行く熱気。
私は女の子っぽくないから
こういうのは得意じゃない。
でも、氷柱や麗が言い出したように
バレンタインはあげたい人だけあげればいい、
あげたくない人を誘わないと約束する
バレンタイン中止同盟を立ち上げる一員に
入るのも
そこまで不満も感じていない。
不器用にしか作れないチョコでも
なんでもおいしそうに食べる人なら
受け取ってもらえるかな、と思うし。
そこは特に不安でもない。
喜んでくれるかな、とはりきる
春風や蛍のように
手の混んだ支度をする子みたいには
私は最初からなれない。
わかってる。
ただ、
今年もバレンタインが来るんだな、
という思い。
あげなくちゃ、というよりは
ああ、
私もあげるんだな、
チョコはあげるものなんだ、
みたいな。
ちょっと適当な気がしても
まあ、
もらうほうだって
私にはそこまで期待はしていないか、
なんて。
そうじゃないかな?
本当は
チョコをあげるよりは
私だったら、一緒に体を動かすくらいが
喜んでもらえそうだけど。
やっぱり、男の子に生まれたほうが
オマエは嬉しかったかな。
同じくらいの年頃の遊び相手があって
いつでも一緒にいられる
仲のいい友達同士で。
近くにいられたら。
私たちがそんなだったら
今、もうちょっとこう
チョコでいいのかな、の感覚は
こんなふうにむずむずしないでいてくれたのか。
これからはあげる側だから
もうもらうことはない。
ただ、受け取ってもらえないとわかっていても、
それでも作ってくる子はいて、
無駄になることは知っているのに
心を込めて。
決して伝わらない気持ちが
何かのきっかけで伝わるように。
それが見ていてわかってしまうと
断るのはちょっとつらい。
本当は、チョコはあげて
気持ちを伝えるだけの思いを込める側より
受け取るほうが大変なのだろうか、
とも思う。
だとしたら、オマエも苦労が多そうだな。
たまにはあげてみるのも
一つの案じゃないだろうか。
オマエがチョコをあげたいとしたら
相手は誰だろう。
でもやっぱり
大変でも、もらいたいのかな。
男の子。
私はこれでも、男の子じゃないから
わからなくて。
どうしたら少しは喜ぶんだろうか、
私が何をしてもたいしたことができる気がしないのに
あんまり回転の早くない頭で
どうもぼんやり
無駄に考えている。
体ひとつでぶつかることができたら
いちばん簡単なのに。
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青空の偽日記

『そち』

そち!

てれびのむこうで
みはるがいうよ。
そち!

おうちのみんなが
わいわいするよ。
そち!
そちそち!

うらやまからおりてきた
こだぬきが
まいにち
おどって、うたうよ。
そち!
いま、
うわさの
そち!

そちって
なに?

おいしそうね?

たのしそうね?

あまいあじがする?
うたうこえがする?

りっかはだいすき、
そち。
いつもいう。
そちは
どっちだ?
そっち!

そっちそち!

おもしろくなる
まほう?
じゅもん?
おやつ?
おどり?
そち!

そしたらね、
おしえてもらった!
そちは
たべるものじゃないよ。
そちは
にほんじゃないよ。
そちは
こおりでおどるけど
おどってばかりでもないよ。
そこは
あついくに。
ゆきぐになのに
もえるくに。
じょうねつと
たましいが
ひとみにやどる
しんけんなほのお。
いっぱいがんばって
めだるをもらえる
ゆめのくに。

めだるは
しってる!
ゆきが
おりがみで
はい、
めだる!
ゆうなが
おりがみで
ぐちゃぐちゃ。
あれっ?
めだる?
あの、
めだる。
もらえる?
そち、
いいな!
そらもそちで
めだるをもらえる?
めだるをあつめて
たからものにする。
たからもののはこにいれて
しまう!
それで、
おにいちゃんがみて
そらのたからものは
めだるだ!
びっくりする!
めだるをもらえるおいわいが
はじまった。
てれびでみたよ。
おおきなおまつり、
かいかいしき。
あんまりうれしくて
こおりでおどったり
すきーではねたり
しているらしい。
これからめだるが
もらえるね!
おにいちゃんも
そちにいって
めだるをもらう?
ぴかぴか
きんめだる。
おにいちゃんに
みんなであげたい、
きんめだる。
そらもほしいな、
きんめだる。
めだるは
いいことをしたら
もらえるの。
おてつだい?
おおそうじ?
なかよく
あそぶ!
おにいちゃんと
おすもうして
かったらもらえる?
のこった、
のこった。
そらがかったら
きんめだる。
おにいちゃんは
いつでも
きんめだる。
みはるがいってた、
おにいちゃんは
いつでも
きんめだる。
すもうがつよいから!
そら、
きょうは
まけないの。
そちの

だから!
がんばれ!
そら!

春風の偽日記

『ゆきかき』

ぽつぽつと。

朝にはもう
薄く積もっていた雪景色に
舞い散るほのかなかけらが
白く、ひとつぶ。
またひとつぶ。
あなたと並んで見ていた朝の景色。

今日が土曜日で、
お休みだったからよかったね。
寄り添って話していたときは
たまには雪が降るのもいいものなのかもと
蛍ちゃんと並んで、同じ思いを目で見交わすように。
起きて来た氷柱ちゃんに
ほのぼのしている場合じゃないでしょ!
と、叱られるまで。
叱られてしまってからも
私たちの微笑みは消えないまま
リビングは私と王子様の
幸せな空間でした。
そんな時間は
今もまだ。
明日だってきっと
続いているの。

寒そうな景色に
春風がやけにおそばに近づきたかったので
あなたは困ってしまったかもしれない。
本当は雪が降らなくたって
いつでも離れずにいたい。
でも、冷え込む気温が
いつもより少しだけ近づいてもいい
わずかな言い訳になるのなら
厚く降り積もる雪だって
そんなに悪いものではないかしら?
ただ、さすがに
16年ぶり、だとか
ニュースで言われる規模になると
眺めてほのぼのしてばかりも
いられませんでしたね!
雪かき、お疲れ様でした。
いよいよ積もってきたその時
厚着で外に出てみたら
顔を叩く冷たい雪が
まるでほとんど氷の粒のように
肌に痛いほど。
積もった雪は重たくて
いい運動だと、さわやかな顔で汗を拭っているのは
ヒカルちゃんくらいのもの。
年長の子たちでいっしょうけんめい
スコップで道を作った時間。
たくましい王子様の勇姿が
私たちにとって、どれだけ頼もしかったことか。
くたびれたような笑顔も輝いていました。
みんなの分のタオルを用意しておいて。
あなたに届けて、受け取ってもらえたから
春風の喜びはどれほどのものだったか
とても伝えられないほど。
ありがとうございます。
それに王子様は
そのまま、小さい子たちの雪遊びにまで
一生懸命に付き合ってあげて。
大変だったですよね。
ありがとうございます。
いつも、私たち家族に
王子様が届けてくれる
かけがえのないもの。
今日もまた
あなたが一緒に過ごしてくれたおかげで
いっぱい受け取れました。
いつもいつも
本当にありがとうございます。
王子様。
あなたが私たちの家族でよかった。
こんなに素敵な男性が
春風の一生を捧げる運命の人でよかった。
とっても冷えてしまった日でしたけど
あったかいメニューをがんばって作るので
いっぱいあったまってくださいね。
こんな日に、ほっとするのは
やっぱり、おうどんやラーメン、
それにおそばかな。
去年の大晦日からかな。
年越しそばがきっかけで
おうちでは、おそばが好きな子が
増えたみたい。
2月になってもリクエストがあります。
かけそばはあったかいし
トッピングもいろいろ合いますものね。
ずっと飽きないでおいしく食べられる
おそばを作り続けられたなら。
春風が心から愛を込めて
あなたのそばで。
なんちゃって。
もうすぐバレンタインですけど
こんなにおうちでおそばがはやっていると
蛍ちゃん、
まさか……
いえ、さすがにそんなことはないですよね。
どうなるかは春風もまだ相談してもらっていないから
わからないのですけど。
春風のかわいい妹の蛍ちゃんですもの、
きっと愛のこもったお料理になると思います。
ちょっと不安はあるけれど
そこもまだ春風の小さな妹だと実感できるようで、かわいらしいの。
でも王子様は
春風の弟であっても
かわいい人だなと時々は思うことがあっても
春風が一生を捧げて
いつまでも、どこまでもおともをすると
心に決めた人。
もしも小さい頃から一緒だったとしたら
王子様ももしかしたら、春風のかわいい弟だったのでしょうか?
ううん、王子様は生まれたときから
春風の王子様だと決まっていた気がするな。
今年も、春風のチョコには期待していてくださいね!
世界で一番の愛を込めたら
チョコをかじるひとくちで
気持ちをあなたに伝えられるかしら。
知られてしまったら
恥ずかしいかもしれない
春風の気持ち。
でもなぜか、伝えずにはいられない。
隠していたくても
春風の中にはおさまりきらずに
あふれてしまう。
王子様、
春風は必ずおいしいチョコを作ります。
愛のこもった
立派なチョコを
あなただけの素敵な笑顔で受け取ってもらえるように
がんばって作ります。
春風のバレンタインは
全部、あなたのためだけにあるの。
きっと、バレンタインだけではないのだろうけれど。
料理の腕も、胸いっぱいのこの心も、あなたに届けるために
輝かせていきたい。
どうか、春風のあげたい全てを
できるだけ早く
なにもかも。
残すものが何もないほど
受け取ってくださる時を
春風は待っています。

立夏の偽日記

『世界一』

世界で一番かわいいコスチュームは
なんだろう?

世界一かわいい
オニーチャンもだーいすきな
リカが
本当にオニーチャンの世界一になるために
気合を入れるなら
いちばん似合うのは
どんなファッション?
世界一の証明の
メダルよりも
魅力的で
なりたい、
オニーチャンのためだけの
世界一。
いちばん憧れのひと、
その心を
ズンバラリと
射止めるには
どんなふうに着飾るのが
ふさわしい?

やっぱり
お人形さんみたいな
ドレスかな。
フワフワ。
ヒラヒラ。
頭の先から
凝ったデザインは
はたして、どんな色?
金色、
虹色、
見たこともない
ピュアな純白で
あなた色に染まります!

それとも
わりと和風がいいかな。
しゃなり
しゃなりと。
恥ずかしがりの
御簾の向こうに
扇を広げた
ツインテールのシルエット。
雛祭りにはまだ早い気がしても
気にしないで
いつでもかわいい
日本の伝統を身にまとって
すました、
いいお顔。

もしかしたら
やっぱり
メイドさんに
おつかえしてもらいたいタイプかなあ?
お帰りなさいませ。
さらりと上着をあずかって
そっとスリッパを差し出して
お風呂が沸いておりマス。
ご用があったら
お申し付けください。
お茶でも
お食事でも
それともやっぱり
わたし?
うーん、
メイドさんは見たことないから
よくわかんない!
新婚さんなら
それなりのハートならもう
ふたりぶんが
ここにあるのにね。
だんなさま!

となると
どうしても、ラブラブが
いちばんかなあ?
ペアルックとか……
あなただけのアイドルとか。
この歌は、
ステージから、たったひとりに伝えるためだけに。
とか。
いや、いっしょうけんめいなアイドルが好きかなあ?
恋の衣装は
なかなか決まらないネ!

オニーチャンが
ライブビューイングが気になって
当日券を調べていた姿を
リカも見ちゃった。
でもやっぱり、みんなでは行けないから
あきらめてるのも見ちゃった。
リカ、本格的にがんばってきたアイドルには全然かなわないけど
元気になってもらうためなら
うたったり
おどるもん!
お背中をお流しするのもいいかな?
木花の一部だったら微妙にアイドル的な人気があるかもしれない
リカをひとりじめできるのは
オニーチャンだけ!
リカの24時間を、すべてうばってね。
たかが授業なんて
愛する二人のジャマは
できないって!

今週にいよいよやってくる
愛の祭典、
バレンタイン。
なんて
オリンピックに便乗した表現をしてみたりして。
今年も楽しめたらいいね!
どんな服で
ばしっと決めたら
まさか去年までの楽しいバレンタインだって追いつけないくらい
今までにない体験の
最高の思い出が期待できるかなあ?
ついに
オニーチャンとリカの間に
どんなことが起こるんだろう?
心からの手作りチョコレートが届ける
本気ひゃくパーセント愛の気持ち。
ぜったい伝わる。
信じてる!

と思って
麗ちゃんも、普段なかなか言えない
気持ちがあるに決まってるし
チョコつくりを教えてあげる、
リカいいおねーちゃんだなあって
誘ったら
すねて
部屋に戻って
ふて寝しちゃった。
荷物をまとめて
ほっといて!
これ以上困らせたら
出て行きます!
って、
着替えを詰めた旅行カバンを
バリケードにして
ベッドで向こうを向いちゃった。
うわーん、
リカよかれと思って誘ったのに
ごめんね麗ちゃん!
オニーチャンも
麗ちゃんのこと見てあげて
やさしくしてあげてね。
本当に出て行ったりは
さすがにしないだろうけど
リカは心配しすぎて
めずらしく眠れない夜を過ごしそうだヨ!
眠れなかったら
こっそりお部屋に遊びに……
じゃなくて
相談に行ってもいいカナ?

夕凪の偽日記

『冬のマホウ』

寒い日も
マジカル。
ぷるぷる
凍えそうでも。
手のひらをすり合わせながら
うわー、
あったかいところにいたいな、
と思っていたって。
気がついたら
夕凪はミラクル。
いつのまに!?
雪を転がして
手袋を放り出して
雪だまを丸める手は、きんきんに冷えている。
きゃー、
たのしい!
こんなに寒いのに、
なぜ平気?
どこから出てくるのか
夕凪は自分でもわからない
あふれる元気!
これは、やっぱり不思議な力だよね。
そこらじゅう走り回って
遊んでいたら
手袋、
消えちゃった。
ええー。
あんなに目立つオレンジ色が
見つからないなんてことがあるのかなあ。
これは、マジカルなできごと?
それとも、夕凪が不注意なだけ?
もしかしたら
夕凪がまだ知らない謎のちからが
雪の積もった通学路には
いっぱいある?
怒られちゃったけど
しょうがないじゃん。
雪が積もっていたんだもの。
歩道の雪は溶けていても
はしっこに残っているんだもの。
そんな日には
小学校はもう
ワンダーランド。
きっとね、
絶対に、雪の妖精が
そこらじゅうにただよって
手招きしているんだから。
ほら、
こっちだよ。
雪があるよ。
遊んでよ!
いっぱい夕凪たちに遊んでほしくて
目に見えないのに
ふわりふわり
そこらじゅうにいるのがわかるよ。
こんな日には
たくさんのマホウが
起こるのです。
子供が元気になるマホウ!
それから、
お兄ちゃんが
ユキちゃんの隣の部屋に引っ越してくるマホウ!
夕凪も一緒におやすみしてもよくなるマホウ!
と思っていたら
リビングはさむーいさむーい
さむいから
ダメだよ、って言われた。
夜になったら
厚い布団にしっかりくるまっているお兄ちゃんじゃないと
すぐかぜをひくよ!
強いお兄ちゃんでも心配なくらいなのに
麗ちゃんも困ったね、って
お姉ちゃんたちが言ってるうちに
麗ちゃんは学校から帰ってきて
抜き足差し足で
小声でただいま。
夕凪が呼んだら、しーって
昨日の夜から隠れているお兄ちゃんの部屋に
また引っ込んじゃった。
ゆうべ夜おそく、お兄ちゃん追い出されちゃったんだってね。
ユキちゃんが、今日も寂しいと思って目を覚ましたら
すぐ隣のお部屋にお兄ちゃんがいたから
えっクリスマス?
プレゼントが届いたよ?
びっくりしちゃったんだって。
やっぱり
雪には神秘的なマホウの力ががあるんだね。
夕凪たちのお部屋にも、お兄ちゃんが来たらいいのに。
ソファが寒かったら
来てもいいよ!
夕凪のベッドに入れてあげる!
ふたりだと小さいかなあ?
だったら、夕凪と星花ちゃんが一緒に寝て
お兄ちゃんが夕凪のベッドで……
だめだめ!
さみしいから!
みんなで同じベッドで
寝たらいいよ。
麗ちゃんも、夕凪たちの部屋に相談に来たら
そしたら、夕凪たちがお兄ちゃんの部屋に行って
一緒に眠れたのにね。
こんなに信頼されてるなんて、お兄ちゃんすごいね。
お兄ちゃんにチョコレートをあげなさいって言われて
嫌になって逃げ込んだ頼れる先が
なぜか、お兄ちゃんのところ。
変なような?
でも、家族がどんなときでも
いちばんの味方になってくれる
誰よりも頼れる
かっこいいお兄ちゃん。
夕凪も、困ったときはお兄ちゃんのお部屋に逃げればいいんだね!
よーし!
いいこと知った!
でも、
バレンタインが終わるまで
お兄ちゃんにお願いして
お部屋を借りるつもりなのかなあ?
そんなにいいことをひとりじめしたら
怒られるよね?
いいことは
家族みんなでわけたいものでしょう!
とかって。
立夏ちゃんが、ひとりでついついお菓子を食べちゃったときも
だめでしょ!
だったし。
いつ出てくるのかなあ?
お兄ちゃん、いつまでリビングのソファで寝るの?
鍵のかかった部屋なんかじゃない。
声もよく聞こえない扉の向こうじゃない。
いつでもすぐに遊びに行けそうなところに
お兄ちゃんがいたら
夕凪、うれしいと思う。
だけど、何日も寒いところで寝たらいけないって
お姉ちゃんたちが心配しているの。
氷柱お姉ちゃんはね、
ユキの部屋の隣に寝るなんて!
乱暴でほこりっぽい男の人の体から
病気でもうつったらどうするの!
ちゃんと麗ちゃんを叱って、自分の部屋に返しなさい!
怒ってる。
お兄ちゃんは毎日お風呂に入ってるから、汚くないよね?
夕凪は今日みたいに
お兄ちゃんがもっといつでも、夕凪のすぐ行けるところにいたらいいから
じゃあ、今日はみんなで一緒にお風呂に入って
お兄ちゃんがユキちゃんにふさわしい男の人になるまで
ぴかぴかに磨き上げちゃおう!
寒いソファにいても
一晩あったかく眠れるように
お風呂でよーくあったまろうね!
もし、どうしても寒かったら
夕凪がマホウのゆたんぽになって
あっためてあげる。
あとで遊びに行くね。

蛍の偽日記

『こねこバレンタイン』

2月のにこにこ
お楽しみ。

はじまってまもなく
3日には
せつぶん。
蛍はもう幼稚園で豆まきをする年では
ないけれど。
お兄ちゃんが
鬼のお面をつけたら。
ふだんたくましいのに。
いつもは私たちの
かっこいいお兄ちゃんなのに。
それは、こわいこわい鬼のお面。
なのだけど。
家族みんなのために鬼になってくれて。
この日のために
虎柄のパンツをはいてくれたら
なぜかかわいいな、とは
変な感想?
ごめんね、お兄ちゃん。
蛍も童心に帰って
お兄ちゃんに豆をぶっつけて。
おにはそと!
ふくはうち!
おにいちゃんはうち!
みんなはうち!
かぜはそと!
ちょこはうち!
まほうもでんしゃも
よいこもいたずらっこも
みーんな、おうち!
きゃあきゃあ言っていたら
もりあがって
いっぱいぶつけてしまいましたね。
蛍、節分でこんないい汗をかくなんて
意外でした!
あいたた、あいたた
これはたまらないな、
逃げ回るお兄ちゃんを追いかけて
息をきらして喜んで
ほてった肌、
自然と笑顔も汗ばむよう。
冬のさなかに手でぱたぱたするほど
熱中するなんて
蛍は素質があったのでしょうか。
いえ、
えっと、
スポーツマンの素質?
豆まきがオリンピック競技にあったら
ホタ、2020年には
テレビの向こうから
節分だからこその楽しさを教えてくれたお兄ちゃんに
感謝の言葉をありがとうって
呼びかけるのかな?
私の家族でいてくれて
ありがとう。
みんなが家族でいるのは
神様が決めたことで
私たちの誰にもどうにかなることじゃないから
家族は一緒にいるのがいいのだし
感謝の言葉はおかしいかもですけど
お兄ちゃんがここにいてくれて
よかった。
オリンピックに出ることはない
こんな蛍ですが。
テレビに出たりしない
わりとぼんやりした妹ですが。
豆もぶつけてしまいます。
いつも迷惑をかけてしまいますが
お兄ちゃん、
蛍に楽しい日をくれて
いつもありがとう。
今年は、大雪の2月になったね。
小さい子たちは大喜びですけど
雪かきと、みんなの健康に気を使う私たちには
どこかてんてこまい、
でもやっぱり大騒ぎに
自然と顔がほころぶ
2月のなかばでした。
もう少しすると、猫の日もあるね!
って蛍が鼻息も荒く話題にすると
霙お姉ちゃんは不思議そうなの。
猫の日ってそんなに盛り上がって楽しむものなのか?
楽しくないですか?
霙お姉ちゃんの分析によると
うちの家族は、盛り上がれたら何でもいいのではないか。
だそうです。
なるほど。
今月9日のにくの日もそうだったし
それから、ロールケーキの日だって
全力ですものね。
蛍、なんでもいいのかな……
まあいいか。
ホタは猫の日になるまでに
家族みんながかわいくなるよう
コスプレ衣装作りをしたいな。
お兄ちゃんは、どんな猫ちゃんになりたいですか?
ホタがんばります!
きっとその頃には、麗ちゃんも出て来てくれますよね。
って、こんな言い方をすると
麗ちゃんは春が近づくと出てくる風物詩みたいになってしまいますね。
一応、ここまで気を使って
バレンタインの話題は出さなかったんだけど
でもやっぱり、恋をしてしまったら
いちばん気になる2月のイベント。
バレンタインにも姉妹でおそろいのかわいい衣装を作ったら
ますますラブラブで、思わず顔も熱くなってしまうような
ホットなバレンタインを演出できそうだと
ちょっと妄想してはみたのですけど
それは猫の日や、雛祭りのお楽しみになるのかな。
ううん、雛祭りもラブラブしようということではなくて
家族でコスプレするのはバレンタインでなくてもいいかなということですけど
でも、バレンタインのコスプレはあきらめるとして
もしもできそうなら
雛祭りでラブラブもできたらいいですね。
そのへんはお内裏様の意見を聞いて
予定を立てていくのかな?
よろしかったら、楽しいこと何でもはりきりたい困った妹に
ご協力お願いいたします!
その前に
今の目標は、ついに間近に迫ったバレンタイン。
お兄ちゃんには、大変な思いをまたさせてしまうかもしれないですけど
大好きな気持ちを伝えたいんです。
なるべくあまり行き過ぎたりしないように気をつけるから
どうか、この日だけは蛍の限りないわがままを
ちょっとだけでいいので、大目に見てくれたらうれしい。
また私たちと過ごしてください。
麗ちゃんはどうなっちゃうんでしょうね。
せっかくのバレンタインなのに、もったいないな。
立夏ちゃんもご飯を差し入れして仲直りをしようとして。
もう怒っていない麗ちゃんとお話したけど
でもやっぱり、バレンタインまで隠れているつもりなんだって。
勇気が出ないのかな?
それとも、女の子らしい告白が苦手なのかも?
もし、麗ちゃんがバレンタインに参加できそうになかったら
蛍がその分がんばって、
お兄ちゃんにいっぱい愛をお届けします!
家族揃ってのラブラブコスプレは、今からでは実現しそうにないから
そのぶん、チョコに力を入れて
蛍は試行錯誤をしていきます。
大好きなお兄ちゃんに、
体の奥、おなかの中からも愛を伝えられるように。
お兄ちゃん、
バレンタインの日のお料理は
蛍の特製、
世界のどこにもないものにしたいの。
こんなにたいした自慢もない妹の蛍でも
お兄ちゃんを思う気持ちは
誰にも真似ができないんだと
蛍だけの気持ちを、
込めることができたなら。
愛が届くなんていう、奇跡みたいな
こんなに素敵な日なら、できるかな。
楽しいバレンタインになるように、はりきるね。
みんなが幸せなバレンタインになるといいですね。

吹雪の偽日記

『ウェディング』

現在はまだ発見されていない科学法則が
あるとして。
その法則は、私たちの生活を大きく変える
根本的なものだとして。
私たちは今も、誰もが気づかないうちに
自然と、未知の法則に従っているのだとして。
やがて新しい知識が増えたときは
こうして続けている日々の当たり前の暮らしで
かけがえのない喜びを知って
普通に暮らしていく
ほんの小さな助けになるのだとして。

仮にそのような場合があるとしても、
今の時点では
不思議な力の存在を前提とした考え方は
全てに根拠がないか。
あるいは、慎重に時間をかけて
大勢の手によって試験を重ねる必要があり
実際の現象として確認するのは難しい。
おみくじの大吉や四葉のクローバーが
必ずしも幸福を運ぶと断定はできない。
ウェディングケーキにクロカンブッシュを用意したとして
望んでいるほどに子孫繁栄が叶うと、誰も保障ができない。
バレンタインに思いを込めたチョコレートの
その全てに
愛を伝える奇跡の力が宿っているかどうか
知る物はどこにもいない。
そもそも、チョコレートは日本だけの風習だそうで
なぜここまで日本でチョコレートが定着したのか考えてみると。
全国で気温が下がる季節であり、
体温の維持にカロリーを効率よく摂取できる食品が
好まれるということなのでしょうか?
チョコレートという食品は、極端に苦手に感じる人は
少なくとも、男女関係の成立に関心がある世代であれば
あまり多くないようだし。
贈り物としては無難な部類であるといえます。
また、恋人に本を贈るイベントが定着しなかったように、
食事は人間の活動の重要な部分を占めており、
やはり興味を持つ人が増えるのでしょう。
キミも私から
数学の本を受け取るよりは
チョコレートを手渡されるほうが
うれしそうでしたね。
……
まあ、ともかく。
もうすぐバレンタインですが
チョコレートを一度にたくさん食べるのは
健康面を考えたらあまりよくない。
気をつけてください、
と言っても
キミのことであれば
私たち家族から贈られたチョコは
たとえ少々怪しいものであっても
とても喜んで食べてしまうので
忠告が難しいのですけれど
言わずにはいられないので
気をつけてほしいと思います。

おそらく、チョコレート本体には
愛を伝達する性質は含まれていない。
構成する成分にも、手作りか店頭の商品か、できあがった品にも
そこには何も
魔法のような未解明の力は存在していないと予想できる。
バレンタインにやり取りされるのは
ただ純粋に
贈る側の思いと
受け取る側の揺れる心。
果たしてチョコレートによって全ての恋が叶うのかどうか
現代科学は何も説明していない。
であるのなら
何も、チョコレートを贈ったから
必ず愛の告白になると決まってはいない。
普段の生活を共にしていれば
どのように愛情を伝えたい関係であるのか
はっきりとではなくても、少しなら類推できるであろうし。
まるで恋愛感情と縁がない相手であるならば
チョコレートを贈ったからと言って、恋愛が成立する可能性は低い。
だから難しく考えるよりも
普段から信頼している家族が推奨する通りに、
まずはチョコレートを贈ってみてから判断してはどうなのか?
といった趣旨で麗姉を説得してみたところ、
そういう問題じゃない!
とのことで、話はそれっきり。
詳しい説明はなかったので
どのあたりが納得しかねたのか、
私には推測が難しい状況です。
ここまでの理論のどこに
麗姉の抵抗を呼ぶ内容があったのか。
今回は力になれなくて申し訳ありません。
キミは今日も寒いリビングで、ソファに眠るのですね。
私たちの部屋であれば、
星花姉と夕凪姉が工夫をして
ベッドを一人分くらいならあけることができるそうです。
その気になったら、いつでも来てください。
キミの体調を心配している子が多いように
麗姉のことは、家族もみんな気にかけています。
素直に気持ちを表現するには
実は、普段から絶え間ない努力が必要になるという。
そして、相手に気持ちを伝えるにはもっともっと
努力を続ける時間が要る。
失敗が続いてもあきらめるべきじゃない。
人は失敗をしていく生き物。
それでも伝えたい気持ちがあって、
自分の中からあふれていく何かがあって
止まらないのであれば。
とても難しいことだけど
いつも自分の気持ちを表現して
伝わるように努力することは
続けていかなくちゃいけない。
麗姉にも、まず最初の一歩を踏み出してほしいと
そんな意見を聞きました。
努力は続けなければいけないらしい。
私が伝えたい
自分の本当の気持ちは
いったい何なのか。
2日後のバレンタインまでには、言葉か、あるいは目に見える形にして
キミに伝えることができるのか。
それとも間に合わないのか。
当日は、カロリー摂取量が多くなりすぎるとしても
私のチョコレートを
受け取ってもらえたら
そのときは、はたしてどれほどうれしいのか。
予想も何もできない。
チョコレート作りの練習は、続いています。
上手な子も、苦手な子もいて
私が上手であるとする客観的な判断材料は、いまのところ多くありませんが
当日は。
なるべく上手に作ったチョコを届けたいと考えています。
家族の間で話題になっているように
果たして蛍姉は本当に
チョコレートでウェディングケーキを作るつもりなのか
私の観察ではわかりません。
ただ、できれば
負けることがないチョコレートを届けることができれば。

麗の偽日記

『明日は』

関東地方でも
午前から降り始める雪が
一日中続く場所もある予報。
積もる雪で
足元には注意。
公共交通機関にも影響が出て
通学や通勤の足が止まるかもしれないから
気をつけて行動するようにと
海晴姉様も予報していた。
特に、電車には大きな影響が出るだろうから
わがやの自慢の
電車好きの子は、あまり落ち込まないように
元気を出して。
と、
私は見ていないけれど、そう言っていたと
立夏ちゃんから聞いたわ。
もう!
わざわざテレビでそんなこと!
だいたい、
もっと心配することが他にいっぱいあるでしょう。
寒くなるから
体調管理は注意。
この前みたいに、張り切って雪かきをして
汗びっしょりになってしまったら
ただでさえ、大変な一日になりそうなのに
はたして体力が持つのかしら?
張り切るとなかなか止まらない性格は
家族だから似ているのか
この家にも、そんな人はたくさんいて
特に、後からやって来たはずなのに
いちばんこの家族らしいというか
どこかで見たところのある困ったところばかりというか
後先を考えないというか
なんでみんなにこんなに似ているんだろう、
と疑問で仕方がないような。
買出しの荷物持ちも
毎日の皿洗いも
お風呂掃除も
少し前の秋は落ち葉の掃除だって
いつの間にか中心になって
みんなに囲まれて
やけにうれしそうに。
明日も、疲れているんだからとか
何も言い訳をしないで
子供みたいに雪景色に飛び出して
みんなに囲まれて、はしゃいでいるのね。
そんな性格だから
あっさり自分の部屋からも追い出されてしまう。
こんな日にも、あなたは
文句も言わずに
リビングのソファで眠るのね。
いえ、
四六時中観察しているわけでもないし
文句を言わないかどうかは知らない。
みんなが気を使って、私に伝えないだけかもしれない。
それに、心の中を覗くことはできないから
実は内心では不満があるとしてもわからない。
でもたぶん、
たいして不満も言わないだろうし。
それで気を悪くしてもいないだろうし。
困っているのがわかるのに
うれしいのか何なのか
楽しそうにしているのだと思う。
今日も。
広いリビングで、
急ごしらえの布団をソファに敷いて
まるまりながら。
きっと世界で一番幸せな日を過ごしていると
何も疑っていないような
いつもののんきな顔で
憂鬱な大雪が降るのに
何もかもが待ち遠しいみたいに
明日を待っている。
旅行のとき、立夏ちゃんにつっつかれた
あの無防備な寝顔を浮かべて
眠りにつくまで
もう、あとわずかな時間。
ほんの数日前、
私が旅行カバンと自分の布団を抱えて
部屋を譲るよう要求したときに
立夏ちゃんと仲直りするように
やけに心配して。
別にけんかをしたわけじゃなくて
しばらく落ち着いたところで考え事をしたいだけだからと
そんな短い説明で。
そわそわ
心配そうに。
のそのそ
困ったように。
何度も振り返りながら
自分がこれからどうなるかも想像していないみたいに
人のことばかり気にしていたらしい
私がどうしても向き合っていく
イベントの当日が、明日にはやって来る。
あなたにも大変な日になることは
わかりきっているはずなのに。
盛り上がる女の子たちに全力で体当たりされて
一日を走りきって
お疲れで通り過ぎていく
毎年の、この日。
私だって
普段から感謝はしていないわけじゃないけど。
というか
いつも助けてくれているのでなければ
こんなふうに困ったときに、駆け込んだりはしない。
いつのまにか私のことばっかり
こんなに気にかけていて
19人も姉妹がいるのに大丈夫なのかな、
と思って
改めてじっくり観察してみたら
ちゃんと、家族みんなのことを
同じだけ気をかけているようにも見える。
その状態が、本当に大丈夫なのかどうかは
おおいに疑問だとしても
私が頼れる先を
真っ先に思いついたみたいに
たぶん、姉妹みんなが頼りにしていて
いちばん大好きな
自慢のお兄ちゃん。
もしくは、弟。
あるいは同年齢。
私の家族。
それは、みんなが日頃の思いを胸に
お世話になっている気持ちとか
感謝とか
迷惑をかけて気の毒だとか
せっかくいい人がいるんだからとか
あれこれの理由があって
チョコをあげたくなる
そんなことだってありえるわ。
家族に男の人がいなかったら。
それがこんなふうに、みんなでチョコをあげて
あげるほうももらうほうもうれしいバレンタインが
この家に訪れるような
そんな人が、ここにいなかったら
私は悩まないですんだのかどうか
一人で部屋にこもって、
ゆっくりと
長い時間、無駄とわかっていることを考えたものだけど。
いくら考えても
あなたがこの家からいなくなるわけはない。
もしかしたら、進学や就職を迎えて
別のところに住むことはないとは言えないけれど
それでも、ここはもうあなたの家なのだし
いつでも帰ってくる場所にになった。
まあ、今の様子を見ていると
家族のことが気になって当分出て行かないなんて
自分の都合で決めるのはありそうだなと
なんとなく予想してしまう。
本当に、
なぜこんなに
あっというまに、人のことを好きになってしまう
そんな人が、この世にいるのだろう。
いくら家族だからって
出会ってすぐ、
家族なんだからというたった一言で
全部が決まったみたいに
あなたは私たちを
見つめることにしたかのよう。
寂しがりやなのか
甘えんぼうなのか
心配性のようでもあり
ただの泣き虫かもしれない。
私たちを気にしている。
この世で一番大事なものであるかのように
たぶん、
うれしすぎて
自分を抑えきれないみたいに接して
愛している、
と、言っているような。
ときどき思っていたの。
こんなにあっという間に家族に馴染んで
家族がいないとひと時もいられないとでもいうくらいの人が
一人部屋になって
寂しくないのかな。
やっぱり、趣味の電車の写真集みたいなものを
一人で落ち着いて眺める時間が
こんなにいいお兄ちゃんだって欲しいのかな、
と思って
気を使って、電車の写真集を貸してあげたことは
よくあるけど。
この部屋で何日も過ごして
今頃はチョコを心待ちにしている人に
なんであげないといけないのか悩みながら
普段の生活を想像していると
聞こえてくるのは
どこかで、家族が笑っている声。
大きな声を出して泣きながら
助けを呼んでいたりもする。
くだらないことで大騒ぎするケンカの原因も
ここに一人でいたら、結構聞こえてくるものだし
その後、少し前に危なっかしいぶつかり合いをしていた子たちが
たちまち仲良く転がりあっているらしい様子も
ひっきりなしに届いてくる。
どこかわからない遠くから、
ちょっとの距離なんて関係ないと主張しているように。
もしかしたらどの声も
思ったより、ずっと近くから聞こえているのかも。
すぐにわかる。
私たちは、すぐ近くに家族がいるということ。
この部屋にいたら
寂しくないかもしれない。
きょうだいの人数が多いと
なかなか落ち着いていられないようで、普段から大変ね。
よく聞こえてくる声は
元気な子ばかりとも限らないし
落ち着きや大人っぽさとも関係がない。
ああ、また夕凪ちゃんが叱られているな、とか。
吹雪ちゃんがまた何か騒動を引き起こしているとか。
毎日ユキちゃんに遊んで欲しい子が多いんだとか。
声が届かないくらいの子も
すぐ近くにいるのが、よくわかるよ。
私の家族は今日もわいわい言っているんだって
一人で部屋にいるのもわかる。
なんだ。
寂しくなんかないじゃない。
この前、私の様子を見に来て
部屋を出てみんなと遊んでいるなんて
にやけていたわね。
ここにいたって、みんなを気にしていられるのは
あんまり変わらないじゃない。
出て行きたくなかったら、まだいてもいい。
でも、みんなが待っているだなんて
心配そうにして。
私を叱って部屋に戻しても
この部屋にいて楽しく過ごせるのは間違いないし
リビングで寒い思いをして眠るより
ずっといいはずなのに。
ここにいても、
声が聞こえてくる。
家族みんなが、
いつもいるよっていう声。
誰一人として欠けることなく。
そろって、
私のそばで
この家にいる。
みんなの声が、一人で座っているだけで
ここに届いてくる。
バレンタインのチョコレート作りに失敗している悲鳴が
だんだん増えてきたみたい。
やっぱり、失敗する子は多いのね。
私も手先は器用なほうじゃないから、
どんな失敗をしているのか、目に見えるようだわ。
きっと、何度も。
わかっているのに
教えられた通りなのに
なんで!
って、
よく聞くことだけど
人は学ぶ生き物だから
一度失敗したら、同じ失敗は繰り返さないようにできるって。
あれは間違っていると私は思う。
何度も繰り替えしている。
うんざりしても
忘れているつもりはなくても
厳しく気を引き締めているつもりで
自分が嫌になるほど
失敗は繰り返して
いつも落ち込むものだと
私はよく知っている。
それなのに、わざわざ
何を作る必要があるんだか!
わかっているわ。
上手にできないどころか
迷惑ばっかりかけてしまうことは。
チョコだけじゃない。
わがままを通して
くだらないことで泣いて
情けない思いをして
私はいつも
家族のみんなに慰められているということ。
失敗を何度も繰り返して
おかしな思い込みで
突拍子もない行動ばかりで
情けなくなっても
どんなときでもそばにいてくれる人がいる。
優しい言葉ばかりではなく
笑顔でいられるときばかりじゃなくても。
私には、どんなことがあっても
どうやっても離れることができない
家族がいるの。
つい最近、この家にやってきたばかりだと思っていたのに
いつの間にあなたは
私のわがままを何でも許してくれる
家族の一人になったんだろう。
私が無理を言って
たぶんチョコだって今年はもらえないと
あなたは知っているのに
よく、寒いソファで納得して
それが当たり前みたいに
私に優しくしていられるわね。
どんなことがあったって
決して変わることなく
家族なんだと
言葉だけじゃなくて
いつもいつも、
私が何かを告げるたびに
伝えてくれる。
触れるだけで。
どこかから声が聞こえてきたら
それは、すぐそこにいる家族だったように。
間違っていても、許している。
迷うことなく
私を受け入れている。
大事な家族の一人。
きっと、あなたが体調を崩したら
悲しむ人が多いわ。
小雨ちゃんの様子も聞いたの。
私がいつ部屋に戻ってきてもいいように
しまってあった余りの布団を用意して、ベッドに敷いて
毎日寝る前に
私の分もベッドを整えているって。
立夏ちゃんも、そのたびに手伝っているって言うけど。
まったく。
あんなに大雑把な立夏ちゃんが手伝って、
ちゃんときれいに整ったベッドメイクができるわけがないじゃない。
手を出さないほうがいいくらいなのに
余計なことばっかり。
私は……
去年のこの時期から
ほとんどお菓子作りはしていないし。
今年も全然練習していないから
明日、急に教わったくらいで
いいものが作れるなんてこと
どう考えたってありえないわ。
感謝の気持ちのつもりで
自分でも納得いかないものになると
最初からわかっているような
絶望的なチョコ作りに
不器用な私が挑戦して
喜ぶような変わった人がいるなんて、
まあ、この人のことだから
そういうことはあるかもとは
少しは思っていたけれど。
本当にそうなんだろうな、と思うようになったのは
ほんとについさっき。
あなたが今日も、
雪まで降る中、寒いところで眠っているなんて。
私には、お兄ちゃんができたんだな。
と、そう思ったのは
気の迷いかもしれないけれど
明日には。
きっと大変な日になるから。
ほら。
変なものを食べておなかを壊さないように
今からでもゆっくり休んで
少しでも体調をしっかり
万全なものになるように心がけてきたらいいわ。
私も、これから部屋に戻るから。
きっと立夏ちゃんがくしゃくしゃにしている
私のベッドだけど、仕方ないわ。
それじゃあね。
また明日。
どんなチョコを贈られるとしても、文句を言うのは、
って、あなたなら心配いらないか。
じゃあ、少しでも元気いっぱいで
明日を迎えられるようにね。
おやすみなさい。

バレンタイン1800

バレンタイン2300

さくらの偽日記

『あまいおやつ』

みんなだいすき、
かわいいもの。

なんだろな?

さくらがすきな
ねこちゃん。
かわいいね!
おしりがすらっと
きれいだね。
おめめぴかぴか
みみをつんつん
しっぽをたてて
かっこよくあるくよ。
ふさふさの
ちいさいねこちゃんが
さくらのあしにやってきて
あまえるの。
わあー!
あたまをなでてあげたいな!
あまえるのがすきなのね?
さくらも、
お兄ちゃんにあそんでもらって
あまえんぼうのさくらちゃんだね。
よくいわれます。
うふふ、
はずかしいね。
ねこちゃんみたい?
こどもだね?
お兄ちゃんは、さくらがとんでいったら
あたまをなでてくれるけど
さくらはねこちゃんじゃあないから
かけっこおそいし
あまえてばっかりいないで
おてつだいをしないといけないから
おさらをはこんで
えらいねって
ほめてもらうの。
さくらは
しっかりもの?
ねこちゃんじゃないから
かわいくない?

とってもかわいい
えほんのおひめさま。
こわいおきさきさまや
おねえさんたちが
いじわるをしても
きれいなおひめさま。
もりにかくれて
よごれたふくをきていたって
いいまほうつかいや
おうじさまは
すぐみつけてしまう!
けっこんしよう!
そうしたら、にじちゃんのしつもん。
にじこもこんなおひめさまに
なれるかな?
おうじさまみたいなお兄ちゃんと
けっこんできる?
あれ?
さくらのぎもん。
お兄ちゃんって
おうじさま?
だから、ときどき
おうじさまのふくをきているの?
にじこちゃんのしつもんに
はるかおねえちゃんもはいうよ。
そうよ、
にじこちゃんも
さくらちゃんも
もちろん、はるかおねえちゃんも
すきなひとのためなら
いつでも、おひめさまにかわるよ。
さくらのしつもんに
はるかおねえちゃんは
さくらちゃん!
そうなの!
はるかたちのおうじさまは
えほんのなかのおうじさまより
とってもやさしい
おうじさまなの。
にじこちゃんも、さくらちゃんも
しっているはずよ。
わたしたちのかっこいいおうじさまが
かぞくなんだから。
さくらがおひめさまで
お兄ちゃんがおうじさまなんだ!
かんがえていたら
ドキドキするよ。
でも、
さくら、
おねえちゃんたちに
いじめられたりしないの。
やさしくしてもらってうれしい。
おひめさまより
お兄ちゃんのいもうとで
おねえちゃんたちのいもうとの
さくらちゃん!

もっとあるよ。
かわいいね、
おはな。
ふゆのおにわは
さみしいよ。
こさめおねえちゃんが
はなたばいっぱい
おはなやさんでかってきた!
おそとはさむいから
おうちのなかにかざろうよ。
お兄ちゃんに
おひとつどうぞ。
さくらちゃんにも
ちいさなおはな。
さくらちゃんみたいに
かわいいね。
さくら、かわいいもの
だいすき!
あーちゃんも
きれいなおはながすきなのかな?
はいはいして
かおをよせて
さくらのおはなに
きょうみがあるのね。
このおはなは
さくらみたいなんだって。
かわいいね。
そしたらあーちゃん
たべようとしちゃった。
だめ!
うわーん!
さくら、おはなになるのはこわいよ!
かわいいあーちゃんが
さくらをねらっている!
おはなって
かわいいけど
すぐたべられてしまうんだね。
とってもあぶないから
きをつけて
みてあげなきゃいけない
さくらのおはなのおはなしだったの。
お兄ちゃんは
おはなをだいじにするのは
とくいなのかな?
さくらのおはなを、いっしょにみていてね。

かわいいかわいい
あーちゃん。
さくらのちっちゃないもうと。
ばあーってあそんであげると
よくわらう
あーちゃん。
さくらのおうたを
たのしくきいて
いっしょにうたう
まだおぼえたてでちょっとへたっぴだけど
がんばりやの
あーちゃん。
さくらがころんで
おおごえでないたら
つられて
すぐないちゃう
あーちゃん。
ちょっとあばれんぼうだけど
さくらのおうちには
かわいいあーちゃんが
あっばーむっちゃーって
いってるの。
みんなであそんであげたら
あばばーおちゃーって
よろこぶの。
さくらもうれしくなっちゃう
げんきなあーちゃん。
かわいいいもうと。

さくらがいちばん
だいすきかもしれない
かわいいもの。
おかし!
きれいなかざりつけで
わーってびっくりする
お兄ちゃんもすきな
チョコレート。
さくらもだいすき。
きのう、
あったまるおりょうりにして
あんまりつかわなかったから
あまったいっぱいのチョコ。
どうしようって
みんなでそうだん。
やっぱり、お兄ちゃんのためのチョコだから
お兄ちゃんにあげるのかな?
でも、バレンタインはおわって
さむいふゆに、おいしいチョコ。
みんなもだいすきなチョコは
みんなでわけてもいいね?
お兄ちゃんは、どうしたらいいとおもいますか?
もっとたべたい?
さくらがすきなものは
かわいいチョコレート。
でも、さくらが
もっともっと
だいすきな
むちゅうになっちゃう
いちばんは
ちがうみたい。
あそんでもらって
おさらはこびをたすけてもらって
さくらがこまったときには
たすけてくれる
やさしいおにいちゃん。
いつもいっしょにいると
とってもたのしい
さくらのお兄ちゃん。
かわいいお兄ちゃんじゃない
かっこいいのに
なんでかな?
もしかしたら
かわいいのかな?
さくらはふしぎで
しかたないの。
どうしてさくらは
お兄ちゃんがだいすきなの?
チョコレートを
さくらにもあげたらいいよって
やさしくしてくれるようなきがするから?
それとも
かぞくは
だいすきになっちゃうものだから?
さくらは
かわいいチョコレートと
お兄ちゃんが
だいすき!

氷柱の偽日記

『雪のあと』

このあいだの雪が
まだ溶け残って
道のはしに積もっていたり
庭をぬかるみにしたり。
場所によっては
日陰で凍ってしまって、足を滑らせる原因になったり。
困るわね、大雪は。
私たちの家族だったら
慎み深くて、かわいらしい綿雪がいたり
ドラマティックな名前であんがい情熱的な吹雪がいたりするけれど
大雪はいないものね。
いいお天気が好きな子が多い気がするのは
そんな願いを込めた名前もいっぱいあるからなのかな?
海晴姉様や
ヒカル姉様、
あさひもそうだし
麗の名前も、うららかそうな感じがする。
実際に名前どおり、その性格がまるごとうららかなのかどうかは
まあ、今は難しい時期みたいだけど
人の気持ちをわかろうとしている優しい子だってことは間違いないわね。
マリーも明るい響きの名前よね。
でも、太陽王と呼ばれたのは夫になった人の先祖だし、
いいお天気を強調している名前でもないかもね。
私の名前にいったいどんな願いが込められたのかは
まったくわからないけれど。
ともかく、あんまり大雪になるより
いいお天気になって助かるわ。
洗濯物もよく乾くし。
同室の蛍ちゃんも心配して
私に何度も相談しなくても済むんだし。
天気予報はお天気だけど
明日は本当に大丈夫かな?
洗濯物がたくさん干せるかな?
明日の朝になって、海晴お姉ちゃんの天気予報で確認しないと
不安だよー。
そんなこと言われても
海晴姉様の天気予報も、まだ新人の海晴姉様が予報してるわけではないんだし
たまには吹雪ちゃんが予報した日もあるっていう話だけど
ともかく、天気予報なんてどこの番組で見たってそう変わらないし。
ニュースの中で放送する天気予報で
だいたいわかるものだと思うけど
どうしてあんなに何度も確認しようと思うのかしら?
そもそも、海晴姉様の天気予報も結構外れることもあるような……
予報の途中に妙な発言をして番組を混乱させることも多いみたいだし。
まあ、そのあたりは心の中に秘めておいて。
今日はよく晴れたわ。
下僕もしっかり働いて、
ごはんがおいしかったみたいでよく食べて
みんなが感心していたわね。
その無駄に大きい体は
大部分が胃袋でできているからだったのね。
まあ、そんなことだろうと思っていたわ。
しょうがないからしっかり食べていったらいいのよ。
春風姉様と蛍姉様はそれでやる気が出るみたいだし、
授業中におなかが鳴ったりして
同じクラスのヒカル姉様に恥ずかしい思いをさせないように。
今週の19日には、また雪が降る予報だけど
あまり積もらないといいわね。
それまでに、洗濯物をしっかり乾かしておかなくちゃ。
なんだかこのごろ
泥まみれの洗濯物が多いのは
やっぱり、ずいぶん降った雪の影響かな。
濡れたらすぐに着替えられるように
よく乾かして、準備しておかないとね。
と思っていたら
今日、洗濯物を抱えて廊下を歩いている途中で
どこかから突然聞こえてくる奇声に驚いて
あわてて向かってみると。
オリンピックを見ている子たちが
ヒカル姉様を中心にして
テレビの前で跳ねているところだった。
どうやら、最近の泥汚れの多さは
オリンピックの真似をして
残った雪のまわりであばれたりしていたのが
原因らしいわ。
まったく!
私はちょっと驚いた拍子に、足をひねったみたいで
歩きづらかったせいで
仕方なく、少し休憩して
一緒に見ていた。
メダルなんてそんなにほしいものなのかしら、
即物的なご褒美のために競い合うなんて原始的だな、
と、あんまり興味はなかったんだけど。
自分の精一杯を発揮すること以外は
何も考えなかったと
後のインタビューで答えている
本番に向かう人たちが
全力を出しつくして
あと一歩で及ばなかったときの表情も
ついにメダルを手にした喜びも
まっすぐで、すがすがしい
テレビではなかなか見ることのない顔。
なぜか、こんな顔を身近などこかで
いつも見ているような気がする。
立夏は私に、
運動神経も結構いいほうだから
いいところまで行くかもしれない!
と、オリンピックに出ることを薦めるけど。
それなりに運動はできるとしても
あの子の単純な処理能力しかない頭の中では
私はどんな神業の使い手に扱われているのかしら。
脳の構造は、どんな人でも誰もが
神秘的な宇宙を秘めているのね。
下僕の単純な頭の中だって
それなりに興味深い部分も見つかるのかもね。
そんな会話の最中で、霙姉様ときたら。
氷柱は褒められたらすぐにおかしな方向にやる気を出して失敗するから
オリンピックのように期待が集まる舞台に立つのは
難しい気がするな、
だって。
そんな余計なことは言わなくてもいいのよ!
おまけに、
不安定な気持ちを一緒に肩に乗せて歩いていく
パートナーがいればいいんだ、とか。
まったく、一言多くないと気が済まない人なんだから。
もしかしたら
その相手が誰なのか
氷柱だって、もう知っているかもしれない、なんて。
あいにく私にはそんな心当たりはこれっぽっちもない。
だれのことを言ってるのかまるで想像がつかないけど
こんな話を本気にして
うぬぼれたりしないでほしいわ。

もし、私が精一杯の力を出して
それでもどうにもならないことが
本当にあるとしたら
私は悔しくて泣くときも、
大舞台で競い合った選手たちみたいに
浮かべる涙も輝いて見えるような
さわやかな表情でいられるのかな。
ふと考えた。
そしてたぶん、
私なら
敗れることがあったって、
いくら挫折しても
自分の満足の行く結果を出すまで
突き進み続けるだけだわ、
と気がついた。
そうよね。
この私が、できないかもしれないなんて
弱気になっていたら
私に従っている下僕だって
不安でしょうがないだろうし。
そんなの私らしくないと思うんじゃないかな。
だから。
まだ、ひねった足は少し痛むけど
蛍ちゃんが心配するみたいに
これくらいで学校を休むなんてできないから。
私がついていないとどうにもならない
情けない下僕に、
手を貸して支えるくらいは
許してあげてもいいわ。

あさひの偽日記

『おおんば』

おおんば
ふうぅ。
ちゃっちゃ
うわっば。

にゃーにゃんば
ふぅわあぁ。
わった
おおばっば。

にゃーにゃ、
ちゅうちゅう
んば?
むぅ、
ぶぅぶぅ!

あーたん
ぶるわっちゃ!

(つららのだっこは
 きもちがいいな。
 ほそいうで、
 しっかりぎゅっと。

 おにいちゃんのだっこは
 やさしいな。
 おおきなてで
 まるごとあさひをうでのなか。

 おにいちゃん、
 つららとてをつないで
 にこにこ、どこへいく?
 おでかけまえの
 あさひのだっこを
 わすれているよ!

 あさひは
 とびこんでいくよ!)

小雨の偽日記

『やってきた』

こっちかな?

それとも
やっぱり
こっち?

どちらも正しいような気がする
どんと座っていてくれる場所は
みぎ、
ひだり。

どちらでもいいって言う立夏ちゃんと、
いいのかなと思う小雨のふたりでは
堂々巡りの迷路に落ち込んでいたかもしれない。
抜け出せないまま
こっちがきれいかも、
ううん、こっち?
いつまでも、振り子のように行ったりきたり。
あのままでは、はたしてどうなっていたことか。

麗ちゃんが、
去年のお写真を用意して
確認してくれなかったら
当日に間に合うかどうかも疑わしいばかりか
小さい子たちのおもちゃになってしまったら
大変です。

私たち女の子の成長を祈る
とても立派なお雛様。
今年のお飾りの役目を
海晴お姉ちゃんからじきじきに任せてもらったのは
小雨でした。

どうして、
いつも失敗ばかりの小雨だったんだろう?

きっと、
六年生の先輩の卒業が近づいて
小雨が自信をなくしていたから。
来年の小学校を背負っていく
いちばんの年上。
同級生の子が
大事な生徒会を受け継いで、
来月には卒業式で送り出すお仕事があります。
残された私たちでも大丈夫だと
先へ向かう人たちの一歩に、
これまで支えてもらった私たちのお手伝い。
立派に卒業式のお仕事を果たして
手を振って見送って
涙を見せないで。
私たちは大丈夫ですと
胸を張ってその日を迎えるために
いま、小雨たちのクラスは準備をしています。
卒業して言ってしまう人は
来年度からこの学校にいなくなる。
春が近づくのに、冷たい風が吹くような寂しさ。
小雨たちが小学校のみんなを引っ張っていくなんて
本当にできるのかな。
小学校の授業や、委員会のお仕事を
いっしょうけんめい続けています。
満点のとてもいい結果を出せてほっとしたり、
みんなで協力して進めたお仕事が
ちいさな不注意でうまくいかなくなって
時間が足りないときもありました。
それは小雨がいけなかったりしたことも、
いつもみんなを引っ張ってくれる元気な子が
たまにどうにもならなくなってしまったことも
本当にたくさん、失敗を続けて。
そんなとき、立ち止まったままどうしていいのか何も思いつかないで
動けない私たちに手を差し出してくれて
おびえて座り込んでしまいそうな小さな子がいても
差し出した手をつかんでもらうまで
やさしく待っている。
小雨がどこにも見つけられない道を教えてくれて
一緒にみんなの失敗を背負ってくれるみたいにして
歩いてくれた大きなおとなの
お兄さん、お姉さんたち。
本当は、小雨たちがまだ全然そんなお姉さんになっていなくても
卒業しないで小学校に残るなんてできないと、知っています。
もし卒業式がうまくいかなくて、上手に送り出すことができなくても
お兄さんやお姉さんたちは小学校に残るみんなを不安に思ったりしない。
いっぱい学校生活を一緒に過ごして、よく知っている子のことは
もう心配いらないってちゃんとわかっているんだし。
それに、これから先の中学校生活に進む未来で
胸がいっぱいになっているはず。
小雨たちの任せられた卒業式がうまくいかなくたって気にしない。
たぶん、うまくいって恩返しをしたいなんて
そんな気持ちは届かないかもしれない。
小雨にできることなんて、そんなにないのだし。
どんなに寂しくて、不安だって
がんばれば上手に気持ちが届くとは限らない。
小学校に残る私たちが
この学校にいたみんなのおかげで、少し立派になりましたなんて
伝える必要は何もない。
期待に溢れて振り返っているどころじゃないのならなおさら。
卒業生の人たちが笑顔で旅立っていけるのならうれしい。
でも小雨は
春が来て、次の学年に進んでいくのがなんだかこわい。
そんな小雨に
しっかりしてほしいって思ったのかな。
海晴お姉ちゃんは
小雨ちゃんにしかできない大事なことがたくさんあるよ、って
いつも言ってくれます。
この家に小雨がいて、みんながとてもうれしいんだということ。
小雨にもできることがあると教えたくて
お雛様の準備を任せてくれたんだと思います。
でも小雨は
自分は何も上手に何もできないと
大切なお仕事を進めている途中で、ますます実感してしまうようで
なんだかつらくて
手が止まってばかり。
立夏ちゃんにからかわれたみたいに、お雛様にみとれてしまっているようだっていうのも
中断の理由には、少しはあるんだろうけど。
きれいなお雛様。
小雨の手で飾るにはあまりに華やかすぎるお雛様。
小雨の成長を守ってくださるなんて
とてもおそれおおい、豪華に着飾った美しい我が家のお雛様。
立夏ちゃんと麗ちゃんが手伝うと言い出してくれなかったら
小雨はどうなっていたのかな?
お兄ちゃんも手伝ってくれて、ありがとうございます。
小雨は目の前のことで頭がいっぱいで
周りを見ている余裕が全然なくて
お兄ちゃんから、最後にいちばん上の壇に来てもらうお内裏様を渡してくれたとき
ああお兄ちゃんだ、と思って
どうしてここにいるのかわからなかったくらいなんですけど。
小雨を手伝ってくれているんだ、と当たり前のことに気がつく前から
お兄ちゃんがいることにちょっとほっとした小雨でした。
こんな小雨でも
心強い人がいてくれたら、
大事な飾りつけの一番最後をきっちり終えることはできるんですね。
やっと完成した雛壇を前に
ふーっと長い息を吐き出して
緊張から解放されて、やっとまわりを見回したときに
小雨の周りには、
いつのまに家族のみんなが来てくれていたんだろう?
みんな、心配かけてしまってごめんなさい。
みんなで飾り付けをしたお雛様がいてくれるから
小雨は元気な笑顔でいられます。
我が家の立派なお雛様。
今年も小雨たちのところへ来てくださって
見守ってくれているんですね。
小雨たちを見ているすまし顔に恥ずかしくないように
小雨は、たぶんどうしても、いつもたくましくというわけにはいかないだろうけど。
なるべくもう少しの間だけは
泣かないで、がんばっていけたらと思います。

ヒカルの偽日記

『猫の日』

ついについに、と
蛍がやけに盛り上がったので
今日は猫の日パーティー。

いったい、何をするのが普通なんだろう?
猫の日パーティー。
不思議なパーティーが始まっている時点で
もう何か普通ではないのだろうか?

普通じゃないかもしれない私たちの猫の記念日は
実際に体験してみると
意外と平凡。
朝から
誰かが
にゃーお。
部屋のどこかから
あれはいったい?
夕凪が
にゃー。
寝る子だから
ねこ、
という語源を聞いたと
ごろごろ
にゃー。
青空も真似をして
にゃーご。
ごろごろ。
日向に寝転んで
なでてもらって
気持ち良さそうに喉を鳴らす。
いや、鳴らす真似。
これでは、せっかくの休日が
だらだらする日みたいになった?
オマエはどんな体験をしただろう。
こういうのは戸惑うかな?
ちょっとは楽しかったのだろうか。
戸惑って、どうしようかと思っても
でも、こういうものなんだと
すぐ馴染んでしまったかな。
だったら私と同じだ。
氷柱が手当たり次第に尻尾を引っ張って
うっとおしいから、外で猫遊びでもしてきなさい!
そしたら蛍がびっくりする。
しっぽをひっぱったら
猫はどっきり、困っちゃう!
おどろいて、おこってひっかくよ!
だめだめ!
と、蛍がそう言っても
別に、誰もひっかきもしないで
素直にぞろぞろ
いい天気だねーって外に出て行ったので
あれは本当は猫の集団じゃなかったのかもしれない。
その場の思いつきで何をしようか考えた、
誰か一人が猫が追いかける
猫鬼ごっこは、猫の遊びでいいのだろうか。
最初は鬼だけが
にゃーって言って捕まえるルールだったのが
あっちから
にゃーん、
こっちから
にゃーん、
小さい子供みたいに、みーみー。
しかも、裏山のほうから、やけに上手な
猫の泣きまねをしている子がいるなと思ったら
溶け残った雪の間から、
本物の猫が顔を出していた。
黒で一色だけの全身に、緑色きょろきょろよく動く目がきれいな猫。
ひげが濡れたみたいにぴくぴく。
青空が追いかけたら、すぐに山のほうへ逃げていって、
軽い身のこなしが残した、うっすらとした足跡。
やっぱりあれは
仲間がいると思って、一緒に遊びに来たのだろうか。
どうも怖がりだったらしい黒猫。
私たちの家にも、知らない子が来たら固まってしまう怖がりは多いけど。
でも、庭で楽しく遊ぶのはみんな大好きだから。
いつでも参加してくれたら
すぐ友達になれたのにな。
あのとき声をかけてきたのは
すぐに追いかけてきてほしいのか、そんな気がなくて様子を見に来ただけなのか、
一緒に遊んでみたいけどなかなか本当の気持ちは言えなかったのか。
本物の猫ではない私たちには、言葉はわからなかったな。
猫の耳と尻尾をつけていても
寝てばっかりは物足りないし、ねずみをとったりできない。
本当は私たちは
人間で、仲良しの家族だった。
春風も蛍も子供みたいにニャンって笑っていたけど
私は猫耳をつけて
ぶにゃーってそれらしく言っても
なかなか猫にはならない気がする。
向き不向きがある?
観月が言うには、昔の文献では
猫という文字は、たぬきのことを指し示していたようだ。
おなかいっぱいになって
家族が輪になってぽんぽこしていそうなたぬきが
私にはちょうどよさそう。
そっちが似合いそうな子は、私のほかにもいっぱいいる気がする。
今日は、春風と蛍が猫の日ご飯を用意するという話だったから
みんなは期待と不安の配合が
だいぶ不安に偏った割合のようだった。
もしや、かつおぶしだけなのかな。
それとも、ねこまんまだったらどうしよう?
ごはんが入ったお汁だから、よくかんで食べなきゃ!
ねずみは食べられないし。
いくらなんでもあんどんの油をなめたりはしないはずだけど?
予想はいろいろだったけれど
晩ごはんは、普通の焼き魚。
猫ご飯だ!
おいしく食べたら、実は本番に待っていたその後の
猫デザート。
蛍の行きつけで、アルバイトもしてお世話になっているパン屋さんと相談の
共同開発。
にゃんにゃんパン。
猫の顔に似たできたてパンが
三毛猫みたいなの三色、
黒猫のこしあん、
ロシアンブルーをイメージしたブルーベリー。
二本の耳を立てて、ほかほかの湯気を出して
ひとかじりしてもらうのを待っている。
一度かじったらもう止まらないと知っているのは
にゃんにゃんパンたちだけじゃない。
においをかいだら、一人残らずもうわかってしまった。
こころなしか、今日はあさひまで
にゃーん。
おなかがすいて、甘えているだけかな?
ミルクは猫の日の特別じゃない、いつものやつ。
猫の日の過ごし方って、こういうものなのか
今でもよくわからない。
はたして、おなかいっぱいぽんぽこに自信がある私は
たぬきの日があったら活躍をするのだろうか。
うーん。
難しいことを考えても仕方ない
私たちの猫の日。
猫っていつもよく寝る子だから
夜はよい子で早く休むのも、猫の日の大事な特別。
おやすみ。
明日も癖が抜けなくて、うっかり鳴いてしまう子が
一人はいそうな気がするな。
もしもオマエが鳴いてしまっても笑わないと約束をしたなら
私の鳴き声にも笑わないって誓ってくれるだろうか?
でもやっぱり私は笑ってしまうのかな?
オマエが気を悪くしないなら
私も、笑われてしまってもかまわない気がするな。
それとも、明日にはうっかりしてしまわないように
今日のうちに二人で、もうこれくらいならいいだろうって
たっぷりと言葉にして
一日を終えておくと、間違えないで済むかも。
そういうものなのか、知らないけど。
何事も、試して損はしないものだし。
にゃんにゃん、にゃん。
明日はもう言わない
甘えたごろごろ。
なでなでして、たっぷり言わせるつもりなら
今日のうちにしておかなくっちゃ。
まだ、ふぎゃーって甘えたりない気もするし
誰かをもっと甘えさせたい気もするな。
たぶん、猫の日はそういうものなんだろう。

星花の偽日記

『真っ白なエプロン』

家族の大事な
お手伝い。
子供はいつも
やることいっぱい。

おそうじ!

お皿洗い!

それから
お部屋の片付け、
は、それぞれのお仕事だから
家族の用事ではなく
ひとりひとりの責任で果たす役目。
マホウの杖を踏んづけて
取れてしまった真っ赤な宝珠。
踏んだ吹雪ちゃんの顔が
動揺しているのか冷静なのか、無表情。
寒いだけなのかよくわからない、
外から帰ってきたばかりの青い顔。
散らかしておいた夕凪ちゃんもいけない、という話に
たぶんなるんだろうけど……
結局、吹雪ちゃんが謝って
星花も参加して三人でお小遣いを出し合って
新しい杖を買ったっけ。
夕凪ちゃんは新しいマホウを使えるようになったのかな?
反省したみたいで、きちんと片付いていることもあり、
まだ少し苦手なようで、転がっていることも多い
最近の杖事情。
お片付けのマホウは
なかなか思いつかないものらしいようすで
散らかりがちな
星花たちのお部屋です。

おうちでは
だいたい、お兄ちゃんが請け負うことが多い
大変なお仕事。
それは
買い出し!
20人分の食料を
まとめて背負う
男の人の力!
学校帰りの放課後に
スーパーに寄っていくこともあるそうで
両手に荷物を抱えた
制服姿のお兄ちゃんが玄関で
大きな声でただいまって言うと
家にいるみんなで駆け寄って
山賊みたいに荷物をさらっていくけれど
お兄ちゃんのお仕事をお手伝いしたいだけなんです。
ちょっと乱暴で、女の子らしくなくてはしたないかもですが
お兄ちゃんの力になりたくて夢中なの。
星花も一緒になってしまう
張り切って駆け寄る子供たちのこと、
どうか寛大な心で見ていてください。
一緒に買い物に行く春風お姉ちゃんや蛍お姉ちゃんは、帰ってきてから
デートみたいで楽しいな、
むしろもう新婚さんみたい、
と、うれしそう。
お野菜や卵のパック、重い荷物を持っていてたくましいのに
はしゃいだ顔は、なんだか華やかなようにきれい。
おとなだな!
と、感じる瞬間。
星花もそのうち大きくなったら、
お兄ちゃんと買い出しに行くのかな。
どきどきしながら想像してみて
あと何年くらい後なのか、吹雪ちゃんと計算してみたら
星花がお兄ちゃんと同じ木花に入る年には
お兄ちゃんはちょうど卒業していなくなってしまう!
ええー、
一緒に帰りながら、楽しくお買い物はできない?
そんなふうに悩んでいたから、という理由でもないのですけど
ちょっとした偶然で希望がかなうこともあるのか、
今日は星花が晩ごはんのお手伝い当番なので
待ち合わせをしたお兄ちゃんと、帰り道でお買い物。
制服のお兄ちゃんと、チャイナ風でまだ色気のない元気なミニスカの星花の組み合わせ。
残念ながら、とても恋人同士には見えないですね?
もちろんまだぜんぜん主従でもないし。
普通に、仲のいい兄妹かな?
でも、その通りだし、いいかな。
お兄ちゃんは少し大人っぽいから
もしも親子に見えたら、ちょっと星花が子供すぎるようで困ってしまうな?
お食事当番のお手伝いもできるくらいなのにな!
どうだったでしょう、
親子には見えなかったと思いますか?

今日のお買い物の晩ごはんのメニューは、
星花の判断に任されることになりました。
責任重大です!
なにしろ冬まっただなかなのであったかいものだとやっぱりおいしい、
野菜がたくさんでおいしく栄養が取れるとうれしい、
さらにみんなのリクエストにも答えたいし、
蛍お姉ちゃんは、明日のお弁当に使えるメニューだと助かるって。
うーん、
お姉ちゃんたちは難しい問題をたくさんクリアして
ご飯を作っているんですね。
春風お姉ちゃんは、
あんまり難しく考えなくていい、
星花ちゃんが一生懸命作ってくれたらなんだっておいしいはず、
って言ってくれたけど
なるべくなら、せっかく作るんだからいいものができたらな。
お兄ちゃんの意見も聞いて
スーパーを見て回って。
買い物がとっても楽しいと
そればっかり言っていられないお仕事なのに
楽しくお買い物ができてよかったなんて
星花ははたしてこれでいいのでしょうか?
ふまじめ?
ともかく、
からあげも考えたけど
揚げ物は量が多くなると時間もかかるし
今日はそれなりの量がいっぺんに作れる、煮物にしました。
煮込んだら味がじっくり染みる
だいこん、
煮物界には重要な味の一員
ちくわ、
ほくほくの身がお口の中でほどけて広がる味わいの
かぼちゃ、
ボリューム感がうれしい
じゃがいも。
まるごとたまごも
煮物の皿の中で迫力ですよね。
白菜は、お味噌汁にしたらいいかな。
まだ台所のお仕事を任せてもらえない
いたずら者の夕凪ちゃんが
ときどき、こっそり近づいては
つっついてきたり
隠れておどかそうとして、ぴょこぴょこと髪をテーブルからはみ出させたり
星花のエプロンのひもをほどこうとしたり
遊んでほしそうだったけど
こらー、あぶないよ、
って叱ったら逃げちゃった。
夕凪ちゃんももうすぐみんなのお料理を作れるくらいだと思うけど
せっかくだから教えてあげたらよかったかな?
でも、夕凪ちゃんのことだから
思いがけないお手伝いが意外と上手だったりするのかな?
あんがい器用な、
というかマホウの力?
そろそろ、夕凪ちゃんにも星花からエプロンを送ってあげようかな。
星花のエプロンは、今はまだほんのお手伝いさんらしく
飾り気までは気を使っていないそっけないエプロンだから
夕凪ちゃんと一緒に、二人のエプロンを選べたらいいな。
今日は星花の渾身のメニュー。
と言いつつそんなに胸は張っていられない、
お姉ちゃんたちの力を借りて
まだちびちび修行中のふらふら不安定な味の晩ごはん。
みんなにおいしく食べてもらえたらいいのですけど、
と、今日一日だけでずいぶん汚れたエプロンで汗を拭う星花です。
神様、どうか今日の料理が
星花の腕前にしては思いがけないほどうまくいって
みんなが幸せにおなかいっぱいになれますように。
星花はこれから、どんどんお料理で喜んでもらえるようになったらいいな。
お手伝いすることはいっぱい。
お兄ちゃんやお姉ちゃんたちみたいに大人っぽくなれるよう
だんだん、近づいて
もうちょっとすてきな星花を目指していきます。

春風の偽日記

『てのひら』

ユキちゃんが小学校から持ち帰った
春の予感。

王子様にも届きましたか?

まだ知らないのなら、
教えてあげたい。
こんなところでも王子様に尽くしたい。
近づく春。
残念ながらそれは、
ユキちゃんがまぶしい空に目を細めて探している
梅の枝についたつぼみではないの。
今頃はもう、この近くのどこかで見つかるのでしょうか?
お花屋さんには、雛祭りの準備で桃の花が並び始めたみたい。
まもなく私たちのところにも届いたらうれしいピンクの色は
少しの間はがまんです。

もちろん、まだ通信簿の季節ではなくて
進級の準備になる一区切りも、今のところは小学校には訪れない。
明るい春物の服も、
似合う時期はそろそろかな?
まだもう少し、
お天気は不安定。
海晴お姉ちゃんが予報している明後日あたりの雨は
とうとう厳しい雪を迎える季節が過ぎていくことを
告げているのかもしれないけれど。
油断はできないので
華やかな桃色のよそおいは3月になってから様子を見て。
私たちが花開くように、新しい季節が始まる気配に身も心も染まっていくまで
もうあとわずか。

麗ちゃんは、この時期は
大好きな電車とのつらいお別れがたくさんあるみたい。
でも、このおうちでいつまでも変わらずに
私たちを支えてくれる王子様がいつも家族なのだから
どんなに悲しいことがあっても、
とても一人では耐えられないような時間の真っ最中でも
行く先が暗いばかりではなくて、明かりの気配を肌に感じて
また立ち直る勇気が、自分の中にも生まれはじめていると気がつく。
そんな時が麗ちゃんにももうすぐやってくるんじゃないかと思います。
春の訪れと同じ時期になるのかどうかは、春風には何とも言えないのだけど
たぶんすぐなんだろうなっていうのは、
なんとなくわかる。
おっかなびっくり顔を上げてまわりを見回し始めたつぼみ。
たぶん趣味で好きでやっているとしても、大変なことに向き合っていく麗ちゃんは
とても立派で勇敢な、私たちの小さな妹。
どうにかして支えてあげられないか
春風も迷って悩んで、
つい楽しくて、かわいい家族みんなのことを考えている。
ユキちゃんが元気で帰ってきてくれて
健康を心配しなくてもいいくらいののどかな気温も、近づく春のおかげですけど。
今日は難しい悩みも、複雑な思いも何もない
あたたかなおみやげ。
もともと、春風はあんまり深く考えることが得意ではないですもの。
簡単な事実には、すぐに気がつくほうです。
たとえばある年のクリスマスに
いよいよ迎える待ち望んだ新しい家族として
私の元にやって来た運命だとかは、
すぐにわかってしまうほう。
だから、今日もユキちゃんが届けてくれた
小さな柔らかいてのひらの暖かさのおかげで
ついに春が近づいたんだと知ることができました。
冬の間ずっと寒かった気温に冷たくなる手を温めてあげなくても。
今日は全然、熱が出たように心配になる高温ではなくて
寒い日を過ごしてやっと家に帰って来る厳しい季節も
一年のこの時期のお仕事を終えて、ゆっくりと通り過ぎていこうとする気配。
あんなに厳しかった季節が、背中を丸めてさみしそうに立ち去っていくよう。
やがてまた春風たちのところに、いろいろな出来事がぎゅっと詰まった冬を届けてくれるまで
きっと穏やかに家族と過ごして、ゆっくりと次の出番を待ちながら
また来年。
最後の一仕事も、そろそろ大詰め。
私たちが手を取り合って毎日を過ごして、
大変でも楽しかったり冬が、もう終わるんだなと
学校から帰った小さなユキちゃんが届けてくれた
移り変わる季節の、言葉にして伝えるのではないお知らせ。
もうこれから暖かくなると
寒い季節を一緒に乗り越えたくて
あなたの冷たい手を温めてあげたいと
その手を胸に抱える理由はもうなくなってしまう。
王子様がいなければ、春風は寒い冬を越えるどころか
一日も過ごせないともう知っているのに
大切なふれあいのチャンスが純白の雪のようにみるみる消えてしまうなんて
そんなさみしいことがこの世界にあっていいのでしょうか?
春風の過ごす日は、季節に関係なくあなただけを中心にしているのに。
もう冷たい手を温めてあげられる季節は終わろうとしているけれど
こんなわがままな春風がお願いをしてもいいのでしょうか?
これから理由がなくなっても
あなたの手をとって、ぎゅっと胸に抱きしめて
寄り添い合って過ごしても
愛しいあなたは許してくれるでしょうか。
春風の手はいつも恋の温度にあたたまっています。
冬の寒さに頼らなくても、愛しい思いは伝わるでしょうか。
二人で、過ぎていく毎日のことを言葉にして交し合って。
ときどきは静かに体を寄せるだけで過ごしながら
何も必要がなくても、
この世界のどんなに仲のいい結ばれたものよりも
何よりも近くにいる二人でいたいと春風がお願いをしたら
王子様はどんな答えをくれるのでしょうか。
いつも笑顔で受け入れてほしいなんて恥ずかしくて言えないから
これからやって来る花開く季節に、
まぶしそうに顔を出す花たちの勇気の季節に
どうか一度だけでも叶えてもらえるなら。
でも本当は、いつも許してくれたならそれが一番うれしいと思う春風です。

ユキちゃんが元気で楽しく過ごせる暖かい季節が来て、よかったですね。
冬の楽しみが過ぎ去っていくのはさみしいけれど
春風には、あなたがいるのだから
これから迎える新しい春も、いつまでも忘れたくない思い出が
数え切れないほど増えていくのだと
もう春風にはわかっています。

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