アルケイディア&キュクレイン

アルケイディア&キュクレイン TOP  >  2014年01月

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綿雪の偽日記

『あけましておめでとうございます』

1月1日
午前0時。

おめでとうございます、お兄ちゃん。
新しい年がやって来ました。
ユキたち家族が、いよいよ新年を迎えた瞬間です。
これから始まる、
まだ何も決まっていない
真っ白な一年。
家族みんなのところに、そろって届きました。
もう眠ってしまった子たちも、
除夜の鐘に耳を済ませているお兄ちゃんたちも、
おそばのおかわりも一段落して、一息ついている春風お姉ちゃんたちも
あわてなくても
決して、誰も置いていかれたりしない。
みんなで手を繋いで一歩を踏み出すように
同じ時間に
うれしい、すがすがしい年の訪れ。

まだ小さいユキがこんな時間に起きているのは
こわいような気もして
いけないことのようで
胸が鳴っている。
ドキドキしています。
大晦日だけは特別、って
おうちの小学生の子たちや、ちっちゃいみんなも言ってもらえました。
だからいけないことではないのに
どうしても止まない、不思議なときめき。
ユキが生まれて初めて体験した
新しい年に変わる瞬間。
観月ちゃんは、言っていたよ。
去年の歳神様が一年を経て
いっぱいお仕事をして、おじいさんになるまで歳をとったあとに
次の年を担当するまだ小さい新しい歳神様に
世界中の人を見守る大切なお役目をお願いする時なんだと。
もう、だいぶ前に眠ってしまった観月ちゃんには
今はお話は聞けないけれど
いったいどこで会うのか聞いていなかったから。
ユキは歳神様が交替する場面は見ませんでした。
どこかでひっそり
ふたりだけの秘密みたいに交替しているんでしょうか。
ほんの少し前になって通り過ぎていった、その時間。
時計の針が進んでいった時に
今日、日付が変わる時間はいつもとは違うと
ユキは知っていて、
でも、実際に何が違うのか詳しくは説明できない。
不思議な夜です。
昨日と今日で
全然違う、別の年になるなんて!
もう過ぎていく一年の最後と
ついに待っていた一年の始まり。
ずいぶん遠くに離れているように感じるふたつのものが
ほんの一瞬、隣に並んで。
そして私たちのところには
新しい年が残って
これからの時間を刻み始める。
おじいさんの歳神様は役目を終えて、それからどこかで一休みするのかな。
新しい年を担当する小さい歳神様は、
観月ちゃんとまだそんなに違わないくらいの子供だって聞きました。
きっと大変だろうな。
責任重大なお仕事に、震えていないかな。
もしかしたら、ドキドキ張り切っていたりする?
年が変わっていくその時。
いったい何が起こるんだろう? と
なんとなく落ち着かない気持ちで待っていました。
どこか遠くから聞こえてくる、除夜の鐘の音。
いけない悪い気持ちを全部おはらいして
すっきりした気持ちのいい新年を届けてくれる合図です。
あんまり聞きなれない音なのに
何も心配することはないみたいに
ユキは、お兄ちゃんたちと聞いている。
なんだか静かな
落ち着いた気持ちになる響き。
除夜の鐘がひとつ、またひとつと鳴り始めたら
お姉ちゃんたちは、懐かしい音がするって言っていました。
今年初めてこの鐘の音を聞いたユキも
この気持ちは
懐かしいと言っていいものなのでしょうか。
今年もいろいろなことがあったな。
鳴っては静まり、また響く鐘の音は
なぜか、一年の思い出を呼んでいるみたい。
悪い気持ちを取り除くんじゃなくて。
もしかしたら、おはらいのために
一年の間にあったいいことをたくさん思い出して
来年もまたこんなふうにすごそう、って気持ちにしてくれるのかな。
日付が変わったその時、
まだおきていた小さい子はユキだけでした。
ユキのお部屋はすぐ近くだから
いま戻っても、そばでみんながわくわくしながら待っているから
眠れないような気がして
いつでも眠くなったら戻ろうと思っていたけれど
そのまま、ずっとみんなと一緒に過ごした大晦日。
楽しかったことを思い出して
たくさんのお話をして
ときどき、みんなは言葉もなく
何かを思い返しているようでした。
ついに生まれて初めて迎えた
新しい年のはじめは
そこにいる家族のみんなで
穏やかに、
おめでとうのあいさつを贈り合った、静かな時間でした。
何も大きなイベントもなかったし
見たことのない何かが起こるような気がしていたけれど
別にすごいことがあったわけでもなくて
ただ、おめでとうの気持ちをみんなが持っていると
実感している時間が
ユキはなんだか
うれしくて
さわやかな年越しだな、と思ったよ。
次の年へとやって来たユキたちの
今もまだ届く鐘の音は
思い出を呼んでいるみたいじゃなくて
同じ鐘の音が
これからいろいろなことがはじまると
遠く聞こえてくる鐘の一つ一つが
教えてくれているようです。
いったい何が待ってあるかはわからないけれど
お兄ちゃんたちと迎えた年越し。
今年もいろいろなことを
お兄ちゃんと迎えたいです。
お兄ちゃん、
今年も一年、ユキと仲良くしてください。
新しい年──
うれしいな。
おめでとうございます!
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吹雪の偽日記

『ニューイヤー』

あけましておめでとうございます。
新しい年になりました。

しかし私は
たった一晩を境に年の表記が変わって
すっかり新しい気分になるらしい、というのは
性急過ぎるようで、納得いかない感覚もあります。
ユキは成功していたことで
年が変わる時間に私が起きていられなかったのも
関係しているのでしょうか?
こちらが年上なのに、先を越されてしまいましたね。
うれしそうにその経験を話してくれて
その場にいなかった私が、ユキの熱心な語りのおかげで
聞いていなかったはずの鐘の音が耳に鳴り出す気がしてくると
正直なところ、少しはうらやましく感じる自分を発見しますが。
ユキはふだん、あまり自慢になるところがないと思っているようです。
私に追いつけそうな立派なところが何もないと。
そんなことは決してないのですが。
キミも、ユキのよいところを多く知っていると思います。
ときどき見つけることがあったら
言葉にして伝えてあげてください。
私もなるべくそうします。
ユキは状況を丁寧に話して
気持ちを伝えるのが上手ですね。
年越しの時間に起きていたユキは
一番最初の年の初めに、家族とお祝いの挨拶を交わせて
自慢というには違うようですが
とても喜んで話していました。
どうも私はその場に立ち会えなくて、実感がいまひとつなのかもしれません。
昨日と今日では、いったい何を具体的な境目として
何が違っているのか?
新しい年がおめでたいのはなぜなのか?
なぜ多くの人がこんなにも喜ぶのか。
夕凪姉は、
ついに新しい年が来たなんてすごい!
誰がしたことかわからないけど、
きっとパワーを持っているマホウ使いに違いない、
ミラクルな力でやって来た
今日はマジカルニューイヤーだ!
と、言っていましたが
暦は普通の人間が作ったものであり、
マホウの力は使われていないと思います。
人は暦を設定する利点に昔から気がついていました。
世代を重ねて生活を続けていく際、暦が果たした役割は大きい。
グレゴリオ暦が導入される際の戸惑いを伝えた記録など、
暦に関する興味深いエピソードは数限りなくあります。
しかし、新しい年の何がそんなにもうれしいのか
歴史は詳しく説明していないような気がして
調べてみました。
昔は1月1日に歳をとることになっていたらしい。
なるほど……
我が家でも月に一度か二度は迎える、あのにぎやかな誕生日が
誰にでもいっせいに訪れるのであれば
大変な騒ぎになるはずです。
想像してみると
収拾がつくのかとてもわからないほど。
これは、私たちの家族を基準にして想像したためかもしれませんが。
いくら同時に歳をとるとはいえ、
昔の子沢山の家でも、多くて子供が十人ほどの家族が一般的だったようだし
二十人は──
歴史的に見ても、かなり珍しいかもしれません。
前例が少なくて先人を参考にできる部分が少ないのに
よく安定した生活が成り立っているものです。
私たち年少を指導している年上のきょうだいには、
尊敬と感謝の念を今まで以上に感じるところです。
いつもありがとうございます。
私ももうすぐ、年が下の妹たちを見守ってゆく立場になります。
やがて遠い先には、私自身が子供を生んで、ひとりひとりを育てていく。
その時に果たして、騒がしい環境に私が適応しているのか。
同じ時間を共にしているであろう
一緒に小さい子を見守る人たちの力を借りながら、努力していくことにしましょう。
でも正月に歳をとるのは、誰もが一度に年齢を重ねる利点を取り入れて成立した制度ですから
現代のように生まれたことを感謝する日とは違うでしょうか。
今の私たちほど、にぎやかに喜ぶ誕生日にならない可能性もあります。
私個人としては、あまり騒々しいパーティーよりは、静かに時間の流れを感じるほうが
性格的に合っている気がしますが。
昔の制度と今ではどちらが好ましいのか、決めかねます。
それは騒々しさだけを基準に選ぶわけにはいかない、
私の家族の大事なイベント。
ともあれ、古い習慣では
ひとつ年齢を増やす節目の日が今日でした。
新しい年が来て、私たちもやがて誕生日を迎えて
年齢を重ねていくのだと考えれば
新しく迎えた新年を喜ぶこともできるでしょう。
私の場合は正確に言えば、
理由はともかく喜んでいる家族を見て、
考えながら、これが喜ぶものなんだと学習していく、
という形になるでしょうか。
家族全員がそろって新しい年を迎えたことを喜びたい。
キミと並んで今年も年齢をひとつずつ重ねる。
人は自分の感情を常に正しく判断できるとは限らないけれど
私はたぶん今、喜んでいる。
おめでたいというのか、そわそわするのがうれしいような
普段あまり体験しない感覚です。
年に一度のお正月。
また来年まで、
この気持ちを詳細に分析する機会は訪れないでしょう。
その時が来たらまた
ぜひ話を聞いてください。
いくらなんでも気が早いお願いかもしれませんね。
今はこの一年の始まりを喜ぶことにしましょう。
新年、あけましておめでとうございます。

星花の偽日記

『到着』

あけましておめでとうございます!
お兄ちゃん様!

今年もよろしくお願いします。
みんなも、挨拶を何度も交わして
年に一度この時だけの振袖を着て
夕凪ちゃんと向かい合って
ぺこっ
今年もよろしくね!
吹雪ちゃんと向かい合って
ぺこっ
よろしくです!
お兄ちゃんは、紋付き。
向かい合ってドキドキしながら
よろしくお願いします。
今年も一年、どうか未熟な星花を見捨てないでご指導ください。
この一年、ずっと一緒にいてくださいね!
小さい子だって、みんな一生懸命丁寧に挨拶をして、
あっちでもこっちでも
家中がさわやかなお正月を過ごしているうちに
元日は明けて。
星花たち家族のお出かけの日になりました。
年末の大掃除と並行しながらの準備だったけど
つい忘れ物などはしなかったですか?
長い移動なので、なるべく荷物は少なくなるようにみんなで心がけて
星花も、持って行きたかった三国志の本は我慢しました。
ときどき読み返しては、やっぱりいいなあと思う三国志。
いつも星花の胸は熱くなってきて
とても大きな広い世界の、普段は見つけにくいところにあるみたいな
私たちが知っていたらいい大切なことを
読むたびに新しく教えてもらっているよう。
具体的にそれが何なのか、まだ小さい星花には説明できないけれど
大切な人を熱く思う気持ちなのかな。
もっといろいろかな。
はっきりしたことは何も言えないけれど──
こんなに心がときめくんだっていうこと、
いつかわかってもらえるように、誰かに伝えたい。
大好きなお兄ちゃんにも
こんなにいいものがあるんだよ、
星花がとっても大好きなものなんだよって
聞いてもらいたくて
今日も、子供みたいに甘えています。
でも、三国志の本は、旅行に行くときは置いていかなくちゃ。
旅行先でなくしたりしたら困ってしまいます。
だから、
昔、劉備様に立派な部下がいたみたいに
立派なお兄ちゃんに星花たちが力になれたら、と想像して奮起する力も
しばらくはおあずけ。
残念だけど。
吹雪ちゃんも図鑑を持っていきたかったのを
なんとか我慢してもらったんだもの。
説得したら、吹雪ちゃんはずいぶん悩んでいたみたいだけど、
ううん、星花にはちょっとそんなふうに見えただけで、わりと冷静な顔だったけど。
でも、星花も夕凪ちゃんも自分の本を持っていくのは我慢するよ、って伝えました。
吹雪ちゃんが詳しく知りたくなったときに、
情報が少なくて弱っていたら
星花が教えてあげられることならいいんだけど
そうでなかったときには、
説得しておいて後で吹雪ちゃんを困らせてしまうかもしれない
あんまりお姉ちゃんらしくない星花ができないこと、
お兄ちゃんに相談してもいいですか?
新年早々ですが
お兄ちゃんに助けてもらいたいのです!
それから、もし気が向いたら
三国志がなくてちょっと気が抜けそうな星花に
お兄ちゃんの強い力を分けてくれたらうれしいです。
もし、お兄ちゃんが何か欲しいものを持ってこれなくて
どうしようって思った時には
どうか星花のことをすぐに呼んでください。
お手伝いを任せてもらいたいです。

長い電車の旅は
退屈だった子もいっぱいいたみたい。
麗ちゃんは張り切ってうろうろして、何度も怒られてしまったけれど。
途中からは、落ち着いて
窓の外を見ていたよ。
座って眺めるのもしてみたかったみたい。
電車の中で時間を過ごして、落ち着けたおしりはときどき線路の起伏にゆれて
ごきげんで小さい子達の遊び相手もしてくれました。
電車通学のお兄ちゃんやお姉ちゃんたちは
長い時間の電車移動も慣れているみたいで
どっしりかまえて、たくましく
みんなを見ていてあげる旅。
立夏ちゃんはあんまり得意じゃないみたいだけど
まだ電車で学校に通うのは一年にもならないから慣れていないとか?
それとも、単純に長い時間の移動が苦手なのでしょうか。
ともかく騒ぎもあったけど
みんな無事に到着できて、よかったですね。
今年のお正月は
今日から、大磯で過ごします。
特に観光をして回るというわけでもなく
のんびりするのが目的。
わりと落ち着いた気分でいられる、
大磯のおじさんの、星花たちにはだいぶ慣れているホテル。
とはいえ、おうちとは違う雰囲気を感じて
新鮮な感じや、ちょっと緊張感も今はあって。
これからはじまった、何が待っているかわからない新しい年に
このきりっとした旅先で気持ちの備えをするような、
わくわくするだけとも言いきれないけど
不安だけでもない旅行の始まり。
今日は部屋で休んで移動の疲れを取って、
明日はみんなで近くの神社に初詣に行く予定です。
星花がお願いすることは何にしたらいいかな。
今年も一年、元気でいられますように、
かな。
家族が仲良く、みんなで楽しく過ごせますように、
も大事だな。
欲張りでしょうか?
きのう、着慣れない振袖を気にしながら
海晴お姉ちゃんから、あーちゃんまで
願いを込めて書初めしたことを思い出します。
まだお習字ができない小さい子は、ペンだったけれど。
あーちゃんはペンも持てなかったけれど。
でも真剣にこめた思いは、みんなが同じくらいだったと思います。
みんなの願いが叶いますように。
そして、今年一年を一緒に過ごす星花も
みんなが喜ぶ顔を見ることができますように。
いつもがんばって、それぞれの大事なお願いを叶えようとしている家族のみんな。
星花は立派だと思う。
みんなの願いが叶う一年になったらいいな。
夕凪ちゃんが苦手なお野菜をぱくぱく食べられるようになりたい書初めも
星花はなんだかかわいくて、ちょっとくすってなってしまって
夕凪ちゃんをむくれさせてしまったけど。
神様、どうか笑ったりしないで
とっても真剣なお願いを叶えてあげてください。
星花が一番うれしいと思えるのは
たぶん、みんなのことだって気がします。
明日の初詣は、そんなお願いをしようかな。
星花の大好きなお兄ちゃんのお願いも、どうか叶いますように。
なんでも、
たくさん。
星花の特別な人たちがする
お願いの全部が、間違いなく叶ってください。
そうしたら星花は
今年、世界で一番しあわせな女の子になると思います。

麗の偽日記

『旅と温泉』

はいはい、
おめでとうございます。

年が明けてから
もう何度も。
繰り返してきたあいさつ。
礼儀正しく
まずはママに。
次は海晴姉様から順番に
末っ子のあさひまで。
たぶんあさひはよくわかっていないけど。
でも、あいさつをしたら
うれしそうにうきうきと返事をするから。
まあ言ってることは言葉にはなってないけれど。
きちんとしたあいさつはおうちの決まりだし。
だからあさひにも、今年もよろしく。
この一年、またみんなで過ごしていくために。
おめでとうございます。
何度口にしても
気を抜きたくない
年の始めの大事なことば。
すがすがしい一年の始まりがやってきたと
みんなで言葉にして伝え合って、顔を合わせて
実感しながら──
また今年もお世話になりますと
新年のさわやかな日の出みたいな気持ちを届ける。
おろそかにしたくない、
心をこめたあいさつを
重ね続けて
今日で三が日も終わり。
私の日記は今年初めてだから、
一応ね。
もうそろそろいいかなと思いながら。
いい加減、おめでとうもどうかなと悩んだりしながら。
三が日の間は、お正月のあいさつをするきちっとした場だと思うから、
言ってはみたという感じです。
でも別に、
実際のところ、もういいわよね?
もう新年になってからも三日も顔を突き合わせて
うるさくても面倒でも、あれこれ一緒にいる時間も長くて
大変な長い旅を、みんなで電車に揺られてやって来ました。
楽しかったり、にぎやかだったり、さっそく泣いたりケンカしたり、いろいろあったり。
そろそろさわやかな新しい年も、たぶんないだろうし。
というか最初から
元日の朝に目を覚ましたときから
家の中はもう日常が始まったみたいにざわざわして。
それなりに晴れ着を着せてもらったら、ぴしっとした気分になったもので
新年のあいさつをきちんとして、
決意を込める書初めもがんばろうと思ったけど。
気が引き締まるお正月の空気を感じるまもなく
すぐ庭に出て行って凧揚げをする子たち。
かるたもそんなに晴れの新年の気配を感じるほどじゃない。
この手の遊びが得意な子たちは競い合いながら、
まだ真剣勝負は苦手な小さい子たちに手を貸してあげたりもして。
だいたいはいつもと同じ。
何も変わらない大騒動の家族。
まあね。
年をまたいだくらいで、急に変化があるわけじゃない。
それはそうよ。
むしろ疑問なのは、
ユキちゃんが言ってたみたいに、日付が変わって新年になった瞬間に
静かに穏やかなあいさつって
本当だったのかしら。
この家の人たちだもの、
たぶん、その場の雰囲気で厳粛に見えただけで、
実際は結構うるさかったんじゃないの?
私は眠ってしまって体験することができなかった
年越しの時間。
来年はちゃんと起きたままで、確認しなくっちゃ。
私たちの家が迎える晴れがましいその時間。
この目で見るまでは、真相ははっきりしないわ。
もう少し大きくなれば、今度は私も起きていられるだろうし
そうしたらまた心のこもったあいさつね。
新しい年が来たことをみんなで分け合うようなうれしいあいさつは、
またその時になってからのこと。
だから今日は、
もう三日目ね、って
そんなあいさつ。
今年もよろしくというより
新年そうそうそんなにうるさく言わなくてもわかってる、
いくらこの辺に来る機会があんまりないからって
別に、一人で喜び勇んで
勝手に電車を見に行ったりなんてしません、
という感じ。

今年になって三日目でも、初詣に行くならきちんとしないとね。
新年らしい、気が引き締まるこの緊張感。
まあ、家族で行くことだからあんまり贅沢は言わないわ。
周りがうるさくても
私自身が清らかな気持ちでお参りできれば、それでいいの。
新年のお願いは
私たち家族が健康でありますように。
やっぱり、こういう行事は恒例だし。
あんまり奇をてらったりしないでいいの。
それはまあ、他にお願いしたいことはたくさんあるけど。
初詣はこういうものだと思うから。
私のお願いは、それだけ。
今年も神様に頼ることはたぶんたくさんあると思う。
お願いしたって、叶えてくれるとは限らない。
むしろ、お願いしたくらいで叶うほうが珍しい。
わかっていても、
今年も私は、お願いを何度もすることになるのかな。
心安らかに過ごしたい、とは言いません。
どうせ、いくら願ってもそれは無理だし。
だったら他に願うことはいっぱいあるし。
とりあえず、晴れがましいお正月にする最初のお願いは
たったひとつ、シンプルに。
今年も、私たちには
たくさんの出来事があるはずだから
みんなが元気で、どんな日々も乗り越えて行けたらいい。
それが一番最初の
大事な土台だと思う。
神様、よろしくお願いします。
まあ、私がお願いしたくらいで何も変わらないだろうっていうくらい
みんなはお正月から元気だったけどね。
神様も、あんなに騒々しく、いっぱいお願いされて
ちゃんと聞いてくれるのかな?
神様だから
大丈夫だよね。

明日からは特に用事もなく
ホテルで待ったりする予定。
散歩に行くときは
たまに私のお勧めコースも辿ってくれたら
きっと、あなたもすてきなものが見られると思うわ。
この辺の線路は把握しているから。
帰宅するのは6日の予定。
七草粥は、おうちでいただくことになりそう。
まるまる自由でいられる日はそんなに多くないけれど
お参りを済ませたから、あとは観光地を見に行ったりするわけでもないし
温泉につかるくらいしかすることはない。
むしろ、そんなに何日も温泉に入りすぎてふやけてしまわないか悩むくらいよ。
他にすることがあるというわけでもないし。
年の初めくらいは、ゆったりできるかな。
家に帰ったらすることもいっぱい。
大掃除して出てきたがらくたを
いったん空いている場所に詰め込んで、
お風呂もしばらく使わないつもりで
またお風呂掃除が大変そうだし。
おうちに帰った忙しい海晴姉様たちだって、温泉でのんびりしてくれたらいいと思うけど
やっぱりうちのことだから、なかなかそうもいかないかもね。
この旅行先でも、あなたに頼らないといけない騒動はたくさんあると思うけど
まあそういうわけだし、とりあえず年の始めに、もう一度あいさつ。
今年もよろしくお願いします。

蛍の偽日記

『効能は』

ママが持ち帰って、
みんなに見せてくれる昔の番組は、
白黒の時代から
激動の昭和を経て
今の私たちの世代に至るまで。

おうちの子が芸能人になるなら
その時のために、知っておくと役に立つかもしれないこと。
海晴お姉ちゃんは、もうテレビに出ている人。
お天気お姉さんだから
温泉リポートの番組には出ないかな?
たまに、出演してみないかって話はあるんだって。
こうして大きなお風呂があるホテルに来てみると
ママが見せてくれる番組を思い出します。
温泉につかった美人のお姉さんが
泉質は?
効能は?
説明してくれました。
昔は、そんな番組もやっていたんですね。
テレビって、本当にいろんな番組があるんだあ……
びっくり。
でも、海晴お姉ちゃんは、そんなにたくさんの番組に出るつもりはないって。
一途なお天気お姉さんです。
それに、お風呂に入っている姿は
あんまり他の人に見せると
恥ずかしいですよね。
お兄ちゃんも、
こういう番組に出てねって言われたら、困ってしまいますよね。
ママはお兄ちゃんに期待しているんです。
芸能人になったら、温泉番組に出てほしいって。
お兄ちゃんはいつか芸能人になるのかな?
そんな忙しそうな、すごく大変そうなお仕事に就いたら
蛍はお兄ちゃんを愛する妹として、おうちでサポートしてあげなきゃ!
おいしいものをいっぱい作って
もりもり栄養をとってもらいたいです。
忙しすぎて家にいる時間が少なくなってしまったらさみしいな。
お兄ちゃん、芸能人になるときはちゃんと蛍たちに相談してね。
絶対だよ。
約束です。
ただ、お兄ちゃんはもう蛍の心のアイドルみたいなものだから
毎日の生活を、ふだんから支えていたくて
蛍はお兄ちゃんのために一生懸命に、
できることを少しでも、って張り切ることは、
もう今でもしているのかもしれないな。
お兄ちゃんはもう、蛍が一生懸命支えたい大切な人なんです。
それにしても、ママが温泉番組に出てほしいのって
やっぱり、おじさまのホテルがいいところだから
紹介したいのでしょうか?
私たちが紹介したら、きっとおじさまはうれしいですよね。
でもさすがに、テレビのたくさんの番組に出演できる子はなかなかいない気がするな。
お兄ちゃんがテレビの人になってしまったら蛍は寂しいし。
立派で気持ちのいいホテルだけど。
残念ながら、蛍たちが紹介はできない。
知る人ぞ知る、ですね。
お客さんがいっぱい入っているから、もう有名なのかな?
お正月の観光シーズンのピークが過ぎても、大きなホテルはまだいっぱい。
人が多いからみんな迷子にならないように、一人で出歩いたらいけない約束なの。
お兄ちゃん、突然ふらっと大浴場にでも行きたい気分になったら
蛍に声をかけてくださいね。
蛍はこういう立派なところで落ち着いて過ごすのが苦手というか
何もしなくていいと言われても
できることがないかうろうろして、うるさいって氷柱ちゃんによく怒られています。
せっかくだから骨休めすればいい、
普段からおうちの仕事をがんばっていてえらい蛍ちゃんだから、
って。
蛍は自分が好きで、やりたくてやらせてもらっているお仕事だから
全然大変じゃないの。
毎日とっても楽しいし
こういうとき、することがないとかえってどうしようって思うくらいです。
お兄ちゃんも、蛍はがんばっていてえらいと思う?
もし、そう思ってくれているなら蛍は照れてしまいます。
でも、嫌じゃないよ。
もっと褒めて、ってこっちから言うのは変だけど
気持ちを全部伝えてほしい家族なら
褒めてもらえるとうれしいよ、って言ってもいい?
好きでやっていたら、家族の役に立って褒めてもらえるなんて
蛍はお得な子ですね。
蛍の好きなことをさせてくれる家族に
感謝、感謝です。
お兄ちゃん、
蛍のお料理をいつもたくさん食べてくれて
うれしいんだよ。
おいしいって言ってくれて
ありがとうございます。
お兄ちゃんの喜ぶ顔をもっと見たいよ。
笑顔でいてくれて、よかったな。
蛍をたくさんうれしい気持ちにしてくれる。
蛍と一緒にいてくれる。
毎日、蛍を幸せにしてくれていますね。
言葉で伝えきれるかわからないけれど
とっても感謝しています。
ありがとうございます。
お兄ちゃんといる蛍の時間は、いつも大切に感じる。
あんまりたいしたことができない蛍で
芸能人になったりなんてもちろん出来ない。
それなのに、たぶん、どんな輝く立派な人たちみたいになるよりも
蛍は、いま自分がここにいてよかったなと思う。
それが、蛍がいつも感じていること。
家族には何でも伝えたいから。
蛍の気持ちを
素敵なお兄ちゃんにたくさん聞いてほしいです。
それと、蛍の悩みは
こうして特にすることがないときに、弱ってしまうことです。
お兄ちゃん、
何か蛍にしてほしいことないですか?
それともやっぱり、温泉に入ってゆっくりしたらいいかなあ。
今なら、温泉を紹介する仕事でもなんでも
蛍ができることだったら、してみたい。
あんまり蛍に温泉リポートを期待している人はいないですか?
スタイルがいいほうじゃないので……
こういう体型はテレビとかでは求められていないかもしれないし。
蛍は難しい説明が苦手です。
よくお世話になっているこのホテルの温泉の効能だとか
いつもすっかり忘れて
私たちが楽しく入っているお風呂なんだから
効能は、家族円満です!
と、みんなで話をするから
今でもそれで納得している蛍です。
たぶん温泉の科学的な泉質調査って、
家族円満をまねく成分は見つからないと思うの。
自宅のお風呂も、別に温泉を掘り当てたわけじゃない普通のお湯なのに
家族円満の湯だということになりそうだし。
難しいことは苦手な蛍ですけど
テレビに出るわけじゃないし、
大好きなお兄ちゃんに説明してあげるお話は
これくらいしかできないんですけど。
小さい頃から旅行に来てはよくお世話になった温泉です。
おかげさまで、みんながこんなに仲良くなれました。
お兄ちゃんもぜひお風呂を楽しんでみてくださいね。
家族の笑顔に
きっと効くと思います!

小雨の偽日記

『席決め』

眺めがいい窓側の席と、
移動しやすい通路側の席と。

お兄ちゃんはどちらがいいですか?
小雨は通路側の席になって、
みんなを助けてあげられたらと思っていたんですけど。

行きの電車では
窓側に座った星花ちゃんと夕凪ちゃんが
周りを見に行こうとするときに
小雨は何度も立ち上がって、道を開けるので
そのたびにつまずいては
手元の荷物をころころ転がして
みんなに迷惑をかけてしまった
不器用な小雨なので……
帰りの電車は、窓側にいたらいいでしょうか?
たぶん疲れている子は眠ってしまうだろうし。
行きでさんざん見ては、みんなで歓声をあげた電車旅行。
車両には他に人がいなかったとはいえ、騒いでしまったのはいけなかったかな。
でも、小雨にはみんなは止められなかったし
むしろ、小雨も声を出してしまっていたかもしれないし。
大きな声は出せない小雨ですけど
みんなと一緒に同じ景色を見ているのは楽しかった。
窓の外、通り過ぎていく知らない風景は
だんだん知らない町の、見慣れない色合いに変わっていく。
何度か通っている大磯ですけれど、年に一回か二回くらいですから
やっぱりいつも車窓の眺めは新鮮ですね。
次から次へと移り変わる景色が
私たちが、楽しみな目的地へ近づいていると伝えてくれているみたいでした。
楽しい旅行でした。
電車を楽しめるのが麗ちゃんだけじゃなくてよかったですね。
長い移動時間で、どうなるかと思っていたけれど
麗ちゃんは電車の難しい話をするだけじゃない。
窓の外にどんな景色が見えるか知っていて
小雨たちに教えてくれます。
今度の旅行は、ホテルで温泉に入るくらいしかすることがないし
私たちが行きなれている場所だから
麗ちゃんのしおりは、今回はそんなに情報は多くなかったけど。
そのぶん、電車の中でいろいろ教えてくれました。
年末だから、力を入れてしおりを作るのも難しいけど
このあたりの地図も役に立って、
いつも家族旅行は、麗ちゃんの電車好きに助けてもらっています。
忙しかった年の暮れに、お疲れ様です。
大掃除も途中だったりするし。
麗ちゃんは計画的に進めて、自分の掃除はきっちり済ませたんですけど。
立夏ちゃんがとても困っていたから
麗ちゃんも、小雨と一緒にお手伝いをしたり
どこかへ行っているようで、姿が見えなかったり。
立夏ちゃんは、麗ちゃんは逃げちゃったんだって嘆いていたけれど。
後から聞いたら、いらないものを運んでいたんです。
旅行中は使わないお風呂で
はしっこに積んである荷物は立夏ちゃんのものが多いみたい。
帰ったら、お風呂の掃除が大変ですね。
麗ちゃんはてきぱき片付けを進めていて
立派でした。
小雨なんて、立夏ちゃんのお手伝いで精一杯で
自分の掃除もあんまり進んでいないくらいです。
でも、家族のためにたくさんがんばった麗ちゃんの手を借りるのは悪いから。
年をまたいでしまったけれど
小雨の大掃除はこれからです。
明日は、帰ったら旅行の後片付けをして
少しは小雨自身の掃除も進められるかな?
旅行から帰ったときの一番の大仕事は
やっぱりお洗濯でしょうか。
お天気になるといいですね。
そうだ、
晴れてうれしいのは、お洗濯だけじゃないんです。
ホテルならちょっと寒い日でも、お風呂で体の芯からぽかぽかになれますよね。
おうちだと、そうはいかないから。
今日は寒の入りだって、海晴お姉ちゃんが教えてくれました。
季節はいよいよ本格的に寒さを増していきます。
いままで大丈夫だったからって
油断をしないで。
明日の帰りも、晴れてくれるかな。
そのあともずっと
よく晴れて暖かい日が続いたらいいのですけど。
みんながうれしい、気持ちのいい日差しが続いたら
冬だなんてことも気にならずに
みんなが元気で過ごせるのかな。
小雨が願ったところで、どうにもならないことですね。
でも小雨は、こんなちょっとしとしとした名前だけど
やっぱり晴れている日のほうが気持ちがいいんです。
お風呂に長く入っているのが苦手なのは
小雨があんまりあったまってしまったら温泉になっちゃうからなのかもって
立夏ちゃんが言ってました。
温泉になるかどうかはわかりませんけど……
熱いお風呂が苦手で、せっかくの温泉なのに長く入れなくて
損じゃないかな、って立夏ちゃんや麗ちゃんは気を使ってくれます。
でも小雨は、あんまりお風呂に入れなくても
みんなと旅行に来て
とっても楽しい時間を過ごしたから、満足です。
何をしていたかというと、特に何もしていなくて
小さい子とお部屋で遊んでいたり、ときどき散歩に出たりするくらいでしたけど。
晴れた日が続いて、あんまり寒くもならない、いい陽気でした。
海晴お姉ちゃんはもうちょっとここに泊まっていたいって言うし
春風お姉ちゃんも、もっと温泉にいっぱい入りたかったって。
お兄ちゃんと一緒にお風呂に入りたかったんだそうです。
それはなんだか恥ずかしい気もするけど、いいのかな。
家族だから、かまわないのでしょうか?
むしろ一緒に入るほうが家族らしい付き合いだと言われたら
そうなのかなと迷ってしまいます。
小雨はたぶん恥ずかしくて
なかなかお兄ちゃんと一緒にお風呂に入れないと思います。
そんな小雨でよかったら
これからも妹でいさせてください。

いよいよ新年を迎えた小雨たちの
未来へ向かう、心をこめたあいさつは
いつもありきたりな言葉だけど。
小雨の今の精一杯の気持ちを伝えようとしたら
どうしても当たり前のあいさつになります。
こんな小雨の心からの言葉を、お兄ちゃんに聞いてほしい。
どうぞ、今年もよろしくお願いします。
新年最初の旅行は
とってもいい旅行でしたね。
熱いお風呂が苦手な小雨でも、満足しています。
みんなも、楽しい旅行になったでしょうか。
おうちに帰るまで、安心したらいけないかな。
もう少しの時間ですけど、楽しく旅行を続けたいですね。
麗ちゃんは、小雨が帰りの席で悩んでいると相談したら
電車の席くらいで
こんなに真剣に悩むことができるなんて
幸せなことだわ、って言ってくれました。
そうですね。
何も思い残すことなく、旅行から帰れそう。
家族みんなのおかげです。
なんだかやけに細かいことで悩んでいるね、ってあきれていましたけれど。
こんなことで真剣になれるのは
たぶん、家族のみんながとても大事だからなんだだと思います。
今年も家族で一緒に
たくさん、楽しく過ごせるといいですね。
みんながいてくれて
一年のはじまりは、とても幸せな時間になりました。

青空の偽日記

『おかえり』

そら、かえった。

おんせんのおふろから
かえったよ。

ただいま!

そら、かえったら
ただいまっていうよ。

そしたら、
きこえてくるよ。
おかえり!
そらちゃん、
おかえりなさい!

はーい、
ただいま。
そらだよ!

おふろにいくよ。
りょこうだよ。
みんなでいったの。
おうちのなか、だれもいない。
でもね、
いちばんにおうちにはいったゆうなが
おかえり!
みんな、おかえりなさい!
わーい!
おかえりなさいが
かえってきたよ!!
ただいま!
ゆうなにただいま!
そらちゃん、おかえり!
そらはにばんめ。
ただいま、
ただいま、
いってたら
みんなかえってきた。
そらは、もうかえったのに
おそいね?
みんな、なにしてた?
きょうは、
こさめが、でんしゃのなかで
にもつをさがして
おにいちゃんがのこって、さがして
それにきがついたうららが
ごめん!
にもつはさきにおろした!
こさめのことがね、
しんぱいだったんだって。
こさめはうっかり
うららのはなしをきいていなかったんだって。
まどから、おにいちゃんにおしえたら
おりるのがまにあわなくて
でんしゃにのっていっちゃった!
どこにいってたの?
みんなでぽかーんってくちをあけて
みていたの。
がたんごとんと
でんしゃのよこを
みていたの。
ちいさくなっていく
でんしゃのおしりを
みていたの。
みんな、びっくりして
せんろをながめて
そのままびっくりしていたら
おにいちゃんがべつのでんしゃで
もどってきた。
おにいちゃん、
おかえり!
きょうはあさから、つららが
わすれものはないかって
みんなにきいていた。
まさか、おにいちゃんがわすれものになるなんて
おもわなかったわ、って
ずーっとせんろのさきをみていた。
だいじなものをわすれたら
いけないよ。
わすれものをしてしまったら
おとなのひとにそうだんしよう!
うららが、えきのひとに
でんしゃのじかんをきいているうちに
おにいちゃんはもどってきた。
おうちじゃないのに
おかえり!
おかえり!
えきだよ、
へんだね?
でも、
みんなうれしそうね。
そらもいうよ。
おにいちゃん、おかえり!
おにいちゃんがかえってきて
よかったね!
まだ、えきだけど!
おうちにかえるのは
ゆうながいちばん。
そらがにばん。
りっかがさんばん。
そらちゃんにまけちゃったー!
わーお!
って、おどろいた。
みんな、なんでおそいの?
わすれものしてさがしてた?
そうじゃなくて
つかれていたから、ゆっくり。
おうちがみえたら
あわてなくてもいいんだって。
おおそうじのつづきとおせんたくがたいへんだから
ちょっとゆっくりかえったんだって。
だから、
みんながかえったら
そらがいうの。
おかえり!
そしたら、
そらもおかえりって
いってもらった。
ちがうの!
そらがさきにかえったの!
でも、
たのしいな!
そらもただいまっていった。
ただいま!
おにいちゃん、ただいま。
おかえり。
おうちだよ。
わすれものをしないで
かえったよ!
みはるは、
かえるときまでおふろにはいって
もっとおふろにはいりたいな、
かえりたくないな、
って
さみしそうなかえりみち。
おうちについたら
ふー、おちつくな、
やっぱりいえがいちばんだな!
だって。
そらのおうちがいちばん!
みづきがおしえてくれた。
おうちのおふろもわるくない。
かみさまがいるよ。
おうちには、えらいかみさまがいっぱいいて
かまども
おといれも
おふろも
みまもっていてくれる。
だからおふろはきれいにつかおう!
おんせんは、ないけど
おにいちゃんがアイドルになって
おおがねもちになったら
おうちにおんせんをつくってねって
みはるがおねがいした。
おにいちゃんは、アイドルになるの
ちょっとにがてだよ、だって。
そらがおおきくなって
おうちにおんせんをつくるよ。
そらは、おみせができるから
おみせをして
おおがねもちになる!
よっといで!
そらのおみせは
そらやさん。
さくらのおみせは
さくらやさん。
ほたるのおみせは
パンやさん。
なぜかバレンタインは、ケーキのおみせにさそわれたって。
でも、ことわったんだよ。
バレンタインは
だいじです!
ねんにいちどだけやってくる
ほたるのおしごと。
バレンタインやさん。
なにをうる?
はるかのおみせは
およめさんだって。
そらも、おおきくなったら
みおにいちゃんのおせなかをながす!
みんなでながすよ!
およめさんも
かみさまも
いっぱいの
いいおうち。
おにいちゃんのおみせは
おにいちゃんやさん?
なにをうっている?
あのね、
みぞれがいってた。
おにいちゃんがほしいひとは
せかいじゅうにいるけれど
どこにもうっていないんだって。
いくらおかねをあつめても
せかいじゅうのおかねをぜんぶもっていても
かえないものは
おにいちゃん。
あとね、
かわいいそらちゃん。
あと、かぞくのみんな。
そらやさんでも
そらはうっていない。
そらやさんでうるものは
なんだろう?
そらがすきな、ぬいぐるみ?
そらは、げんきだねってよくほめてもらう。
げんきをあげるおみせ?
おにいちゃんやさんは、なにをうる?
おにいちゃんのいいところは
そらのおにいちゃんになって、
そらとおなじでげんきなところと
そらみたいにちっちゃくてかわいくないけど
でも、かぞくでいちばんやさしいところ。
おにいちゃんやさんでも
どこでも
おかねでかえない
だいじなおにいちゃん。
でんしゃであわてて、
おにいちゃんをわすれものしないでよかった!
そらのおうちに
きょうも、おにいちゃんがいてよかったな!
ただいま。
おかえり。
おんせんじゃない、おうちのおふろが
いちばん!
おんせんだったら、もっといちばん?
きょうのおふろは
おそうじをして
おうちではいる、おふろだよ。

さくらの偽日記

『おしょうがつ』

あのね。

おにいちゃん。
あの。
みぞれおねえちゃんがね。
ほんとに
すごかったの。

さくら、びっくりした!
いつもはね、
びっくりしすぎると
こわくて、おなかがいたくなってしまうから
とってもかなしくて
なきたくなってしまう
さくらなの。
あんまりびっくりしたら
ないちゃうよ。
おにいちゃんがみていてくれて
まもってくれるから
そんなときには、なかない!
だけど
ようちえんは
おにいちゃんがいなくて
マリーちゃんも、みづきちゃんもちがうクラスなの。
どうして、おなじおへやにいられないの?
としがちがうから?
としがちがうくらい……
いいのに!
ちょっとだけだし
としをとっても
みはるおねえちゃんは、まだわかいから
おはだもすべすべで
おまけに、きのうまでおんせんにはいっていたから
いま、おはだは
おうちのみんなとぜんぜんかわらないんだって。
としなんて、きにしないで
おにいちゃんもようちえんにきて
さくらのこと、まもってほしいよ。
だめ?
ようちえんだから?
ちいさいこのおゆうぎをするより
おにいちゃんは、いっぱいすることあるんだよね。
おゆうぎは
たのしいのにな。
おともだちがいっぱいいるよ。
ようちえん。
あっ!
おもいだした!
おともだちとおにごっこしているとき
わあ、おいつかれちゃった、
つぎはさくらがおにだな、
びっくりしても
どきどき、
ぴょんぴょんはねるさくら。
たのしいんだよ。
まけないぞ!
って、おもうの。
よくないちゃうさくらはね。
なんと!
たのしかったら、
びっくりしてもへいきなの。
わらっているよ。
さくらにそんなところがあったなんて!
さくら、しらなかったな。
みぞれおねえちゃんにびっくりさせてもらったら
とってもたのしくて、
すごいなあ、
みぞれおねえちゃんみたいに
あたまがよくなりたいな!
と、おもいました。
おどろいて
かんげきした!
かんげきって、りっかちゃんがよくいうよ。
うわーい、ちょーかんげき!
いっしょうわすれない!
ゆうなちゃんもよくいうよ。
まほうみたい!
かんげき!
ゆうなもすぐ、りっぱなまほうつかいになる!
すごいすごいみぞれおねえちゃんをみて
さくらもかんげきしました!
かんげきだとおもうよ?
ちがうかな?
とにかく、おどろいたの!
あのね。
みぞれおねえちゃんが、
なんと!
こんなことをいった。
おぼうさんがふたりで
おしょうがつだ!
す、
すごい!
おしょうがつだよ!
おにいちゃん、わかった?
おぼうさんのことを
おしょうさん、っていうでしょ?
いっきゅうさんのおはなしで、
みずあめをたべられてしまった
おしょうさん。
いっきゅうさんは、こぼうずさん。
おてらにいるおとなのひとは、おしょうさん。
おしょうさんは、
ママなのかな?
おねえちゃんかも?
もしかしたら、
いっきゅうさんのおにいちゃんかもしれないね!
さくらのおにいちゃんは、おにいちゃんだけなのに
おそとには、ほかのこのおにいちゃんもいるから
さくらがこまって
おにいちゃーん、
たすけにきてーってよんだら
ようちえんのおにわで、びっくりしてこっちをみるこがいる。
さくらのくみに
いもうとがいるおにいちゃんなんだって!
おうちのおにいちゃんも
ようちえんにかよえるこだったらな。
でも、おにいちゃんは
よそのおにいちゃんより
おおきくて
りっぱだな。
ちいさくならないで
ようちえんにきてね。
それでね、
おしょうがつだけど、
つーって、わかる?
わん、つー、すりー、
って、いうでしょ?
あれは、かずをかぞえている。
つー、は
えいごで、に、のこと!
えいごは、とおくのくにのことば。
うみのむこうのくに。
おきなわよりも、
おおいそよりも、
さくらがぜんぜんしらないくらいはなれたところの
もっととおくのくに。
マリーちゃんは、うまれるまえは
とおいくにのじょおうさま。
うみのむこうのくにで、あいをつらぬいた。
とおくだっていうから、えいごのくにだとおもう!
うまれるまえって、あるの?
さくらがうまれるまえは、なんだったんだろう?
おぼえてないよ……
ほんとうにあったのかな?
あとね、おぼえていないこと。
さくらはちいさいころは、あーちゃんみたいにちいさくて
ほにゅうびんでみるくをのんでいたし
りにゅうしょくもだいすきだったんだって。
おぼえてないの。
さくらはほんとうにあかちゃんだったのかなあ?
おにいちゃんなら、わかるかな?
さくらがあかちゃんだったかどうか
しってる?
それで、おにいちゃん。
おしょうがつのいみ、さくらがいっしょうけんめいせつめいした!
どう?
としのはじめをおしょうがつっていうんだけど
おぼうさんがふたりいても
おしょうがつ、になる!
すごいなあ。
よくかんがえつくね。
どうやったら、そこまできがつくのかな?
あたまがいいんだね。
さくらね、
もうちょっとおおきくなったら
ふぶきちゃんみたいにあたまがよくなるかな。
あとなんねん?
やっぱり、としがちがうとまだまだなの?
そのあとは、もっとおおきくなって
みぞれおねえちゃんみたいにとってもかしこくなったり
はるかおねえちゃんみたいにきれいでやさしいおねえさんになったり
みはるおねえちゃんみたいにおはだがつやつやになったり
おにいちゃんみたいに、おおきくてかっこよくなったりする?
えへへ。
おにいちゃんみたいになれたら
さくら、うれしいです!
きょうはまだ、ようちえんはおやすみ。
こうえんで
ようちえんのおともだちにあって
さくら、はりきって
おぼうさんがふたりだって!
すごいねーって
おしえてあげても
ふーん、
だけなんだよ。
さくら、
かんげきしたのに!
みぞれおねえちゃんみたいになりたいきもち
おはなししたかったのにな。
おにいちゃんは、
さくらのおはなしきいてくれるね。
やさしいの。
さくらのおはなし、
あんまりじょうずじゃないみたいなの。
もっとおはなししたいことがあるのに
なぜか、とちゅうでおわっちゃう。
でも、おにいちゃんはにこにこきいてくれて
ぜんぶおはなしできて
うれしい!
やさしいおにいちゃんに
いっぱいきいてもらいたい、さくらのおはなし。
こんなににがてなのに
おにいちゃんは、
さくらのおはなしがうれしいって
きいてくれる。
みぞれおねえちゃんもかっこいいし
おにいちゃんもかっこいい!
さくら、
いつかぜったい
おにいちゃんみたいになる!
そしたら、
さくらは、おにいちゃんのさくらにおはなしして
とってもたのしいよ。
かな?
……
やっぱり、
おにいちゃんにおはなしをきいてもらわないと
さみしいよ?
さくら、おにいちゃんみたいにやさしくなれないのかなあ。
あ、そうだ。
おしょうがつだから
おめでとう。
おにいちゃん。
あけましておめでとうございます。
ことしもいちねん
さくらのこと、
とってもやさしく
だいじにしてください。
おめでとうって、
うれしいことばなの。
いいことあったね、
おめでとう。
おしょうがつだから
おめでとう。
いちねんじゅう
おめでとう、の
おしょうがつだったらいいかも?
ずーっと
ずーっと
おめでとうございます、
って
おにいちゃんとさくらがえがおの
おしょうがつだよ。
でも、あしたから
ようちえんなの。
せんせいとおともだちみんなに、おめでとうをいったら
おしょうがつのあいさつは
さみしいけど、もうおわりなんだって!
どうして?
さくらは、おにいちゃんがいてくれるから
まいにちうれしいのに
どうして、おめでとうじゃないの?
としがあけて
おしょうがつのじきがおわっても
おにいちゃんとさくらだけ、おしょうがつだったら
いいとおもうよ!
おにいちゃん。
さくらといっぱい、おしょうがつをしようよ。
おめでとう、のあいさつは
いいひのしるし。
さくら、
おにいちゃんにいいひだねって
あいさつしてもらえたら
さくらも、
おにいちゃんといると、いいひだよって
おはなしをたくさんするね。
おしょうがつがおわっても
まいにち
まいにち
いいひだなって
よろこんじゃう。

霙の偽日記

『新年』

あけましておめでとう。
これが今年最初の、私の日記になる。
去年が終わろうとしている頃、
この年もまた滅んで行き
私たちが儚い運命を受け入れ、やがて塵に戻る日が
またわずかに近づいたのだと思い
いつか必ず訪れるこの宇宙の最後を想像すると
それはエントロピーが増大していく結果だと言われるが
であるならば、この私の部屋もエントロピーが増大を続けるはずであり
なぜ終わりを迎えるときに部屋の掃除などをするのだろうと
ゆっくり考える楽しみの果てに
年が明けて、
私たち家族は新しい何かに向かって歩みだしている。
そうか、
大晦日は終わりではなく、始まりの準備に過ぎなかったのだな。
そうとわかっていれば
なんだかんだ言い訳をして、部屋の掃除を引き伸ばして
今こうして乱雑な部屋を前に途方に暮れてなどいなかったであろうに。
冬休みあけに提出する宿題は、今日持っていく必要があるため
どうにか発掘できたが
これから授業が始まるのに
教科書の一冊すら見当たらないというのでは
少し困るかもしれないな。
まあ、
どうにかなるだろう。
すべては塵に帰り
消え去っていく定め。
何もかも、形をとどめてはいられない。
弱い私の力で解決できない悩みは、この身と共に消え去る。
宇宙におけるただひとつの真理だ。
私がやがて
あのきらめく星空の一部に変わり、消えていくこと。
あいにく今夜は、私たちの町では久しぶりの雨で
片付けの途中で休憩を取り
暖かいコーヒーを手に夜空に思いを馳せる豊かな時間は
こんな日に限って得られない。
昼過ぎから降り始めた雨に、
傘を持って行かなかった幼稚園の子たちを気にして
迎えに行きたいと
半日授業が終わって集まった私たち木花に通う面々は
帰り道に幼稚園へ向かうべきか
いったん家へ戻るべきか
たまたま全員が揃ったので
なかなか白熱した話し合いとなったな。
こんなことでもなければ
わからないそれぞれの本音というものもある。
傘の数が幼稚園の子たちの分が足りないとわかったとき、
春風が相合傘を希望するまでは予想の範囲だったが
一応これでも男だから無駄に体が大きくて、傘からはみ出るだろう、
濡れたら風邪をひくから、と
阻止を続けた氷柱の顔が
やけに真剣だった、あの光景。
ふむ。
確かに、全員がオマエと同じ傘で帰ることはできないからな。
かといって、あんまり春風と仲良く寄り添っている場面を見たら
氷柱も心穏やかではいられないのだろう。
まさか、氷柱がそんなに春風に好意を持っていたとは。
春風は優しいものな。
氷柱はまだまだ甘えたい年頃なのだろう。
私でも、春風の包容力には尊敬を覚えるときがある。
オマエも氷柱の気持ちをわかってあげて、
少しは甘えさえてやらないと
あのぷんぷんした性格は、しばらくそのままになってしまうだろう。
それともオマエも春風に甘えたいのならば
相談に乗ってくれると思うし
あるいは、その春風を育んだ姉である私の包容力に期待してもいいだろう。
まあ、今の話はだいたい冗談だ。
どこから冗談が始まったのか
私にもわからない。
軽口とは、そういうものだ。
きっと宇宙のどこかから、目に見えない小さな粒子のようにやってきて
ほとんどは受け止める者もどこにもいないままに
観測さえできず、通り過ぎていくのだろう。
私たちの生きていく日々は、
ときどきはそんな知覚できないいたずらに揺れているのだろうな。
私も、自分にこの種のアンテナがあって
敏感な部分らしいことは、愉快な気もするが
しかし、片付けができる能力が降りて来てくれたらと沈む日もある。
年末だけでもいいのに。
私にとって、この少々うっとおしい雨雲が
春風にはこの上ない歓喜の予感を運び
氷柱がなかなか言葉にできない本心をちらりと覗かせるきっかけであるとしたら
ただ重苦しい灰色の天気というばかりではなく
私に愛する家族がいることによって
その色彩を変化させていきながら
かけがえのないものになるのだろう。
だとしたら、
冬休みが過ぎ、とうとう学校が始まって
明日も寒い中を出かけていく気分さえ
オマエたちがいてくれたら
見たこともないほど彩りを増していくのだろうな。
まあ、いくら寒くて
部屋のどこにも教科書が見当たらないとしても
宇宙は永遠の虚無である姿を変えることなく
私の運命は、お正月気分をおしまいにして学校へ通うようにと告げている。
これからも家族と過ごす新しい年に、少しばかり期待をして
また始まった日常へと、しばらく身を浸すとしよう。
広大な宇宙を、ちっぽけな私たちが遠く彼方まで眺めることで発見があるように
学校生活だってもう少しの間は距離を置いていれば
面白い発見もあるのだろうと考えることもあるが
まあ、距離を置けるものばかりとは限らない。
私が家族といる関係も、遠くから眺めるものではないからな。
離れて見つめなおす機会があるとしても、私はあまり気が進まないだろう。
ヒカルが合宿に行ったとき、一人で自分を見つめなおすことで
新しい発見もしたようだが
私は合宿で遠く離れるということもなさそうだからな。
卓球部の強化合宿などに誘ってもらうこともあるが
特に気が向くわけでもない。
誘ってくる友達は、私が唯一持っている天性の特技なんだから生かすべきだと
失礼なことを言うが
まったく、わかっていないな。
まあその辺は
知っていてほしい相手にだけわかってもらえればいいことだ。
私が伸ばしていきたい得意技は。
私の家族たちが、ただ家族であるというだけで
何よりも愛しく、
かけがえのない大切なものになる、この思い。
決して、口先で人を言いくるめたりする才能ではない。
そうして大掃除の機会を引き伸ばしてきたせいで、今こうして後悔しているのだし。
どうだろうか。
私が姉だからといって、甘えるのが苦手だとは
まさかオマエは考えてはいないだろうな?
次女でありながら、生まれ来る小さな生命たちの
よい導き手であろうと心がけ、
果たして、いつもよい影響を与えられたかどうか不安も残るが
私自身は家族から多くを教えてもらいながら
どうにか、この程度に大きな肉体には成長してきた。
家族と過ごした日々のひとつひとつが素直に染み込んで行くこの体は
おそらく、頼りになるたくましい弟に
支えあう二人の時間を求めることも
そんなに苦手ではなく、教わっているのだろう。
もうすぐ三連休だな。
オマエは、何か予定はあるだろうか?
私と重ねていく日々に
いつも必ず笑顔を保障できるとは断言できない。
だが、愛する妹たちが
可能かどうかを考えず、いつもお前に届けようとしているように
新しい発見を続ける、退屈しない時間贈ろうとすることならば
この私にも、挑戦はできると
教えてもらっているから。
私がオマエを求めているこの思いに
応えてもらうことが、できるだろうか。

海晴の偽日記

『大掃除の続き』

年が明けて
私の仕事も始まって
もう、学校も新学期。

それなのに、
まだ大掃除が終わっていないなんて
そんなことがあると思う?

しかも、
霙ちゃん一人だけじゃなくて
立夏ちゃんもそうだし。
ついつい、みんなのお世話を優先したい
蛍ちゃんや、氷柱ちゃんまで。
でも、部屋の整理整頓をそんなに気にしないヒカルちゃんが
きっちり大掃除を済ませているのは
まめまめしい春風ちゃんが同じ部屋というだけじゃなくて
あんまり物を溜め込んで、増やさないほうだからかも?
だから蛍ちゃんも
どうしても片付けるものが多いみたいで困っているのね。
あんなによくできたかわいい妹なのに。
大掃除は途中で、どうも部屋は散らかっている真っ最中とのこと。
私は見ていないけど。
そもそも、蛍ちゃんと氷柱ちゃんが二人で結託して
他の誰にも部屋を見せてくれない状況なんだけど。
もうすぐだから、と言っているから
今のところは二人に任せておくことにします。

みんなの学校が始まってからはじめての
楽しい週末は
なんと、三連休が待っているというのに
私たちはどうも、大掃除の続きを
しなければならなくなりそう。
そんなことってあるのかしら?
このさわやかな一年の始まり。
さあ、新しい年に
まだ知らない未来へと
全力で
駆け出すぞ!
と、思っていたくても
足元はどうにも、散らかっていて
片付けの用事でいっぱい。
お手伝いを頼まれる子たちも
予定でいっぱいになっちゃった。
旅行している場合じゃなかったのかな……
でも、確か全員がきりがいいところまで進めていったはず。
もう済ませたか、
あるいは帰ってきてからでもすぐ終わるくらいだと
みんながすがすがしい顔で
新年を迎えていたはずなのに。
なぜこうなった?
うーん。
きっと、すぐに終わるはずと思い込んでいたのね。
大掃除って、なかなか時間の見通しが難しいものだし。
時間が空いたから張り切って片付けよう、という時は
あっさり終わってしまって、広くなった部屋で時間をもてあますことも
たまーに、
めったにないけど
たまにはあるから。
たいして時間がかかるわけはないと
思い込んでいたのね。
わかるなあ。
私も、掃除はそんなに得意じゃないほうだから。
あるいは、
旅行から帰ってゆっくりしようとしたその時、
思いがけない場所から
山のように積まれた荷物の山を発掘して
ええっ、この本は買ってあったんだっけ、
みたいなね。
ああ、編み物を途中まで進めてあったんだ、
みたいなね。
なぜか、ある程度進めてから放置した編み物が
最後まで仕上がることは少ないの。
最後まで進められるように余裕がある時期を選んだほうがいいのかな?
でも、何かと用事があるから、たいてい一度や二度は中断するものだし。
どうして春風ちゃんと蛍ちゃんは
きちんと編み物を最後まで仕上げられるの?
そのへん、編み物のコツがあるのか。
また別に、最後まで飽きないコツがあるのか。
一度しっかり聞いておいて
今年こそ、かわいい弟にセーターの一つでも着てもらって
海晴お姉ちゃんの腕で抱かれているみたいに
あったかくしてもらいたい。
でも、実際に腕で抱いているのが好きだから
それで、マフラーより自分の腕で抱いたら
満足してしまうのがいけないのかな?
寒くなったら
いつでも言ってね!
今日の夜から、急に気温が下がる予報なの。
今の時間、もうだいぶ寒くなってきているし。
このごろけなげに文句も言わず
霙ちゃんの片づけを手伝っているのはえらいけど。
片づけがはかどっているから、もう少しと思っても
あんまり夜更かししないで、早めに切り上げて
あったかくして休んでね。
それから、夜まで大好きなお姉ちゃんと楽しく片づけを続けて
なんだか盛り上がってしまって
深夜ならではテンションになってきて
なんだか楽しくて、もうちょっとこのまま話していたいと思っても
そんなのずるいから
早く寝ないとだめだよ!
私だって、部屋はあんまりきっちり片付いているというほどではないし
掃除の手伝いは、キミを部屋に招く口実にできそうだけど
私一人だけの弟クンじゃないんだから
そこはがまんしている。
一緒にいたいときは
おいしいお茶を用意して誘ったり
なんでも悩みを聞いてあげられる
ふたりきりの時間になるようにしたり
キミにとっての
世界にただ一人だけ、
特別なお姉ちゃんになりたいのに
部屋が散らかっているのが役得みたいになって
霙ちゃんはずるい!
そのうち、私の部屋にも片付けの手伝いに来てもらえたら
やっぱり、キミは苦労しちゃうかなあ。
むしろ私が君の部屋の掃除に行ってあげて、
って、掃除が得意じゃないからそれはダメか。
それに、そんな用事で部屋に訪れたとしたら
私は絶対に楽しんで
最初の目的を忘れてしまうわ。
キミといるふたりきりの大事な時間を
掃除よりも、もっと仲良く過ごそうとしてしまう。
そう考えると
実際に部屋が散らかっていて、緊急に助けてほしい霙ちゃんが
せっかくふたりきりでも、他のことをして遊んでいる余裕がないのは
あんがい気の毒な気もするし
やっぱり自業自得でもあるかな。
ともかく
今日あたりから寒くなるから、そんなに急いで片付けようとしないほうがいいと思うわ。
ゆっくりで。
連休は私も
手伝いに、部屋まで行くから。
霙ちゃんは抵抗すると思うけど
そんなわがまま言ってる余裕なんてないんだからね。
掃除しながら、きちんと説教を聞いてもらわないと。
もう私の大事な弟クンをひとりじめにするようなことはだめ、
って。

お掃除が得意な子は、春風ちゃんと小雨ちゃん。
だけど、誰の部屋がどれだけ時間がかかるのか
たぶん二人では手が回らない範囲だし
やっぱり連休は、家族総出になるのかな。
たくましい長男くんがいてくれなかったら
いったいどうなっていたことか、わからないわ。
まあ、
実際どうなるかはまだわからないんだけど。
キミがいてくれるからなんとかなりそうかな、っていう気持ちの支えがあります。
いったい、私たちの家族は
キミがやって来る前はこんなときどうしていたんだろう?
ずいぶん前のこと。
遠い遠い、今は彼方になってしまった昔のことね。
もう戻るつもりはないあの頃だけど
こうして大事な人がおうちにいて
活躍してくれる姿があまりにも頼もしいから
私たちの生活は、最初からこんな時間ばかりだったような気もして。
果たして本当に、遠く離れていた時期があったのかどうか疑問に思えてくる。
キミがいなくては成り立たない私たちの日々。
新年からいきなり、去年の後片付けから始まるのに
変かもしれないけれど
やっぱり今年も、私たちはキミがいないといけないなと実感している。
どうか今年もよろしくお願いします。
キミは今このときも、そしてこれからの一年もたぶんずっと
私たちの中心にいてくれる、この家族の支えです。
きっと、毎日重ねる時間の中で
私たちはにぎやかに過ごしながら
キミが大切な気持ちは、これからもどんどん大きくなっていくんだと思うわ。

真璃の偽日記

『ひみつの部屋』

フェルゼンは
かわいいな。

いつもマリーをさがす
その目はキラキラしている。
きれいなマリーをみつめたくて
子供みたいにきょろきょろする。
何もかもはじめての赤ちゃんのように
瞳には、
また今日もかわいくなったマリーの姿を映している。

男の人らしい
きびしく、セクシーなくちびるは
それなのにマリーたちにどこか似ていて
なぜかしら?
小さな女の子みたいに愛らしい。
よく笑って
ときどきさみしくなったらきつく結んでしまいそう。
マリーといる時のフェルゼンのおくちは
うれしそうに、くいっと
おそらへ向かおうとする。
重力に負けそうな垂れてしまう目元と
どちらが正直者なの?
表情の全部で気持ちを表さないではいられない
マリーの恋人。
いつも女王はあなたをそばに置いて
そしてあなたは、マリーの小さな体を
優しく胸の中に受け止める。
前世の頃に恋人同士で、そう過ごしていたように。
それとも、
もっと前から
この世界の全部がはじまったときからそうだったと思えるほど
二人は、自然に寄り添いあう。
最初からそう決まっていたみたいに、ぴったりする感覚。
革命の火の中であろうと
家族いっぱいのおうちの同じ一員であろうと
二人はどんな身の上に生まれても、必ずめぐり合って
こうして暖かな気持ちを分け合うように
手を繋いで、
ぎゅうぎゅうくっつき合う運命なのね。

それなのにマリーは
気がついてしまったことがある。
ねえフェルゼン。
このごろかわいいだけじゃなくて
大人っぽくなったのかな。
背が伸びたりしたんじゃない?
それとも、何か決意を新たにした?
新年だもんね。
新年だからなのかしら?
マリーの感想は新年とは関係ないのかな?
どうもこのごろフェルゼンは
男らしくなったというよりは
ワイルドになった気がするわ。
なにかあった?
霙お姉ちゃまにこき使われて
疲れているのかしら?
だめね!
霙お姉ちゃまも、フェルゼンのことが愛しくてたまらないってこと
マリーは見ていたらわかるわ。
でも、散らかったお部屋のお掃除をしながら愛を伝えるのは
どうも部屋のお掃除が本当に苦手な霙お姉ちゃまには
難しいのね。
フェルゼンも、許してあげてね。
愛していないわけじゃないし
愛を忘れてしまうわけでもない。
疑う必要なんて何もないの。
でもときどき、他の用事を考えていっぱいいっぱいで
うろたえているだけ。
フェルゼンが手を貸してあげているうちに、
霙お姉ちゃまが愛する人の顔を見る余裕が生まれたなら
瞳は恋をしたようにうるんで、
共に歩む人の、手のひらだけではないぬくもりを実感して
愛は伝わっていくはずなのよ。
マリーは自分のこの目で見なくても
霙お姉ちゃまがどんな風にあなたを見つめるのか
もうすっかりわかってしまう。
それは今、フェルゼンの瞳に映るマリーの表情と同じはず。

それとも、ワイルドな理由は
やっぱりあれかな?
また氷柱お姉ちゃまとケンカしていたでしょう?
というより、怒られてしまって
もう仕方のない子だなあ氷柱は、みたいな
慈愛を込めた視線でかわいい妹を見つめていたでしょう?
ケンカしているのに仲がよく感じるなんて不思議ね。
あのかわいらしい氷柱お姉ちゃまが
フェルゼンにお兄ちゃんとしての自覚を与えて、男らしくしたのかも?
今になってという話ではないかなあ。
氷柱お姉ちゃまが関わっているらしいのは、やっぱりあれかしら。
妙なことに、誰にも見せないように気を使いはじめて何日も経つ
蛍お姉ちゃまと二人のお部屋。
誕生日パーティーはみんなでするから
別にサプライズを計画しているのではないだろうし。
蛍お姉ちゃまも、氷柱お姉ちゃまも
よくフェルゼンのことを見ているから
きっと今度も、またフェルゼンを思って、何か隠しているのよ。
そこまでは、小さい子たちの間で一致した意見。
お兄ちゃんを捕らえて自分たちの心強い仲間にしようとしているのでは、という
星花ちゃんの冗談は、とりあえずいったん置いておくとして。
観月ちゃんは、祭壇を設置して
兄じゃを男前にする祈祷を習得したのではないか!
夕凪ちゃんは、お兄ちゃんの心を奪うマジックポーションを調合しているんじゃない?
立夏ちゃんは、きっと会員制のおうちカフェをオープンさせて
大人だけでこっそりおいしいものを食べるつもりだ!
その前に先にこっちがオニーチャンのくちびるをものにしなくちゃ!
と、あわてていたわ。
でも、女の子の部屋は、いつも神秘のヴェールの向こうにあるもの。
想像して話題にするのは、あんまり上品なことじゃないって
みんなわかってはいる。
たぶん、詮索するというよりは、心配しているの。
しっかりしていそうな蛍お姉ちゃまと氷柱お姉ちゃまが、どうしてなんだろう、
ちょっと自分のことを後回しにして、家族に手を貸してくれそうな二人だけど。
自分たちにまで手が回らないほど無理な計画でお掃除を進めるなんて
いままでなかったんだけどな?
そこまで荷物が多かったかしら?
ハロウィンやクリスマスのコスプレはもう別の場所にきちんとしまっているから
片づけが進まないほどの荷物が何なのか、わからないの。
みんなの部屋の荷物を一時的に置かせてあげているということもないだろうし、
もしそうだったら、隠す理由もないんだし。
マリーはたぶん、
愛するフェルゼンのことを自分たちのものにするために
革命の計画を立てているんだと思うの。
それに気がついているフェルゼンも
みんなを守るために体を鍛えたりして
かっこよくなっているんじゃないかな。
でも、あんまり詮索するのは上品じゃないから、
みんなには言っていないの。
フェルゼンだけに伝える秘密よ。
危険な野望を抱いてしまうことは
誰にだってある。
でも、家族に相談もなしに革命をしたらいけない!
秘密にしていること、
ちゃんと話してくれたらいいのにね。
まあ、マリーも革命なんて説は本気というつもりではないけれど。
いえ、本当にそんなドラマがあったら
興奮しちゃうな、と期待はしているけれど。
でもたぶん、二人とも優しいお姉ちゃまだから
フェルゼンを力づくで奪ったりはしないと思うわ。
そんなに散らかっていて、なのに家族にも秘密のお掃除なんて
マリーたちも手伝わなくていいのかしら?
部屋の中の予想していたみんなは冗談もあったけど
心の中の秘密の悩みを誰よりも先に話してもらえて
解決してくれそうな人がいるなら
フェルゼンだと思う気持ちは、同じだと思うの。
お掃除が大変で困ってしまう前に
お部屋の様子を話してもらえそう?
フェルゼンは、マリーを見つめるときのように
蛍お姉ちゃまと氷柱お姉ちゃまを見ているから
仕方のないフェルゼンね、と思って
そっとたしなめてあげる日だってあるけれど
今は、心配な二人のこと
気にしてくれるかな。
遠慮なんてしなくていいから
マリーたちも手伝うって
フェルゼンからも伝えてね。

夕凪の偽日記

『セクシー』

だって夕凪は
マホウ使い。
どんなにかわいい服も
呪文を唱えて、すぐに出せる。
たとえ裸みたいな格好をしたって
風邪なんて引かない。
夕凪はマホウ使いの子孫だから
三日月をめざすほうきの先に
黒猫を乗せたお姉さんみたいに
つやのある黒いローブの下は
はちきれそうにセクシー、
そんなふうになる。
そのうち。
きっと。
間違いなく。
なるよ!
もうすぐ、マホウをどっさり
覚えるよ。
お兄ちゃんは優しくて
夕凪のマホウをよく助けてくれる。
一緒に呪文を考えてくれたり
夕凪に似合うかわいい魔法陣を書いてくれたり
マホウ使いらしい服は何なのか
聞いたら教えてくれる。
上品な光沢は
ベルベット。
色合いは
紫っぽい夜の色が神秘的だったり
黒が混じったような深い赤も
不思議な力がありそう。
まっすぐ汚れのない白だって
なかなか普段着だと着れないあこがれだし
月の光で染めあげる、秘密の黄色も夕凪に似合うはず。
お兄ちゃんと話し合って決めた
夕凪のマジカルスタイルは
スカートが膝まで短いのと
膝より短いのと
さらに短いのと
それと同じくらい短いのと
候補は四つほど。
ぶかぶかのおじいさんみたいな服なんて
おしゃれじゃないもんね。
マホウを使って
世界一の奇跡を起こす夕凪には
はちきれそうに元気ばっかりがあふれた衣装が似合う。
さすが、
お兄ちゃんだな!
いいところを突く!
夕凪の意見を聞いて
だまってうなずいていただけのような気もするけど
それが難しいんだもんね。
星花ちゃんは
風邪を引いたら困るよ、なんて言う。
吹雪ちゃんは
風邪はマホウでは治せません、なんて言う。
マホウなんだから
風邪も引かないに決まってるじゃん。
だよね?
そういうわけで
蛍お姉ちゃんと氷柱お姉ちゃんの秘密を
お兄ちゃんも聞いた?
隠していたら、かえって誰かが興味を持っちゃって
部屋に入り込んで、勝手に着てもいけないから。
だって。
勝手に部屋には言って服を持っていくなんて
そんな悪い子はいないよ!
夕凪は──
このまえ、ちゃんとサンタさんがピカピカあったかな星の手袋を
靴下に入れてくれたから
反省したのをわかってくれていたんだ、と思ったよ。
まだそういうマホウが上手に使えない間は
お姉ちゃんたちの部屋に忍び込むのはやめたから
ぜんぜん悪い子じゃないんだもん。
蛍お姉ちゃんが作ったのは
寒い季節を忘れて露出度が多くなってしまった
秘密のコスプレ、
山盛り。
気になるけど
奪ったりはしないの。
氷柱お姉ちゃんは、みんなに教えたのは
もしも着たい子がいたとしても
寒い時期が過ぎるまでは待つ
約束をしてほしいからなんだって。
だから、
せっかく教えてもらっても
かわいい秘密の服は
春になるまでのお楽しみ。
というか、
暖かくなった頃でも着れるかどうかわからない
限界をめざす
女の子の挑戦らしいよ。
きわどさは
お兄ちゃんに見せてあげたい気持ちの前では
ためらう理由になんてならない。
蛍お姉ちゃんは
みんなが着たらかわいいかなって
つい、実用性を無視して
作ってしまったんだって。
それでこそ、
マホウの服。
奇跡の力で体を守るそのときこそ
かわいさだけを突き詰めるデザインができるんだと
そんな気がする。
夕凪、
実を言うと
マホウで服を出すのは、まだ苦手なんだよね。
もしも夕凪の知らないどこかで
怪盗のマホウが発動して
夕凪の手元に服が届いたら
それは仕方ないことだよね。
でも、
本格的に寒いから
風邪を引かないマホウをまだ覚えていない夕凪だと
やっぱり早い?
外で遊んだ後で
おうちに入ってきて
あったかい牛乳のカップを前に
鼻水が出ちゃう、って時に
止めるマホウを
お兄ちゃんは知らない?
鼻をかむ時間も待てないくらい
早く牛乳であったまりたいのに。
そういえば、お兄ちゃんは天気予報見た?
こんなに寒くなってきて、そろそろかなって思っていたんだけど
今度の水曜が
雪の予報らしいよ!
積もるかなあ。
でも、海晴お姉ちゃんは
あっちこっちで大変な雪が降っているから
注意を呼びかけるときはまじめなの。
もっと陽気な天気予報が
海晴お姉ちゃんは得意だと思うのにな。
あんまり寒いと心配だな、って
天気予報を見ながら、お姉ちゃんたちみんな話しているよ。
せっかくの海晴お姉ちゃんの天気予報は
もっとみんなで
明るく見ようよ!
だから夕凪は
どこの町だって楽しくなれるよう
ちょうどよく雪が降ったらいいと思う。
やっぱり冬しかできないことなんだから
それなりに降ってくれたら
雪遊びでしょ!
しばらくセクシーコスプレをするのは我慢、っていうか
頼まれても無理! っていうくらい
寒くなった。
真っ白になって雪遊びができるくらい積もってほしい夕凪と
あんまり冷えるとみんなの体調を心配するお姉ちゃんたち。
間を取ってちょうどよく雪が降るように
夕凪は冬のマホウの研究をするよ。
お兄ちゃんは、
やっぱり寒いのはいやかなあ?
それとも、遊べるくらい降ってほしい?
そこが一番、呪文が大きく変わることになる
大事な部分。
夕凪、お兄ちゃんに協力してもらったら
あっという間に一人前のマホウ使いになって
あんまりみんなが困らないくらいに降る雪のマホウを
早く完成させるね。
あったかいセクシーな季節が来る前に
いっぱい冬を楽しむからね。

観月の偽日記

『山の神』

左手の薬指は
血管が心臓につながっている説があることから
結婚指輪をつけるそうな。

蛍姉じゃと氷柱姉じゃのお部屋から
セクシーコスプレ衣装と一緒に
運び出された品に混じっていたものは
純白のウェディングドレスの作りかけと
おもちゃの指輪。

結婚する前に
ウェディングドレスを着ると
行き遅れるとする説もあるようだが
おうちの子はみんな
兄じゃが責任を持ってもらってくれるという話なので
心配はいらないであろう。
他に心配があるとすれば
使い道がほとんどないのに
品のいい生地をたっぷり必要とするので
蛍姉じゃいわく、ぜいたくな趣味だし
おそらく完成はしないだろう、とのこと。
そこじゃな。
いつかは、家族のみんながお嫁に行くときに
作ってあげたい衣装だという。
兄じゃのお嫁に、19人分作ってもらえるかな。
しかしこれは
蛍姉者が自分の趣味で、
夢を見ながら
今の自分に合わせて作っている衣装だという。
生地は今回は高価なものではなくて切れ端を繋いだだけで
まだ形は全然ドレスではないし
たぶん完成しても、よく見たらまったくドレスらしくないだろうと
本人は謙遜しているが
家族には好評。
大勢が、試着の順番で待っていた。
おもちゃの指輪でも大騒ぎする子たちなので
あまり細かいことは気にならぬだけかもな。
もういくつか心配になることがあって
作りかけでもあり、しかも薄い衣装だから
いくら暖房が効いた室内でも
あんまりずっと着ていたら体によくないのでは、
ということと。
みんながいる場所で着替え出した姉じゃたちに気を使って
兄じゃが静かに席を外してしまって
いちばん見てもらいたい相手なのに
いったいどこに!?
みんなであわてたことと。
それから、
順番が回ってくるのをいい子で待っていたひとりひとりが
ちゃんと兄じゃを呼んで、隣の部屋で着替えを待ってもらって
じっくり見てもらって、
感想を聞かせてもらったので
もう、兄じゃのところにお嫁さんに言ったような気がしている子が
何人もいて
話していると混乱してくるということ。
それは兄じゃがもう少し大きくなってからでなくてはいけないというのに。
蛍姉じゃから下の子だと、さらに自分も歳をとらなくてはいけないし。
それに、兄じゃと結婚の約束をする話は
前からしている子も多いようだが
力のあるオーラを誰より頼りにしているのは
誰にも代わりができない特別なお役目を定められた
わらわがいちばんなのではないかと思う。
なので、
みんなが兄じゃを取り合っていると
いま、まるで嫉妬深い山の神みたいに
観月は少々
考えてしまうのじゃ。
そこで、
これ。
一晩貸してたもれ、のお願いを
快く聞いてもらえた。
ペアであずかった
おもちゃの指輪。
左手の指と聞いたときには
どの指の血管も心臓につながっているのでは?
と、思ったものだが。
そもそも、わらわに見えるオーラは
全身から立ちのぼるもの。
家族を愛する穏やかなひとときを過ごす最中や、
猛烈な感情に身を焦がすのも
その感情は、頭のてっぺんからつま先まで
何も入り込む余地がないほど
愛する人を思う気持ちでいっぱい。
ときどきは、おなかをすかして食欲も割り込むけれど
思う人と食べたい気持ちが大きいのだし、
そこは見逃してほしいのじゃ。
そうやって、永遠の誓いは
この体のどこであっても、形にしてあらわせるもの。
瞳に宿る光、
ほとばしる喉の震え、
時には指先だけで秘密の合図をしてもいいし
悩んだ愛の言葉もあり、
手に取れる形にした贈り物、
ただ体温を伝えるだけでもいい。
愛する人がここにいることが
自分にとってどれだけ大切なのか
胸のうちを届ける方法は
誓いの指輪ひとつに決める必要などない。
なのだが。
うむ。
同じ指に決めて二人で指輪をして
ならべたら
なかなか愛嬌があるものじゃ。
たくましい兄じゃも
無骨な指に、なかなか似合う飾り。
誰が決めたのかは知らないが
昔からの決まりは
確かに、理にかなった言い伝えも
たくさんあるのじゃ。
でも、
兄と妹で結婚できないんじゃないかと
氷柱姉じゃが不機嫌で
ちょっとかわいそうじゃの。
古くから神々も
自由に恋をしてきたのだし、
わらわも、そのように
嫉妬だってするのじゃ。

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