アルケイディア&キュクレイン

アルケイディア&キュクレイン TOP  >  2013年10月

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霙の偽日記

『雨の一日』

私だ。

そうだ。
霙だ。

なぜ今日の日記を書く人間が
氷柱ではないのか?
そんな疑問はこの宇宙の塵よりも小さなことだ。

氷柱にも言ったんだ。
恥ずかしさ罪の意識もやがてエントロピーの増大に従って
形をとることをやめてしまう。
何もかもが消え去るものに過ぎない。
悔いも悩みもただ儚い。
自分がかつては解決不能としか思えない問題を抱えていたことも
永遠に近い宇宙の営みの中、いつか忘れていく。
考え込む癖をやめることはできないのだろう。
たかが消え行く人間の、ちっぽけな思いであるというのに。
もしそんな小さなものを少しでも大事に考えているのなら
おびえて立ち止まるよりも、
何がしたいのかを一番に考えればいいのだ。

だが、迷っているものにとっては、真剣なんだな。
もうしばらく時間が欲しいと思うときもある。
それがはたして解決に至る道なのか知らぬままの先送りだ。
一人で考えていても、堂々巡りをするばかりなのにな。
かえって悪く思い込んで深みに沈む場合もある。
そんなときに、聞いてもらえる誰かがいるということは幸せなはずなのに。
いや、それが幸せであると知っているからこそ。
自分が持っていないということを思い知らされるのが怖くて
進めなくなる。
もしだめだったらその時は、その時になってから考えればいいと思うが。
その答えにたどり着くまでに時間がかかる者も時々いるんだろう。
特に、その気になれば何もかも計算どおりに行くと思っている
氷柱のような頭のいい子などは。
だから少し時間をあげてもいいと思った。
もぐもぐ。
違うんだ。
確かにオマエの想像している通りに、
このどら焼きは氷柱からもらったものだ。
これが賄賂である可能性は、決してないとは言えない。
しかし私だって、欲望に弱いだけのだらしない姉ではないんだ。
誠実な贈り物に多少は感じ入るものがあったとしても
それが間違っていると思ったら、受け取らずにいた。
私が何よりも大事に考えているのは、いつだって私の家族たちだ。
どら焼きではないんだ。
時には、どら焼きを何よりも大切にしているように見えてしまうこともあるだろう。
平穏な日々に、家族とどら焼きを比較する場面などあまりないんだ。
どっちが上なのか、他人からは一目で見分けるのが難しいとしても仕方ない。
しかし氷柱がこうして心を込めて、考える時間が欲しいと言うなら
今日だけは大きな心で見守ってやろう。
買収されたのではない。
いまはひととき譲歩してやったのだ。
もしもこれで氷柱が変に調子に乗るようなら
私はそんなつもりで許したのではないと、はっきり言ってやるつもりだ。
心配するな。
私の毅然とした態度の心配じゃなくて、氷柱の心配がいらないという意味だぞ。
時には突っ張っているが、あれで何が正しいかきちんと知っている子だ。
決して、良くない写真を勝手に発表することなどしない。
少々魔がさしたとしても、そんな度胸がないだろう。
氷柱に悪いことなどできないよ。
たまに身の丈に合わない重荷を背負い込もうとして
家族に心配をかけるくらいがせいぜいだ。
そんなふうでいてほしい。
いつまでものびのびしてくれればいい。
やけにわかったような顔の氷柱なんて面白くない。
それに、氷柱はそんな大人になれないと思う。
あの子の無茶に付き合うのも、年長のきょうだいの仕事だ。
私はそれができる家族に生まれたことを嬉しく思う。
楽しんでいるだけではなく。
それから、おいしがっているだけでもないからな。
おいしいと言えば、この前おみやげを持ってきた大橋さんは気の利いた子だった。
大人しく見えて、舞台に立つ姿には度胸が感じられた。
それで次はいつ来るのかな。
現在、家では試作品が多すぎる事態ではないから、
おみやげの種類には気を遣わないで一緒に食べたいものを是非。
今度は、エクレアはその名の通りの意味で稲妻のようにすばやくいただけるぞ。
でも速度を言い出すと、
志村けんがむしゃぶりつくスイカも稲妻の名を冠して良いのではないだろうか?
エクレアの名が奪われぬよう、そのクリームもしっとりとろけて
すばやく食べさせてほしいものだ。
もちろん、あんこの黒が美しい季節の和菓子などを選ぶ心遣いを見せるのも
気が利いた娘さんと言えよう。
大橋さんはどうかな?
いつでも気軽に来てくれたら嬉しいな。

氷柱の様子だけで話が終わっても物足りないだろう。
ただでさえ今日は肌寒い雨の一日だった。
こんな時は賑やかだった学園祭ムードに浸っていたいところだが
もう慣れたから、片付けも鮮やかに終了し、
私の一日はこれと言って陽気なエピソードもなかったな。
大変そうだったのは今年入学してきた一年生たちで
準備の段階からそうであったように
撤収作業もやはり右も左もわからない様子だった。
小道具をうまく収納できなくて段ボール箱の数が増え、
かさばる荷物にさらに雨でつるつるする足場が追い討ちをかける。
体育倉庫に荷物を運ぶ途中にある渡り廊下から
いくつも悲鳴が響き渡っていたのを聞いただろう。
今日一日で、地獄の渡り廊下として恐れられ語り継がれる名所となった。
いったい何人が、打ち身で保健室の世話になったのか。
立夏もアメリカンな悲鳴を豪快に轟かせ、
いい年をしてパンツをびっしょりにして帰ってきた。
打ち身や捻挫の対応にはヒカルが詳しくて、
甲斐甲斐しく世話をしてやっていた。
風呂にも一緒に入って、優しく洗ってやったりしていたようだ。
だから立夏はそろそろ調子に乗り始める頃かもしれない。
学園祭では初めて尽くしの中でがんばっていたことだし
こんな時くらい甘やかしてやりたいというのであれば
私もうるさく言わないでいてやろう。
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さくらの偽日記

『あいとゆうき』

ぱーっとはれたね!

こくはくびより!

ことりちゃんと、かよちんのうた。

さくら、しらなかったことば。
こくはくって
なんですか?
それはね、
だいじなおはなしをおしえること。

つららおねえちゃんがね、
さくらはきょう
うんどうかいのれんしゅうを
がんばったから
お兄ちゃんにおしえたいおはなし
たくさんあるでしょう?

そうなの!
つららおねえちゃん、なんでわかるの?

さくらが、お兄ちゃんにおはなしできるように
げんきになれ、って
おやつもたくさんつくってくれたよ。
おいもをきって
チンしてくれたよ!
おいしかった。
お兄ちゃんもたべた?
まだ、いっぱいのこってるって。
ばんごはんのあとにもらおうね!

きょうね、
さくら、
お兄ちゃんにこくはくしたいの。
だいじなおはなし、
したいよ。
きいてください。

さくらは
うんどうかいのれんしゅうを
しました!
おしまい。

もっと
おはなしをしていい?

こんどのにちようびは
ようちえんのうんどうかい。
それで、きょうはあきばれだったから
みんなでそとにでて
うんどうかいのれんしゅう。
ぱーん!
おおきなおとがしたら
はしります。
10がつは
うんどうかいのきせつ。
お兄ちゃん、
10がつってしってる?
あのね、
10がつは
9がつのつぎなんだよ。
それでね、
10がつって、
あつすぎなくて
そんなにさむくなくて
あんまりあめもふらない。
うんどうにちょうどいいから
みんなうんどうかいをしましょうって
ほうりつできまっているんです。
お兄ちゃんも、うんどうかいをしたね。
10がつだからでしょう?
さくらも、10がつです。
きょう、あつかったね。
ほんとうに10がつ?
9がつのつぎは
じつは8がつなのかもしれない。
7がつかも。
それでも、うんどうかいのれんしゅう。
おうちにかえってきても、
つららおねえちゃんがみてくれてうんどうかいのれんしゅう。
あせびっしょり!
こんなにあついと
うんどうかいはすいえいね!
って、いってた。
さくら、すいえいのれんしゅうもしないといけないの。
はしるのもにがてなのに
どうしよう!
さくらは、はしるのがおそいです。
あわてるから
ころんでしまって
なおおそい。
みんなは、おかおからころんで
ひざっこぞうをすりむいて
しょうどくしてもらうけど
さくらはどうして
おしりからころぶの?
そしたらね、
つららおねえちゃんがおしえてくれたよ。
はしるときには
うでをふる!
あしをつかうだけじゃないの。
うでも!
せすじをのばして
みぎ、ひだり。
いち、に、いち、に。
つぎのみぎは
うでだっけ?
あしだっけ?
さくら、ときどきわからなくなっちゃって
てんぱるの。
でも、それでもいいんだって。
ゆっくりはじめて
あせらずに。
あきらめないでつづけていれば
だんだんできるようになる。
うっそだー。
さくら、こんなにへたなのに、
うまくはしれないんじゃないかな。
いやだな。
そしたらね、
できたよ!
おかおからころんで
ひざをすりむいて
うえーん!
つららおねえちゃんが、しょうどくしてくれたの。
はしるのがちょっとじょうずになったねって
ほめてくれました。

ぜんぶじょうずにできなくてもいいんだよ。
ちょうせんすることがだいじ。
にんげん、できないこともある。
だけど、できないといってばかりはいられない
そんなときもある。
わかっていても
やらなくちゃ!
ひつようなのは、げんき。
げんきは、まえむきになれるちから。
さくらちゃんのことをみんながあいしている。
だから、さくらちゃんもゆうきをだせば、すぐげんきになれる。
つららおねえちゃんも、いまはうまくできないけど
がんばる。
さくらもがんばりなさい!
うん!
がんばる!
さくら、はしるれんしゅうして
ようちえんのうんどうかいではしる!
つららおねえちゃんも、ようちえんのうんどうかいではしるの?
はしるのじょうずなのに、まだうまくなるの?
がんばりやさんなの!

ものしりのつららおねえちゃん、
いっしょにれんしゅうしてくれるつららおねえちゃん。
だいすきです。

あしたのにっきは、つららおねえちゃんにわたしてね、だって。
きにいらないけど、
みぞれおねえちゃんのいうとおりだから、って。
いつかはきえてしまうものもある。
だったら、いまのうちにできることをしないと。
きにいらないけど、って。
つららおねえちゃん、
きにいらないなんて!
みぞれおねえちゃんのことが
きらいなの?
そんな!
かぞくがなかよくないなんて
だめです!
さくら、かなしくなっちゃう。
なみだがでちゃう。
つららおねえちゃん、かぞくとなかよくしないと
めー、ですよ。

観月の偽日記

『常若』

わらわじゃ。
観月じゃ。

伊勢神宮の式年遷宮も
順調に進み、
このすがすがしい気持ちを兄じゃに伝えたくて
氷柱姉じゃに順番を譲ってもらったのじゃ。

おそるおそる頼んだら
こころよく、
じゃあ書けばいいじゃない、
いま忙しいからちょうどよかった。
かわってもらえて本当に助かった。
あーよかった、と。
そんなによろこんでもらえるとは。

氷柱姉じゃも書きたいことがあったであろうに。
これはそろそろ
19人全員で毎日書くべきか。
やるかの!
しかし、忙しくて書けない都合はどうにもならぬな。
ほんとは、わらわも毎日兄じゃに日記を読んでもらいたいのじゃ。
きょうはあんなものに出会ったとか
きのうはあぶないところであったとか
あしたはわるいあやかしに挑戦したいとか
しょうらいは兄じゃと
今はわらわの力も及ばぬ
あれこれに会いに行きたいとか
いろいろあるのじゃ。
でも、毎日書いていると
けっこうたいへんかもしれぬ。
小さい子は、順番の日でも
夜は早く眠ってしまうことがあるし
19回に1回書けるだけでも上等じゃ。
たいへんよくできました、じゃ。
兄じゃも、ちゃんと褒めてやるのじゃぞ。
しかも、あさひにいたっては
日記でもばあばあ
何を言ってるのかよくわからぬのじゃ。
わかるのは、機嫌が良さそうかそうでなさそうか。
まあ、0歳の子を相手にするのはそれだけでいいのかもしれぬ。
家族の様子は、そんなものでいいのかもしれぬな。
兄じゃは、毎日わらわの様子が知りたいか?
でも機嫌が悪いときは日記に書くより
体でぶつかって
遊んでもらって
抱っこしてもらって
そのまま寝てしまうのが気持ちいいから
日記ばかりでなくてもいいのであろう。
兄じゃも機嫌がさえないときは
ぶつかって来ると良い。
全力の突進を受け止めるのは無理なので
そこはがまんしてもらって
加減してな。
抱っこはできるぞ。
身長の差は、
かがんでもらえれば!
いくら術を使っても
急に背が伸びたりはしない。
八百万の恵みは、自然の恵み。
あんまり世の常に反したお願いをすると
ばちがあたってしまうから
兄じゃは、幼児に抱っこされるくらいでいるとよい。
そのうちわらわも大きくなるので
身長の差があって腰が痛くなっても
もう少しの辛抱じゃ。

さて、今日のわらわは
オーラが澄んでいるであろう?
20年ごとの式年遷宮。
その場に行って参加したわけでもなく
テレビで見ただけだが。
でも、ありがたい力が伝わってくるのはわかるぞ。
神宮も新しくなって
その気を受けるものたちも若々しくいられる。
キュウビもよっぽど嬉しかったのか
ぴょんぴょんと
あっちに行ったりそっちに行ったり
ちょっと離れて見ていたら何匹いるのか分からないくらいの勢いで
残像を残しながら
そこらじゅうを跳ね回っている。
うさぎなのか
こどもなのか
キュウビはいったいなにものなのか
わからなくなるほどじゃ。
というか、
よく見たら実際に2匹いるのじゃ。
分身の術みたいな動きをする、と感心していたら
残像ではなかった。
いつの間に増えたのであろうか。
呼び寄せて、並ばせて
点呼しても2匹。
早く動けば増えるというものではないと思うが
まあ、珍しい式年遷宮もある年だから
キュウビが増えることくらいあってもおかしくないか。
はしゃいでいる今はいいとして、
疲れたときはどっちがわらわの頭に乗って休むのか?
もしもけんかするようなら、兄じゃが片方預かってくれぬか?
わらわとオーラも似ているから、納得してくれるかの。

次の遷宮は20年後。
また天照様の力が若々しく蘇るその日まで
わらわも清浄でいられるであろうか?
心身を清らかに保つ努力を続けたいものじゃ。
水行をしたり
寒修行をしたり
酒で清めたりな。
次の遷宮には、あさひがちょうど20歳。
酒を教えてやるのが楽しみじゃな。

氷柱の偽日記

『いきものだから』

えっと。

何から話せばいいのか
わからないけど。

なんか、今度はマリーが書きたいことがあって
日記の順番を回して欲しいと言ってるの。
そりゃ、私はうまく書ける自信がないから
まだあんまり書きたくないけど。
でも、このままだとまた
私の番がどんどん後回しになって
いつになるかわからなくて。
だから今度は譲らなかった。
わがままじゃない。
前から、私の番って決められていたから。
いくら私自身が後回しにしたくても
決まってしまったから。

みんな、日記に書きたいことがたくさんあるのね。

マリーは今度の運動会で
音楽に合わせて踊るって。
さくらのチャイナドールより複雑な、年長さん仕様。
自分でも一部の振り付けを考えたって、自慢げ。
練習をあなたに見てもらいたいみたい。
立夏もダンスが得意だから、一緒に練習してあげている。
少し前に日記を担当したばかりだけど、今度はマリーの日記にかこつけて
自分のことをお兄ちゃんに知ってほしいって。
もっといろいろ知ってほしいって。
ちかごろはふたりとも、ダンスがノリにノってきて
ナウなヤングはディスコでフィーバーと踊っている。
流れるトワイライトゾーン。
いくらなんでも、幼稚園だし
そんな音楽に合わせて踊るわけではないのに
変なのやっていて大丈夫なのかしら。

って、そんなこと言いたいわけじゃないの。
そんなことのために、今日の日記を書こうとしたわけじゃない。

今回はもう、誰にも日記の順番を渡したくなくて
それで始めた見切り発車だから
うまくできないと思う。
絶対、大事なことを言えないに決まっている。
今回は貸しにしてもらって
いつかそのうち、って約束でもできれば
それでいいかと納得したかったんだけど。
私にしては、それだけでもじゅうぶんがんばったんじゃないかって。
でも、ここでまたそんなことをしたら
いつもいろいろもらってばかりだから
そのうち返せなくなる。
一緒にいるだけで、どんどん増えていく。
家族になってから、私だけ一方的にもらっているもの。
私があなたにあげられる以上に
たくさん、毎日。
気がついたら、数え切れないほどだった。
もらったものを返さなきゃいけない決まりなんてない。
わかってる。
わかっていても、自分が対等になれないなんてなんとなく認めたくない。
ゆうべは変な夢を見てベッドから落ちそうになったわ。
鈍感で恥を知らないあなたが
恩知らずにもどこかに行ってしまって
いつか、っていう約束が私にはもう二度と果たせなくなる夢。
変な夢を見るなんて
よっぽど心につかえているものがあるからだわ。
だから、今のうちに言っておく。

私、嘘をついた。
あの写真がクラスで選ばれたから
自分ではそんなつもりじゃないのに
そのせいで言えなかった、なんて。
嘘だった。
私もあの写真が良かった。
さりげなく候補に入れておけば、クラスのみんなも見つけてくれると思っていた。
何も変な写真じゃない。
どうってことのない普通の風景。
でも、わかってもらえる気がしていた。
これといって変わったものじゃないし、こっそり発表すれば
何も起こらないと思い込もうとしていた。
家族のみんなにもバレないで済むくらいの
地味な展示でそれっきり。
そんなわけない。
写真を見たら、誰にだって絶対に
私の気持ちがわかると思った。
たくさんの人に見てもらって、
見た人全員にわかってもらいたかったの。
こんなことはこれからもずっと家族には言えないけど、
私が自慢したい家族なんだと、写真を見た人にはわかってもらえると思った。
カメラを向けられたら、ついうっかり笑顔になってしまうのは
さくらだけじゃない。
あの時は、虹子が楽しそうに歌っていた。
一緒に歌って踊る夕凪も、カメラを向けたらにこーって。
まったく単純な子ばっかり。
カメラの何がそんなに嬉しいのかしら。
私は嬉しくもおかしくもないときに
カメラくらいでは笑わない。
あなたはあの時、カメラに気がついていなかったみたいね。
シャッターの音でこっちを向く前から
ずいぶん嬉しそうにしていた。
世の中にこんなに嬉しいことがあるのか、みたいな。
しまりのない顔で
ニタニタと
あふれる嬉しさをどうしても止められない、
そんな笑顔。
人間の表情筋って、こんなにも崩れるものなのね。
気がついてる?
いつもあなたがそんな顔をしていること。

私は、
あなたをそんな顔にできるうちの家族を
誇りに思う。
たいていだらしのない顔をしているあなたを
そうなるのも当たり前なんだし許してあげてもいい。
それから、いくら嬉しいときでもそこまで変な顔で笑うことなんてない
自分を知っている。
私は、あなたに負けないくらいどんなときでも
こんな気持ちにしてもらっているのに。
私の家族たちに。
よく変な顔で笑っている家族でも。

私は、それを写真に撮れて嬉しかった。
他の人に見せて、自慢したかったの。
誰彼かまわず、
世界中の人に見てほしかった。
ちょっとでいいから
私がどんな生活をしているか知ってもらいたかった。
黙って発表したことは謝るわ。
ごめんなさい。
でも、許可をもらうには
どうして私がこの写真を選んだのか
特に被写体の人には必ず説明しないといけない。
絶対そんなこと言えるわけなかった。
だから、クラスメイトに選ばれて仕方ないからと
言い訳できる環境を整えた。
今、私が同じ状況になってもそうするに違いないわ。

私も毎日、
日記に書きたいことがある。
でも書かない。
麗みたいに、思ったことを上手に書けなくて逃げたいわけじゃない。
自分が何を考えていて、どう伝えればいいのかわかるわ。
ただ、そうすることが怖いだけ。
知られてしまうなんて耐えられない。
私の気持ちを伝えるなんて
そんなの我慢できるわけがない。
別に、言ったらいけないことを考えているわけじゃないのに
あのときはできなかった。
今もできない。
これからだって、ずっとできないに決まってる。
でも、
もし万が一、
人間、生きていれば
この先何があるかわからないから。
けどまあ、あなたは単純だから
今の気持ちが変わったりしないし
主人に対する感謝の気持ちを忘れることもないわよね。
下僕だから。
私が下僕だって言ったんだから
間違いないの。
それなのに、
焦ってしまって、早く言わないといけないなんて
私は何を考えていたのかな。
やっと優しい主人にめぐり会えて
ささやかな一生を捧げる決意をした下僕が
この家を離れることなんてあるわけないのにね。

海晴姉様に頼まれて、
写真の腕はまあそれなりだからと
幼稚園の運動会で、撮影を担当することになったの。
ご主人様が大仕事を任されたんだから
下僕も全身全霊でサポートするように。
ずっとあなたは下僕らしく
ご主人様から離れたらいけないから。
そんなことをしたら、すさまじいお仕置きをして躾けなおすわ。
世界のどこにいたって必ず捕まえて
下僕に本当にふさわしい態度を骨まで叩き込んであげる。
いいわね。
その単純な頭でも、ひとつ覚えるだけならできるわね。
あなたは生まれながらにして私の下僕。
これからもずっと。
ご主人様がどんなことをしても。
あなたにこれからどんなことがあっても。
何があっても、忘れないで。
私から離れないこと。
あなたは下僕で、そうするのが当たり前なんだから。
これは命令よ。
主人の命令は絶対よ。

星花の偽日記

『おうえん』

がんばれ
がんばれ
スポーツマン。

運動が自慢の子も
そんなに得意じゃなくても
はりきって参加する運動会。
たとえ一番じゃなくたって
グラウンドにいる全員が主役です。

はしれ、
そこだ、
がんばれ、
それいけ!

やったー!

本番は明日。
今日は、マリーちゃんたちの練習を
家族で応援していたら
なぜか途中からだんだん
はじめてのおつかいを隠れて見守っているみたいな応援になってきました
ふしぎ。
幼稚園の運動会だから
そんな気がしてしまうのかな。
おつかいでは、走ってはいけないですけどね。
気をつけてね!

こんな感じの応援、
この前のお兄ちゃんたちのときも
そうだったかな?
障害物競走で網をくぐったり
パン食い競争で飛び跳ねたり
玉入れで伸びあがったり
がんばれ、
よし、
あー!
めげないで!
おねがい、がんばって。
観戦しているあのときの気持ちを思い出すと
興奮が蘇るよう。
大きなお兄ちゃんやお姉ちゃんたちに
はじめてのおつかいみたいな応援で良かったのかなと
今思うと悩むような応援が
なぜかぴったり、ちょうど良かった
競技もありました。
かと思うと
スタートまで息をつめて見つめていたのに
走り出す姿に、もう黙って見ていられなくて
声を振り絞って応援したくなってしまう場面もありました。
この声が届かなくても、
おなかに力を込めて。
グラウンドからわきあがる歓声の全てが
本当に選手の人の力になったのかもわからないまま
秋の澄んだ高い空に吸い込まれてしまうだけのよう。
見ているだけで他に何もできないのが悔しくて
でもどうしても、止められない。

見ているほうも元気になってしまうのが
運動会なの?
さわやかな、力いっぱいの運動会。
にぎやかで盛り上がる力試し。
いいよね。
こういうの。
毎日あればいいのにね。
星花はたぶん、あの熱い時間と
もりもり力が出るおいしいご飯があれば
他には何もいりません!
うそです!
ほしいものがいっぱいです!
今一番欲しいかもしれないものは
運動会を全力で戦い抜いた後の
小さな笑顔。
怪我はしないでね、とはらはらだけど
悔いのないように運動会を楽しめたら
それが一番。
練習を見守って
応援するだけしかできないお姉ちゃんですが
活躍を祈っています。

明日の運動会の日程は
お昼には競技がすべて終わって
おうちでごはん。
せっかくだから運動会らしく、お弁当メニューにしよう!
台所では、春風お姉ちゃんと蛍お姉ちゃんが
腕によりをかけて準備している真っ最中なの。
たまにみんなで食べ物屋さんに出かけるときの準備中は残念なのに
お姉ちゃんたちの準備中はうれしい。
かわいい園児さんたちががんばった後は
おにぎりたちが笑顔で待っています。
うさぎのりんごさんたちも、
自分たちみたいに元気に走って帰ってきてくれることを願っています。
運動会でがんばったら
楽しくご飯を食べて
ゆっくりお昼寝するのがごほうびですね。
がんばってそれだけのごほうびでいいのかなあと思うけど
もう少し大きくなったら、一等賞のごほうびをおねだりするようになって
なんだか不純な気がするから
今は純粋でもいいと思います。
参加するだけで楽しくて
活躍を褒めてもらえるだけでうれしい。
それで、いつかは
お兄ちゃんやお姉ちゃんたちみたいに、かっこよく走れるように。
小さなスポーツマンたちも、真剣になる運動会。
がんばったら家族から金メダルを進呈ですね。
明日の金メダリストはきみだ!
マリーちゃん、観月ちゃん、さくらちゃん。
はりきっているね。

吹雪の偽日記

『サイクル』

幼稚園の運動会が終わりました。

三人みんな、良い結果を出せたようです。
帰宅して昼食をとる間も、はしゃいでいましたね。

徒競走に出場した
さくらの成績は、
5人参加した組のうち
4位でした。
最下位を逃れたのは
練習の成果と判断することもできます。
さくらも満足していました。
よっぽど安心したようで
よんばん!
よんばん!
お兄ちゃんたちのおかげ!
すぐ飛んできて、教えてくれました。
順番はずっと見ていたので知っています。
そこまで急いで伝達に来なくても大丈夫です。
しかし、最下位の子は転んでしまったので
この順位にどこまで実力が反映したのか
はっきりとしたことはわかりません。
転ばないでゴールできただけ、
さくらの走りは上達しているのでしょう。
立夏姉は、もう少しで上位に食い込めたと
自分のことのように悔しがっていました。
もともと、運動能力が近い子を選んでの組分けだったそうですから
立夏姉が言うように、組が違っていたら一等賞の可能性があったかというと
どうでしょうか。
さくらも転んでも仕方ない組にいたように見えました。
上位の子の背中からさほどはなれずについていけたのも、
組分けの結果だったのでしょう。
立夏姉は2馬身差と表現していましたが
それは適当な表現なのでしょうか?
人間の走行では、馬と違って最後に逆転するような競争は多くない。
長距離走でスタミナを残していればスパートをかけることもできますが。
もう少しに見える差でも、幼稚園の徒競走では
いったん離されると追い抜くことはかなり困難です。
せめてもう少しコースが長ければ
練習にかけた時間が、持久力に大きく影響してくる可能性はあります。
幼稚園の運動会でそれは過酷なので、考えられない状況です。
こんな言っても仕方のないことを言い出すとは、
私もさくらがもっと上位を狙えたと判断しているようですね。
冷静な視点というよりは、練習を見てきた
しかし、本人が満足しているようなのでこれでいいのでしょう。
マリーの一等賞をきらきらした目で見ていましたが
さくらがこれからも順当に練習を重ねていけば
当然、順位が伸びて一等賞を狙うこともできます。
もともとの向き不向きよりも、努力が結果に大きく影響することは
園児でもそう変わらないでしょう。
とはいえ、ユキは練習するより体調を維持する努力が必要であったり
個人差によって大きく異なる点もありますが
それは大人でも変わらない部分です。
さくらが来年、再来年と、走力を伸ばしていくのかとなると、
そうですね……
園児の時期は、自分の行動を律する能力が未熟な傾向にあり、
短期間の趣味嗜好が、その時点における能力に関わってきます。
ふだんから競争心を意識していないらしいさくらが
このまま順位を伸ばしていくか、それほど期待できない気もします。
運動しやすい季節でもあり、
さくらが練習を続けたいというなら、
これからしばらくは、
さくらにとっても一緒に練習するものたちにとっても
適当な気候ということになります。
来年の運動会も見に行くでしょう。
その時にどうなっているか、正確な予測は不可能です。

今日は久しぶりに幼稚園を訪問しました。
私も2年前まで通っていたはずなのに、
記憶に残っている出来事はごくわずか。
正直に言うと、久しぶりという実感もありません。
私は本当にこの幼稚園に通っていたのでしょうか。
整った形状を成さないわずかな思い出と
おさがりで利用される品々の由来話が、当時を語るわずかな頼り。
さくらがよく利用する髪留めは私も使っていたものだと聞いています。
私の一つ下のユキは、体が弱くて幼稚園に通えなかったため
夕凪姉と私の二人で幼稚園に通っていた時期が、一年間存在します。
覚えていることはほとんどないのですが
当時は身だしなみをまったく気にしていなかった私に、
夕凪姉が髪を結んでくれることが良くあったそうです。
今でも夕凪姉は手先がそれほど器用ではなく、自分の身だしなみにも手間取っているのに。
まわりにたずねると、そういえば私が髪留めをしている姿を見ることがあったが
てっきり自分でやっているものだと思っていたと。
私も自分の身だしなみを人に説明することはなかったので
私の記憶が存在しない今、
真実を知るのは夕凪姉ただ一人です。
二人で幼稚園に通い、帰宅する場合が多かったため
決してそのようなことがなかったとは言い切れません。
今日の帰り道、すすきをひろう夕凪姉を見ていて思い出したことで
昔、幼稚園からの帰り、
夕凪姉がすすきを振り回す際の驚くべき軌道に興味を持ち
帰宅してから霙姉に相談して、楕円の性質についての関連書を貸してもらった記憶があります。
私の現在の趣味に、夕凪姉の影響があったとも考えられますね。
夕凪姉の卒園後は、私とマリーの二人。
世話をしてあげた記憶も、遊んであげた記憶もあまりなくて、
私はマリーにとってあまりいい先輩ではなかったのかもしれません。
今日、観月とさくらの尊敬の視線を浴びて
堂々と相手をしてあげているマリーの嬉しそうな姿に、
このような姿をあまり見てあげられなかった自分を思い返しています。
三人が今、実りのある幼稚園時代を過ごしていると良いと思います。

先週は、キミたちの学園祭もあり
イベント続きでしたが、
これでしばらくは、家族行事など何も予定はありません。
今月末のハロウィンまでは、
ようやく訪れた本格的な秋を
静かに過ごすことになるでしょう。
小雨姉によれば読書の秋、
立夏姉によれば収穫の秋、
麗姉によれば鉄道の秋です。
秋の夜長とも言います。
時間に追い立てられることもなく
好きなことに没頭しやすい時期になりました。

しかし、明日は気温が上がる予報。
明後日以降は、台風の影響で天気が崩れそうです。
やっと涼しい季節が来て、快適になったと思ったのですが。
もうしばらくは、天気予報を気にする日が続きそうです。
小さい子たちがそのつもりであれば、走るのを見てあげても良いですね。

夕凪の偽日記

『夕凪はうそをつかない』

なんでもないよ!

なんにも隠してない。
本当に。

うそだと思うなら
夕凪の目を見て!
これがうそをついている目に見える?
これが……
ささっ。
あ、ううん。
気にしないで。
目にごみが入っただけで
目を合わせるとうそが見抜かれそうっていうわけじゃないの。

えっ、
お兄ちゃん、疑ってる?
そんなー。
無実だよ!
お兄ちゃんに信じてもらえないなんて
悲しいなー。
夕凪、
日ごろから正しいこどもを心がけていたのに
なぜこんなに疑われてしまったの。

本当だよ。
隠しごとなんてしていない。
うそなんかついてない。
命をかけてもいい!
やっぱりだめ!
命はかけない!
まだ死にたくない!
夕凪が死んだら
あの子も誰にも助けてもらえなくて
死んでしまう!

そんなことより
お兄ちゃん、いいの?
ホタお姉ちゃんがはりきってたよ。
次のハロウィンに
お兄ちゃんは
猫にされちゃう?
犬にされちゃう?
夕凪は、
猫も拾ってきてないし
犬も拾ってきてない!
これは本当。
誓って本当。
ここだけは本当。
ううん、全部本当だけど。
ところでお兄ちゃん、
いのししって何を食べるか知らない?
ちいさいいのしし。
まだ赤ちゃんだと思う。
からだにしましまがあるの。
しかも、足をケガしてるみたいで
ずっとうずくまってる。
だからって、その子がどこかにいて
夕凪がえさをあげなきゃいけないというわけじゃないけれど
あ、そうだ、
学校の飼育係になったから!
おりで飼ってるうさぎといのししを育てなきゃいけなくて!
あ、それは先生に聞くことか。
そうだよね。
しかも、これだと
星花ちゃんに確認すれば、いのししなんて学校にいないって
一発でバレるよね。
でも、どんぐりもパンもミルクも持って行ったのに
夕凪があげても何も食べてくれないし。
ケガをして栄養が必要なのに
このままじゃあどんどん弱っていっちゃうし
逃がしてあげるしかないかもしれないけど、動けないんだし
どうしたらいいんだろう。

あの、
お兄ちゃんはいつも
約束を守ってくれるお兄ちゃんだよね。
夕凪が怒られるようなことをしても
いつも最後には絶対かばってくれるお兄ちゃんだよね。
お兄ちゃんだけには
きっと協力してもらえるよね。
ううん、
なんでもない!
あと一日待って。
もう一日様子を見たら
話すから!
これは本当!
夕凪はうそなんか
今度はうそなんかつきません!
うそをついたらいけない大事なところくらい
夕凪はちゃんとわかってるの。

虹子の偽日記

『ぶたさん』

ぶうぶう。
ぶっぶう。

こえがきこえるよ。

おねえちゃんたちの
しんぱい。
あんまりたべすぎると
ぶたになっちゃう!
でも、
よくたべて
よくあそぶこは
いいこ。
げんきにそだてよ、
おんなのこ。
たべものをがまんして
やせても
すぐもどっちゃう。
よくうんどうするのが
いいんだよ。
そういってる
りっかちゃんは
いくらなんでもたべすぎだっておこられています。
あきはたべものがおいしいから
しかたない。
うんどうしなきゃ。

でもね、
ぶたさんのこえは
りっかおねえちゃんが
ぶたさんになったんじゃないの。
ほたるおねえちゃんが
ぶたさんをつかまえて
ハロウィンでへんそうするふくの
さんこうにしているんじゃないの。
どこにもいないの。
ぶうぶう、
というか、
ふがふが、
というか、
ふんがー。
はないきあらい。
こえはするのに
すがたはみえない。
ふしぎな
ぶたさん。
はりきり
ぶたさん。
おにわにいたら
こえがする!
どこだ?
あっちだ!
そらちゃんがとんでいって
こわがるみんながようすをみたら
そこはうらにわ。
きがしげる。
うらやまのきが、すぐそこまでならんでいる
せまいにわ。
ちいさいあきは
おちばがつもって、こまります。
じゃんけんで、そうじとうばんのじゅんばんをきめるよ。
あついたたかい。
これはもうスポーツだ!
そうじ!
スポーツのあき。
そうじのあき。
じゃんけんのあき。
よくみんなでそうじする
うたってそうじする
せまいにわ。
なんにもないよ。
ほうきだけ。
みづきちゃんがいうよ。
つくもがみじゃ!
だが、
ぶたがとりついたほうきなど
きいたことがないのじゃ!
おはらいしてくれました。
でも、ぶたのこえがするの。
まだするの。
どこから?
なんにもないのに。
あるのは、
ふたがとじたダンボールばこ。
うえに、おもいいしがのってるの。
ゆうなちゃんが、ここにはなにもいないよっていうから
このはこじゃないし。
おっかしいなー。
どこからこえがするんだろう。
おーい!
こわいことしないよ!
でておいで!
ふんがー。
でてこない。
ぶたさん、
たべたりしないよ。
おおかみはいないよ。
おとこはおおかみ。
でも、おうちのおとこのこの
おにいちゃんはやさしいよ。
にじこのおにいちゃんだよ。
いっしょにあそんでくれるよ。
ぶたさんも、おにいちゃんと
なかよくなれるよ。
うららおねえちゃんは、おとこがきらいだけど
なぜかおにいちゃんだけは、あんまりこわくない。
おにいちゃんはおおかみじゃないんだよ。
うららおねえちゃんがこわがるのは、みはるおねえちゃん。
それから、つららおねえちゃん。
みはるおねえちゃんもつららおねえちゃんも
おおかみじゃないよ。
ときどきこわいけど
どちらかというと
ぶたさんになりそう!
わらってる。
なかまだよ。
それでね、
にじ、はなしをきいちゃった。
ゆうなちゃんからきいたの。
いまは、ハロウィン。
ハロウィンは、おばけが
あのよからやってくる。
ぶたさんも、てんごくから
おばけになって
やってきたのだ。
ぶたさんのおばけなんて!
そんなのいるんだね。
うらにわにいるよ。
こんど、えさをもっていってあげる。
ぶたさんはくいしんぼう。
ぶたさんのおばけは、おやつはすきですか?
にじは、すきよ。
なかよくなろうね。
おにいちゃんは、おやつはすきですか?
おにいちゃんにもあげる!
もーっとなかよしになろう!
おやつと、おにいちゃん。
にじこのうれしい、に
ぶたさんもおいでよ!
あした、ぶたさんのおばけを
またさがしにいこうよ。
そうじもしようよ
ぶうぶう。

小雨の偽日記

『イリュージョン』

鳩が出てくる
シルクハット。

消える自由の女神。

ふしぎ。
縦ジマのハンカチが
横ジマに!

テレビを見ていると
ときどき出会うイリュージョン。

タネを見つけるのが得意なのが
吹雪ちゃん。
コインはどこに消えたのか?
いったい、いつのまに?
えっ!? あの人が協力していた!?
説明されてもむずかしい
鏡や光の不思議な性質。

ときどき手品を仕入れてきて
見せてくれるのが
霙お姉ちゃん。
やっぱり見破る
吹雪ちゃん。
ちょっと待って、
それは言ったらかわいそう!
翌日の朝、
お天気予報を通じて広がる
新しいマジック。
ハンカチから出てきた小さな花。
今日もいい一日を過ごしてくださいね。
一番のふしぎは
ああ、明るい一日が始まったな、って
見ていると今日も元気になれる
海晴お姉ちゃんの笑顔。
そして、海晴お姉ちゃんが魔法だって言うのが
うれしい家族の存在。
でも、今日は海晴お姉ちゃんは
とっても大変だったみたいですね。
お疲れ様でした。

夕凪ちゃんは、
小雨たちの家族でもとっても特別な力を持った
かわいいマホウ使い。
どんな不可能も
マホウで解決します。
何事にも元気に挑むマホウ使い。
でも、
怖いマホウは使わないでほしいです。
あんまり怖いと
小雨は腰を抜かして
座り込んでしまいます。
逃げられないで
いのししに食べられてしまいます。
ぺろぺろ。
今日は、
食べられなくて良かったです。
いのししの赤ちゃんでほっとしました。
小雨、恥ずかしかったです。
あんなにあわててしまうなんて。

ダンボールの箱から飛び出してきた
ちいさな姿。
学校から帰ってきて、裏庭を見に行ったんです。
声はすれども姿は見えない。
というか、どう見ても
この箱の中ですよね……
近くに来たさくらちゃん、虹子ちゃん、青空ちゃん。
何かあったら小雨が守らないといけないのに
大丈夫かな、
小雨では無理だと思う、
頼りになるお兄ちゃんが帰ってくるまで
近づかないほうがいいのかな。
みんな、戻ろう。
と言い出したときに
足音に反応したのか
おもりにしてあった石を内側から転がして
小さな影とは思えない力強さで
小雨に突進してくる、ものすごい速度。
こわかった……
さくらちゃんが、積み重ねてきた練習の成果を発揮して
きれいなフォームで逃げていきます。
虹子ちゃんも、青空ちゃんも大声をあげて追いかけていく。
さくらちゃんが先導してくれて良かった。
そのまま遠くまで逃げてくれれば、小さい子たちには危険はないもの。
早く、もっと遠くに──
どうかさくらちゃんたちを追いかけていかないでください!
そしたら、さくらちゃんがふりむいてこっちを見たとたん、
小雨お姉ちゃんをたべないで!
あっちいって!
うわあーん!
自分のせいで、妹たちを危ない目にあわせてしまうなんて
情けない小雨ですね。
いのししの赤ちゃんは怪我をしていたから
裏庭を逃げ回って、すぐ倒れてしまったの。
結局、責任を感じた夕凪ちゃんと一緒に
海晴お姉ちゃんが、いのししを動物病院に連れて行きました。
夕凪ちゃんが隠していたんですね。
たぶんマホウでもないしイリュージョンでもないけど、びっくりしました。
茶色いから、ちゃちゃちゃん、という名前を付けたそうです。
でも、裏山にいのししなんて住んでいないのに変だなって
みんなで首をかしげているの。
夏の間に、ママが裏山に職人さんを呼んで、手入れしたんです。
草が茂っている場所に蛇がうろついたりしないように、きれいに刈ったり。
蜂の巣がないか、危ない動物が住み着いていないか
見て回って。
えさになるような種類の木はないから、何かが迷い込むということもなさそうなんだけど。
お医者さんに診てもらったところ、怪我をしていたのは車にぶつかったのでは、と
おっしゃっていたそうです。
車で連れていく途中で逃げ出してしまったのでしょうか?
いくらなんでも、いのししはもらってくれる飼い主を探すわけには行かないし
そもそも、いのししを育ててくれる場所なんてあまりないような気がします。
海晴お姉ちゃんは、動物園か専門の大学あたりから逃げ出したのではないかって。
テレビの人たちに協力してもらって、情報提供を求める案もあるけど
あんまり騒ぎにしたくなくて迷っているみたいです。
それに、いのししの赤ちゃんが町中に出現したニュースより
女の子が19人もいる20人きょうだいの大家族のほうがニュースになりそうだって。
テレビの人がおうちに来るなんてことになったら
小雨は緊張しすぎて
どうなってしまうかわかりません。
また腰が抜けてしまうかもしれない。
でも、怪我をしたちゃちゃちゃんを放っておけないのは
小雨も夕凪ちゃんと同じ気持ちです。
怖い思いもしたけれど。
小雨が怪我をして一人きりだなんてことになったら
とても生きてはいけません。
小雨ほど弱くはなくても、大変な怪我をしているんです。
ちゃちゃちゃんは立つこともできなくて、このままでは死を待つばかり。
厳しい野性のおきての中に放り込まれてしまった
小さな命。
今は話を聞いて同情してしまうけど
もしもまた目の前に現れたら怖くて逃げてしまうでしょうか。
今日は、ちゃちゃちゃんは動物病院にお泊まり。
もう戻ってこないんじゃないかって、
夕凪ちゃんがさみしがっています。
それは、いのししは普通のおうちにいたらいけないですよね。
夕凪ちゃんのことも心配です。
小雨なんかが元気付けてあげることもなかなかできないし
お兄ちゃん、ひとこと声をかけてあげるだけでもいいので
夕凪ちゃんの様子を見てもらえませんか?
お願いしかできない小雨ですみません。

麗の偽日記

『おみまい』

日の沈む時間が
だんだん早くなってきて
気がついたら暗くなっている夕方に
秋も深まってきた気配を感じる。
なのに
気温は妙に上がる
今日このごろ。

立夏ちゃんのミニスカが
涼しそうで
うらやましいなんて
なにかが間違っている。
はしたないから、私は真似しない。
ほんの気持ちだけ、薄着になった程度。
女の子に必要なのはつつしみ。
大切な人に会いに行けない悲しみを
誰にも言えず胸に秘めています。
激情を抱えて、誰にもぶつけるわけにはいかない
おんなごころ。
そういうものなの。
あまりあけっぴろげになんて。
暑くても、あまり恥ずかしい格好はできません。
男の人にだって必要。
つつしみ。
ね?

台風から変化した低気圧が
南の海上からの暖かい風を呼んでいます。

こんなこと言わなくても知ってるか。
晩ごはんの時に、海晴姉様からレクチャーがあったものね。
ちゃんと聞いているのか怪しい人たちも数人いたけれど。
みんながおなかいっぱいになるくらい作ったんだから
そんなに急いで食べる必要ないのに。
今日のカレーライスで余ったカレーは
カレーパンになって明日のおやつに変わります。
なんだか天気予報の解説みたい?
とにかく、よくかんで食べないと
消化に悪いのに。
胃がもたれて眠れなくなっても知らない。
夜まで電車体操して付き合っていられないわ。
日が暮れるのが早い時期、
体操にヨガに趣味も幅広く。
だけど私は食事も落ち着いていただくから
特に意識して体を動かす必要はありません。
長い夜が続いても、
時刻表一冊で越してしまいそうな秋と冬。
あなたも、小さい子に遊びをせがまれて体力が必要みたいだけど
むさぼって食べないほうが健康よ。
見た目も上品だし。
男に上品を期待しても仕方ないか。

こんなに20人分も量があるから
食事の匂いに誘われて
ちゃちゃもやって来たのかしら。
せっかくだけど、そんなにあまらないから
野生の動物にはあげられないわよ。
残った分は、家庭的な知恵でおいしく利用します。
肉や魚のカレー煮も候補に挙がりそうね。
たぶん明日あたりまでリクエストは受け付けてくれる。
カレー料理は百花繚乱。
意外とそんな日本。
食べ物の匂いに誘われて野生動物が入り込むことも
ないとは言い切れないけど。

今日は、夕凪ちゃんと小雨ちゃんに付き合って
動物病院でいのししに会ってきた。
どうにも放っておけない二人だし。
道に迷う心配は、私がついていけば問題ない。
夕凪ちゃんが顔を見せただけで
狭いおりの中でじっとしていた赤ちゃんいのししが
急に鼻息も荒く興奮を始める。
やっぱり、知っている人だと嬉しいの?
いのししも?
あさひと変わらないわね。
知っている人を見つけたら、すぐ遊んでもらいたがる。
小雨ちゃんともすっかり仲良くなってる。
足の怪我はだいぶよくなって
食欲も出てきたんだって。
お医者さんが用意したエサを、夕凪ちゃんの手から食べていたわ。
いのししに上品を期待しても仕方ない勢いだった。
何を食べているかというと
今日のエサは、穀物を砕いたものや植物の種子を混ぜ合わせてあるらしい。
あまり参考にならないわね。
参考にする機会も今後あまりないと思うけど。
確か、最初はエサも食べなかったんだから
食べ物に誘われてやってきたわけじゃないか。
遊んでほしかったの?
にぎやかにしていたから?
まあ、にぎやかさではこれほどの家はなかなかないと思う。
動物が多い病院でも
夕凪ちゃんと小雨ちゃんに遊んでもらって、
安心したみたいに眠ってしまった図太さがあるから
うちの家族にすぐ馴染む素質は持っているのかもね。
こんなふうに気の抜けた表情で寝る人を
うちの家族で何人も知っている。
この子も、当たり前みたいに家族になれたらいいのに。
ママは長男なんて生き物まで連れて来て平気でいる。
そんな無茶をしても
すっかり家族の一員になっている。
よく油断しきった顔で眠っているのも同じ。
小さい子と遊んでいたらやけに興奮を始めることだって
夕凪ちゃんがこんなにきらきら見つめているのも変わらないのに
どうしていのししだとだめなんだろう。
顔も同じようなものなのにね。
でも、ちゃちゃにはみんなかわいいって言うけど
あなたのこと、かっこいいって。
私はそうは思わないけど。
あなたのこと、頼りになるって。
私は普通だと思うな。
やっぱり男の人がいると違うと言う。
来てくれたのがあなたでよかったと言う。
男の人なんて来なくてよかったのに。
まあ、あなただったからまあいいかと思う。
ママは、いのししの身元がわからなかったら
いざというときには
知り合いの動物王国に預かってもらえそうだって。
そのつてで、動物園や大学から逃げていないかあたってもらったけど
今のところはどこも心当たりがないとか。
この近くにいのししなんて住んでいないのに
どこから来たんだろう。
ちゃちゃは、うちで遊びたくて
わざわざ遠くの山から訪れたの?
いくらうちがにぎやかといっても、そこまで響き渡らないんじゃないかしら。
大きな声で歌ったり泣いたり、笑ったり跳ねたりはしている。
みんな、そういうものだと思うけど。
うちだけ特別なんてこと、
それはもちろん、住んでいる私たちには
家族の全員が特別なだけよ。
ちゃちゃもわざわざ、こんなうるさいところに迷い込まなくてもいいのに。

青空の偽日記

『どうぶつだらけ』

ぴんぽーん。
いらっしゃい!

あかちゃんこぐまが
おうちにきたよ。

げんかんで
ごあいさつしてくれたの。

ちゃちゃちゃんのおともだちだって!
むかえにきたんだよ。
そら、かくざとうあげた!
そらちゃんもあげてみる?
はい!
てのひらに
かくざとう、いっこ。
くまさんに。
いいこでしょ?
くまさん、よろこんだ!
くるっとまわった!
ありがとうっていってるの。
くまさんも、ごあいさつができるいいこ。
そらといっしょ。
くまさんもおうちのこになる?
そらもくまさんになる!

これ、
ちゃちゃちゃんをまもってくれたおれいだよ、
しょうたいじょうくれた。
もりのしょうたいじょう?
そらにくまになってほしいの?
いつでもなる!
かくざとう、おいしそうだった。
そらももりにいく。
くまさん、
ちゃちゃちゃん、
そら、
おにいちゃん。
もり!
いつ?
なんてかいてある?

おさるもきたよ。
おりのなかではねまわる。
はねて、てをふる
さーびすせいしん。
ごりらもいた。
のっそり。
うごかない。
ねむかった?
よくねるこは
よくそだつ!
おやすみ。

おうまもいた。
ぽっくりぽっくり。
いぬもいた。
おおきい、ぶちもよう。
いうことをよくきく、てんさい。
おて!
おまわり!
ふせ!
ねんね!
しつけができた、りっぱないぬ。
うちにも、こんなにしつけができたこはいないの。
いぬ、すごい!
あたまいい!
うちでいちばんあたまいいのは、つらら。
どっちがあたまいい?
いぬと。
ねこはいないの。
あんまりいうことをきかないからだって。
ねこ、かわいいのに
ざんねんね。
ねこ、げんきなのに
さみしいね。
あそびたいのに
いないの。
ねこ、ないちゃう?
さくらみたいにないちゃう?
にゃーお、じゃなくて
えーんえーん。
くまがにがてでないちゃう?
げんきだして、
さくら!
ねこも!
とりもいた。
しゃべるの。
ほんとに!
ほんとにいた!
しゃべるとり。
そらちゃん、
いいこにしてた?
うん!
どうしてそらのなまえをしっている?
そのひみつは、
どうぶつびょういんで
ゆうなからきいたからだって
みんな、
どうぶつびょういんからきた!
だっそうしてきた!
だいだっそう!
ぴえろのひともいってた。
どうぶつびょういんで、ちゃちゃちゃんはげんきになった。
けががなおるまで、もうちょっと。
だから、きょうはだっそうしてこなかった?
あれ?
ぴえろの
ひと?
……
ひとだ!
どうぶつじゃない!
ぴえろはあんまり
どうぶつえんでみたことない。
どうぶつずかんにも、のってない。
ぴえろ。
ひとなのに
なんでどうぶつびょういんからにげてきたの?
ほんとうはどうぶつだったの?

海晴の偽日記

『帰宅』

本人は内緒にしているつもりでも
駅からの帰り道に、ときどき見つけてしまう
麗ちゃんのお気に入りの場所。
待っていると、通過する電車がよく見える。
たたずんでいるその背中。

何か困ったことや、人に言えないようなこと。
自分で一人で抱え込む気持ちになってしまうつらいこと。
誰に話したらいいのかもわからない
本人だけの大きな問題や、ありふれた小さな出来事。
ただ普通に過ごしているだけで、
誰にでもどんどん増えていく重荷を
ひとときだけ肩から下ろして
自分の気持ちの中だけでも整理したら
また背負いなおして、歩き出す。
なんでもない立ち止まる時間が、
好きなものがそばにあるだけで大切になる。
それは必要なことなのか、こちらとしてはもう少し頼ってもらいたいのか
あとで正面から顔を見て話しかける言葉を考えながら
肩を落とした背中に声をかけないで通り過ぎる。
一人きりで気持ちを見直す時間が欲しいときは、誰にでもある。

私の小さい頃は、そういう時間はあまりとれなかった。
もっと気になっていたのは
自分よりも少しだけ小さな家族たちの姿。
せいいっぱいに伸ばした手足と、丸まってしまう遊んだ後。
夢中になっていたのは、いつでもくるくるする表情。
きらきらした真剣な瞳にひきつけられて
いつも近くで見つめていたくなる。
私もまだ、あんまりしっかりしていなかった時代。
逆にお世話をしているつもりの私が助けられるのが当たり前だった。
それは今でも変わっていない部分があるけれど。
ときどき一人きりで調べる天気図の上。
指先でうつろいゆく天気に、妹たちの顔を重ねている。
晴れたとき、くもったとき、いつでも見ているからすぐに浮かぶ。
さみしいときも、私が一緒にいてもらっていたようなものだった。
だから気がつかなかった。
妹たちが自分だけのものと思ってしまう悩みを抱えたときに、たまにひとりで考えたくても
私はあまり力になる手段がないということ。
一人でいなくてもいい、どんな形でぶつかってきてくれても頼って欲しいと
それだけを願ってしまうのは、繊細な子には厳しいお願いかな。

今日の麗ちゃんは、一人じゃなかったよ。
秘密にしていた大事な場所に、夕凪ちゃんを連れてたたずんでいた。
夕凪ちゃんは、どうして自分が連れてこられたのかよくわかっていなくて
きょろきょろ。
帰ってきてからも、麗ちゃんの寄り道に付き合ったみたいな報告をしてくれました。
でも、たまたま見かけただけなのにわかってしまう。
思うことがあるときに一人になりたくて来る場所に、
どうして自分以外の誰かを連れてきたのか。

サーカスを招いたのは
アミューズメント施設の三連休のイベントのひとつなんだって。
開催の日は土曜日。
他の日は体育の日関連のイベントが続くから、前夜祭みたいな感じ。
たった一日だけで終わってしまう
夢のようなきらめく体験。
光り輝くライトと、集まった人たちの熱気の中で
後になって幻と区別がつかなくなってしまう、目に映るもの全てが華やかなショータイム。
いつもの日常とはほんのちょっと離れた世界にいるような、魅惑の時間です。
その一日が過ぎ去ってしまうと、どうしても旅立ってしまうサーカスのみんな。
せっかく仲良くなったちゃちゃちゃんも、明日限りでお別れの約束。
夕凪ちゃんは、明日のサーカスが楽しみでまだ気がついていないのかもしれないけれど
麗ちゃんはわかってしまったのかもしれない。
敏感に、気配を感じてしまった。
遠くに離れてしまった後に、残された人の気持ち
想像できてしまったんじゃないかな。

夕凪ちゃんを慰める役目は、氷柱ちゃんも見過ごしていられないみたいだし
星花ちゃんも仲良しで、よく一緒だもんね。
麗ちゃんが気にしてあげているのは、よく道案内で動物病院に付き合ってあげているからかな。
家族のことを幸せにしたいけなげな子が増えて、
悲しいときに、どうすれば立ち向かえるのか教えてあげられる。
別に私がどうしてもしなければいけないわけじゃないことは知っている。
でも、私も手助けしてあげたいのに、何もできないのはやっぱりつらい。

本当は悲しむことじゃないはず。
ちゃちゃちゃんはやっと家族と出会うことができて、戻っていく。
これからも離れないでついていける。
せっかく友達になれた夕凪ちゃんと別れて、さみしく感じるときがあっても
夕凪ちゃんと同じように励ましてくれる家族がいる。
それはたぶん、私たちとは違うやり方になるだろうけど
そのおうちの大事なことを教わっていくはずです。
見送るときには、もう会えないかもしれないさみしさを思うより
友達が大切な家族とまた出会えて、一緒にいられる幸せを喜んであげたい。
もしかしたら、お別れのあいさつをする機会はないかもしれないの。
公演のあとはすぐに出発するからと
今日、ちゃちゃちゃんを引き取っていったサーカスの人が
夕凪ちゃんではなく、私に教えてくれました。

サーカスの開演は、土曜日の夕方6時から。
我が家でもみんなで見に行く予定だよ。
ひとときの夢の時間、
私の家族たちが楽しんでくれたらいいな。
もう二度と見ることがないかもしれない、まぶしすぎるステージ。
ずっと忘れられなくなる出会いのひとつ。
私が家族に毎日もらっている大切な日みたいに?
そばにいるだけで一番幸せな、愛する人たちのしぐさと少し似ている。
あんなに華やかなのに、私たちのありふれた毎日とどこかで重なる。
いっぱい楽しもうね。
小さな子たちも、ここだけにある刺激的な出し物を待っている。
仲良しの友達が参加している、きっと自慢の家族たち。
ちゃちゃちゃんは、迎えに来てもらってとても嬉しそうにしていたわ。
あっという間に終わってしまう夢でしかないとしても
開幕の時間は、もう近くまで迫っています。

ヒカルの偽日記

『屋台』

3連休でも
チビたちは元気。

見習わなくっちゃ!

高校生になると、
3日間も走りっぱなしではいられないから
初日くらいは体力を残して、
なんて考えてしまう。
こんなことではいけないな。
今日を精一杯に走る子供たちに仲間入りして
私も連休を一緒に過ごすんだ。
3日間の休日を、思い残すことがなくなるまで駆け抜けたい。

春風は連休が来るといつも
あれもこれもとはしゃいでいる。
おでかけもいいし
そうでなくても楽しみたい。
家族といてうれしい。
炊事も、掃除も、買い物も
何をしていても、
疲れを知らないみたい。
それとも、ぐっすり寝たらすぐ復活するのかな。
春風が楽しく過ごした休日は、すごくいい夢を見るんだろう。
学年の問題じゃないんだな。
夢中になって楽しむっていうのは。
でも──
霙姉が、早くこたつにもぐりたくて楽しみに待っているのは
似たようなものでいいのかな。
熱い胸のうちを子供と変わらない活力で教えてくれる。
夢を語るような、澄んだ瞳。
なんだか暑い日が続いて
家族のみんなが大喜びで薄着になっているよ。
霙姉も、暑くてたまらないとか
薄着は楽でいいなとか胸元をぱたぱたしながら
弟をからかうのはいいが
季節のふれあいというものだってあるだろうと不満そう。
この季節らしいふれあいか。
こたつが出てきても、オマエは大変になりそうな気がなぜかしてきた。
霙姉は何をはじめるかわからないし。
これから寒くなる季節に、オマエに苦労が少ないほうがいいとは思うけど
なんだか、苦労することがあってもいいから
家族みんなで走り続けていられたらと願ってしまう。
どこに向かうのか、目的は何も考えないで
ただ一緒に走っていたい。
夢中で走っているときに、ふと隣を見ると当たり前に家族がいるような
そんな毎日を過ごすことを考えている。
私はあまり想像力がないのかもしれないな。

まあ、そういった姉たちや妹たちや長男がいる家だから
夕方になってからお出かけだとわかっていても
体力を温存するなんて忘れてしまうこともある。
お兄ちゃんと遊んでもらえて満足しきったさくらが
出発直前になってタオルケットにくるまって丸まったりして
みんなで慌てることになったりする。
おでかけ先で何か食べようという話で興味を引いて
ようやく全員がそろう事態。
そう。
お楽しみは、サーカスだけじゃなくて
実は、大きなイベントの会場にたくさん並んでいる
食べ物屋の屋台も目的のひとつ。
屋台はいいよな。
おいしいし。
いいにおいだし。
お祭りみたいで、うきうきする。
ごはんが食べられなくなると困るから、ふだんはあまり食べないけれど
今日の開園の6時は、先に夕飯を食べるには中途半端な時間。
帰ってきたときに簡単に食べられるおにぎりなんかを家に用意しておいて、
開演前には屋台で何かちょっとお腹に入れておこう、ということになった。
あまり食べ過ぎても家でご飯が食べられないし、軽い食事。
だから、ひとつを2人で半分こがちょうどいいかなと
2人づつに分かれて、それぞれのお腹にあわせてお店を選ぶ。
私とペアを組んだのは、青空。
だってオマエと組むと、半分こにすると足りないじゃないか。
青空も食欲旺盛だし、半分で足りるかと少し不安もあったけど
子供ならではの嗅覚を発揮して、大盛りしてくれる焼きそば屋を見つけてくれたからよかった。
私が見てやって、あんまり食べ過ぎると眠くなるぞって忠告もできて、いいコンビだったと思う。
同じように野性の嗅覚を発揮できても
氷柱と立夏のペアなんて、立夏が先に手を付けて
大盛りをほとんど食べきってしまったらしい。
食欲があまりないから別にかまわないって氷柱は言ってたけど、ちゃんと食べないと。
氷柱はもうちょっと食べて健康的に肉を付けてくれたら、こっちも安心なんだけどな。
ダイエットしてるわけでもないのに細いし、おまけにあまり食べないなんて。
そんなんじゃ、元気に外で遊んだりできないじゃないか。
困ったやつだ。
ただ、今日はせっかくのお出かけなのにずっと浮かない顔だったから、
何か心配事でもあったのかな。

サーカスも楽しかったな。
でもなんだか、あっという間だった。
ちゃちゃの出番が終わりのほうになったから、待っている間に油断していたかな。
私は途中から半分寝ていたみたいだったし。
いいところを見逃していただろうか?
氷柱のお腹が鳴ったりしていなかった?
ちゃちゃじゃなくて、マークくんだって紹介されていたな。
まあ、うちでつけた名前で呼ぶはずはないか。
昨日まで足の怪我で病院にいた子が
あんなに馬の背中から飛び移ったり、輪をくぐったりなんてできるわけない。
あれは別のいのししだろうって吹雪が分析していた。
ちゃちゃのことをよく知っているはずの夕凪も何も言い返さなかったから
もしかしたら、そうなのかもしれない。
でも、マークくんの出番が終わったとき、夕凪は一生懸命拍手していたな。
やっぱりあれはちゃちゃだったのかな。
最後にちゃんとお別れのあいさつができなくて残念だったな。

家に帰ってきても、話題は尽きないで賑やかだった。
今度は氷柱もたくさん食べていてよかったな。
そんなにおにぎりが好きなんだろうか? 知らなかった。
それにしても、せっかくうちに来てくれたのに、
こんなに楽しい食卓にちゃちゃが参加できなかったなんて、ちょっとさみしい気もする。
いのししだからって夕凪も遠慮しないで、堂々と連れて来ればよかったのにって冗談で言ったら
夕凪は、いいのって目を輝かせていた。
また何か拾ってくる気なんだろうか。
でも、いつまでもついてきちゃう子ってときどきいるじゃないか。
ああいうとき、置いていくのがちょっと勇気がいるんだよな。
小雨が小さい頃に子猫を拾ってきたのも、友達とエサをあげていたのに
なぜか友達と別れたあと、自分にだけついてきちゃったからなんだって。
もしまた何か拾ってきても、たまにはそういうことも仕方ない。
心を鬼にするなんて、夕凪にはまだ難しいだろう。
何かあったらその時になって考えるしかできないから。
だから、夕凪がまた何か拾ってしまったら、またその時に考えればいいんじゃないか。
そろそろハロウィンも近いし、今度はETでも拾ってくるかもしれないな。
それとも、ドラえもんが好きみたいだし
猫型ロボットはあんまり落ちてないと思うけど
恐竜くらいなら拾ってくるだろうか。
夕凪ならいけそうだ。

真璃の偽日記

『年長さんの休日』

とっても暑い日曜日。
真夏のよう。
フェルゼンも、ちっちゃい子たちにくっつかれて
ますます暑かったんじゃない?
どんなに暑くて夏に逆戻りしたような陽気でも
水着はもうしまっちゃった。
風はほんのり冷たいし
わがままな女の子だって
今どきプールには入りません。
秋だから。
おやつはアイスじゃないの。
くりなのよ。
くりのどら焼きよ。
あんこを家で作るのって、とっても大変なのよ。
って、マリーが作ったわけじゃないけど。
横で見ていただけ。
春風お姉ちゃまも蛍お姉ちゃまも
達成感があるのか
輝く笑顔。
高校球児みたいに戦い抜いた表情。
流れる汗。
スポーツマンと違うところは、
食べてくれる人を思ってきらきらする瞳と
さわやかな秋風にそよぐエプロンのフリルが
恋する乙女のよう。

ねえフェルゼン。
マリーね、
せっかくの連休なのに
アンニュイなの。
あんこ作りをわくわくしながら見ていたら
どうしてマリーのおなかは限界があるんだろうと
物思い。
小さなマリーは、せっかく食材が豊富な季節なのに
あんこ作りだって、大根おろしだってお手伝いできない。
みんなで家事のお手伝いをしたって、
お姉ちゃまたちみたいに年季を積んだわけじゃないから限界があるし
こんなんじゃ秋を食べつくせないわ!

秋のせいなのね。
夏みたいな日差しの下で飛び跳ねていれば
すっかり消えていきそうな胸のつかえ。
まだ真夏を思わせる事態は、まぶしい太陽のほかにまだあるの。
たっぷり汗をかいた服の山盛りと
雨が降ったら洗濯物が乾かせなくて困るということ。
マリー、干すわ。
この美しい日の光を少しも無駄にしたくなくて
洗濯物を抱えて、物干し台に向かうわ。
おやつを味わいつくせないと嘆くより
体を動かしておなかをすかせて
おいしくいただくほうが建設的なの。
いい子でお手伝いすれば、
おやつやごはんのリクエストも聞いてくれることが多いし。

洗濯物を干す休日は、
園児としてはどうなの? と少し悩んだりもするけれど。
同じ幼稚園に通うかわいい妹が二人もいるんだから
マリーがしっかり世話をしてあげたい。
汗をかいたら着替えを洗って、干してあげて
年長さんとはこういうものなんだと
堂々とした背中を見せてあげたいわ。

昨日はおでかけもしたことだし。
遊んでばっかりでは、立派な大人になれなくて恥ずかしいものね。
ただでさえ、マリーが目指すのは大人どころじゃない、女王の風格。
心も体も大きな人間になりたかったら
子供の頃はよく遊び、よくお手伝いをして、よく食べるといいという話。
フェルゼンも、子供時代はそうだった?
というわけで今日のマリーは家事の専用の作業服。
メイドさんです。
ドロワーズもばっちり身に着けて、下着から気が引き締まるわ。
活動的な年長メイドさんが我が家に出現。
家事をする。
羽ばたくように揺れるフリルエプロンは、
美人のお姉さんたちだけのものではないのだと
マリーがみんなに見せつけてあげるわ!
幼稚園児だって、家族のために何かしたい。
お洗濯日和が嬉しいの。

フェルゼン、今日は汗をずいぶんかいていたみたいね。
さあ脱いで!
メイドの仕事はお洗濯だけじゃ終わらない。
いつも家族を大事にしてくれてありがとう、
ちっちゃい子のお世話でお疲れ様の体に
マッサージもしてあげたい。
メイド服には、どこか力こぶが似合う。
なんでもお任せくださいって
頼りになりそうだからかしら。
普段から鍛えているからって。
優雅な白鳥は水の下で足を動かすの。
そんなに高貴じゃないように見えても、
このメイド服だってマリーに似合う衣装のひとつよね。

春風の偽日記

『ころも』

少し肌寒い休日。
こたつを出す時期がついに来た?
まだ早い?
家族会議も盛り上がっています。
今夜の結論は、保留。
明日から雨が続く予報で
冷え込みそう。
そうなったらいよいよこたつの出番。

王子様はどちらがいいと思う?
早く出したらいい?
まだ重ね着で充分?
やっぱり霙ちゃんの味方かな。
こたつ派は意外と多いんです。
ぬくぬくする感覚が支持を集めているの。

春風は──
こたつより──
人肌がいいと思います。
おしくらまんじゅうなんて言葉でごまかさないで。
春風はもう大きい。
真剣です。
いつでも、心から王子様を暖めてあげたい。
寒かったら声をかけてくださいね。

台所担当として
体を暖めるためにできることは他にもあります。
みんなの服を用意してあげるお姉さんとして
蛍ちゃんにそろそろ追い越されそうな位置だけど
まだなんとか現役。
我が家のファッション最前線に立つ
春風におまかせです。
蛍ちゃんは、ときどき盛り上がりすぎて
無茶をしてしまうかわいいところがあるものね。
虎のビキニは
春風は止めたらよかったですよね。
まもれ!
ヒカルちゃんのおなか!
もうすぐハロウィン。
仮装の日。
なんてね。
仮装して、本物のおばけをびっくりさせて追い払う日。
うわー、おばけだ!
これはたまらん、逃げなくちゃ。
って言わせてしまいたい。
おばけは自分がそうなのに、驚くものなのでしょうか?
おばけも怖がるくらい、おそろしいものなんですね。
おばけ。
あんまりおばけだとか怖いとか言っていたら
またさくらちゃんがおののいてしまうから
細かいことはおいといて、
とにかく仮装の日。
西洋由来で、亡くなった人をお参りしたりする日なので
観月ちゃんもあまり私たちに見えないようなものは見ないみたいで
安心です。
今年はまだ蛍ちゃんがテーマを決めていないようだから
王子様もアドバイスしてあげてはどうですか?
また動物園でもいいですし
いかにもおばけって感じもありだし
天使だって。
でも春風から見たら王子様はいつでも天使のようにきらきらしている。
こんなに春風の心をとらえる人が
この世にいるなんて。
いつか本当に住んでいる世界に戻ってしまいそうだから
春風は何があっても後悔しないように
いつも全力で自分のできることをして
あなたに尽くして
いつかあなたがふとした機会に私を思い出して
ああ、自分には春風というがんばり屋の家族がいて
とても幸せだった、
これはいつまでも一緒にいなくては、
と思わせたい!
もちろん、そんなことを考えているかたわらに
いつも春風が笑顔でいます。

衣装の話で思い出したことで、
ヒカルちゃんはときどき、そういうことに無頓着。
鈍感なんです。
ぷんぷん。
今日もね、
立夏ちゃんが見せている太ももに
寒いだろうと差し出す自分のジャージ。
立夏ちゃんは、まだ小学生みたいな子なんだから
いつでも動き回ってほかほかだし
ワカメちゃんみたいなスカートでも問題なしです!
とは、
大人になりたい立夏ちゃんの前ではなかなか言えないですけど。
女の子としてスカートにこだわりたい立夏ちゃんには、ジャージは、うーん。
それに、春風が季節を意識して選んだもみじ色のブラウス。
王子様が似合うって言ってくれたから
とってもお気に入りで
いつも春風のきれいな姿を見ていてほしくて
よく着ていたのに
昨日までの暑さで、どこか奥にしまってしまったのかしら。
今朝、見つからなくて探していたら
ヒカルちゃんが差し出すジャージ。
違うの、
重ね着したいわけじゃないんです。
気持ちは嬉しいんだけど
春風はいつもきれいでいたいだけなのに
説明しても、よくわかっていないみたい。
そうですよね、ヒカルちゃんが言うように健康も大事ですよね。
ハロウィンでは無理な衣装を身に着けないで
ヒカルちゃんの体も守りたいですけど
くすん。
春風が立ち直った理由は、
これまでの服だけにこだわらないで
今日も明日も王子様にきれいだと思ってもらえればいいんだと
思いついたからです。
どんな服装だって。
ハロウィンも、せっかくだから王子様の好きな衣装にしたいな。
虎のビキニ──
春風には似合わないと思いますけど
どうですか?
王子様のお好みで春風を染めあげてください。

あさひの偽日記

『ふにゃ』

にゃーにゃ、
あんば
ふにゃっにゃ!

あーあんば
ふにゃ!

むー
むー
ふんぬば!

ふぅぱっぱ!
んば……
はんにゃー!

(おにいちゃん、
 れんきゅうは
 たのしかったね!

 あさひとおにいちゃん
 いっぱいあそんだもんね!

 おにいちゃん
 もっといっしょにあそんでよー。
 がっこうにいかないで!

 あしたはたいふうだよ!
 たいへんだ……
 どこにもいっちゃだめ!)

小雨の偽日記

『こたつ』

ついに登場。
霙お姉ちゃんが待ち望んでいた
こたつ。

しまってあった押入れの片付けや
重くても気にしない力仕事。
マントをひるがえして、先頭に立って
霙お姉ちゃんがなんだか頼もしいです。
汗を流したものだから、途中からマントは小雨が預かっているうちに
どこに置いたのかわからなくなってしまって申し訳なかったり
霙お姉ちゃんがシャワーに行っている間に
立夏ちゃんと夕凪ちゃんが一番乗りを競い合って
こたつのまわりをぐるぐる追いかけっこして怒られたり
マントはなぜかこたつ布団を重ねた間に挟まっていて
汗を流した霙お姉ちゃんがまた体を動かすことになってしまったり
大変な騒ぎになったけれど
霙お姉ちゃんは、台風が近づいて外は宇宙的なカオスに満たされているから
家の中だって騒がしいくらいでちょうどいいと言ってくれました。
お手伝いをして一生懸命働いた
お兄ちゃんとヒカルお姉ちゃんもお疲れ様です。
それを大きな声で応援していた立夏ちゃんも疲れたって、こたつで体を伸ばしています。
がんばってくれたんですね。
小雨は着替えを預かるだけの仕事も満足にこなせなくて恥ずかしいです。

でも、こたつっていいものですね。
あったまっているみんなの顔も、ほっこりしています。
体だけではなく気持ちもほぐす暖かさ。
霙お姉ちゃんは、あーあったまるな、
ごくらくごくらくって
それは温泉ではないでしょうか。
同じようなものでいいのかな?
あんまりいいものだから、
こたつと結婚するそうです。
そしてお兄ちゃんを愛人にするって。
大人の話で難しくて、小雨にはよくわからないですけど
こういうのって甲斐性と言うのでしょうか。
霙お姉ちゃんなら頼りになる人ですものね。
でも、お兄ちゃんが愛人で、二号さんなんて
立夏ちゃんが、それなら奪うって張り切ってしまいました。
おませなオシャレ泥棒が狙うのは今度は心。
お兄ちゃんの心。
小雨は見ているだけでとても手が届かない高嶺の花のような。
遠くから眺めているだけでいい、小さな幸せ。
立夏ちゃんなら手が届くのでしょうか?

霙お姉ちゃんと結婚してしまったけど、こたつはみんなのものです。
お兄ちゃんみたいに取り合いをしなくてもいい。
あたたまっていってください。
って、お兄ちゃんも取り合いをするものじゃないですね。
お兄ちゃんはお兄ちゃんなんだから。
宝石や金ののべぼうみたいに、どろぼうに持っていかれたりしない。
お姫様みたいに王子様に助けられるのを待っていたりしない。
今ではお姫様も助けられるだけではないかもしれませんね。
春風お姉ちゃんだって
王子様のためなら迷わない。
小雨はお姫様ではない、自分で何かできるということもない。
こたつにあたってゆっくりしているだけの子です。
というか、小雨は機械がわりと苦手で
ときどき温度調節を間違えてあわててしまうこともあるので
こたつにあたってゆっくりしているだけのこともできない子です。
こたつを使うだけでお兄ちゃんやお姉ちゃんの助けが必要になるなんて
小雨は本当に、来年は中学生になるお姉さんなんでしょうか。
はあ……
いけない、
こたつを出しただけで落ち込んでいたら
せっかく、みんなが張り切っていたのに
雰囲気が暗くなってしまいますね。
小雨はがんばってこたつを上手に使えるようになります。
小雨が入っているこたつに、
お兄ちゃんが遠慮なく入ってこられるように。
こたつに入るだけで勇気がいるなんて小雨一人で充分。
家族があたたかく、だんらんできるこたつ。
あんまり入っていると暑くてのどがかわいてしまう欠点もありますが
小雨は上手な使い方をおぼえます。
お兄ちゃん、霙お姉ちゃん、見ていてください。
せめて人並みくらいにはこたつを利用できるようになりたいです。

雨が降る外の気温が冷たくて、
こたつの出番があると
いよいよ秋も深まってきたよう。
これが台風の影響なんて考えると、
少し複雑で、こんがらがってしまいます。
あまり台風の影響が強いと、明日は休校になるかもしれないって
夕凪ちゃんたちはそわそわしていますけど
たぶん休校にはならないので
雨に備えた準備をしておくことも大事。
着替えとタオルと、大事なのは靴下。
荷物が多くなると、それはそれで困るし
うまくまとめてもっていかないと、と焦るとますますちらばってしまう。
麗ちゃんはよく持ち歩いているポケット時刻表は
明日はなるべく荷物がかさばらないように、置いていったらと思うのですけど
そんなことは余計なお世話かと悩んでいて、まだ言っていないんです。
大事そうにしているし、濡れないといいですね。
一応小学生のみんなに忘れ物があったときのために
小雨は少し余計に持っていきたくて
準備がまだ終わっていないんです。
もう少し時間をかけて、丁寧にたたんでまとめておきたくて。
同じ部屋の麗ちゃんは、うっとおしくて眠れないかな。
明日は雨で大変になりそうで、早めに休んでもらいたい。
小雨はまわりの邪魔にならないように
小さくなりながらこっそり明日のお支度をするつもりです。

吹雪の偽日記

『夢』

夢は記憶の再構築だと言われています。
その性質上、実際に体験したことでなければ
夢に見ることはあまりない傾向があります。
ただ、人間の記憶領域は複雑なものであって
期待していることや不安に思っていることなど
まだ体験したことのないはずのことを、
あたかも実際に目の前で繰り広げられた事実のように
生々しく夢に見る。
観月の身長がやけに伸びたような気がしていたら
やはり夢だったということがあります。
観月が早く背を伸ばしたがっているからでしょう。
また、観月だと思ったら実は蛍姉だったということもあります。
こちらは夢ではありません。
巫女服は人気があるようですね。
しかし私はあまり動きやすい服であるとは思えません。
このように、夢を構成する要素は多岐に渡ります。
青空が今朝は何かいい夢を見たが憶えていない、
どんな夢を見ていたか教えてほしいとねだってきても
伝説において特別な力を持つカルデア人ではないので、わかりません。
夕凪姉や観月は、科学で説明できない力を持っている可能性がありますが
今回はどんな力も役に立たないと、早々にさじを投げています。
春風姉は、キミも不思議な力を持っていると主張します。
そうなのですか?
青空の見た夢がわかるでしょうか。
ただひとつ手がかりになりそうなのは、
けさは台風の影響もあって風が強く、
青空はその音で目を覚ましたという証言です。
この点は、風の音におどろいたさくらが早くに起きていたため
目撃していたと、青空の主張を裏付けています。
まさか、恐ろしい風の音でいい夢を見ていたわけではないし
風の音が気にならないほど熟睡していたとも考えられますが
夢を見るのは脳が活動している状態です。
外部も気にならないほど没頭できる夢なのでしょうか?
夕凪姉は、おそらく風の音を回転する機械の音か何かと間違えたと考え
大きな綿菓子を作る夢ではないかと推測しましたが
青空は納得していないようです。
回転する機械の動きは、そのシンプルな動きも一つの魅力を持っています。
安定感があって信頼できる動作のひとつであると言えますが
音が大きいと不安を感じてしまう、と私は考えます。
夕凪姉が想定しているのは、その説明から考えられるのは
大きな音を出す単純に大きな機械であって
それは現実的には開発が困難である巨大な人型ロボットに近いらしい。
そのようなものがあったら
おそろしいことです。
非常に危険です。
もし万が一、町を歩き出したら対処できるのでしょうか?
しかし、どうも巨大な存在に対する年少組の憧れは根強いように感じます。
青空がそのように現実的な安全性を思考の外に置いた夢を見ていたとしたら
価値観の違う私では、いくら推測しても青空を納得させる発想には至らないでしょう。
夢の中では、どのような不自然な状態も受け入れられるものです。
観月が大きくなったり小さくなったり
増えたり減ったりするのも
夢だと気がつけば、何も不思議はありません。
観月は別に増えたいと希望はしていないのに、なぜあのような夢を見たのでしょう?
私の希望も関係していたと考えていいのでしょうか。
家族の人数がさらに増加しても問題ないという考え方があり、
むしろ、それが自然に感じると。

とはいえ、風の音が激しくても朝まで安眠できたのはいいことですね。
昨夜はそれほど雨も風も激しくなかったため、
家族の多くが、思っていたほどではなさそうだとさほどの緊張感もないようすで
部屋に向かった姿を確認しましたが
朝になって、いよいよ台風の影響も強くなってきました。
麗姉は帰宅してから、パソコンで鉄道の状況を確認して
悲鳴をあげたり、むずかしい顔で歩き回ったり
自分がおやつを食べていることも忘れて考え込んでいるようだったり。
その後も、各地で運行が正常に戻っていくのを確認するまで
落ち着かないようでした。
あまり麗姉の実生活に関係する事柄ではないと思うのですが
他の何事も手につかないほどで
台風の被害は非常な関心事だったようですね。
風の音が激しかった明け方ごろに
キミの部屋に何人か向かったと──
朝食の喧騒の途中に、情報の断片が遠くから届きました。
誰の声だったのか、誰が部屋まで行ったのか聞こえなかったのは
風の音よりもにぎやかな朝食の声にまぎれ、
私も特に気にならなかったので、そのまま確認しませんでした。
仮に、家族の関係においてそのような行為が可能であるとしても
私は体質の問題があって、同じ方法で恐怖から逃れることはできないし
それに、どのような問題にも多様な対処法を検討しておくべきであるし──
それに──
私は風が強いくらいで、それほど怖くは感じないのだし。

今朝の台風は、雨よりも風の被害が大きかったようです。
雨の対策に小雨姉が用意していた着替えは、役に立つ機会はありませんでした。
また、星花姉と夕凪姉は期待していましたが
学校は休校になりませんでした。
雨が強い場合は、傘で視界が制限されたり、動きにくくなる不便があります。
このような風の強い日に注意することは
風にあおられたときなどに備えて、周囲を確認することだと思います。
雨と違って、強い風であれば手をふさがれることもないため
いつもと違う通学路にはしゃぐ子供も多く見られます。
少し心配していたのですが
今日は、なんとかユキを強い風から守りたいと
小学生組で相談しあって、陣形を組んで進むようにしたため
浮かれている余裕はなかったようです。
その場の勢いで始まった作戦であり、どこまで効果があったのか正確な判断はできません。
危機に備えようとする態度は望ましいものです。
お互いを思う気持ちは美しいですね。

虹子の偽日記

『あっというまに』

まるかいてちょん。

まほうのあそび、
えかきうた。

がようしがあれば
なんでもうまれる。

がようしがなくても
どこにでも
なんでも。
おこられるけど。

にじこ、
たこをかくのがとくいよ。
ほかには
ぞうさん。
コックさん。
さかなさん。

あっというまに
できるの。
えかきうただから。

おにいちゃんもかいてあげる。
えかきうただよ。
さあ、どんなおにいちゃんになるのかな。
かっこいいよ。
やさしいよ。
にじことあそんでくれるよ。
おにいちゃんだから。
ね。

リボンがひとつ
あったとさ。
にじこかな。
にじこじゃないよ。
おにいちゃんだよ。
はい。
あっというまに
おにいちゃん。

にてる?
かっこいい?
じょうず?
おにいちゃん、きにいった?
にじこのえの
おにいちゃん。
でもね、
にじこは
ほんもののおにいちゃんのほうが
いいな。
じゃあ、
このえのおにいちゃんと
ほんもののおにいちゃんを
こうかんしましょう。
いいよね?
こっちのおにいちゃんは
おにいちゃんにあげる。
おにいちゃんは
にじこがもらう。
にじこ、うれしい!
みーんなうれしい。
だいじにするね。
おにいちゃんがはいるたからばこ、
つくってもらわなくちゃ!
にじこのえのおにいちゃんは
ほら、えがお。
やさしそうでしょう?
でもね
ほんもののおにいちゃんは
もっとやさしそうで
かっこよくて
にじこのすきなえがおなんだよ。
おにいちゃん──
きょう、あんまりえがおじゃなかったね。
にじこ、みていたんだもん!
おなかがいたかったの?
それとも、
つららおねえちゃんが
こらーって
おこっていたから
おそろしかったの?
おにいちゃんを
ゆるさない!
って、おこっていたから?
かぜがつよかったひのよる。
かぞくのやくそくで、ひとりではだめなのに
だれかが、おにいちゃんのおへやにいれてもらったの。
めいわくをかけてしまうでしょう?
かってにおへやにいれたおにいちゃんもわるいって
つららおねえちゃんがおこっている。
やくそくをやぶっておへやにいったこがいるみたい。
おへやのまえにだれかがいたって
わかっているのは、それだけ。
だれだ!?
よるねないこは
だれだー!
なんちゃって。
そらちゃんのまね。
やさいをのこすすこは
だれだ!
まんがをよんでかたづけないこは
だれだ!
おふろのあとに
おしりをまるだしにしてあるきまわるこは
だれだ!
よるになって
おにいちゃんのへやにしのびこむ
いけないこは
だれだ!
……
いけなかった?
ごめんなさーい!
でも、こんどはにじこじゃないんだよ。
こどもべやのみんなは、どこにもいかなったの。
ふぶきちゃんも、じぶんのへやからはだれもでていかなかったって。
だれだろう?
つららおねえちゃんのそうさが
はじまります。
まずは、あしあとからなのよ。
むむむ、
これは!
げぼくがしっかりそうじをしないから
わたぼこり!
それで、きょうはずいぶんおにいちゃんがおこられていたから
えがおになれなかった?
あのね、
えがおのおにいちゃんは
えかきうたでつくれるだけじゃないんだよ。
あっというまに、
えかきうた。
ちょっとひとてま、
おしゃしんのえがお。
めのところを
やまおりにするの。
にかい、おるの。
ほら、みんながみたいときに
てがとどくところにあるよ。
これ、
アルバム。
えーっと、どれだろう?
これこれ、
おにいちゃんのおしゃしん。
さくらのしたで
すましがお。
ここをおるんだよ。
こうやって
……
こう
……
あ。

へんなおりかた
しちゃった!
だいじなものなのに
くしゃくしゃになっちゃった!
おにーちゃーん!
にじこ、おにいちゃんをこんなにしちゃった!
でもね、
こんどはしっぱいしないとおもうの。
おにいちゃんをえがおにしたいな。
おしゃしん、もういちまい
くださいな。

蛍の偽日記

『なかよくしてても』

けんかをすると
へるのが
おなか。

いつもけんかをしないのも
むずかしい。
たぶん、お互いを大事に思っていれば
行き過ぎたりはしないかもしれない。
もしも悲しいことに、我慢できなくなったら
そのときはしかたない。
だって、楽しいときも、好きになったときも
気持ちを止められないことはあるでしょう?
氷柱ちゃんが怒って家出して
気まずくてなかなか帰ってこられなくなったりすることも
ときどきはあるのかも。
氷柱ちゃんが怒り出したら
たくさん気持ちを聞かせてほしい。
けんかをしておなかがすいてもいいんだよって
たくさん食べてもらいたい。
それから、なかよくしていたら
ますますおいしく食べられるようなごはんを用意しておきたい。
今日のおやつは
おいも。
レンジでチンが氷柱ちゃんの得意な味付けだけど
そればかり続いても物足りない。
大学いもにしてみました。
甘さで疲労回復してもらえるかな?
お兄ちゃん、がんばっていたもんね。
氷柱ちゃんの相手。
おなかがへったでしょう?
いったいあれは
怒られていたのか
けんかしていたのか
なかよくしていたのか。
なんだったのか。
足跡を探すつもりが
結局、行き届かない掃除が気になって
氷柱ちゃんがお兄ちゃんの手を引っ張って、掃除を教えていましたね。
お兄ちゃんにかまってもらえれば何でもいいみたい。
ぞうきんがけをしながら
男の人は細かいところに気がつかないから教えるこちらが面倒だって
お兄ちゃんと並べてかかげた
おしりをふりふり。
麗ちゃんは、通りすがりに見ながら
そんなに面倒なら男なんて放っておけばいいのにと言ってました。
通り道というわけでもないし近づかなければいいんだから、って。
でも、そんな通り道でもないところに行った麗ちゃんの目的が
胸に抱えた鉄道雑誌をお兄ちゃんに見てもらうことだったのかも。
お兄ちゃんに聞いてほしいお話、たくさんありそうな
むずむず顔をしていたもの。
とってもぞうきんがけをがんばってくれたんですね。
晴れてもそんなに日差しは強くならない季節。
手が冷たくなりませんでしたか?
春風ちゃんが暖めてあげたいそうなので
もしお兄ちゃんがよかったら。
結局、誰がお兄ちゃんの部屋に行ったのかわかりませんでしたね。
観月ちゃんはもののけではないだろうかと
祈祷したがっているの。
もちろん、もののけではないですけど。
ううん、ホタも幻の女の子の正体は知らないの。
もしかしたらと考えはあるけれど。
というか、誰も名乗り出ない理由は
隠しているからじゃなくて
お兄ちゃんの部屋に行くのが日常になっていて
騒ぎの原因になっている自覚がないだけだと思うの。
家族の七つの約束で、お兄ちゃんのお部屋に入ったらダメとはいっても
ホタ、洗濯物を届けに、普通にお邪魔するし。
約束はみんなが気持ちよく暮らせるように決められました。
約束が一番の優先になったらおかしい。
息苦しくならないくらいに融通が利いたらいいと思うな。
という蛍のひとりよがりは、みんなにはナイショです。
氷柱ちゃんが、だったら自分も
家族行事のハロウィンに参加しないなんて言い出したらたいへん。
小さい子たちも、いつでもお兄ちゃんのお部屋に行きたくてきりがないみたいだし。
あんまりがまんさせるのもかわいそうだけど……
大人はうまく言い訳をして、やむをえない用事があるように見せかけています。
そういうわけだから、なのかどうかはよくわからないのですが
お兄ちゃん、ホタはサイズを測らせてもらいたいの。
明日からもまた雨続きで、気温が下がってしまいそう。
もう一枚何か羽織りたい場合に備えて
家族みんなにセーターを作っている途中です。
順番はまだ決めていないので
お兄ちゃんがもし早く欲しいなら、明日にお渡しの予約ができますよ。
どうですか?

編み物で夜更かししていたら、氷柱ちゃんの勉強の邪魔になりそうで
ちょっと気がひける。
蛍が起きていると氷柱ちゃんが体に悪いよって言ってくれるけど
氷柱ちゃんの夜更かしが心配な蛍がいるのも正直な気持ち。
遅くまで勉強をがんばって、ときどき疲れてしまうことがある
氷柱ちゃんの元気のみなもとを
お兄ちゃんは知っている?
たまに、そっと部屋を抜け出して
飲み物を持って帰ってくるとき、
蛍も飲み物をいれてあげるくらいできるかなと様子を見に行くと
氷柱ちゃんが、お兄ちゃんの部屋のドアが見える場所に立っていたことがあったの。
お兄ちゃんが同じ屋根の下にいると確認できるだけで
氷柱ちゃんはがんばれるんだなと
蛍は勝手に想像しています。
事情を知らない誰かに見られたら誤解されそう。
また台風が近づいているみたいです。
この前の台風は大きな被害があったし
もうこれ以上誰もつらい思いをすることなんてなければいいですね。
私たちの家族も、誰も危険な目に遭わなければいいな。
みんながあんまり怖がらないでいられますように。
お兄ちゃんの部屋に誰かが助けを求めに行ったら、どうか元気にしてあげてほしい。
蛍の勝手なお願いです。
でも、なんとなく思ってしまう。
もしまた台風の日に
お兄ちゃんの部屋に誰かが忍び込んだ疑惑が浮上したとしても
それは、自分が話題の当人だと知らないで
犯人探しの捜査を始めてしまう
自分の尻尾を追いかける子犬みたいな女の子が原因なんじゃないかと。
そういう可能性もあるという話でした。
お兄ちゃんは、なにか飲み物でもと思うときがあったら
たまにでもいいので、蛍に一声かけてみてください。
夜更かししがちな、蛍と氷柱ちゃん。
お兄ちゃんに誘ってもらえたら、どんなに疲れていても元気になれます。

ヒカルの偽日記

『ほかほか』

くもりの日。

軽く体を動かそうと思い立っても
いつもより多く着込まないといけない
ちょっと冷える日。

頭を使うことにあまり縁がない自分だけど
なんとなく物思う
秋の冷たい日。

それでいて、動きはじめると
急に暖かくなる。
まわりで小さい妹たちがはしゃいでいたから?
よく動いているから
薄着でもいいみたい。

体が冷えると怪我をしやすいんだけど
準備運動をきっちりしておくような意識は
まだ体が柔らかい子供たちには全然ない。
運動の前には、軽くでも筋を伸ばしておいたほうがいいのにな。
言っても聞かない。
立夏あたりは調子に乗りやすいから、首根っこをつかんででも準備運動させるけど。
青空やマリーは、なかなか言うことを聞かせられないな。
すばしっこいし。
すぐ遊びに出かけたい。
時間はいくらでもあるのに
一秒でも早く、と飛び出して行って
ほんの少しでも多く遊びたがっている。
お姉ちゃんたちのまねをして動いているうちに
自然に準備運動になっているのが救い。
まったく。
これからもっと年下の妹に見本を示すお姉ちゃんに
この子たちはなれるのかな。
なんて、難しく考えながら
なぜか笑ってしまう、思い通りに行かない顔の筋肉。
今日も一緒に遊ぼう!

めまぐるしい速度でボールを追いかけていたと思ったら
立ち止まってきょろきょろする姿は
汗をかいて、湯気を立てている。
くっついてくると、体温の上昇が肌で伝わる。
立夏たちは、おとなりのジョンの散歩についていって
犬と張り合うようにはあはあ息を荒くして帰ってくる。
すぐにあたたかくなるものなんだな。

だんだん秋が深まるこの時期に
蛍が、急いで上着を作りたいとがんばっているよ。
胸元にイニシャルだけの簡単な柄だと言ってるけれど
本当に一日でひとつ形にしてしまった。
速さだけじゃなくて、暖かそうな仕上がりは
うちにも編み物が得意な面々はいるが
誰も同じことができる自信がないって。
このごろ編み物を習い始めた立夏からすれば神業にしか見えないという。
習い始めたというか、
前からちょっと習っては完成まで気力が持たずに投げ出して、
を繰り返して
また始めたというだけ。
今年は蛍の技が刺激になって、ひとつくらいは完成まで持っていけるかな。
蛍は余裕ができたら、家族の意見を参考にもっと作りたいって言うから
着てみて感じたことを遠慮なく教えてあげるといい。
あたたかいかどうか、とか。
かな。
私は編み物をしないから、どんな情報が求められているのかよくわからないけど。
せっかく作ってもらっても、すぐ脱いでしまいがち。
すぐ汚すし、洗濯しやすいとうれしいって言ったら、参考にならないかな。
蛍の編み物の腕があっても
なかなかぴたりと調節できない
今ぐらいの時期の重ね着。
着込んだり脱いだり
汗を拭かないとすぐ寒くなってしまったり
難しいな。

寒くなりはじめた秋は
行楽の秋でもあって
しかも収穫の秋。
おいしくて暖まるイベントが、
土日にはあちこちで盛りだくさん。
オマエもやっぱり、行きたいと思う?
近くの広場で開催される
明日の芋煮会。
私は、そんなにいつもあわただしくなくてもいいと思うけどな。
先週も出かけたし。
豚汁がおいしそうだって言うけど、家で食べてもいいんだし。
でも春風と蛍は、新しい味の研究になるって乗り気だ。
新鮮な野菜の販売も目当てらしい。
もちろん小さい子たちは、おでかけできるならどこだって嬉しいだろう。
そりゃ、みんなで行くならいいかと思う。
明日は雨の予報だから、どうなるかな。
芋煮会は、小雨決行だそうだ。
雨天決行なら聞いたことはあるけど
あんまり雨が降ったら中止ってことなのかな。
まあ中止じゃなくても雨だったら出かけられないな。
それで、大雨じゃなくて小雨であってほしいって
名前がそのままの小雨にみんなが相談しているよ。
小雨もこんなことで頼られるのは初めてで、戸惑っている。
戸惑っていなくても、小雨に何ができるというわけではないんだけど。
大雨だったら家であたたかいものでも作って食べようよ。
芋の皮むきくらいなら私でも手伝えると思う。

春風の偽日記

『春風の一日』

今日は一日を通して雨でした。

芋煮会に行けませんでしたね。
残念です。
でも、家族が一緒にいられて春風はうれしい。
不満げだった小さい子たちも、
一日みんなで遊んで、満足してくれたでしょうか?
明日からの一週間を過ごす活力をいっぱいためられた。
そんな幸せな休日を過ごしたのが
春風だけだった、
なんてことになっていないかしら。
さくらちゃんたちも
明日から幼稚園でがんばってくれるかな。
あさひちゃんたちも
さみしくお留守番の平日。
いい子で待っていてくれるかな。
王子様が授業中に春風に会えないで
切ない思いをしていたらどうしよう。
なんて。
春風のことを少しでも思ってくれるでしょうか。
今日の春風は、王子様が忘れられなくなる素敵な子でしたか?
小さい子たちに編み物を教えてあげたの。
春風もとってもちっちゃいときから
女の子らしくいられることがとっても楽しかった。
大好きな人に作ってあげる日を想像して、腕に磨きをかけました。
春風のかけがえのない妹たちに、服を作ってあげて
大人っぽいのにとてもかわいい憧れのお姉さん二人に
似合うものを一生懸命作ってあげていられた。
そしてついに目の前に現れて
その瞬間に春風の全てを捧げたくなった運命の人に
これからずっと、ほんのちょっとだけど贈り物ができる。
鍛え上げた編み物の実力を発揮していける、こんなに大勢の私の家族。
みんな、春風お姉さんの編み物教室は優しいですよ。
ちょっと自信があったの。
それなのに、
蛍ちゃんのゴッドハンドにはとてもかないません。
上手な子や、まだはじめたばかりの子、それぞれの技術に合わせて助言ができて
笑顔を絶やさずいられて
その一方で、ハロウィン衣装の製作も進めています。
女の子らしく育ったことではそれなりだった春風でも
真似ができない、その実力。
ちょっと抜けたところがあるってよく言われるこんな春風の妹に
どうしてこんなによくできた立派な子が育ったのでしょうか。
吹雪ちゃんでもいまだに解明できない、遺伝子の不思議です。
立夏ちゃんと小雨ちゃんが違うみたいに
実はずいぶん違っている、春風と蛍ちゃん。
春風は、そんなかっこいい蛍ちゃんが
うらやましくて
うらやましくて
う、
う、
うわーん!
春風も、そんなふうに立派に女の子らしくなりたかった。
このままでは王子様のハートを奪われてしまうのではないかと
焦りに焦っています。
なんだか春風、お酒でも飲んで
何もかもを忘れてしまって
理性にも常識にもさえぎられずに
ただひたすら王子様に心の中の思いを全てぶつけてしまいたい。
お酒はだめですけど。
蛍ちゃん、どうしてそんなに何でもできるんだろう?
それは、ときどきはうっかりしてしまうこともある
微笑ましい大事な妹なのだけど。
こんなにできが違うと、王子様の心は惹かれてしまうに決まっている。
春風を選ぶ理由が何もないのだから。
ヒカルちゃんに悩みを聞いて欲しくても
春風のうるんだ瞳を見ただけで
春風は今日も乙女チックだなあ、
と感心されるだけで終わってしまうの。
この苦しい胸の思い。
どうしても抑えきれない恋するときの不安。
好きで乙女チックをしているんじゃありません!
くすん。
ヒカルちゃんも時々は、自分の中で整理できない気持ちを相談してくれる。
そのたびに、
それは恋ですよ!
ヒカルちゃんは王子様が好きなの。
と言ってあげたいけれど
いつも鈍いヒカルちゃんなので
意地悪をして教えてあげません。
ううん、教えたことは何度もあるんだけど
春風は乙女だからな、
で済んでしまうの。
ヒカルちゃんも乙女なのにね。
いつか自分自身で本当の気持ちに気づくまで、
春風が手助けできることはないのかもしれません。
でも、こんなときは春風の複雑な思いをわかってほしいのにな。
無理にでも目覚めさせてしまえばよかったな!
麗ちゃんなら、自分に力が足りなくて
思いが届かないもどかしい気持ち、
わかってくれると思っていたのに
自分はそんなに桃色光線を出していないって。
そうだけど……
麗ちゃんは、自分の気持ちを本気で相談できる人がいないから
まだ気がつかないのかもしれない。
よく似た悩みを持つ、同じ女の子だということに。
春風の気持ちが本当は分かるくせに
男なんかって意地を張ってしまう。
小雨ちゃんでは、鉄道の難しい話はわからないみたいだし
王子様がもし麗ちゃんの鉄道趣味をわかってくれて
それがきっかけで、麗ちゃんが自分の本当の気持ちと向き合うことができたなら
もしかしたらいつか。
春風と麗ちゃんは、同じ悩みを持つ
誰よりも仲のいい姉妹になれるかも。
なんて、王子様に頼りすぎではいけませんね。

春風一人ではあまりできることがないけど
気がついたんです。
つらくても、何も希望が見えなくても
恋をしていると幸せであること。
あなたの顔を見ただけで、悩みを忘れてしまうこと。
ただ言葉を交わすことができただけで、足が地に着かない。
ときどき春風に向けてくれる、何にも替えがたい笑顔を見てしまったせいで
もしかしたら、好意をもたれているかもしれないなんて思うと
うぬぼれかもしれないと自分に言い聞かせてみても、弾む胸が止まらない。
春風はたぶん、あなたの一番になれなくてもいい。
これからもあなたのために尽くしたいけれど
もしも、あなたが誰か一人を選ぶとしても
こんなにたくさんの幸せをもらえたのだから
何も不満に思うことなんてない。
蛍ちゃんにかなわないからって、何も変わらない。
王子様を愛している気持ちは春風が世界で一番なのに、報われないのはつらいと思っていた。
だけど、ただ恋をしたというだけで充分だと、
あなたの近くにいるだけでわかっていく。
春風は、それだけで満足です。
もう何も望まなくていいくらいなの。
でも春風は欲張りなので、もう少し王子様の近くにいられるように努力します。
あとほんのちょっと。
少しでも近くに。

それに、まだ女の子らしくなる方法がわからない子たちに
春風は教えてあげたいことが
いつかアドバイスが必要になったときのために
もうちょっと頼りになるお姉ちゃんになれたらな。
蛍ちゃんにはときどきかなわないことだってあるけれど
家族みんなを愛しているのは、春風は自信があるもの。
愛しているともらえるものは、報われることだけではないと知っているもの。
力が足りなくて悲しいことがこれからどんなにたくさんあったって
きっと、切ないだけではないと思います。

氷柱の偽日記

『サティスファクション』

秋も深まってきた。

タンスの中身も、着々と入れ替わって
寒い季節への備えが、この家のどこでも始まっている。
特にユキは体が弱いし早めに服を出しておいてあげないと。
まだ温度が上がることもあるし、入れ替えは時間をかけてじっくり行いたいわね。
服がないからと適当に薄着で過ごして何も疑問に思わない夕凪も放っておけないし
寒くなってくると、吹雪も調子が出てくるのか
薄着でも快適そうに生活している。
麗は自分のことはしっかりしているけれど、それが済んだらさっさと出かけてしまうし
立夏は言うまでもないんだし。
それからマリーたちだって、いくら背伸びして大人みたいな顔をしていても
自分でできることは限界がある。
手を貸してあげなきゃいけない子がいっぱい。
片づけが得意な小雨ちゃんが手伝っていると
今度は、遊びだす小さい子を抑えきれない。
仕方がないから私が助けに行ったら
ぎゃー!
うわあ!
今日は氷柱お姉ちゃんだ!
おたすけー!
どういう反応?
星花ちゃんまで、お手柔らかにって緊張している。
いやいや、ちょっと待って。
確かに私は、少し厳しいかもしれないけれど
それは、効率よく進めていかないといつまでたってもきりがないから
少々口うるさくなってしまうだけであって。
上手にお片付けした後は、褒めてあげてるし
おやつも出してあげているし。
まあ、蛍ちゃんが作ったものだけど。
皿に並べるくらいなら私でもできるから。
そこまで厳しくはしていないわよ。
たぶん。
べつに、賽の河原で石を崩したりみたいなことは全然していないのに
どうしてここまで鬼みたいに恐れられているの?
たまにうるさくたって、仕方ないじゃない。
放っておいても服が出てくる魔法はないんだし
誰かが厳しくしないといけないの。
だんだん寒くなるこの時期、
体調を崩す心配が先でしょう?
とはいえ、がみがみしかりつけるのも逆効果だってわかったから
自発的に、あの子達で冬服の準備を始めるようにうながすわ。
具体的には──
褒めて伸ばせばいいのかな?
でも、よくできましたってなでなでしてあげてるけどな。
しかも、おそらく懐柔するには最難関の吹雪は
こちらを説得にかかってくる強敵。
褒めてどうなるものでもない、
むしろこちがら吹雪の流儀に取り込まれそう。
自分が最も快適な服を選ぶべきではないかって。
でもね。
いくら吹雪自身が平気だからって、
夏そのままの薄いワンピース一枚はさすがにね。
朝方、このごろ日に日に冷え込むようになってきたわねと思いながら
ああ吹雪じゃないの、おはようってまだしゃっきりしない顔で挨拶を返したら
朝の寒さをまるで感じさせない軽装に、思わず二度見っていうことが
10月になってから、もう何度もあるのよね。
吹雪だって、体調を崩すときはあるんだから
せめてもう少し軽い上着でも着ればいいのに。
服装の意義について議論を始めると、
服は自分に合わせてふさわしいものを選ぶようにできているって
理屈は吹雪のほうにあるように思えてくるのよね。
服飾の専門家は蛍ちゃんがいるから、任せるのが本当かもしれないけれど
知らない顔なんてできないし。
家族の健康を気遣わないなんて、やっぱり何か違うんじゃないかな。
余計なお世話になっているかもしれないけれど
別に、鬼じゃないはず。
でしょう?
どうなのかな。

下僕も、衣替えは進めてる?
これから冬を迎える準備はできた?
もし、まだ手付かずだからって
小雨ちゃんに手伝わせるようなことはしないでね。
刺激が強すぎると思うから。
私は別に、麗ほど男に偏見を持ってはいない。
怖がるなんてとんでもない。
男なんてたいしたことない。
あなただって、せいぜい下僕がいいところ。
でも、そのへんを小雨ちゃんたちに理解しろと要求はできないもの。
なんだったら、私なら手伝ってもいいけど。
男に幻想も何も持ち合わせていないから
ちゃんと、サボっているときはきっちり叱りつけてあげる。
よくできたら、なでなでしてあげてもいいわ。
よしよしって。
あなただって家族の一人なんだから
ずぼらな性格のせいで体調を崩したりしないようにね。

着替えの用意がいろいろ大変なこの時期に
いやがらせみたいにハロウィンまでやってくる。
私の衣装なんて、魚座だから半魚人だって。
いくら今年は12星座に合わせてみたいからといっても
それはね……
青空のタコちゃんも、魚類っていうのか……かわいいけど。
まあ、下僕よりはマシよね。
蛍ちゃんが、お兄ちゃんは特別にしたいからと
最もまぶしい天の星、シリウスから姿をとって
狼男になってほしいそうよ。
男は狼ね。
この下僕には、ちょっともったいない称号じゃない?
狼なんて。
似合わないんじゃないかな。
もう少し時間があるから、考え直してもらうように要求しようかしら。

あまりにも子供っぽすぎるイベントだし、
積極的に参加する気もなかったんだけど。
夕凪が小さい子たちに教えているの。
トリックオアトリートはマホウの呪文。
となえるとお菓子がもらえる、一日限りのマホウ。
私が子供のときは、ハロウィンなんてまだ定着していなかったから知らないけど。
そんなに夢があるものなのかな。
きらきらした目で
たかがお菓子くらいで。
いつもいっぱい食べているから
別に満足していないわけではないでしょうに。
そんなに楽しみにできるものなの?
わからないな。
台風の影響で、しばらくは天気が不安定。
ハロウィンはまだ先だけど、もしかしたら中止もありえるわ。
私は別にかまわないんだけど
楽しみにしている子がいるから、本当に中止になったら複雑だな。
それに、苦手なイベントがなくなりました、安心しましたっていうのも
逃げてるみたいでかっこ悪い。
参加するかしないかは、私で決めさせて欲しいというか
少なくとも、天の神様が好きにしていいようなことじゃない気がする。
小さい子たちを見ていたら、そう思う。
今年くらいはハロウィンがあってもいいというか
なるべくなら、それが本当だろうっていうか。
当日に私がどうするかは、天気じゃなくて私が決めることのはずよ。

夕凪の偽日記

『ねむれるしし』

吹雪ちゃんが
冬服を着たくなくて
氷柱お姉ちゃんたちを説得しているので
これは便乗して夕凪も
部屋の片付けをしなくていいかも!
と思って
氷柱お姉ちゃんに対抗してみたら
怒られた。
吹雪ちゃんも、
夕凪姉は片付けをする必要があるでしょう、
あんまり味方じゃなかった。
年上からも年下からも、せかされる。
囲まれた!
こういうのを、星花ちゃんが難しい言葉で表現していたよ。
四面楚歌。
それか
前門の虎、後門の狼。
夕凪はしし座なのに、まるで相手にならないんだよ。
本当はおひつじ座だった?
おひつじ座のあさひちゃんは食べようとしてくるタイプだけど。
夕凪、もっと余裕で食べられてしまいそうな星座だった?
ぎょう座とか。
そういうダジャレじゃなかったら、
今の時期おいしい
にくまん座、
おでん座、
なべ座。
でなければ、食いつかれそうに襲われている理由がわからない。
いやいや、夕凪は生まれながらのマホウ使い。
マジカルな星座に違いない。
それが何かは知らないけれど
間違いないの。
夕凪は──
ハロウィン衣装は、ライオン。
ふさふさ毛皮のついたレオタード。
肉球グローブで、こねこね。
しっぽが長いと自分で踏んで転ぶから、
短めのしっぽの先がふさっ。
生足まるだし。
ビキニじゃないのは惜しいけど
姉妹一のセクシー衣装!
と思っていたら、森の乙女になる春風お姉ちゃんにはかなわない。
そんなライオン夕凪を見て、みんなは
今はかわいいが
いつか立派なマホウ使いになる
眠れる獅子だ、と言ってくれる。
夕凪、とっくに目覚めてるつもりでいたから
もうなんでもできるんだけどな!
その時は言い返したかったのに
実は、姉にも妹にも負けそうな
子ライオンだったんだよ。
知らなかった……
夕凪の目覚めはいつだ?
獅子が起きたら、
部屋を片付けなくてもいい、
吹雪ちゃんが服を着なくてもいい、
毎日ハロウィンを開催して
お兄ちゃんとずっと仲良く遊んで暮らせる家を作ります。
獅子は王様だもん、
言うことを聞かないと
お兄ちゃんだって怒られちゃうよ。
ずーっと夕凪から離れたらいけない、
のである。
この口調は博士っぽいな?
お兄ちゃんは、夕凪といつでも一緒にいて
授業中は夕凪のまじめな態度を見て後でほめてくれて、
休み時間に校庭に出たらいつも夕凪の味方になって助けてくれて、
下校の途中だって、お兄ちゃんに話を聞いて欲しくて、
お風呂の中でもトイレでも離れないでいて、
話をすることがなくなってもそばにいてもらって、
夜もすぐ近くで眠ってくれたら
王様は嬉しいんじゃないかな、と考えているわけです。
でも、まだ眠っている小さな獅子。
仕方がないので
部屋は片付けます!
立派な命令も、今は我慢。
お菓子をもらい放題の日も、ハロウィンだけにするね。
楽しみだなあ。
氷柱お姉ちゃんは、毎日おやつ食べてるのに、ってあきれている。
でも、おやつはいいものだから
いくら食べても飽きないじゃん。
もっといっぱい食べたくなる
世の中のおいしいもの。
このままもりもり食べ続けたら
ライオンが目を覚ます前に、
食べてすぐ寝て夕凪は牛になるかも。
それで、胸も大きく育ってスタイルもよくなって
モデルになるかも。
アイドルも捨てがたいな。
もちろん、いつかお兄ちゃんのお嫁さんにもなるし。
王様みたいにいいものがたくさんある
夕凪の夢。
ハロウィンの夜の仮装で、たった一日だけでも
素敵な未来がフライングで夕凪のところにやって来ますように。
蛍お姉ちゃんが、ハロウィンの食事は恐怖をまねく闇鍋にするって
張り切ってるよ。
ちょっと冷えても、鍋ならあったまるから安心だね。
寒かったら星花ちゃんやお兄ちゃんにくっついてもいいんだし
まだまだ、片付けはのんびりでもいいかもしれないね?

真璃の偽日記

『さそり座』

お空のさそりは──
オリオンを一突きしたさそり。

オリオンが何をした人なのか
よく知らないけど。

地味な位置よね!
さそり。
もっと主役ばりに前に出てきていいのに。
マリーの星座なんだし
胸を張っていいと思うわ。
さそりだからって、潜んでいないで
堂々と輝いていい。
マリーみたいに。
毒を持って生まれたからって
何も卑下することはないわ!
うっかり動物を刺してしまう体だとしても
いやな運命に従う必要なんてないわ!
マリーが見ていてあげる。
たくさん教えてあげる。
マリーの星座で、分身みたいなさそり。
世界の誰も体験できない、マリーの近くにいる人だけの特別をあげる。
身をもって実感してもらうから。
出ておいで!
さそりだって華やかなエピソードに恵まれて
目がくらむほどのスポットライトを浴びてみたいときもあるでしょう?

さそり座は、妖艶の相だとか
男を惑わす美人の星座だとか
ちょーっとだけ、わがままな悪女のふしがあるとか
世の中では言うみたい。
これに、華やかで人をひきつけるって性格を付け足せば
わりとマリーに当てはまるかもしれない。
占いのさそり座については、まあ納得できるとします。
霙お姉ちゃまが、バルタン星人みたいな衣装を作ってもらって
ご満悦なのも、別にマリーはおそろいではないし、まあいいでしょう。
マリーよりずっとお姉さんなのにとても喜んで、微笑ましいのよ。
昔は、ヒカルお姉ちゃまや立夏お姉ちゃまが男の子っぽいヒーローものを見ていたから
それに付き合って自分もごっこ遊びをしていたことを思い出して
ちょっと懐かしいんだって。
さそりじゃないような気もするけど
あんまり馴染みのない生き物だから、それっぽかったら別にいいみたい。
もともと、かに座の星花ちゃん用に作っていたハサミだったの。
星花ちゃんは鎧武者になったのよ。
もちろん本物の鎧というわけじゃなくて
やわらかい素材でそれっぽく見せている
ふわふわあたたか武将。
でね、霙お姉ちゃまのハサミは、お菓子収納スペースが多く隠されているみたいだけど
こちらもふんわり素材だし、あんまり詰めたら破けてしまわないかしら?
あんまり本格的な作りじゃない仮装があるとしても
マリーの衣装は、こだわってきらびやかにしてほしいってお願いしているの。
そこまではいいのよ。
吹雪ちゃんがね、魔界から来た悪魔に扮するの。
先っちょが分かれたフォークに似た槍でつんつんしてきそうな
かわいらしいいたずらっ子。
女の子は小悪魔っていう理由もある。
吹雪ちゃんのおとめ座は、正義の女神様アストライアが由来なのにおかしいと思う?
でも、地面の下の神様に見初められて奥様になったペルセポネという説もあるんだって。
ペルセポネが地面の下にいる間は、おとめ座も天に姿を見せない。
おとめ座の一等星スピカは、乙女が手にする麦の穂のように見えることが名前の由来なの。
ペルセポネが地上に戻るとき、春の恵みをもたらすからって解釈もある。
なかなかドラマがあるのね。
壮大ね!
吹雪ちゃんの悪魔っ子はかわいいだけに見えても
小さい妹や赤ちゃんたちにとても興味があって、しかも研究熱心な性格だから
やがて大きくなったら、我が家に生命の恵みをいっぱい運んできてくれるのではないか。
とは、蛍お姉ちゃまの説明。
物語があるって、いいわね。
さそりはないのよ。
刺すだけなんて!
蛍お姉ちゃまにお願いはしているのよ。
マリーの衣装は絶対かわいく作ってね、
フェルゼンがいつまでも忘れられないくらいにしてね、
マリーにいちばんよく似合う衣装を作ってね。
たった一日限りの仮装であっても
女の子はかわいくなることにはいつも真剣。
妥協しないで、世界で一番の美人になりたい。
いつもそうでいたい。
ただ一人の愛する人の目を奪うために、誰よりもきれいになりたい。
もしマリーがまだ小さくて、できないんだとしても
愛のために挑戦する気持ちを忘れてしまったら
それはもうマリーではないわ。
なのに、蛍お姉ちゃまったら
さそりは毒があるから、
ハロウィンならゾンビということかしら、
ですって!
わーん!
マリー泣いちゃう!
必死で止めたけど
代わりのアイデアが思いつかなくて。
何かないかしら。
ハロウィンパーティは31日。
時間はもうそんなにない。
フェルゼン!
マリーがどんなハロウィンを迎えるか、
美しい永遠の思い出になるかそうでないかが
この判断で決まってしまうのよ!

ここは発想の転換で、
星座のさそりにマリー好みのエピソードがないなら
勝手に作って、これから流行らせていいんじゃないかしら?
たとえば、
いつも美しくあろうとしているけれど
愛するフェルゼンはつれないことに恥ずかしがって
かわいいとか、好きだとか素直に言ってくれないので
すねたさそりはおしおきに、ちくりとしびれさせてしまいました!
とかね。
恋人たちは、いつも素直が一番。
ハロウィンのマリーが誰よりも美しかったら、きちんと褒めてくれないとだめよ。

麗の偽日記

『ふだんの』

また台風が近づいてきた。

ニュースで見たわ。
もう大変な雨が降っている地域もあるって。

こんな途方もない大雨では
今度も鉄道ダイヤが乱れて
私の胸を締め付けるのね。

わかっている。
それどころじゃないってことは。

海晴姉様も、テレビ局の急なお仕事が増えて
帰ってこられなくなるかもしれない。
私にも注意をしてきた。
妹たちと、
立夏ちゃんと小雨ちゃんをしっかり見ていてあげてね!
年齢的にどこかおかしくないかしら?
それとね、
お兄ちゃんたちと協力するように!
だって。
怖がっている子がいたら、なだめてあげるように。
外に出て行こうとする子がいたら、止めないといけない。
学校の帰りに寄り道をしているようなら、叱ってでも連れて帰らないと。
言ってることはわかるけど。
なんで私に?
まあ寄り道しないようには
私も言われた。
ということは、みんなに言ってるのかな。
お兄ちゃんたちと協力して、と。
立夏ちゃんにも、
麗ちゃんを見てあげてね、とか。
私が立夏ちゃんに頼ることなんてあるのかは疑問ね。
誰が頼りになるのかは、今のところ正確に判断できないとしても、
海晴姉様が家に帰ってこないのは、充分にありえるのだから。
気がかりだってことはわかるわ。
口うるさく言われなくたってわかってるとふくれたい気持ちを抑えて。
家族が安全でいられるよう守りたいのは、私だってできればそうしたい。
さっき、海晴姉様は、泊り込みに持っていくお弁当について
おにぎりの具は真剣に相談していた。
なんだか緊張感がないみたいにも見えるけれど
食事をしっかりとらないと力が出ないのは確かだから……
小学生が言っても仕方ないかも知れないけれど
あまり体に無理はしないでほしい。
それから、こちらも自分たちでできるだけのことはするから安心してほしいと。

9月の避難訓練で、近くの小学校に集まったの。
もしこのあたりで台風の大きな被害があったら
私たちが避難するのはあの場所。
私──
慣れない場所はあんまり好きじゃない。
もちろん、災害の時にそんなことを言ってる余裕なんてあるわけない。
でも、電車が止まってしまうだけでも
不安になってしまうのに。
最新のシステムで、どんなに努力を重ねていても
自然の猛威の前では立ち往生するしかない電車のことを思うと
当たり前の日常が途切れる感覚が、ますます突き刺さってくるようで
やけに心細くなってしまう。
そんな時に、知らない場所で避難なんてすることになったら……
めったにあることではない。
かといって、絶対にないと断言することはどこの誰にもできない。
備えは大事。
立夏ちゃんと小雨ちゃんの通ってる小学校だから、少しは馴染みがあるとはいえる。
私が野蛮な男の子たちと同じ学校に通うなん考えたくないから
いまさら、知らない場所だと気後れしたってどうにもならないけど。
立夏ちゃんはもう通っていないんだった。
中学生になって、半年も経つんだっけ。
本人は進学して一歩大人になったと言うけど
成長している気がしないのよね。
放課後、たまに早く帰ってきたときは
まだ小学校で遊んでいる星花ちゃんや夕凪ちゃんたちを迎えに行って
自分も一緒に泥や砂や雑草にまみれて帰ってくる。
あれで中学では女の子らしくておしゃれだって一目置かれているという話。
それともこれは、教えてくれた蛍姉様や春風姉様の見間違いかもしれないわ。
私には、立夏ちゃんが中学校の校庭でも男の子みたいにサッカーをしている姿しか想像できない。
体いっぱいで楽しそうに学園生活を送っているのが、何の苦労もなしですぐ目に浮かぶ。
立夏ちゃんたちが通っている学校だから、
多少は馴染みがあると言っていいかもしれないし
共学でも男の人は少ないみたいだから、そこはまだましなのかな。
いいか、それはまだ先の話。
覚悟が山ほど必要になりそうな気もするし
できれば、まだあまり考えたくないわ。
今の日常が変わってしまいそうなこと。
それは台風のような恐ろしい事態と全然違うと、理性ではわかる気はするんだけど。

日常とは違うイベントで、こちらは楽しみにしている子が多い。
もうすぐハロウィン。
何事もなく、みんなで迎えられるようにしたいわね。
私はお菓子には興味がないというか
ときどき立夏ちゃんの食べかすがやっかいに思えるのだけど
家族全員参加の厳命がある以上、
仕方ないから参加するわよ。
少しは食べたいし……
だから仮装も我慢する。
私はふたご座。
双子を扱った有名な文学であるウィリアム・ウィルソンの作者である
エドガー・アラン・ポーの代表的な短編が
黒猫。
だから黒猫の衣装で参加することになりました。
なんだかずいぶん本来のコンセプトから離れているんだけど。
ふたご座はカストルとポルックスだったはずなのに、いったいどこへ行ったの。
それに、ウィリアム・ウィルソンは双子じゃなくてドッペルゲンガーの話だと
聞いたことがあるような。
読んでいないから、反論はしにくいわ。
一応、ポーで有名な詩の大鴉とどっちがいいか選ばせてくれた。
鴉っぽくするとガッチャマンみたいなコスチュームになるって言ってたわ。
ガッチャマンは知らないし、予想もしていない変な方向に進んでしまったら困る。
黒猫は、前に着たことがあるからわかっているだけで……
別に自分から望んで黒猫を選んだわけではないの。
好みを主張できるほどにコスプレに興味が出たわけではないのだから
麗ちゃんがそんなに黒猫が好きならはりきっちゃうって
はしゃいでいる蛍姉様には、
あなたからそれとなく伝えておいて。
違うから。
無難に済ませたいだけだから。
あんなに嬉しそうにされると言いにくいだけで。

ウィリアム・ウィルソンは、自分の知らない場所で
自分同じような人間が生活していたという話だって聞いたわ。
私の知らないもう一人の自分がいたとしたら
どんな様子なんだろう。
もしかしたらその子は
好きなだけ電車に乗りに行けるような生活をしているかもしれないわ。
たぶん、その子にも姉妹が18人もいたり
いきなりお兄ちゃんが出来たりしているんでしょう。
その子が私なら、やっぱりそんな生活をしていると思う。
でも、それだと私以外の家族も全員がふたご座になってしまうか。
やっぱり、どこかにもう一人の私がいるということはなくて
ここにいる私だけ。
黒猫に仮装する運命を避けられなかったり
妹たちや、年上の立夏ちゃんの面倒を見ている生活があるだけ。
仕方がないから、私もどれほど電車に心が揺れたとしても
明日ばかりは寄り道は控えて、早く帰らないといけないわ。

立夏の偽日記

『そして人生は続く』

あのね、
あのね。

リカたちの住む町に
台風が本格的に
でっかいエイキョーを運んでくるのは
今夜から
土日にかけてだヨ。

って、
また土日か!
またもや
土日が雨なの。

いや、心配するところはそこじゃないよね。
大雨の中を泳ぐようにして学校に通うよりは
まだいいんだ。
うん。
電車が止まったら、帰ってこられないかもしれない!
どこかに泊まるとしても、アバンチュールじゃない雰囲気。
台風じゃあなあ。
怖いからネ。
それから、雨で怖いがけ崩れや川の増水。
見通しが悪くなって交通事故でも起こしたら大変。
うーん、危険な場所に近づかないようにして
台風情報をこまめにチェックするしかないのね。
ようし、リカも家族のために情報収集するよーって思っても
気がついたら、報道番組そっちのけで
暇そうに見える家族を見つけたら飛びついて、じゃれあって遊んでいるうちに
眠ってしまうリカなんて関係なく、台風は去っていく。
自分の希望を言うなら
できればもうちょっと、リカは家族に貢献したいけど。
なにしろ7女。
この家では、どちらかというとお姉ちゃんのほう。
けどまあ、まじめで頭のいい子はいっぱいいるから任せてもいいか。
リカがいると明るくなるって、みんなが言うよ。
それでいいよね。
できることをするんだもーん。

でも、安全は大事なことだとして
家族が一緒に過ごすのもまた、人生に必要なこと。
せっかくの休日が雨になるのは、別の問題。
オニーチャンが家にいて
愛情をはぐくむ週に一度のお楽しみなのに
どこにも遊びに行けないなんてかなしーい。
リカ泣いちゃう、なんて。
リカのうそ泣きがはじまるの。
家族の誰にも効かないんだけどネ。

休みが雨になるというなら
今日くらいは思いっきり外で体を動かしたい。
朝はまだくもっていただけだったから
夕方まで外で遊んで大丈夫でしょ! の声が朝食の席にこだまして
結局、怒り心頭の氷柱ちゃんが
家族連れ立っての集団下校を決めたよ。
いくつかの班にわかれて、
寄り道なんかする子がいたらおしおき!
オーボーだーの声も、おねーちゃんたちまで氷柱ちゃんに賛成するから効果なし。
こういう時、リカはまだ小さい子のチームだと実感するよ……
オニーチャンは氷柱ちゃんと同じ班だったよね。
やっぱり、厳しく連れてかれた?
リカは中学生以上のみんなよりは、やや早い時間の帰宅だから、
帰りは麗ちゃんと一緒の班。
ふたりだけ。
さみしいっ!
同じ傘に入ってくっついて帰ればまあいいかと思っていたら
それはおかしい、傘は一人で一つ持つものだと
頭が固い麗ちゃん。
ちょーさみしー。
いっぱい話しかけてたら、途中から返事もしてくれなくなるし。
もうさみしくて死ぬヨ!
でもね、
いきなり麗ちゃんが、線路が見える歩道橋の途中で立ち止まって
もうちょっとだけ……とウルウルお願いされても
リカも、まだ雨は激しくないからいいかと思ったんだけど
朝、みんなで決めたことだもん。
ちゃんと説得して、連れてきた!
リカはちょっとだけおねーちゃんでした。
昨日の日記だと、リカを連れて帰ってくるつもりだったみたいだけど
実際には逆だったネ。
ふだんあんまり自分の気持ちを伝えてくれない麗ちゃん。
そんなことじゃ、自分の気持ちを見つめるのも下手になっちゃう。
たぶんね、
ハロウィンの衣装でちょっとコンセプトと離れたものにしたのも
友達に説明してあげて、ちょっとだけでもおしゃべりが得意になって欲しい
蛍ちゃんのおせっかいかも?
だって、
小雨ちゃんの衣装がね、
乳牛模様の牛さんなの。
おうし座っていうくらいだから、オスだよ!
乳は出ないよ!
たぶん、ハロウィン当日に家族が並んで
リカはおひつじ座のモコモコひつじでーすって紹介した後で
小雨ちゃんを見た人はたぶん
ひとりの例外もなく
おうし……
えっ!?
ってなるでしょ。
そんなことになったら、引っ込み思案の小雨ちゃんでも
トークをせざるをえない。
よね?
それから、もっと説明が要る麗ちゃんという流れ。
リカは自分だけで話を膨らませる力があるけど
小雨ちゃんと麗ちゃんは──
自分の衣装を見て何を考えたかとか
実際に着てみてどうなのかとか
その日、どんなことを言ってもらって嬉しかったとか
全部自分で考えて、話をしないといけない。
そのきっかけ。
もしうまくいかなくたって、
おいしいものを食べればいいと思うよ。
いろいろ失敗して落ち込んでしまったって
おなかいっぱいにして、家族のところに帰って
少しだけ泣いて、よく寝れば
ほんの少しずつでも元気は戻る。
ちょうどお菓子をもらえるなんて
ハロウィンは意外とよくできたイベントだ。
蛍おねーちゃんも、それを考えてのわけのわからない衣装なんだよ!
もしくは、そんなこと全然考えていないで
ただ姉妹にかわいい服を着てほしいだけのどちらかだよ!
どっちだ?
今日、リカは帰り道にちょっと厳しいことを言ったけど
麗ちゃんが不満そうでも、たくさん話してくれたのは嬉しかった。
リカはあんまり上手にお姉ちゃんができなくて
麗ちゃんは文句がいっぱいかもしれない。
なんでも言ってくれていいよ。
何があっても嫌いにならないのは本当だよ。
まだまだ未熟な妹思い。
だんだん激しくなる雨の日に
仲良く家路を急ぐ二人でした。
あともうひとつね、
明日から雨で外に出られなくなるでしょ?
きっと小さい子たちがタイクツするに違いないから
みんなで遊べるボードゲームを買ってきた!
これも妹思いでしょ?
すごろくなら、サイコロが振れるだけの小さい子も参加できるよね。
人生ゲームだよ。
わーい!
これで16歳にならなくてもオニーチャンと結婚できる!
麗ちゃんも、ゲームにかこつけて自分の気持ちをたくさん話せるように
いっぱい楽しいことや失敗なんかを体験して大騒ぎしてほしいな。
泣かない程度を見計らって追い込んでいきます。
よーし、やるぞー。
リカは妹のことをよく考えてあげてるなあ。
ほらほら、褒めてもいいんだヨ?
雨の中をわざわざ足を伸ばして
ちょっと離れたおもちゃ屋さんに寄って……
うん、そう。
いろいろ揃ってる大きなおもちゃ屋さんに……
あっ!
リカ寄り道してる!?
雨の中を、危なくならないようまっすぐ帰ってきていない!
まずいかも。
朝、あんなに注意されていたのに。
氷柱ちゃんが鬼軍曹のように鳴り響くカミナリ声で命令していたのに
やってしまった……
わわ、どうしよう。
こんなことが氷柱ちゃんに知られたら
どれだけ怒られるかわからないよ。
リカはころされる!
あの、これはわざとじゃないの!
わーい明日はオニーチャンとみんなとおうちの中で遊ぶぞって
それだけで頭がいっぱいで
寄り道だと気がつかなかっただけなの!
言えば言うほど
自分でもどんな言い訳なんだよってなるよ!
オニーチャン、助けてくれる?
なんとか氷柱ちゃんの怒りをほどほどに抑えてもらえるように
一緒に説明に来てくれたら
きっとリカも生き残れる可能性が出てくるよ!

綿雪の偽日記

『ロボット』

氷柱お姉ちゃんは
本当は優しい。

みんなで決めた約束をやぶって
台風が近づく日に、危ない寄り道をした立夏お姉ちゃんを──

お兄ちゃんの助けがあれば
なんでも許されると思ったら
おおまちがいだ!

正座をさせて
向き合って、
台風の危険がどれほど予想できないものなのか
声がかれるまで言い聞かせていたのも
立夏お姉ちゃんをとっても心配しているから。

その横に
簡単に許すなんて甘すぎる、と
一緒に正座をさせられてしまったお兄ちゃんに
とうとうと自分の考えを語ったのも
どれだけ家族のことが大事なのか
お兄ちゃんには、わかってほしいから
だと思います。

まさか自分もおもちゃ屋に寄って
ガンダムでも買って来たかったから立夏を許しているんじゃないのか、
そういう甘やかしは筋違いだと。
ルールを守ることを忘れたら
これほど大人数の家族ではすぐに秩序が乱れてしまう。
ガンダムは違うとしても
立夏お姉ちゃんが無茶をしたことを
自分でわかってもらわなければいけない。

お兄ちゃんも、男の人だから
ガンダムが好きなの?
他にもロボットだとか、いろいろあるんだよね。
それとも、そういうのは子供っぽくて興味ない?
もうとっても大人に見えるお兄ちゃん。
いつもお兄ちゃんらしく、ユキたち家族のことを大事にしてくれている。
氷柱お姉ちゃんは、少し気にしているの。
自分たちみたいな女の子ばかりの家に来て
たったひとりの男の子は、好きなことができないで我慢しているのではないか?
いつかお兄ちゃんが、夢中になるものを見つけてしまうのではないか。
私たちはガンダムにお兄ちゃんをとられてしまうんじゃないか。

面白い心配だと思う?
でも、真剣なんです。
ユキもわかるの。
お兄ちゃんがそのうち、家族に目を向けてくれなくなってしまうかもしれない不安。
氷柱お姉ちゃんは、男の人の好みにあまり詳しくないそうで
それで、熱中しそうなものがガンダムしか思いつかないんだって。
あんまりおさえつけたくはないの。
この家に来ても、趣味を楽しんでくれるのはいいこと。
でも夢中になってしまって、こちらを見てくれなくなったらと思うと
とってもこわい。
それにね、
ユキみたいに体が弱くて迷惑をかけて
何も立派なことができなくて
家族の自慢になんてまったくならないユキは
いつか、何かもっといいものに、家族のみんなを奪われてしまいそう。

ユキが不安をうちあけると
氷柱お姉ちゃんは
いつも一番大事なのが家族だから
家族の誰だって、大事なユキを見捨てることなんて絶対にないと言ってくれます。
それならもしかしたら
お兄ちゃんも、氷柱お姉ちゃんみたいに家族のユキに優しくしてくれる?
ユキが何もしてあげられなくて
ただ病気で心配させて
悲しませ続けるだけだとしても──
たとえば、かっこいいガンダムだとか
お兄ちゃんが夢中になるような大きなイベントだとか
いつかお兄ちゃんの隣にいる素敵なお嫁さんだとか
すてきなものたちと同じくらい
ユキのことを大事にしてくれると思ってもいいのでしょうか?
氷柱お姉ちゃんのことも、お兄ちゃんはいつまでも大事にしてくれる?
氷柱お姉ちゃんは、あんな男でも家族だから仕方ない、
ずっと一緒にいないとね、って言うけれど
ユキの大事なお兄ちゃんなのに、ちょっと失礼です。
でも、氷柱お姉ちゃんがとっても優しいと知っているから、いいの。
氷柱お姉ちゃんが家族みんなを大事にしていて。
本当はお兄ちゃんのことをとっても頼りにしていることを
ユキは知っているんだよ。

それに、氷柱お姉ちゃんは
立夏ちゃんの買ってきた人生ゲームで遊んでもいいって許してくれたよ。
優しいの。
人生ゲームは
サイコロじゃなくてルーレットだったね。
まだ小さくて、ちょっぴり不器用な青空ちゃんや虹子ちゃんのために
大きいお姉ちゃんが背中から手をとって、ルーレットの回し方を教えてあげて
自然とペアを組んで、チームが決まっていきました。
でも、お兄ちゃんにこんなときこそは挑戦してみたかったり
結婚イベントでお兄ちゃんを選んでみたい意見が多くて
お兄ちゃんは一人きりだったね。
さみしくなかった?
にぎやかだったから、そうでもなかった?
立夏お姉ちゃんが
10億円のかわりにお兄ちゃんにキスで許してもらおうとしたときは
大騒ぎでしたね。
キスは10億円なの?
だけど、人生ゲームにそんなルールはないので
結局、お兄ちゃんへのキスは無料でしてくれましたね。
夕凪お姉ちゃんが、罰ゲームのマスでもないのに踊りだしたのも
お金を出すかわりに踊ってみせて
うまく踊れたらいくらになる? という話の流れだったみたいだけど
うまく踊れても、ただでした。
青空ちゃんがまねをして歌って踊ったのも
かわいかったけど、人生ゲームの勝ち負けとは関係なかったね。
夕方になって、雲間からちらりと日差しが顔をのぞかせても
今日は一日、みんなで家の中でした。

台風は通り過ぎてくれましたね。
日曜日まで雨だったら本当に困ってしまったけれど、よかったですね。
明日は、台風が雲を吹き払ってくれたおかげで
晴れるところが多いそうです。
ユキ、教えてもらったの。
こういうのを、たいふういっかって言うんだよ。
晴れたら明日はみんなで公園に行けるでしょうか?
お休みはいっぱい遊びたいもんね。
ユキも体調が良かったら、みんなと手をつないで行きたいな。
ときどき考えてしまいます。
ユキもロボットみたいに体ががんじょうで
かっこよかったらよかったのに。
それで、お兄ちゃんにとても喜んでもらえたらな。
でも、ユキはもうお兄ちゃんの妹だから
そんなにたくさん欲しがらなくてもいいんです。
氷柱お姉ちゃんだって、ユキのことを見ていてくれる。
お兄ちゃんと氷柱お姉ちゃんとユキたちが、いつも家族でいられる。
ユキ、うれしいの。
これからもユキにできることは何もないかもしれない。
お兄ちゃんや氷柱お姉ちゃんの妹なのにぜんぜん立派じゃないの。
情けないユキで、ごめんなさい。
だけど悲しまなくていいんだよね。
みんなが優しくて仲がいい家族でいられて、素直にうれしくて、それだけでいい。
たくましいガンダムじゃなくたって
お兄ちゃんの妹でいていいんですね。

霙の偽日記

『超人』

カニのつもりで作った装飾が
さそりの仮装に流用できただけであって
これはバルタン星人ではない。
みんな、ハサミに気を取られすぎなんだ。
全身は甲羅だし
針の尻尾も付けてもらったんだぞ。
やわらかい素材だから、刺せないが。

そもそも、バルタン星人はカニでもさそりでもない。
宇宙忍者だったはずだ。
その姿が、セミ人間の着ぐるみを流用したものであるとは
言われなければわからないことだ。

だが私は──
ハロウィン当日もサービス精神を発揮して
あっバルタン星人だ、と声をかけられたら
フォッフォッフォと笑い声を出してしまうだろうか。
バルタン星人が特別に好きだというほどでもない。
だが、忍者という存在には、憧れもある。
宇宙を支配する闇を唯一の友として過ごす。
無となって消え行くことを当然として、迷いなく受け入れる。
それは、滅びの定めを受け入れようとする私でも
とうてい到達しえない、遠い場所。
アイドルに憧れるよりも、
ケーキ食べ放題に憧れるよりも、
青空が以前見た夢を思い出して教えてくれたように、台風の風に飛ばされて
お兄ちゃんだらけの国に飛んでいくよりも。
私にとっては果てしない彼方としか見えない
ひとつの哲学を突き詰めた終局。
闇に生きる者、忍者か。
なりたいというわけではないし、なりたくてもなれないとは思うが
ただひととき、その姿を我が身に重ねてみるのも悪くはない。
いやバルタン星人ではないが。
宇宙忍者ではなく、潜んで住むさそりだ。
ときどき笑い声を似せてしまうが、それは茶目っ気だ。
本来の目的ではないんだ。
おばけの仮装をして怖がらせてお菓子をもらう、という
ハロウィンの趣旨とも違ってくる。
だから、これはさそりだと言い張ることにしよう。
言い張るも何も、本当にさそりなんだ。
どうしてバルタン星人とばかり言われるのだろう。
どこか直したらいいのか?
そもそもさそりは馴染みがないから、間違われやすいのか?
カニのままなら良かったかな?
困ったな。
真璃は、さそりの隠れ潜む姿を参考に
地味な色合いだがよく見るとトゲがあるというコンセプトを狙い
闇に住む悪魔の女王の衣装に決めたようだ。
真璃の注文は妥協をしないので
蛍は大忙しだ。
絵に描いて説明してもらっても、園児の絵では伝わらないからな。
だが──
厳しい注文を出されるほど
蛍の目がキラキラ、肌がつやつやしてきて
何かを体内に充填しているかのように見えるのはなぜだろう。
おいしいものが多い季節だから、衣装は関係なく元気になっているだけなのか?
そう、
おいしいもの。
晴れの日の休日、
よく遊んだあとは
焼き芋のにおいに
チョコレートもおいしそう。
あんまんもおいしい季節。
日が沈んで、急に寒くなるとおでんも恋しい。
若い娘たちは、胃袋の要求を満たすことにかけては節操がないな。
お菓子はハロウィンまで待たないと。
結局、それぞれの少ないおこづかいを出し合って
たこやきをひとつづつ分け合うのが今日の楽しみとなった。
帰ってきて、人生ゲームをしていると
止まったマスの指示に従って踊るゲームだと勘違いした子供たちが
結婚して踊る。
子供が生まれて踊る。
アイドルになったので踊る。
画家になってもモデルのつもりで踊る。
水着コンテストがはじまったから、アピールに踊る。
すいか割りのすいかがじょうずに割れて踊る。
きのこがとれたので、
見つけたときに嬉しくて踊るというマイタケかどうかはわからないが踊る。
ルーレットの出目が思ったようにいかなくて
きのこごはんの調理に失敗することになって、悲しみのあまりに踊る。
ゲームの指示では焦げすぎておなかをこわして入院したというのに、特に気にせず元気だ。
ユキもあまり得意ではない運動なのに
いっしょうけんめい、はやりの踊りに見せたくて腕を上下させていたから
まあいいのかもしれない。
しかし、小雨や吹雪がやりづらいようだったので
あまりゲームのルールから逸脱するのは考え物だな。
今度はルールで踊るようになっているゲームを用意したいものだ。
今日の晩ごはんがきのこごはんだったので
ゲームに参加したメンバーは意味もなく身構えてしまったが
焦げていなかったので大丈夫だ。
おいしいものがゲームから飛び出してきたとか
むしろゲームよりおいしいごはんになったと言われても
春風や蛍には何のことかさっぱり分からなかっただろう。
そういえば盤上では、オマエがプレイヤーを嫁にしすぎて子供が増えるすさまじい勢いに
青空が夢の中で見つけた幻の長男王国が本当に誕生していたが
これもいつかはゲームの中から飛び出してきてもおかしくないということか。
あるいは、もっと強烈な形で実現するのかもしれない。
竹やぶから100億円を拾ったり
あさひが世界的な人気の踊るアイドル赤ちゃんになったり
夕凪が勝手にゴールに書き加えたように、一位の人が世界一の幸せ者になったり。
おまけに二位の人が二番目の幸せ者になって、
ビリがなってしまう六番目の幸せ者までを我が家が独占したり。
びっくりするようなことがあるのかもしれない。
夕凪が意外と堅実な職業に就いて活躍したりな。
この愛しい家族の人生に、これから何があるのか想像もできない。
ビリになった私が世界一の幸せ者を主張したら
一位で喜んでいた、星花と夕凪のペアに悪いだろうか?
だからそんな感情は、お前だけに聞いてもらうことにしよう。

星花の偽日記

『今週は』

ついにはじまった
10月の終わりの週。
もうすぐ楽しいことがやってきます。

今週はいよいよ
待ちに待っていた
たのしい、
うれしい、
かわいいよ。
大人も子供も盛り上がる
いよいよ、この日!

そう、
ラブライブの活動日誌と
G’sマガジンの発売日です!
今月の活動日誌は凛ちゃんの出番ですね。
あ、というか
凛ちゃんの出番ですにゃ。
なんてね。
というわけで、それもあるんだけど。

かわいいおばけの格好をするのと
お菓子をもらえるのと
どっちが本番なのでしょう?
それとも──
夕方の暗くなりかけた時間にお出かけするどきどき?
おおぜいの人が集まるお祭りの気配?
子供が中心になるからかな?
もしかしたら、家族みんなで参加するからでしょうか?
その時が来るのが待ち遠しくて、早く早くと気持ちが急いて
とてもきらきらした何かが近づいているような気がしているのは
たぶん、お菓子だけが理由じゃないと思うんです。
もちろん、お菓子がもらえるのもいいことなんです。
小さい子たちは、不思議そうな顔。
マホウの呪文だけでお菓子がもらえるなんて
本当に、そんないいことがあるのだろうか?
どんな日なの?
一年で一番マホウの力があふれる日?
普段は不思議な力があんまりなくたって
子供なら誰でもマホウが使えるようになるらしい。
お菓子のマホウや
家族といられるマホウや
仮装をして、不思議な何かになれるマホウ。
まだ子供の私たちは
実際に体験してみないと
いったいどれだけいいものなのかはわからない。
だから、どうしてこんなにわくわくしてしまうのか
本番を迎えてみないと、うまく説明できないのだと思います。
もうすぐハロウィン。
あとほんのちょっと。

31日は、商店街の主催でハロウィンパーティが行われます。
参加条件は──
大人の人は、商店街にある指定のお店でお菓子を用意しておくこと。
子供は
仮装できること。
なるべくなら、大人の人がいっしょに行くことを推奨しています。
夕方からのイベントだからです。
ビンゴゲームもあるから、とっても小さい子には大人がついていないと難しいかもしれないし。
別に、大人の人がいないと売り上げにつながらないからという
せちがらい理由ではないのです。
ハロウィンの効果で、ここしばらく商店街も人が増えてにぎやかだから
すでにそこそこ売り上げが伸びているという話。
いえいえ、何も売り上げだけが目的じゃなくて
にぎやかだとそれが一番いいことだ、と商店街の人たちは言います。
活気がある商店街って
歩くのが楽しいよね!
星花はまだ、虹子ちゃんみたいにお買い物が大好きなほど女の子らしくないけれど
でも、いつも行くところなんだから、にぎやかだとうれしいな。
それで、うちのみんなが参加すると華があるからぜひ、みたいに
おつかいの時によく声をかけてもらいます。
そんなとき──
もちろんです、と胸を張って答える蛍お姉ちゃん。
お菓子山盛りなら、の条件をつける立夏お姉ちゃん。
とてもそんな、って返事をするのも緊張してしまう小雨お姉ちゃん。
横で荷物持ちのお手伝いをしているだけの星花なのに、
いつもよりちょっと興奮した笑顔をしていて、お店の人たちにもいい返事だと見抜かれてしまう。
ハロウィンにかける意気込みはそれぞれだけど
全員で揃って参加する予定です。
氷柱お姉ちゃんはあまり気が進まないみたいです。
お兄ちゃんは、こういうの子供っぽくて苦手かなあ。
中学生から大学生までのお兄さんお姉さんは、特別ルールなんですよ。
お菓子をもらってもいいし
子供にトリックオアトリートの言葉をかけられたら
お菓子をあげなくちゃいけない。
用意したお菓子をあげればいいので、大人からもらったお菓子は自分のものにしてかまわない。
緑のリボンを仮装のどこかにつけるのが、
もらってもいいし、あげなくちゃいけないお兄さんお姉さんの決まり。
配る人が多いほど商店街の人も嬉しいから
緑のリボンの人には商店街からのサービスで、
配ってももらってもいいお菓子を渡してもらえることになっている。
だから、できるだけ参加してくれたら
あげる人が増えるということになって、小さい子たちも嬉しいんだけど
どうでしょう。
いま予定している仮装が恥ずかしいなら
蛍お姉ちゃんは、まだまだ相談に乗る余裕があると言っています。
それから、いい仮装をした人は表彰して、ちょっといいお菓子をもらえる企画もあるの。
もし家族の誰かが入賞を狙っているのならば、より力のこもった仮装もできるって
蛍お姉ちゃんが。
我が家の本命は、ヒカルお姉ちゃんっぽいんです。
水瓶座だけど、月に二人の誕生日がある時期だから
みんな山羊座と間違っていた時期があるんですよ。
それで、山羊といえば西洋の妖怪をあらわすシンボルでもあるということで
ヒカルお姉ちゃんは、かっこいいバンパイアの衣装を試着していたよ。
りりしいです。
星花もそのうち、ヒカルお姉ちゃんくらいの歳になったらあんなふうに
頼りになりそうなお姉さんになれる?
今のお兄ちゃんと同じ歳なんですね。
その時星花は、お兄ちゃんの隣に胸を張って並んでいられる大人になっているでしょうか。

霙お姉ちゃんのさそり女は
氷柱お姉ちゃんがポツリとつぶやいた
なんだか悪の女幹部みたいなコスチュームね、というひとことで
何人かに劇的な反応が。
それだ!
それだわ!
何かが足りないと思っていたら
それだった!
よし、もっと悪の女幹部らしく改造しよう!
うむ!
その場にいたみんなの気持ちがひとつになって
霙お姉ちゃんの服がパワーアップしようとしています!
でもちょっと寒そうな服に変わっているんです。
このごろ、朝晩とっても冷え込むけど、大丈夫でしょうか。
体には気をつけてください、霙お姉ちゃん。
もうそんな時期になったんですね。
ハロウィンが終わったらクリスマスの準備がはじまるんだっけ。
去年もそうだったかなあ?
もうだいぶ冬が近づいているのでしょうか──
お兄ちゃん、寒かったら言ってね。
一緒にかけ布団を探しに行きましょう。
星花、布団のおかたづけは結構お手伝いしているの。
必要なものがどこにしまってあるかは、
我が家のまだ小さいほうの妹にしてはよく知っているほうだと思います。

お兄ちゃんにあたたまりそうなことを
いっぱいしてあげたくて
星花はこれまで、立派にできたとは言えないけれど
おつかえさせてもらっています。
おしくらまんじゅう。
手作りのマフラーはどうかなって相談したこと。
いろいろあったね。
おぼえてる?
これからも、星花はお兄ちゃんのもとで
働いていきたい。
冬が来ても平気だよ。
星花は家族があたたまる用意を
だんだんおぼえはじめています。

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