アルケイディア&キュクレイン

アルケイディア&キュクレイン TOP  >  2013年09月

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海晴の偽日記

『二日目』

午前中には
地域の防災訓練に参加して。

お昼からは
行き慣れた商店街で
お祭りを楽しんで。

20人きょうだいの全員が
地元密着型の
お祭り二日目。
今日が夏休み最終日です。

楽しみにしていたお祭りが
どうしても晴れてほしいと願う
お日様むすめの
立夏ちゃんと、
うっとおしい雨が今日だけは待ち遠しい
追い詰められた麗ちゃんと、
運命の一日の行方は
はたして。

かんかん照りに
晴れたね。

ここ数日の天気図は
見習いお天気お姉さんの目から見ても
あーこれはしょうがないか、
せっかくのお祭りだけど
こういう天気だってあるよね、
長女としてはなぐさめの
優しい言葉の準備をしておきたいな

みんなより先を見通せる
大人の余裕のふりでいたら
まさかの晴れ。
お天気お姉さんの自信が
音を立てて崩れていきます。
プロの気象予報士さんと話をしていても
ここ数日の天気は予想が困難だったとのお言葉も。
おそるべきは、立夏ちゃん。
本当にそんな力があるの?
お天気業界は揺れています。
晴れてよかったね。
意外な展開でも、お祭りは晴れたほうがいいよね。
麗ちゃんはとうとう覚悟を決めて
蛍ちゃんの選んだシックなおしゃれ着も
熱い戦いを待って背中が燃えていました。
せっかくの機会で、もっといろいろ着てほしかったって
蛍ちゃんはぼやくけれど
本人の選曲が『待つわ』では工夫しづらいよね。
猫耳も似合わないし。
待つにゃんでは雰囲気出ないもの。
かわいいステージ衣装を期待していたお姉ちゃんも
もう!
麗ちゃんの照れ屋さん!
つっつきたくなりました。
でも、勇気を出して出演してくれてよかったな。
もう、いつまでもぐずっていた頃の
小さな麗ちゃんじゃないのね。
衣装選びで振り回されたり
選曲のことでまわりから意外だと言われたり
大変なことがいっぱいあったみたいだけど。
キミが気遣ってくれたのかな。
どうにかステージに立てました。
一緒に出演する仲間がいたし。
立夏ちゃんじゃなくて、同じ歌を歌う仲間。
本家の番組でも、二人組の出演が多い曲。
この曲を選んだって聞いたとき、
本当は麗ちゃんも、小雨ちゃんと二人で歌いたかったのかなと
私は余計な気をまわしたりしたけれど。
よかったね。
結局、あーちゃんがなぜか麗ちゃんから離れようとしないものだから
急遽、0歳との二人組で出演する許可を取って
そのことがあって奮起して
麗ちゃんに守ってもらってばかりではいけないと
浴衣の小雨ちゃんも飛び入りで
三人でステージに立って
あーちゃんも緩やかなステップに揺られながら
声を合わせていました。
0歳だから限度があるかもしれなくて
ずいぶん演奏からずれていたけれど
でも、あれは歌っていたと思うわ。
にぎやかなステージに立っているとか、どこまで意識していたのかは
私たちには分からないけれど。
かわいい三人組、がんばって歌っていたよ。
拍手も盛大でした。
審査員特別賞の発表の時に、候補として名前を出してもらったよ。
賞はもらえなくてちょっと残念だったね。
開催直前、予告なしで登場した特別審査員は
家族の誰にも事前の報告がなかった
そこそこ名前が知られている芸能事務所の社長さん。
ママでした!
地元のお祭りだからってことで招かれたんだって。
とはいえ、家族だからという特別扱いはしない。
麗ちゃんたちをひいきしすぎない、平等な審査が行われて
審査員特別賞は
会場を誰よりも明るく盛り上げた
立夏ちゃんでした。
実力で勝ち取ったものよ。
歌はともかく
会場が喝采のパフォーマンス。
さすがにチャンピオンは逃したね。
チャンピオンの子は歌がうまかったね。
でもうちの妹たちも、
かわいさでは全然負けていなかったと思います。
出演したみんな、お疲れ様。
応援していた家族たちも、大声を出して届くように。
みんな、がんばったね。
ステージで一緒だったあーちゃんにつられるみたいにして
花火大会の途中で眠ってしまった麗ちゃんと小雨ちゃん。
きっとすごく緊張していたんだね。
安心した寝顔でした。
花火がおしまいまで楽しめなかったのは
明日の朝、起きたらなんて言うかな。
ただでさえ大騒ぎになりそうな
二学期の初日。
全員がさわやかに、いい朝で始められるよう願っています。
お姉ちゃんは、少し朝早く出かけて
テレビの向こうから、家族に挨拶するよ。
キミもしっかり学校の勤めを果たしてきてね。
いよいよ始まる二学期。
何事も、初日が肝心です!
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観月の偽日記

『おっぱい風呂』

曇天からは、ぽつぽつと。
降るやら
降らぬやら
天の神様も決めかねる。
久しぶりの幼稚園で
汗をかくまでおうたをうたっても
帰り道は風も涼しく
誰かにくっつきたいここちして、
恋しい恋しい
家族の肌じゃ。
兄じゃよ!
だっこしてたもれ。
お風呂に入ったからきれいになったゆえ、
遠慮はいらぬ。
家族の守るべき約束でも、決めておる。
遠慮はしない。
でも、
秘密があるのはOK。
うむ。
お風呂も、兄じゃと一緒に入りたかったの。
幼稚園でどれだけ泥だらけになって遊びまわったか
実際に見てもらえれば
話も弾んだであろうに。
湯船に入る前に
体中を泡立てたら
それがみるみるうちに茶色に変わり
立夏姉じゃいわく、
アメリカのコマーシャルか!
そうなのか?
確かにこれなら、よく落ちることは一目瞭然。
売り上げ効果も抜群であろう。
石鹸の力ではなくて、わらわの汚す子供力であったが。
夏休みの間も、お風呂では毎日ずいぶん汚れがわかって
家族と遊ぶと違うのうと感心しておったが
やっぱり今日は、久しぶりだと思って
はしゃぎすぎたかの。
ちょっとお疲れかもしれぬ。
そしたら、
立夏姉じゃのおひざに乗って
湯船に肩までつかって
ふー、極楽。
疲れが吹っ飛んでいくのじゃ。
ひとっ風呂浴びたら
元気が戻る。
わかさじゃ!
そうやって湯船につかると、
にらめっこすることになる
蛍姉じゃのおっぱい。
どんぶらこっこ、
どんぶらこっこ、
流れにたゆたう
ふたつのこぶね。
うーむ、あれが母性というものか。
視線を上げると、蛍姉じゃの表情も極楽気分。
ふりむくと、立夏姉じゃもえびす顔。
お風呂は気分が良くてすてきじゃ。
毎日でも入りたいものじゃな。
まあ、入りたくないと言ったら怒られるか。
兄じゃもお風呂で毎日きれいにして
石鹸の匂いのするいい男でいるのじゃぞ。
明日は、兄じゃも蛍姉じゃも一緒に入って
楽しくお風呂がいいのじゃ。
うちは細かいことを気にしないから
きょうだい仲良く一緒にお風呂に入るのは当たり前。
細かいことを気にする子もいるが
このくらいなら、たぶんかまわぬであろ。
それから、吹雪姉じゃも誘おうぞ。
急に涼しくなって切ない顔。
小さい子は手を繋いでいないとどこへ行ってしまうかわからぬが
熱に弱い吹雪姉じゃは、手を触れられなくてちょっと寂しい。
涼しい季節にみんなが手をつなぐようになると、
自分は理性的で冷静だから、手を繋ぐ理由はないとごまかす。
理由はいらぬ。
小さい子は、大人に甘えるものなのじゃ。
わらわもそうしておる。
家族の約束もある。
お風呂はお好みでぬるめにして
子供が入るときの約束は、
肩までつかって
とおまで数える。
ひー、ふー、みー、
わらわだけ数え方が古風であろうか。
昔の学問に触れるのが好きで
昔の人とお話をすることも多い。
神も昔は人なれば。
よく、家族にも聞かせたい教育的な因果話を多く伝え聞いてもいるが
怪談の季節が過ぎると、なかなか機会がない。
ま、おいおいな。
数え方が少し違っていても、
体が少し弱くても、
とおまで数えるのは変わらぬ。
子供の誇らしいお仕事。
具合が悪くなったときに助けられるよう
神様も、大人も、ちゃんと見ているから
安心してよいのじゃ。
見ての通り、
大人になったらその証に、おっぱいが大きくなる。
難しいことを考えて大人っぽい吹雪姉じゃも
そろそろいいおっぱいを持てるかの。
もっと甘えていたいかの。
もしかしたら、兄じゃだって
何かのきっかけで膨らんでくるかもしれぬ。
男らしく家族の一員でいてくれる立派な兄じゃ。
たまにはちょっと膨らんでいたって
ごあいきょうじゃ!

吹雪の偽日記

『秋風一夜百千年』

昨日に続いて
雨と晴れが行ったり来たりする
不安定な天候でした。

観月は、雷様の気まぐれだと推測しているようですが
私は沖縄から九州あたりを移動している
台風が原因だと思います。

雲の上にドリフターズの高木ブーさんや
それによく似た鬼や神様がいるという話は
考えにくいことです。
ただし、目に見えないもの全てを否定するならば
物理学の分野における基本相互作用も存在しないことになります。
もしかしたら、似たような力はあるかもしれない。
もちろん、可能性を論じているだけであって
ないものはありません。
どうなのでしょう。
観月が私たちにはない
何かの力を持っていると考えられるように
天候は、雷様に類する何者かによって左右されているのか。
真実は分かりませんが、
私が願っているのは
まだ体に免疫がついていない小さい子たちの健康に
影響が少ない天気であって欲しいということです。

放課後の夕立を教室でやり過ごして
ユキと二人で下校すると、
先に幼稚園から帰っていたマリーや観月が
小さい妹たちの濡れた服を着替えさせたり
体を拭いてやったりしている作業の途中でした。
しっかりした二人だと
その場は思ったのですが、
急に降っては家に引っ込み、
たちまち晴れ間があらわれ、
またぽつぽつとはじまって
すぐやむと思っていたら
今度は本格的な夕立だった。
そんな話を聞いていると
不安定な天気を認識して、家に引っ込んでいるほどは
まだしっかりしていないようです。
幼稚園児ですので、そうでしょう。
私やユキが早く帰って見ていていればとも思いましたが
それでも小学校低学年ですから。
マリーと観月たちは、着替えができただけでも立派ですね。
それぞれが可能な範囲で、できることをする。
これでいいのだと思います。
私も──
急に膨張する胸で和ませることはできませんが
入浴の準備をしておくことは可能です。
キミも小さい子たちを入浴させて
お疲れ様でした。
私は人の体温に弱いので
一緒に入っているのに手を貸すことができなくて
少々申し訳ない気兼ねもありましたが
しかし、そういうものです。
ましてや小学2年生。
できることをするように考えましょう。
キミが望むと思われる大きな胸が存在しない入浴でしたが
そういうものです。
それが普通の入浴です。
大人の男女は一緒に入浴することは
望ましくないとされています。
観月が望んでも、
社会道徳から考えて、避けるべきでしょう。
どうしてもと言うのならば、
家族としては受け入れるように努力したいですが
それも相談の上で行うと良いのでは。

私も大きな胸を望まれているならば
期待に応えたい気持ちはあります。
絶対的な年齢より
ホルモンバランスの関係なので
私の年齢でも
世界的にまったく前例がないわけでもありません。
しかし現実的にはなかなかありえません。
成長に期待するほうが無難です。
いいものであるらしいことは
私は完全には理解できていませんが
周りの言動から想像は可能です。
おっぱいが人の心にどれだけの作用を及ぼすのか──
興味深い研究課題です。
ただし、おっぱいの増加が期待できない相手であっても
愛情を感じることは変わらない。
私が、キミにおっぱいがなくてもかまわないこの気持ちは
老若男女を問わず一般的に乳房を求める理由を調べることで
解明できるのか。
そもそもおっぱいにそれほど情熱を持っていません。
私が変わっているのでしょうか?
それとも、何かほかに求めているものがある?

観月の怪談は、暑さが続いていることもあって需要があるようです。
感心するような知性的かつ、歴史的な内容の話も良くあります。
因果応報は単純すぎると氷柱姉は不満を漏らします。
マリーはもっと情熱的な話が好きだそうです。
子供が多い家では、怪談にそこまで求められていないでしょうね。
大人の言うことにさからって、怖い目にあう。
そのくらいでかまわないでしょう。
それ以前に氷柱姉やマリーは、
あまり怪談を自分から求めるほどではないようです。
怖いのなら無理をしないで、と蛍姉が気をつかっても
どうやら意地になるだけ。
どうして怖い話だけは、苦手だと宣言しにくいのでしょう。
不思議です。
私がキミに求めているのはなんなのか。
ここ最近は怪談も興味深いのですが、それとは関係ないようです。
今日は一緒に入浴してくれてありがとうございました。
小さい子たちの世話をしてくれたことに感謝しているだけではないと
自分では分析しています。

秋の夜長と言うにはまだ日は長いですが
涼しくなったおかげで、考え事に最適な夜。
キミの謎を考えてみることにします。

さくらの偽日記

『そらちゃん』

つよい!
そらちゃん。

こわいはなしも
へいきなどきょうは
かぞくいち。

おにも
おばけも
たいじにいくよ。
こわさにまけないこ。

ちいさいからだに
ちからがやどる。
げんきがあれば
なんでもできる。

からだはなにで
できているの?
なにをたべたら
そんなにつよくなるの?
はがねのおんな。

おおきなかえるにまたがって
どろんぱ。
そらちゃんがあやつるよ。

かえるが舌をのばして
おばけも
こどもも
のみこんじゃう。
うえーん!
かえるこわい!
お兄ちゃん、
そらちゃんをとめて!
あのね、そらちゃん。
あぶないことしたら
いけませんよ。
かえるにこどもをたべさせたら
だめよ。
こわいかえるは
おうちにいれないで!
げろげろ
げっこ。
なつのおわりは
かえるがなくよ。
どこでなく?
おうちのなかにいたら
こわいです。
なつのおわりは
すずむしもなくよ。
りんりん
ちりん。
きれいなこえね。
でも、
おうちのなかにいたら
こわいです。
おうちには、お兄ちゃんがいるの。
さくらにやさしいお兄ちゃん。
おばけやかえるやすずむしがきたら
いつもさくらをまもってくれるの。
あばれんぼうのそらちゃんより
お兄ちゃんのほうがつよいよ。

でもね、
みはるおねえちゃんがいってた。
そらちゃんでも
お兄ちゃんでも
とめられないものがある。
ほら!
つららおねえちゃんがおおいばりをはじめたら
だれもとめられない。
あたまがいいから
なんでもおしとおす。
げぼく、かたもんで!
げぼく、あそびにでかけるわよ!
ちいさいこはおるすばんよ!
さくらもしょうらい、おべんきょうして
あたまがよくなって
お兄ちゃんをげぼくにして
なかよくしたいけど
さくらにはむずかしい?
つららちゃんだからできる、りっぱなこと。
おべんきょう!
ちいさいさくらはしっかり
おゆうぎして
かしこくならなくちゃ。
それから、だれもとめられないもの。
つよいよ。
あまぐも!
ぬれたらみんな、こまってしまう。
かてないの。
おそらのうえにいて
そらちゃんがこらしめようとしても
手がとどかないの。
お兄ちゃんがかたぐるましても、とどかない。
さくら、かたぐるましてもらったら
びくびくして
おもらししそうになったのに
もっとたかいところにいる
あまぐも。
へいきなの?
あめがぽつぽつふりだすと、
そらちゃんがおそとであそびたくて
あまぐもにこらーっていっても
きいてくれないの。
こらしめたくても
とどかないから。
しかも、そらちゃんよりつよいから。
おそとであそびたいよ、
あめをやっつけようよ、
そんなときは
おねえちゃんたちが
そらちゃんにね、
このまえまでまいにちたのしくあそんだでしょ。
たまにはおうちのなかにいようね。
でもね、
ちいさいから
からだのなかにあそびをためておけないの。
まだごはんがそんなにはいらないのとおなじ。
こまめにあそばないと、はいらないよ。
さくらだって、おそとがすきだもの。
おおきいおねえちゃんだって
ヒカルおねえちゃんはいうよ。
わかるわかる!
あめがつづくとこまるよな!
いっぱいたべるヒカルおねえちゃんだから
たべためできない
あそびためできない。
わかってもらえます。
でもね、
あめがふるといいこともあるんだよ。
あめのきせつは
けっこんしきのきせつなの。
ずいぶんまえ、きいたの。
なつやすみのまえ。
さくらおぼえていたの。
だから、
さくらもけっこんします。
あいては
そらちゃん。
つよいそらちゃんとけっこんしたら
こわいおばけからまもってくれるって。
でも、そらちゃんにたべられないかなあ。
だからね、
お兄ちゃんもさくらとけっこんして
そらちゃんからまもってね。
あまぐもには
かてないけれど
おうちには、きがえがあるから
ぬれてもへいきです。

春風の偽日記

『かみなりこわいな』

くすんくすん。
さみしかったです。

昨日の夜は、
一晩中
がらがら
がしゃーん!
夜の雨を引き裂いて
鳴り通しだったかみなり。
カーテン越しの、一瞬の閃光が
まぶたをつらぬいて
はっ!
と身をこわばらせる
長い夜。
春風を泣かせる
こわいこわい
かみなり。
ひとりじゃなかったら。
もしも、隣のベッドでヒカルちゃんが起きていたら
もっと元気が出たのでしょうか。
それとも、
いつも心に浮かんでくる
たった一人だけ心に決めた人が
そばにいてくれないと
春風はもうだめなの?
自然とこぼれそうになる涙は、何が原因なんだろう。
春風の近くにあなたがいないなんて──
そんな悲しみに変わります。

もう大きいお姉さんなのに
雷が怖いなんておかしいですよね。
子供の頃は、もう少しは我慢できたみたいなんです。
こわくてこわくて
ふるえていても
ヒカルちゃんと蛍ちゃんを導いて
お姉ちゃんたちの部屋へ避難する話、
前に聞いたって本当ですか?
なんだか顔が赤くなってしまう、
小さい頃の話。
だけど誇らしい、
愛する家族を守っていられた昔話。
今はもう
救い出してもらいたいと
願うだけで精一杯なんです。
いつでも心に浮かぶその人の顔は、一人の夜も。
他の誰だって春風を助け出せないと信じ込んで。
あなたがいることで
春風は
雷の夜に一人ではいられなくなりました。
恋をしているのに、苦しいよ。
雷が鳴る
長い夜はつらいです。

昨日の雷は大変なものでしたね。
朝食にこんなに寝不足の子が並ぶのも久しぶり。
春風も眠かったけど
しゃきっと笑顔、
負けないみんなのお姉さんです。
朝ごはんで元気をあげる前に
まず春風が力いっぱいになりたい。
朝にがんばれるのだから
学校のあくびは
勲章です。
怒られるけど。
夜はまるごと
雷で眠れなかったなんて、先生には言えません。
王子様のところに避難に行った子もいたのでしょう?
静電気が苦手な吹雪ちゃんは大丈夫だったかしら?
電気の気配に人一倍敏感な吹雪ちゃん。
普段は冷静なのに、
というか雷のときも顔だけは冷静なのに
慌てているってわかる。
さくらちゃんみたいにクッションの下にもぐりこんで
おしりを出したりしているわけじゃないのに
吹雪ちゃんの顔色だけでわかるなんて
よっぽど雷が嫌いなんですね。
かわいいけど、ちょっとかわいそうかな。
雷が鳴り出すと
冗談でアースを繋ぎたいって言い出すの。
吹雪ちゃんは電化製品じゃないのにね。
まだ数日は不安定なお天気が続くみたいです。
雷が鳴り出したときにみんなが怖がらないか
心配していたので、その対策。
今日は特別。
ふだんはこんなお行儀が悪いことは
海晴お姉ちゃんと霙お姉ちゃんが絶対許さないし
春風も止めると思うけど
雷に怖がるみんなを見ているから
今日だけです。
朝から久しぶりのお天気に恵まれそうな日で
念のため、急な雨が降ってもいいように
リビングだとかガラスの内側に
みんなのお布団を干しておいたら
ふかふかになってくれたので
もう思い切って、リビングに全員分の布団を並べて
みんなが一緒にお休みします。
川の字と
川の字と
川の字を書いても
まだ足りない。
今日は雷は鳴らないみたいだけど
怖いことがなければ嬉しいです。
でも、今日だけで本当に春風は大丈夫なのかな。
愛はこの体のどこにためておけるのでしょうか?
お試しの日ですね。
でも本当は、明日から雷が鳴らないで
激しい雨にならなければいいのですけど。
一番いいのは、明日からずっと
王子様と一緒に眠る夜がやって来ることです。
おやすみなさい。
今夜は春風の
となりのとなりの
どのくらいとなり?
いつもよりも少しだけ近い場所で
王子様も、どうか
いつもより少しだけでも
いい夢を。
嬉しい春風は、
願っています。

星花の偽日記

『吹雪ちゃんを雷から守ろう』

変わりやすいお天気は
続くらしくて
土日はくもりのち雨の予報です。

星花は準備も万端、
学校にある置き傘は
いざというとき夕凪ちゃんが入れるように
こころもち大きめ。
夕凪ちゃんは雨が降りそうな日に傘を忘れると
予想している星花は
家族への信頼が足りないでしょうか?
用意は周到なほうがいいかな。

また雷が鳴り出したら
どうなっちゃうんだろう?
苦手な子は
やっぱりまた怖がるかも

誰でも、苦手は
あるものです。
本当は、なかったらそのほうがいいんだと思うけど
そういうわけにもいかなくて。
お兄ちゃんにも苦手なものはあるの?
それはそうですよね。
なんだか不思議な気もします。
想像できないのに、あるんだね!
なんだろう。
弱点を知ってどうするというわけではないので
これ以上質問するのは失礼ですね。
星花にできることがあったら言ってね!

吹雪ちゃんは雷の気配に敏感なの。
まだ誰も雨雲に気がつかないうちに
追われたうさぎみたいにぴくぴくしはじめます。
まわりをちらちら、
陰に隠れたくてきょろきょろ。
頭の上に伸びた長い耳を動かすの。
耳はそんな気がするだけですけど。
確率的にそんなに落ちるものではないとわかっているんだって。
室内に避難していれば落雷の被害は避けられるって。
だから怖がるほどのものではないんだって。
わかっていても、
やっぱり怖いのです。
これが観月ちゃんの得意な怪談だったら
前世に雷との因縁が何かあったということになりそう。
マリーちゃんは革命がそんなに苦手でもないから
前世はあまり関係ないかもしれません。
マリーちゃんはわりと革命したい側ですね。
女王は、民衆の先頭に立って導くものだと。
雷が鳴ったら、怖がるさくらちゃんやにじちゃんを
部屋へ手を引いてあげて
安心させます。
吹雪ちゃんはもう大きいからいらないって言うかもしれないですけど
同じ部屋の縁だし
星花はお姉ちゃんだし
何かできないかなあ。
吹雪ちゃんがあまり雷を怖がらなくてもいいように。
このまえ、夜に雷が鳴り出したときは、
吹雪ちゃんは熟睡していて気がつかなかったそうです。
ずいぶん難しいことに頭を使うと、夜には疲れているよね。
ベッドについたらすぐに寝息を立てて
ちょっとした物音くらいでは起きないくらいなの。
それからね、雷が鳴っても
真剣になって考えていることがあると
気が紛れるんだそうです。
吹雪ちゃんが真剣になれることなら
数学の難しい問題みたいな?
ミレニアム懸賞問題だとか
ゴールドバッハの予想だとか
話を聞いたことがあります。
内容はよく理解できなかったというか
全然わからなかったというのが
悲しいことに正直なところ。
星花にできそうなことは、
あんまりうるさく
吹雪ちゃんの考え事や睡眠の邪魔をしないよう
気をつけること
だけかも。
星花と夕凪ちゃんがよく寝付ければ
部屋中ぐっすりいられるかな。
星花、夕凪ちゃんといっしょうけんめい遊びます。
お兄ちゃんも協力してくれる?
へとへとになるまで体を動かすには
楽しい協力が必要です。
そういえば、ヒカルお姉ちゃんも
雨が続くと体を動かす時間が少なくなっちゃうって。
雨でもできる運動っていうと
腕立て伏せとか?
うーん、それだけだとつまらなくないのかな。
雨の日はヒカルお姉ちゃんとも協力して体を動かしたいです。
星花はツイスターゲームならできる!

吹雪ちゃんも一緒になって体を動かせたら
もっとよく眠れるかも。
雷なんて気がついたら通り過ぎていた
なんてことができたらな。

でも、部屋のみんなが早く寝ちゃって
自分だけ起きているという状態も
星花はかなりさみしいし
同じ部屋で誰か起きてないか声をかけちゃうかなあ。
吹雪ちゃんが眠れないようなら
深夜によくありそうな話として
ガールズトークで気を紛らわせるという手も。
気が紛れるかなあ。
そもそも、星花にガールズトークができるのでしょうか。
最近気になるのは、家族の元気だとか。
カンフーだとか。
三国志の話はどこまでわかるかな。
わからなくてもいいの?
聞いてくれる?
面白く話せるか自信はないけど。
星花は聞くのはなんとかなると思います。
吹雪ちゃん、どうぞ。
お兄ちゃんもぜひ。
夕凪ちゃんももちろん、いつでもいいよ。
雷が鳴り出したら
気を紛らわすくらいの気持ちで
声をかけてください。

真璃の偽日記

『女心と』

雨の日に
あったらうれしいもの。

色合い
はなやか
きれいな
かさ。
きれいな
ながぐつ。

替えの靴下も
あったら便利だけど
それはちょっと意味が違うの。

おしゃれな雨具で
なんだかときめく。
それがうれしい。

変わりやすい天気。
秋の天候は、女心に例えられるけど
女の子は、いつだって一途なのにね。
ただ単に、愛する人に
一番きれいな姿を見せたくて
かわいくておしゃれな持ち物に
心が揺れるだけなの。

このところのお天気は
秋雨前線の影響なんだって。
海晴お姉ちゃまが天気予報で言ってたわ。
秋の雨にしては、
降るときは激しくて
まるで真夏の夕立。
これじゃあ、
かわいいかさやながぐつで雨を楽しく
どころじゃないわ。
濡れないように大変な努力。
欲しくなるのは靴下、着替え。
必需品。

雷は鳴るし
薄暗いし
蒸し暑いし
怪談は似合うし
秋の雨って本当かしら?
午後になって、お空のはしに雲が湧き出すと
わーっと降って
見ているうちに
からりと晴れて
外に飛び出す
20人きょうだいの
長い影。
休日の過ごし方が
夏休みとまるで変わらないわね!
いいけど!
やっぱり、9月になってまだ一週間じゃあ
急に変化はないのかしら。
しとしと雨を
お気に入りのかさで歩く優雅なマリーも
まだもう少し先ね。
秋になったら食べものがおいしい季節なのに
その気でいても、まだ暑いし。

心はもう
あきだわ!
くりだわ!
なすだわ!
さつまいもだわ!
収穫を待っているというのに。
気温のせいで体は、軽いおそうめんを求める。
小さな秋は、まだ気がつかないどこかにあるの。

フェルゼンたちの学校の
秋の祭典、学園祭は
今月の末ごろにあるのでしょう?
その時期にはあんまり真夏みたいな雨は降らないと思うから
天気が悪くても、自慢の傘で行くわ。
しっかり準備していてね。
というか、がんばって準備するんだから
晴れるほうがいいわね。
これからしばらく、お姉ちゃまたちは
放課後や休日が
学園祭の準備で忙しくなるかも、って言うの。
さみしいけれど、
家族のみんなが充実した学園生活を過ごすためだもの。

フェルゼンも文化祭では
お帰りなさいませご主人様って言うの?
蛍お姉ちゃまが練習していたわよ。
そのうちおうちでメイドキッチンも開催する予定とのこと。
練習のため、家族で協力よ!
蛍ちゃんが立派なメイドさんになれるまで。
マリーは女王様だけど
メイドにお世話してもらったことはあまりないの。
慣れないことで戸惑うかしら?
まあ、なんとかなるでしょう。

幼稚園の運動会は、フェルゼンたちの次の週。
フェルゼンたちの姿を見て、マリーたちも輝くわ。
それでね、しばらくの間
マリーがさみしい思いをしているということを
忘れないでいてくれたら
ごほうびに
学園祭が成功した後で、
ふたりきりの時間をあげたいな。

小雨の偽日記

『オリンピック』

日曜日の朝は
気分もなんだか
のんびり、ゆったり。
家族がゆっくり起きてきて
大きな声で朝の挨拶を交わして。
賑やかな、
なのに穏やかな
一日の始まり。

そんな朝に飛び込んできた
嬉しいニュース。
オリンピックの東京開催決定
おめでとうございます。
お兄ちゃんも嬉しい?
小雨はスポーツに興味がないためか
そんなにピンと来ないんだけど
テレビの向こうの人たちは
飛び上がって
抱き合って
歓声を上げています。
しみじみ喜びをかみしめる静かな表情もあって、
こんなにいいことはそうはない
みたいに
嬉しそう。
だから、いいなと思って。
こんなふうに、笑顔になれる人が
たくさんいるのはとってもいいなと思って。
あまり思うことがあるわけでもない
こんな小雨でも
なんとなくで参加してもいいでしょうか?
喜んでいる人たちがおおぜい。
よかったです。

2020年ですね。
これから、東京は賑やかになるんでしょうね。
オリンピックに合わせて
激しい変化もあるかもしれません。
家族がわいわい言っているときにも
うまく入り込めなくて少し離れて見ているだけの小雨が
そんなに騒々しい環境についていけるのでしょうか。
いえ、見ているだけなのはそんなに嫌でもないです。
ただ考えてしまうんです。
その頃には海外から人がたくさん来るんだな、
このあたりもあわただしくなるかもしれない、
小雨の知らないうちにどんどん周りが変わっていって
知らない場所だらけになってしまったら
ただでさえ勇気が出せない小雨なのに
どうやって外に出ていけばいいんだろう?

7年後の開催ということは
その時の小雨は
中学、高校を卒業して
大学を選ぶときも、近い将来を見据えていて。
自分の夢を胸に社会と向かい合っている年齢。
海晴お姉ちゃんが、慣れないお仕事と大学を両立させようと
一生懸命になっている、エネルギッシュな時期。
大人の女性として飛び立つ方法を覚えはじめた
海晴お姉ちゃんみたいな大学生に
小雨もなろうとしている
そんな頃だろうと思います。
本当に、小雨がきちんとした大人になる
そんな時間が来るのでしょうか?
ずいぶん遠い未来のような──
そんな日はいつまでたっても来ないような──
想像も難しいくらい先の話という気がします。
なんて言ったら、
オリンピック開催に喜んでいる人たちに怒られるかな。

いつかは訪れる未来だけど
すぐ向き合うわけではないんだと思ったら
少し気が楽になりました。
心の準備をしておいて
7年かけて少しでも成長して
大切なイベントを、きちんと迎えたいです。
あまり自信はないですけど、
小雨もお兄ちゃんの妹なんだもの。
できないとあきらめるのは早い気がします。

ヒカルお姉ちゃんも、
スポーツは見るのもするのも好きだから
とても喜んでいるのかな
と思っていたら、
難しい顔の理由は
自分も大きな決定の日を間近に迎えているから。
でも、向き合わないといけないって。
高校一年生、
まだ大人というわけでもないヒカルお姉ちゃんに
訪れた大きな試練です。
きっと小雨では、ヒカルお姉ちゃんの歳になっても乗り越えられないの。
でも小雨はそもそも、そんな悩みとは最初から縁がないの。
気持ちをわかってあげられなくてさみしい。
これはお兄ちゃんもまだ詳しく知らない、木花の事情。
中学の頃から学校のプリンスとしてファンが多いヒカルちゃんなので
高等部になって初めて迎える今年の文化祭には
ぜひ演劇の主役として出演して欲しいと
演劇部のほうからお願いがあったらしいの。
お兄ちゃんとヒカルお姉ちゃんのクラスの出し物が
演劇になるという話があるのは
そういう事情なんです。
演劇部が全面協力する、本格的な内容になるそうです。
このままではヒカルお姉ちゃんが
今月の末には、ジュリエットと相思相愛のロミオになってしまいます。
そんなの自分の柄じゃないって
なんとか代案として、ヒカルお姉ちゃんは
忠臣蔵を提案するそうですけど
大丈夫かなあ……
ロミオとジュリエット、忠臣蔵では
ずいぶん目指しているものが違う気がします。
そもそもシェイクスピアがヒカルお姉ちゃんの趣味じゃないらしくて。
急な話で
小雨に手伝えることは何もないんです。
どうか、お兄ちゃんが
ヒカルちゃんの力になってあげてほしいの。
小雨がこんなお願いをして
お兄ちゃんは迷惑じゃないでしょうか。
あまり無理にというわけでもなくて
でも本当はヒカルお姉ちゃんのことは心配なんですけど
もしできたら、でかまわないので
ちょっと気にしてくれたら嬉しいです。

あさひの偽日記

『おばばんば』

おっばー
おっば!

おばばんば!

あーたん
あっば!

にゃーにゃ、あば!

おんばんば
んば。

あーばんば
あばばば。
おっおー
ば!
にゃーにゃ、うんうんにゃーにゃ!

(ロミオはどうして
 ロミオなの?

 うまれたときからロミオだよ!

 あさひはどうして
 あさひなの?

 うまれたときから
 おにいちゃんのいもうと!

 ロミオは、いつもロミオ。

 あさひは、いつもあさひ。
 おにいちゃんのいえにうまれたよ。
 おにいちゃんは、
 あさひがいもうとだからおにいちゃんだね!)

蛍の偽日記

『決定』

お帰りなさいませ、
ご主人様。
にゃんっ!

あれ?
メイドさんのあいさつが
いま何か
おかしかった?

観月ちゃんみたいに、
猫と体が入れ替わっちゃった
遊びをしているわけじゃあないんです。

そもそもなんでメイドさん?
というのは、
今日いよいよ、蛍たちのクラスで
学園祭の準備が本格的に指導したからです!

蛍のクラスは、今年の文化祭で
コスプレ喫茶を申請しました。
ところが、申請内容があいまいすぎて
出し物として適切かどうか判断しにくいとの
生徒会の意見があったの。
今年の文化祭のテーマは、
夏休み前に生徒全員から募集して
決まりました。
つないだ手と手。
私たちの学校の、
これが今年の文化祭。
テーマに合った出し物にできるかどうか、
コスプレって具体的に何をするのか聞かれたら
実はつい数日前まで決まっていなかったんです。
クラスでも意見は分かれていました。
憧れのかっこいいお仕事を体験したい
はたらきもの喫茶。
ホタも沖縄旅行で飛行機に乗って
キャビンアテンダントに改めて惚れ直しました。
チキンオアビーフ?
とは、言ってくれませんでしたけどね。
喫茶店の案としては、そういうのがあったんです。
工夫を凝らした制服を作って、
お仕事と言っても、さすがに海賊までは想定外だったけど
虹子ちゃんが好きみたいだし
ラブライブのにこちゃんの活動日誌でもあったでしょう?
あれを読んで、あっいいな、
露出が多くてもさわやかそうで
かわいいなって。
ホタの体型だとあんまりおなかや足を出すのは恥ずかしいかな。
お兄ちゃん、
蛍のスタイルは微妙ですか?
でも候補を考えている時期は良かったけど、
本番は秋の真っ只中。
葉っぱも色が変わる頃です。
クマも人間も冬ごもりの準備を始める季節だよ。
おさびし山だって雪の季節には、みんな家の中。
きっと、このくらいの時期から食べ物を運び込む。
そんな時に
はらだしは、
少しきびしい。
お兄ちゃんは、蛍が変身して欲しい職業って何かありますか?
参考にします。

もうひとつの案は、かわいらしいけものたちに扮する
どうぶつ喫茶。
定番の犬や猫、
かわいさなら負けないうさぎやペンギン、
ちょっと変化球できつねやクマ。
ゾウやタヌキはインパクト重視?
人魚では、注文の品をお届けするのは難しいですね。
蜂はあーちゃんや立夏ちゃんには似合うけれど
中学三年生がすると飛び道具だと蛍は思います。
家庭科自慢の子が揃った蛍のクラス。
おうちがお店をしていたり、単に趣味だったり。
調理部、家政部で活躍している子もいます。
そしてなぜか、あまり学校ではそういう姿を見せない
蛍がいつの間にか注目されていて気恥ずかしい。
毎日のお弁当を工夫するのは好きでしていることなんだけど、
なんとなくまわりから認められているみたい。
部活動などの実績があって、喫茶店の申請が通った我がクラス。
それが意見が分かれる原因にもなりました。
みんな、腕に覚えがあるもの。
かわいさの追求ではなかなか譲れない部分もあるの。
結局、メインはどうぶつにして
それぞれのイメージに合った制服を選ぶ形です。
だから猫耳メイドさん。
動物だけだと戸惑う人もいそうだけど
お仕事があれば、お客さんもお話しやすいはず。
手を取り合うのは、クラスのみんなばかりじゃない。
喫茶店なんだから、お客さんとの交流も大事にしたい。
はたらくどうぶつ喫茶です。
それにしても、きつねのお仕事はどうしよう、
不安定な天候の日に、お天気雨を見ていると
きつねの嫁入りっていうからウェディングドレスかなあ、
でもあんまり見たことない絵だなあ、と思っていたら
これは日本の言い伝えなので
お嫁に行くきつねは角隠しですね。
それなら絵本で見たこともあります。
観月ちゃんなら本物を見たことがあるかなあ?
ヒカルちゃんが時代劇も少し見るらしいと聞いて
それで気がつきました。
きつねが神秘的なのって、日本らしいイメージですよね。
町娘の格好も合うかな、
でも、
帯くるくる
あーれーは
はたらくどうぶつ喫茶ではしません!
非売品!

あっ!
そうだ、お兄ちゃん。
時代劇のことで、聞きました。
うちのクラスには演劇部の子はいないのに
なぜか噂が届きました。
お兄ちゃんのクラスも大変だったみたいですね。
話題の中心のヒカルちゃんが、時代劇を提案したことで
異様な盛り上がりだったと。
容姿端麗な剣士のイメージといえば
沖田総司、
片倉重長、
佐々木小次郎。
他にもたくさん話はあるそうで
想像が膨らみます。
その縁で、あと少しでお兄ちゃんが
宮本武蔵に決まってしまうところだったそうで。
惜しかったですね!
違う?
あぶなかったですね!
お兄ちゃん、演技は苦手だもんね。
ヒカルちゃんも苦手だけど
今回は、主役は動きを見せる演出。
ロミオよりもヒカルちゃんに合うと、ますます期待が高まる役。
佐々木小次郎だと出番が少なくなってしまうということで
歴史に名高い
美貌の剣士。
源義経。
お兄ちゃんは弁慶に決まったんですってね。
ヒカルちゃんからのじきじきの推薦で、
自分が一番信頼できる相手だからと。
五条大橋はどんなシーンになるのかな。
お兄ちゃんはあまり大柄じゃないほうですけど
ヒカルちゃんと並んだら、華があるシーンになると思います。
でもヒカルちゃん、スポーツはなんでもできるけど
牛若丸のイメージで宙返りとなると
新体操?
経験があるって聞いたことがないのは心配だな──
お兄ちゃん、どうか誰よりも一番近くで
守ってあげてください。
蛍は、たくましいお兄ちゃん弁慶と
美しいヒカルちゃん義経を
うっかりすると自分のクラスのお仕事もおろそかになりかねないほど
楽しみにしています。

さくらの偽日記

『えがお』

はい、
チーズ。

カメラのまえでは
ピースして
えがお!
さくらはまだピースはじょうずじゃないの。
ゆびがぶいにならないの。
えがおは、ばっちり。
カメラに
にっこり。

おしゃしんがすきな
おねえちゃんは
うららおねえちゃん。

でんしゃをたのしむなら、
のるときがいちばんすき。
ながめるのは、そのつぎにすき。
カメラでパシャパシャ
とっているひまは
あまりないの。
でんしゃにむきあうと
いつでもほんき。
もえあがる。
うららおねえちゃん。
このでんしゃは
かっこいいな、
かわいいな、
もうひとつだな、
でもがんばっているな、
そんなところがぶこつだな。
かんそういろいろ。
のったらわかる、そのここち。
だそうです。
りょこうのでんしゃはべつです。
いつもはのれないしゃりょうがおおいよ。
めずらしいしゃりょうもあるよ。
りょうてでまねいて
よんでいる。
しゅうだんこうどうだから、じかんはあまりないけど
のってながめてたのしむだけじゃ
たりない。
カメラにとって
おもいでにのこそう。
パシャッ。
パシャッ。
こっちのアングルが
いいかくど。
うららおねえちゃんのパソコンには
ずらりならぶよ、おしゃしん。
みようとしたら
パソコンがひいこらいいながら
ゆっくりゆっくり
いちまいずつならぶ、ちいさいおしゃしん。
ゆびさきひとつで、おおきいおしゃしん。
お兄ちゃんもみた?
どのおしゃしんがすき?
さくらは、
あおいのがすき。
あおいだけじゃなくて
うすいみずいろのものがすき。
それから、きいろいの。
ラッキーでんしゃなの。
なかなかみることができないけど
こううんをとどけるためにはしります。
しあわせのきいろ。

うららおねえちゃんのカメラは、
ママのおさがり。
おさがりってね、
ふくとか
くつとか
ぼうしとか
はながらできれいなんだよ。
さくらちゃんにも
そろそろこれを、おさがりであげる。
って、いわれたら
わーい!
おはなだ!
うれしい、おさがり。
うららおねえちゃんのカメラね、
はいいろなの。
えっ、いいの?
でんしゃのおしゃしんもね、
はいいろのからだに
あおいリボンや
みどりやむらさきがまいてある
そういうのがかっこいいんだって。
おとなのいけんです。
さくら、
こどもなの。
まんがのでんしゃの
おしゃしんをまたみたいから
みせてもらいにいく!
お兄ちゃんもいきましょ?
りょこうでじかんがあるとね、
でんしゃとならんで、チーズ。
うららおねえちゃんにとってもらえる。
お兄ちゃんのおしゃしんもあったの。
あーちゃんと
お兄ちゃんと
きいろ。
いいことがありそうなおしゃしん。
えがおです。
でんしゃもえがお?
お兄ちゃんは、あーちゃんをだっこしていたから
ピースできないけど
えがおなら、それがいちばん。
みていてうれしくなる。

きのうか、
おとといくらいから?
つららおねえちゃんが
カメラをかまえて
いえのなかをあるいています。
さくらちゃん、とるわよ!
こえをかけられたら
おやつをこぼして
なきたいときも
えがおになるの。
つららちゃんは
えがおをくばるおしごとをしているの?
それとも、
うんどうかいがちかいから、カメラのれんしゅう?
このまえ、ごがつにあったよ。
しょうがっこうのうんどうかい。
さくらもおうえんしました。
つららおねえちゃんは
おもいでになるからと
いっしょうけんめいとっていました。
いっとうしょうでも
びりっけつでも
がんばったんだから
えがお。
そうしたら、あとでみたとき
いいおもいでになるよ。
うららおねえちゃんは、おしかったね。
あとちょっとだったから、
なかなかえがおになれませんでした。
いっとうしょうのえがおが
いちばんかがやくよ、
うんどうかい。
お兄ちゃん、いっとうしょうをとって
いちばんのえがおになろうよ。
さくらもおうえんします。

りっかおねえちゃんが
おともだちといっしょのおしゃしんは
きらきらもよう。
これは、
こどもにははやいんだって。
ゲームセンターっていって
ようちえんじにはこわいところ。
どんなところ?
おばけがいる?
かみなりがなる?
こわいかおのひとがいる?
きぐるみまで?
かんがえだしたら
こわくなっちゃう。
りっかおねえちゃんはね、
もしかしたら
デパートに
きらきらおしゃしんのきかいがあるかもしれないっていうの。
こわくないなら
さくら、とってみたいな。
おもいでになるとおもいます。

綿雪の偽日記

『夜長』

おひさまが出ている時間が
日に日に短くなって
気がついたら、
夕方には思ったよりも涼しい風。
まだこんな時間なのに!
ベッドに重ねるおふとんが、一枚増える季節。
体が弱いユキは、
暗くなったら
早くおうちに入らなくちゃ。

夏の暑さが続きそうだった
9月のはじめから
ほんの数日。
まだ、汗をかく強い日差しはときどきあるのに
今日みたいな、薄い雲のかかる日は
いつもより感じる。
秋は深まっています。

体の調子を見て、早めに休んで
目を覚ましたらまだ暗い
そんな朝にも。
目を閉じて、ときどき目を開けて
窓の外を、カーテン越しに見つめて。
起き出して行く時間を待つとき
優しい家族と、楽しい学校と
もしかしたらそれを我慢する日になるかもしれないことを思って
胸が早くなって、また寝付けるなんて思えない
一人の朝。
カーテンを見ている時間が増えるのは
くもりの日が続いたからではなくて
秋がやって来たことが理由。
春風お姉ちゃんと、蛍お姉ちゃんが起き出して
キッチンのほうで朝の音が聞こえ始めるのが
一日一日、だんだん待ち遠しくなるのも
くもりのせいではないの。

これからだんだん
暖かい時間が減っていくと
お外に出られる時間も減っていくのかな。
まだ全然平気な時期のはずなのに
急に涼しくなってきたから
実際は、過ごしやすいくらいの気温でも
なんだか
物思い。

小さい子が読むおはなしでは、
体が丈夫じゃない子はよく
知恵者の役割で
部屋にこもることが平気みたいだけど
ユキは人並み以上に成績がいいということはなく
それなり。
家の中にいるのは
ここにはいつでも
お姉さんも、赤ちゃんも
家族がいるんだもの、
好きなほうではあるけれど
お外も、嫌ではないです。
走ったりとんだりしなくても
のんびり歩くだけでもいい。

ずっと家にいると、
体が弱かったせいにしたらいけないけれど
小さかった頃からの趣味は、そんなにないの。
おうたをうたったり
おどりをおどったり
みんながしているようにしたくても
あまり知らなくて、はずかしいな。
家の中でお勉強をしていても
天才さんではないから
ずっと集中はできない。
氷柱お姉ちゃんやお兄ちゃんは、すごいね。
学校だけじゃなくておうちに帰ってきてから
何時間も、ユキにはまだわからない難しいお勉強をするのでしょう?
中学生や高校生になった人は、そうしたい。
ヒカルお姉ちゃんも、体を動かすほうが好きなのに
学校のテストの時期は一生懸命お勉強しているみたいです。
ユキもそのくらいの年になったら、お外に出られない季節に
ずいぶんかしこくなるかもしれません。
嫌いだなんて投げ出すことは
しないんだから!
そのくらいの頃には
もう子供じゃなくなっているんだから。

でも、小さいユキは今は
秋が来るのが寂しいみたいです。
運動の秋や、食欲の秋が待ち遠しい子もいるのに
ユキってわがまま!
日暮れの早さが、いじわるをしているみたい。
そんなことないのに。
おうちに帰って家族と過ごせる時間が増えるのにね。
ユキも一人部屋ではなかったら、よかったのでしょうか?
お兄ちゃんは一人部屋で寂しくない?
もう高校生だから平気なの?
ユキは高校生になるまで、ずいぶん長いです。

立夏の偽日記

『夏ふたたび』

ジージー、
ミンミン、
ツクツクボーシ。

だいがっしょー。

セミたちだって、
こんな日が来るのを待っていた。
あー暑かった。
授業中うるさかった!
あんまりセミが鳴きすぎて
笑い出しそうで
ピンチでした。
リカがピンチのときには
オニーチャンが助けに来てくれる約束なのに
なにしてたのー?

9月もあなどれないネ。
やればできるんだね。
見直した。
今年は残暑が厳しいでしょうって予報、
昨日までは
なーんだ
こんなもんかと
なめてたヨ。
今日の天気はガチでした。
太陽もそろそろ
休憩したし
このへんで一回本気だしとくか、
みたいな?
本格的に秋になっちゃったら
真っ赤なのは、もみじ。
それから、太陽にすかしてみる
リカの血潮、は季節を問わないとして。
忘れるな、
真っ赤に燃えるのが太陽だと。
それと関羽だと。
プライドをかけて
気合を入れて
まだまだ熱くなれるのが
俺様なんだ、
太陽だ。
うんうん。
誰だって、クールに構えるより
熱く燃えるほうが
気持ちいいんだもんネ。
ライバルもいてさ。
太陽のライバルは、
リカだね?
それにしても
こう暑いと、学校帰りに買い食いするアイスがおいしい。
ガリガリ君のソーダ味と
スーパーカップのバニラ味、
定番が嬉しくなる
たまの思い出したような炎天下でした。
あ、でも、
困っちゃうな。
リカのクラスの文化祭の出し物は
創作ダンス。
練習の初日に、こんな暑さで。
体操着はすぐにびっしょり、
ムレムレブルマがうらめしい。
そりゃ汗びっしょりになる予定だったから
着替えは持っていったけど、
想像を大きく上回る汗が
ダンスと共に健康的に飛び散ったヨ。
こんなときは、体操着は短パンが良かったって思うな。
オニーチャンがときどきはいてる
トランクスも涼しそう。
はいてるのは見たことないけど。
見たのは、洗濯物でつるしてあるところだけ。
今度、はいてる姿を見せてネ!
オニーチャンたちの出し物はどう?
もしヒカルおねーちゃんが演技苦手で
牛若丸がうまくいかないなら
体が軽くて
ダンスもうまいリカが
替わりにやりたーい、
橋の欄干の上から
弁慶の胸にダイブして
そのハートを奪いたい、
一生離さないぞ、
と思っていたら
ヒカルおねーちゃんは
自分が任せてもらったことだからって。
真剣に応えたいって。
でもなあ、
弁慶のなぎなたを、
ぎなた?
義経が塀の上にのぼってかわして
飛び降りたと見えたところ、
地面に脚もつかずにまた塀に戻って
逃げたという。
さては、中国の偉い人か、
古典はそういうけれど
超能力か!
それはジャッキー・チェンだって無理だ!
古典だから違う人だけど。
ヒカルおねーちゃん、
相手に正々堂々向きあいたいタイプなの。
おすもうをしても、がっぷり四つ。
つっぱりで突き放したり
立ち合いの変化なんてしない。
軽快な動作が売りの立夏が、向いてる気がするな。
挑戦してみたい。
いつも理由もなくピョンピョンはねて
氷柱ちゃんに、床が抜けるわよって言われるくらいなの。
そこまで重くないよね。
シツレーな。
もし床が抜けたとしても、
アルバイトして修理代にあてるもん。
ポテトはいかがですか?
それか、ママの事務所に入っても稼いでもいいし。
うたっておどれるから。
でもママは、
リカは別にいいって。
麗ちゃんが欲しいって。
どういう意味!?
生まれ持った才能の差というのはあるのか。
オニーチャンは、リカより
麗ちゃんが美人だと思うかなあ、
やっぱり。
でも、
負けないもん!
めげないリカだもん!
ダイスキなオニーチャンにだけは
リカのほうがかわいいって言ってもらえたらそれでいいもん!
ダンスがんばる。
本番、絶対見てね。
かわいいからネ。
オニーチャンとヒカルおねーちゃんも、
飛び跳ねて、
派手なアクションするみたいだけど
リカみたいに舐めれば治る野生の体じゃないんだから
ケガだけはしないでね。
もし、ケガなんてしたら
リカちょー泣くし。
セミよりも絶対うるさい。
自信ある!
リカを泣かせないように
ホントーに
体は大事にしてネ。

観月の偽日記

『しづけさや』

いわにしみいる
せみのこえ。

詠み人知らず。

うそじゃ。

松尾芭蕉の句じゃ。
蝉が鳴くのに閑とは
どういうことかの?
今日もうるさく鳴いておった。
まだ、ずいぶんいるものじゃ。
秋の気配がしたと思っても
しぶとく根性を見せて鳴いている。
真夏の間は
この暑いのによくやると
そんなに気にしていなかったが
今くらいになると、感心してしまうの。
暑い日を見つけたら
ここぞとばかりに飛び出して
今を逃してはならぬと、いっぱいに声を張り上げる。
お仕事でしているのか?
それとも、お楽しみか?
聞いても答えは戻って来ぬが
確かに、セミ達にとっては今しかできないこと。
この騒々しさも、まもなくいったん幕を下ろして
しばらくは聞けなくなる。
惜しいの。
そんな物思いも関係なく
力いっぱいにわめきたてている。
わらわも、暑さのせいもあって
だんだんどうでもよくなってくるというか
細かいことはどこかに飛んで行って
しみじみしている気分でもなくなってくる。
ふー。
夏はまだまだ盛りじゃの。
西瓜や桃はもう見かけることも少ないが
甘い葡萄は八百屋さんに並んでおる。
もう少しの間は、アイスもおいしくいただけそうじゃな。
気持ちまで夏に逆戻りしてしまうのも
強烈な蝉の声のためかも知れぬ。
元気なのは、いいことじゃ。
大声を出すことにかけては
我が家のみんなと競っても、負けてはおらぬ。
とは、言い過ぎか。
子供の声のほうが、さすがに大きいからな。
戻ってきた夏に喜ぶのは、蝉ばかりではない。
もう水着とビニールプールは仕舞い込んだが
薄着はまだ健在。
夏服の組み合わせに挑戦を続けて
大胆な心地、
目にも華やか。
おっとり上品な秋色の重ね着は、
あまりにもぎらぎらした太陽の下では脱ぎ捨てたい。
炎天下の着こなしは
あたかも孔雀か極楽鳥か?
原色の毎日じゃ。
水分補給も気をつけて
塩分、ミネラルをしっかりとって
子供はお外に飛び出して
夢中で汗をかく。
たまのそよ風が、心なしか涼しくなってきたのも気持ち良く
自然の一部に戻る小さき子たち。
わらわもまた、
お外遊びのときに選ぶ袴は、短め。
ぽっくりよりも、運動靴。
脱げたり鼻緒が切れる心配もなく
球蹴りに興じる日であった。
家の中で着替える緋袴は
神聖な衣装ゆえ、伝統を守っていきたいと
わらわには少々大きい、お姉さん向きのもの。
すぐに背も伸びるから、ちょうどよいであろう。
夏の間は、暑くて身に着けるのも難しかったことだし。
やはり正装は気が引き締まるの。
と、着替えたら
今の時期でもそれは暑いんじゃないのかと
注目を浴びた。
蛍姉じゃは、裾をあげるならすぐできるとのことじゃ。
背が伸びたらまた元に戻せるからと。
暑いのはその通りじゃ。
伝統というならば5歳の巫女もあまりいないであろうし
運動の秋で動き回る機会が増えるのは、
着替えるからまあよいか。
家の中で走り回ったら怒られるからの。
この裾では、よほどおしとやかにしていても転ぶ恐れがある。
見ていてハラハラするそうな。
わらわの美しいかんばせに、転んで傷がついてしまったら
兄じゃも悲しいであろ。
なんてな。
ふふふ。
明日は、お休み。
手が空いたときに裾をあげてもらえるというぞ。
遅ればせながら、この夏、一味違う涼しげな観月のお目見えじゃ。
楽しみにしておれよ。
蛍姉じゃも文化祭のお仕事がたくさんあるところに
ありがたいの、
何やら考え込んでいるようでもあった。
きつねと言えば巫女も似合う。
悩ましい、きつねめ!
などと。
兄じゃもお休みか?
ヒカル姉じゃは、演劇と体育祭に向けて
なるべく体を鍛えておきたいという。
三連休は台風が近づいて
あいにくの雨の予報ではあるが
兄じゃもヒカル姉じゃも、そんな天気では出かけられぬし
ごようもないであろ?
わらわも、腹筋の時に足を持つなどするので
仲良く筋トレをするのが吉じゃ。
マリー姉じゃと二人がかりで
兄じゃを押さえ込めば
体重がつりあうくらいになって
ちょうどよく腹筋ができる程度には
わらわも大きくなったぞ。

夕凪の偽日記

『ペンギン探検隊』

好きな食べ物は
メロンパン。

好きなアニメは
ドラえもん。

暑い日に
行ってみたい場所は
南極。

これが、
夕凪が探検して
見つけ出したお宝。
お兄ちゃんのヒミツ。

違う?

それは夕凪のことじゃないかって?
夕凪もそう思う。
おかしいな、
どこで混ざったんだろ。
夕凪が好きなものは
夕凪のことを好きなお兄ちゃんも
好きじゃないかと思うから?

南極に行きたいのは
夕凪のペンギン帽子と
昆虫採集にでも行きそうな
探検家ファッションを見たから?

蛍お姉ちゃんのクラスで開催する
はたらくどうぶつ喫茶。
南極は、探検家たちが目指した土地。
ペンギンだって探検したいんじゃないかな。
ということで試作品の衣装、ペンギン探検家。
だけど、はたらくどうぶつ喫茶のコンセプトは
人と人のふれあいを大事にしたいということ。
お店に来たばかりの人を探検するわけにはいかないから
ペンギン探検家の衣装は、かわいいけどボツ。
夕凪に合わせて作ってもらいました。
本当は、お客さんを捜査するのも問題だけど
犬のおまわりさんは、できることならお店にいてほしい。
だって、警察がいないと
誰かの心を盗んでしまったら大変だからって。
蛍お姉ちゃんが心を盗むほうなの?
ルパンだったんだ!
ルパン4世だ!
ルパンと不二子ちゃんが結婚して生まれた子かもしれない!
すると、ママはの正体は
実は不二子ちゃんなんだ?
やっぱり!
どおりで、派手だと思ってたんだ。
それなら、夕凪も不二子ちゃんの血を受け継いでいるね。
大きくなったら美人になるね。
今日の衣装は探検家だけど
怪盗も似合うよ。
沖縄のホテルで探検した力が認められて
夕凪のこの服。
家では、どこを探検に行こうかな?
町や学校は探検にうろうろすると怒られるの。
ちょっとだけなら、いいじゃないって思うけど
だめなの。
こないだ噂になっていた
走る二宮金次郎を追いかけて捕まえたら
お手柄なんだけど!
石でできてるんだから
そんなに早く走れないと思うんだよね。
怖い話で
小さい子を怖がらせるやつは
夕凪が捕まえて
言い聞かせてやれば
もう悪いことはしないと思う。
さくらちゃんもマリーちゃんも怖がらずにトイレに行ける。
でも、夜の学校に入ったらいけません。
家族の事情があってもだめなの。
夕凪が探検家として有名になるまで
二宮金次郎の謎は、明かされないままだね。
他に夕凪が探検したいのは
お兄ちゃんの秘密。
マホウを使ってもわからないことが多いなんて
どんな技を使って対抗しているんだろう。
マホウにはマホウかな?
ペンペン、
謎の大陸、南極育ちだから
秘密を探検せずにいられない。
南極の動物、夕凪だペン。
あとね、
庭の端っこにある、あれ。
霙お姉ちゃんが夏休みに
かびくさくなった自分の部屋を掃除したときに
暗黒コレクションを運び込んだ物置。
古いものがいっぱいで、あぶないから
中学生になるまで立ち入り禁止。
立夏ちゃんも、ずーっと禁止だったから
なんか今でも入っちゃダメなんだと間違えているらしい
謎の物置だよ。
中を見たくなるでしょ?
しかも、夕凪はまだ小さいころ
あの物置の屋根の上に登って遊んでいたから
馴染みの場所。
なのに、内側は知らないの。
夕凪が今より小さくて
今は頭の左右にふたつ結んだ
ちょこん、ちょこんが
まだ片方のひとつだけで
ちょこん、だった時代。
あれ? 青空ちゃんは今もちょこんちょこんだから
大きくなったら、また増える?
育ったら生えてくるってものじゃないか?
とにかく、夕凪の昔話。
木に登って、太い枝を伝って、屋根の上へ。
誰にも見つからないように隠れられる
夕凪だけの秘密基地だと思っていた場所。
マホウの透明マントを着たみたいに、
ここでなら夕凪の秘密を作れるの。
後で聞いたら、夕凪が見つからないときは
屋根に登っているだろうと探しに来て
ちゃんと見つかっていたらしい。
子供の頃の話って、
恥ずかしい!
物置のあたりの木の枝を切った理由は
夕凪が登って危ないからだったみたい。
だけど、夕凪が登らなくなった理由は
ある日飛び乗ったら、屋根がガタガタ音がして
壊れそうな気がしたから。
夕凪も大きくなりました。
しかも、おいしいものがあったらよく食べるほうだから。
もう屋根に登るのはやめたけれど
何度も登ったせいで屋根が壊れていないか、心配になったの。
今度の台風は、大雨に注意って予報だし。
霙お姉ちゃんの暗黒コレクションが
雨漏りで濡れちゃったらおおごとだよ!
今度の台風はこのへんを通過するかもしれなくて、本当に怖いものらしい。
海晴お姉ちゃんにも
外出しちゃだめって厳しく言われてる。
でも、庭くらいならいいでしょ?
もしそんなにひどい雨が降ったら、雨漏りを調べるついでに
中を探検に行こう!
と、探検隊の隊長は、隊員のお兄ちゃんの意見を聞いているわけです。
お兄ちゃんが隊長でもいいかな。
はい、隊長!
なんてのも、テンション上がるな。
夕凪を引っ張っていってください。
というか、せっかくの休日なのに
明日もあさっても台風でずーっと家の中だなんて、ひどいよ!
物置まで遊びに出るくらい、いいでしょ?
霙お姉ちゃんのコレクションを守りに行く役目にかこつけたい。
夕凪一人だと絶対怒られるし
でも、気になる場所。
お兄ちゃんが隊長なら、いいと思うんだ。
夕凪は、雨くらいでは
冒険心を抑え切れません!

吹雪の偽日記

『名探偵』

原典には存在しないことで知られる
鹿撃ち帽とインバネスコート。
もともとは、発表当時のイラストレーターの創作だとか。
しかし現在においても、シャーロック・ホームズの外見は
この姿が一般的と言えます。

アニメでは擬人化した犬たちとして
表現していました。
この帽子についた犬耳は、そういう理由です。
氷柱姉のサイズに合わせて作ったものですから
私には大きいサイズです。
帽子の機能は、遮光、耐寒性、装飾性など。
体に合わない形状では、いずれも効果が薄いでしょう。

今日の夕凪姉の事件に功績があったと
渡された衣装です。
やはり、大きすぎるようですね。
一般的に、女子の体型が成長するのは、十代の時期。
個人差もありますが、十代前半に大きく変化するといわれます。
氷柱姉は特に発達する期間を経た後なので
小学生の私とはだいぶサイズが違います。
特に身長の点で、顕著です。
それに私は、食事量と運動量が控えめで
早い段階で体型が著しく発達するとは考えにくい。
星花姉の服ならば、袖や裾を折り返す程度で着用できます。
急な夕立で濡れた場合など、着替えの手持ちが少ない私が借りることはあります。
ですから、星花姉がもらった試作品のパンダチャイナならば
実用性もあると考えられますが
この探偵衣装は、氷柱姉に返すのが良いでしょう。
部屋にあるタンスは、三人共用。
私に与えられた部分は、用途に合わせた最低限の着替えで
すっきりしているほうが好ましい。

そもそも、本当に
この衣装にふさわしい活躍だったと言えるでしょうか?
昨夜、共用のタンスにしまってあった合羽を
夕凪姉の急な要請によって
協力して探し出すことになった時点で
雨の中を外出する予定ができたのだろうと
当然思いつきます。
であれば、次は長靴が必要になることもわかります。
台風が近づき、外出を控えるべきである現状。
下駄箱にしまわれた長靴に鈴を繋いで
夕凪姉の外出を警戒するのは、
誰でも思いついていい工夫です。

朝から雨が降り続きましたが
昼には晴れ間があって、
事態は何も問題なく解決しました。
秘密の外出を発見された夕凪姉が
動揺のあまりに、誰にも質問されないうちから
自分の計画をすらすら答えたので
探検の許可が出ました。
危険なことをしようとしていたと
多少はとがめられていたようではありました。
夕凪姉は、物置の内部を南極大陸に例えていましたが
それほど大げさな場所ではありません。
小学生の使用が禁止されているのは
散らかっているために、使用に難があるから。
そして、散らかっている理由は
普段は整理整頓の必要を感じないものが多く、
つまりそれらは日常的な価値があまり見いだせないから。
新郎新婦の写真がプリントされた食器は
用途に困りますが、
お祝いの品ですから、捨てるのも心情的に悩ましい。
こうして時おり話題になるので
記念にする目的は達成されているわけですが。
結婚披露宴の習慣は、やや解釈が困難な部分が残っているようです。
私が法的に結婚を許される年齢になるまでに
より合理的な披露宴が行われているようにと望みます。
記念の行事に、合理性は要求されていないかもしれませんが。
私の年齢では結婚という制度に理解が乏しく、
具体的な提案をするわけにもいきません。
大人になって、
愛する人と一緒に暮らしていくとき。
ただ毎日を重ねるということ、
そのほかに、何を求めるのか。
何もいらない、
それでは通用しないのでしょうか?
結婚という制度は、南極すらも上回る謎だと言えます。
そんな物置なので、片づけが苦手な霙姉はあまり多くを運び込めず、
夕凪姉が心配していた暗黒コレクションは
宇宙関連の本が多かったため、大部分を私が一時的に借りていて、
つまり、心配していた当の本人の部屋の
本棚にそのまま存在していたということになります。
さすがにこんな場所にあったとは想像が難しかったようです。
おとといはロケットの打ち上げに成功し、
宇宙開発の話題が面白く読めます。
キミも興味がありますか?
でしたら、私が読み終えた後になりますが、いいですか?
どうしても待てないというのであれば、
本の持ち主の霙姉の立会いのもと、我が家の神聖な争奪戦で
決着を付けてもいいでしょう。
争奪戦の内容は、キミに任せます。

今日は、
夕凪姉は、ほこりまみれになってはしゃいで
早めに入浴して寝てしまいましたが
このくらいの年齢では、一晩休めばもう疲れは残りません。
明日が台風の影響が最も大きく、
家に閉じこもる必要がある日。
完全に体力が回復すると予想される夕凪姉は
果たして明日一日、大人しくできるのか?
そこで私たちが宇宙開発の本の争奪戦を行い、
危険な外出から気をそらすことができたらいいと考えました。
でも、私としても、それは名目で
一度は強大な相手と戦って、力を試してみたいだけなのかもしれない。
それとも、かまってほしいだけなのか。
あるいは、仲良く本を分け合うのも、悪い休日の過ごし方ではないとも思えます。
キミに決めてもらいたいと考えています。

真璃の偽日記

『あらし』

女王の朝は
小鳥のさえずりを聞きながらの
心地よい目覚めよりも
もっと華麗なの。

どんな朝かというと
キスをされて起こされるか
キスをして起こすか
どちらかよ。

でもそんな朝は
マリーが本物の女王になってから。
今は幼稚園に通う身なのだから
子供らしく迎える朝。
同じ部屋のチビちゃんたちを起こして
着替えさせて
みんなでそろって
元気に朝の挨拶よ。
おはようございます!
おはよう、フェルゼン!
顔を洗って、あさごはんを
いただきます!

でも、今朝はそれどころじゃなかったの。
目を覚ました時には
お外から、すごい風の音。
おまけに雨が大粒で叩きつけている。
あんな音がしたら
観月だって妖怪が来たと思うわよ。
さくらも虹子も、わけがわからないまま
おにーちゃーん!
そりゃ、うろたえるわよ。
青空だって、部屋の中まで風が吹いていると思って
音が強くなったらふとんにころりんしたりするわよ。
まだ明るくなりきらないうちから起き出して
部屋のみんなで顔を合わせて相談して
決めた!
助けてもらおう!
きゃー!
こわいよー!
廊下を走っても今日だけは、
あぶないって叱られなかった。
家族の誰もが、心細いのは同じだから。
もう起き出している春風お姉ちゃまと蛍お姉ちゃまに会いに
キッチンに早めに突入よ。
温かい牛乳をもらって、少し落ち着いたら
大勢が寄り添っていられるように
テーブルの椅子をなるべく近くに並べて
固まって朝ごはん。
抱き合いながら、テレビで天気予報を確認。
海晴お姉ちゃまは、なんと昨日の夜から
お泊りでお仕事なの。
台風情報が続いて、気象予報士さんが何人も交代で
海晴お姉ちゃまも、いつもの番組以外でも
ときどき顔を出すのよ。
あっまた映ったって、喜んでなんていられない!
真剣な表情で伝える台風の情報。
麗お姉ちゃまの愛する電車たちも動けない。
こんな大変な日は、いくら日ごろは働き者の電車だって、
おうちでお留守番したいわよね。
そういうわけにもいかない海晴お姉ちゃま、
本当にお疲れさまだわ!
いくら同じお天気が続いたら予報していて飽きるからって
こんな大嵐は歓迎できないわね。
さすがの女王でも、天気を変える力はないの。
ごめんね、海晴お姉ちゃま。
せめて苦労をいたわるのは
小さいからと言い訳せずに、したい仕事だわ!
マリーはお給料上げたりとかできないけれど
夕方、海晴お姉ちゃまが帰ってきたときに
静かに休めるよう、みんなを説得しました。
そういう理由で
フェルゼンと吹雪ちゃんと
氷柱お姉ちゃまの
激しい決戦も
台風の通過とともに
夕方には落ち着いたみたいね。

大嵐が巻き起こったのは
家の外だけではなかったの。
まあ、台風よりはたいしたことないけど
参加する人は真剣よ。
頭の回転を武器にして競い合い、
宇宙のご本を借りる順番を決めようと
パズルを始めたフェルゼンと吹雪ちゃんに
知恵では負けられないと
なぜか参加を表明した氷柱お姉ちゃまの
三つ巴の合戦。
ルービックキューブの早解きや
スライディングブロックパズルのミニゲームは
横で見ていてすぐ勝敗がわかるけど
だんだんと、紙に記号を書く
難しいパズルになっていって
結局、誰が勝ったのかしら?
審判の霙お姉ちゃまは、
最終的に三人の健闘をたたえて
とっておきのどら焼きを、努力賞として分けてくれたみたいね。
いいな。
おいしかった?
戦いの後の友情のおやつは格別よね!
マリーも実はおいしいものを食べたの。
こんなお天気の日は
食べるものも、避難訓練のときの缶詰やカンパンになってしまっても
仕方がないかなと思っていたら
台風の予報を見て、お買い物を済ませておいた
計画性のある春風お姉ちゃまと蛍お姉ちゃま。
こんなところにも、知恵者よ!
きのこごはんとさんまのメニューは
秋が嬉しく思える出来事の一つ。
台風は大変だったけど
もう秋が来るのね。
マリーは女王にしては家庭的な育ちで
庶民の気持ちが分かるタイプなの。
目黒のさんまが一番なんてことも言いません。

さくらの偽日記

『100さい』

お兄ちゃん!
100さいのおたんじょうび
おめでとうございます!

ちがうの?

100さいって
おめでたい。
けいろうの日は
おめでたいながいきを
おいわいする日です。
ながいきしているね、
よかったね。
とってもいいこと、
100さい!

きょう、
ようちえんにいったらね、
こんなごあいさつ。
おはようございます。
みなさん、
けいろうの日に
おじいちゃんおばあちゃんに
いつもありがとうを言いましたか?
これからもげんきでながいきしてね、
ちゃんとつたえた?

さくらのおじいちゃんは
とおくにすんでいるんだって。
せっかく、おとしよりの人と
たくさんなかよくする日なのに。
おてがみかいたら
とどくかな?
けいろうの日からおくれたけど
おこられない?
つぎのひに
ようちえんでいわれて
おもいだしました!
おこられない?

おとしよりは、
とってもとしうえのひとのこと。
お兄ちゃんは
さくらより大きくて
なんでも知っていて
やさしくて
さくらがだいすきなおとなのひと。
すごくおとなだもん!
もう100さいくらいになっているよ!
お兄ちゃんのこと、
なんでもおいわいしたいな。
おめでたい日って、
きっと、たんじょうびだよね。

お兄ちゃん、
100さいじゃなかったんだね。
まちがえてごめんなさい!
うわーん!
わけのわからないことをいいだしたからって
さくらをきらいにならないで!
さくら、あんまりわからなくて
よくかんちがいするよ。
まだこどもだから。
おとなのひとは
なんでもしっているの。
どうして、おっぱいはおおきいの?
どうして、あめがふるの?
こたえをしっている。
さくらも早くものしりのおとなになりたいです。
としをとるって、
たのしみ!
だから、けいろうの日は
としをとってよかったね!
お兄ちゃんをおいわいしたかったの。
まだ100さいじゃないんだね。
おいわいしちゃだめ?

100さいって、すごいんだって。
きつねは100さいになると
しっぽが9ほん!
そんなにあって、こまらない?
じゃまにならない?
みづきおねえちゃんにきいたら、
9ほんのしっぽは
ふしぎなじゅつをつかえるしょうこ。
いらないときはかくしておくことも
おちゃのこさいさいじゃ!
おちゃのこってね、
やせがえる
まけるないっちゃ
ここにあり
の、おちゃ。
おちゃのこは、そのこども。
さいさいは、
しらないの。
みづきちゃんにおしえてもらったのに
わすれちゃった。
さくら、おぼえることがいっぱい。
はやく、いろいろしりたい。
みづきちゃんは、ものしりね。
おとしよりなの?
ちがうんだって。
おとしよりみたいにものしりなのに
ちがうんだ?
ふしぎ。
ねえ、お兄ちゃん。
100さいって、おうちで言うと
だれなの?
おめでたい100さい、
けいろうの日には
みんながまわりにあつまって
にこにこするよ。
100さいは、
いいことがいっぱい。

お兄ちゃんもはやく100さいに
なるといいね!
100さいになったら
すぐ、
だれよりもさきに
さくらのところにおしえにきてください。
うれしいことがあったら
ぜんぶおしえてね。
さくら、おいわいします。

青空の偽日記

『じゃむぱん』

せいきの
たいけつ。

あんぱん

じゃむぱん。

どっちがたべたい?

おにいちゃんは
どっちにする?
そらは、
かれーぱん!
こっちのぱんは
あーまいぞ。
こっちのぱんは
かーらいぞ。
ほたるなの?

なつは
あんこがつよい。
みずようかんの
なつだから。

あきは
あんこがつよい。
つきみだんごだから。

じゃむ、
まけるな!
そらは、
べとべとじゃむが
すきよ。
あまーい
あまーい
すきすきよ。
とろーり
ねばるの。
おくちのまわりも
べっとりだ。

あんこがはいってるおやつ、
わがし。
あんぱんは
わがし!
くりーむがのってるおやつ、
ようがし。
じゃむぱんは
ようがし?

わがしって
あの
おまつりの
わたがしのこと。
なまえがにてるから。
おそらにういてる
わたがしのことよ。
おや?
あんこ、はいってない。
ちがったの!
わたがしじゃない。

わがしは、
わ!

おやつ。

わ、って
にほんなの。
そらと
かぞくが
いるところの
たべものとか
ふくとか
あそびとか。
みづきのことなんだよ。
わ!
それと、
こたつ。
わ!
こたつのころには
ゆきだるま。
こたつがでるひがちかづいた。
みぞれがまっている。
はやくでてこい
こたつ!
こたつでたべるものは
わ、がおいしい。
わがしがますますつよくなる。

ようがしの
よう、は
ようろっぱ、って
まりーがいってた。
どこ?
まりーが、ようなんだって。
よう、
じょおうのくに?
おんなのこがみんな
ちゅうせいをちかいなさい、
よくってよ、
はい
ごほうびよ、
いうのが
よう。
じょおうのくにが
じゃむのくに。
じゃむぱんがなければ
けーきをたべようよ。

そら、
きょうのおやつは、じゃむぱん。
じょおう!
まりーもそらも
まりーあんとわねっと。
ようの
こども。
そらだよ!
でも、
ゆきだるまつくるのがすき。
ようじゃない
こども
そらだよ!
そらが
ころがして
おにいちゃんが
ころがして
かさねて
ゆきだるま。
みかけたら
わ、のきせつよ。
こたつと
ゆきだるまと
あんこ。

あしたのおやつは
おだんごですって
ほたるがいってた。
あんこがいっぱいの、おだんご。
そら、
あしたは
わの
こども。
かぞくみんなで
うさぎのみみをつけて
おつきさまのうさぎとなかよくなって
はねて
おだんごをたべる
わの
おやつの
ひ。

麗の偽日記

『お月見泥棒』

拾ってしまった
とんでもないもの。

と、言うからには
たいていの場合
捨て犬、
捨て猫。
くだらないドラマなんかで
ごくまれに
こども。
さらに珍しいものが
お兄ちゃん。

青空がかえるを拾って持ち帰ったとき
捨ててきて!
と騒ぎになることはあっても
なんというものを拾ってしまったんだ感があまりないのは
何かが違うみたい。
生き物でなくても
拾ってしまって
えらいことになったと思う
電車の網棚のマンガ雑誌の
いやらしいマンガ。
私は拾わないわ、そんなもの。
拾うのは、立夏ちゃん。
見つけたらすぐ手を伸ばして
汚れているかもしれないのに
警戒心がないのね。
やめてよって言っても
いつも返事だけは元気でいい子。
はあー。
あなたからも言って聞かせてよ。
効果があるかどうかは知らないけど。
他に、拾うと困るものは
定期券。
なくした人は絶対に
必死の思いで探している。
想像するだけで胸が痛くなるわ。
どうしても駅員さんに届けたい
大きな責任が伴う拾得物よ。
だけど時間がないときには、
拾った場所の説明やら
詳しい話を済ませるのは大変。
そうか、
拾うものがどれだけ大変なのか
責任によって決まるのね。
かえるに責任を持つ理由なんてないものね。
それにしては、
お兄ちゃんなんてものを拾ってきたママは
責任とかあんまり考えていないわよね。
そんなママの子だから、立夏ちゃんも
難しいことを考えるのが苦手なのね。
責任感がない、というわけではないと思う。
そういうわけで、一番拾って困るのが
お財布なのね。
今日の問題はそれだった。
しかも
一万円札が一枚という大金。
やばい、
やばすぎる!
チョー大金。
立夏ちゃんみたいな声が頭に浮かんでしまう。
冷静な態度が一瞬飛んでいく。
大きすぎる金額。
こんなお金があったら、
この駅からどこまで乗っていけるか。
リニアの駅も予定が発表されて
ますます遠くへ行くのが便利になるし。
それにしても、リニアのルートは
前々からだいたい予想ができているんだから
ニュースで大騒ぎするほどでもないわ。
そんなに気になるようなら、
みんなが普段からこまめに調べていればいいのに。
誰も彼も、今さらになって決定したくらいで
騒ぎすぎ。
軽薄なんだから。
これだから、大人の人は嫌いよ。
ニュース番組も嫌い。見たいのは天気予報くらい。
テレビは、嫌いな番組が多いわ。
好きな番組もある。
そんな話じゃなかったわね。
立夏ちゃんとは、下校時刻が重なることはあまりなくて
今日は、たまたま一緒。
駅で声をかけてきたから
並んで座って
9月でもまだ暑い日なのに
くっついてきて。
夏服だから暑苦しいって感じじゃないのが
まだ救いだった。
もう衣替えも間近なのに
少し着たほうがいいんじゃないのかな。
やけに暑いからと言ってもね。
近くの席に落ちていた財布を二人で見つけたとき
その金額に変な感嘆が頭に浮かんだのは
立夏ちゃんがずっとうるさかったせいね。
もちろん、お財布を落とした人はすごく困っているはず。
立夏ちゃんが帰りに交番に届けてくれるって言うから
お願いしたわ。
こういう時に堂々と引き受けて、頼りになるのは
なんだかんだ言っても、あれでお姉ちゃんという感じがしました。
リニアで遠くに行くお金は
路線ができる頃には大人なんだから
ちゃんと自分で稼ぎます。

いくら、十五夜には
子供が竿の先で団子を盗んでいく
お月見泥棒の風習があるらしいと言ったって
関東近辺ではほとんど広まっていないし
盗んでいいのは団子です。
お財布を拾ったからって
自分のものにするなんてできない。
お月見泥棒の風習を聞いてきた蛍姉様が
家でもやってみないかって提案したけど
不器用な子も多いし
食べ物で遊んではいけない。
わざわざ手作りでつくったお団子だから
お行儀よく食べたらいいわ。
特に年長は、小さい子の見本になりたい。
あんまりがつがつ急いで食べたらみっともない。
あなたも
量はいっぱいあるから。
よく食べる子が多くて充分じゃなかったら
あげるし。
私はうさぎ耳を断ったから
うさぎ柄のエプロンを渡されて、お団子作りのお手伝い。
一応、家族行事には参加したことになるのかな。
うさぎ耳が家族行事というのも、珍しい光景だと思うけどね。
月がきれいで
みんな喜んでいるわね。

小雨の偽日記

『休日の予定』

立夏ちゃんが
熱を出してしまいました。

赤い顔をして
うわごとをつぶやいて
苦しそう……

おだんご、
おだんごと
昨日のお月見が楽しかったんですね。
もっと食べたかったみたい。
でも、その時からふらついていたんです。
それで、なるべく早く寝てもらったの。

このところ
体育祭と文化祭の練習で
疲れていたらしくて。

それに加えて
昼間はずいぶん暖かいものだから
夜も油断して
薄着でいることが多かったの。
このごろ朝方と日暮れは、冷えるようになりました。
一日の温度差が結構あるから
お兄ちゃんも油断しないで
寒かったらちゃんと着てくださいね。
しっかりしているお兄ちゃんに、小雨なんかが
何を言っているんでしょう。
でも心配なんです。

それから、
昨日拾ったお財布を
交番に届けに行ったとき、
大変だったみたい。
立夏ちゃんは休日にお友達に来てもらう予定で
おまわりさんみたいに案内したくて参考にと
遊びに行くようなつもりで交番に行ったみたいなんですけど
やっぱりおまわりさんはまじめなお仕事で
いろいろ聞かれたものだから、知恵熱が出そうになったって。
その影響もあったのでしょうか?

本当は、お月見よりも休んでいたほうが良かったんだけど
どうしてもおだんごが食べたかったんだそうです。
ゆうべは誰よりも大量に、ぺろりとたいらげていたから
まわりが気づくのが遅れたの。
結局、今日一日寝込むくらい熱が出ました。
でも一日で元気になってよかったですね。
他の子にうつったらいけないから
今日一日は自室待機だけど
明日はお友達を招いても大丈夫です。
そんなに急がなくてもいいと思うけど
楽しみなんでしょうね。
朝はお友達が来る前に立夏ちゃんがお風呂に入るから
お兄ちゃんに気をつけてと伝えてほしいと。
今日の小雨は、
お仕事が多いメッセンジャー役。
立夏ちゃんは、家族のクラスによく遊びに行くから
上級生のお友達もたくさんいます。
明日のお友達は
お兄ちゃんとヒカルお姉ちゃんのクラスメイト。
もしもまだ伝わっていないなら
それも小雨から、とお願いされました。
三人でおもてなししたいんだって。
聞きましたか?
立夏ちゃんが一人でどんどん話を進めてしまったみたい。
明日のお客さんは
演劇部だけど、裏方をしていて演技に自信がなくて
ほら、お兄ちゃんたちの演劇は時代劇ですから
観月ちゃんが昔の習慣に詳しくて、協力できればと
観月ちゃん本人にも相談なく決めてしまったので
それも小雨に託された役目で
伝えたら快く引き受けてもらえて、安心しました。
祝詞や祈祷が観月ちゃんの得意分野なのは知っていたけど
その子が演じる静御前は
むかしふうに歌いながら舞う白拍子。
いくら観月ちゃんでも、そこまで詳しいだなんて
びっくりしました。
勉強熱心なんですね。
好きなものには詳しくなるって言うけど
小雨は本にもそんなに詳しくないので
やっぱり、詳しくなるのはえらいなと思います。
巫女装束がいつものおこのみの観月ちゃん。
水干と立烏帽子も、備えているとか。
明日は、かわいい舞が見られるかもしれません。
なんだか楽しみで
そわそわしてしまいますね。
小雨を見に来るわけじゃないのに、どうして小雨が緊張するんでしょう。
どちらかというと、無関係なほうです。
引っ込んでいてもいいくらいです。
でも、よその人でも挨拶はきちんとしたいです。
やっぱり立夏ちゃんのお友達なんだから、
元気にチャオって言えたらいいのかな。
小雨はそんな陽気な挨拶はしたことないから
普通にこんにちはで大丈夫かな。
立夏ちゃんが自分でお茶とお菓子を出したいって言ってるから
お手伝いにかかりきりで、難しく考えるどころじゃないかも。
関係ない小雨でもこんなになってしまうんだもの、
立夏ちゃんが一日でも早く招待したいのもわかります。
一人で急いで招待を決めてしまったのだって
かわいい妹たちをはじめとして
自慢の家族を見てもらいたくて仕方がないんだって
明日をワクワクしながら待っている立夏ちゃんを見ていると
そんなふうに感じます。

小雨の大好きな家族が住んでいる
素敵なおうちへ、いらっしゃいのあいさつを
内気な小雨には難しくても、してみたい。
小雨のおもてなしは拙いかもしれませんが
ここには自慢の家族がいるから
きっと気に入ってもらえる訪問になると思います。
どうか安心していらしてください。

春風の偽日記

『小さな夢』

本当は、
手ぶらで来てもらえれば
良かったのですけど。

ゆうべ、立夏ちゃんが電話でお誘いしたときに
春風もお話をしたんです。
そうしたら、
初めてのお宅に
何も持たずに訪問することは
できないと。

礼儀正しい子ですね。
大橋マリアさん。
王子様も、ヒカルちゃんも
しっかりしたクラスメートがいてくれて
安心です。

でもやっぱり、おみやげは
高校生の身で、負担になるものであってはいけない。
我が家の人数は、ちょっと大勢ですよね。
相手も選ぶのに困ってしまうんじゃないかと
心配でした。
もう一つ事情があって、
春風と蛍ちゃんは、文化祭の模擬店のために
試作品を開発している途中なんです。
春風はレトロでモダン、
時代を経ても変わらない懐かしい食事を。
蛍ちゃんは、喫茶店ということで
スパゲティやハンバーグ、オムライスの定番を選びつつも
いかに学園祭らしく仕上げるかが腕の見せ所。
パフェの研究にも余念がありません。
学園祭までの間に、家族の意見を聞けたらいいなとか
せっかく作るおいしそうなものはやっぱり家族に食べてもらいたいとか
しばらくは、我が家では学園祭お楽しみメニューを
予定しているの。
そういう状況だから
ケーキやカステラ、エクレアといったお土産らしいもので
あまり早めに食べないとならない生ものをいただいても
悪くしてしまわないかな。
しかも、今の時期は栗を使った秋のケーキがおいしい時期で
うれしいとはいえ、食べきれない。
エクレアは雷のことで
クリームがこぼれないうちに雷のように早く食べるという意味だそうですが
あまり何日も置いておけないのも雷のようです。
さりげなく
家の子供たちはあのお店が好きで、
と金額が負担にならないものを指定したけれど
失礼にならなかったでしょうか。
まるで、
あたしたちの家では
このお土産しか認めないざます。
ごめんあそばせ。
みたいな偉そうな言い方になってしまったら
せっかく相手はいい人そうで
立夏ちゃんや王子様たちも仲がいいのに
もう遊びに来てもらえなくなるかも?
いくらもらったものを悪くするほうが申し訳ないとは言え
もっと言い方があったかしら。
はらはらしてしまいました。
でも、わかってもらえてよかった。
この家に来るのに、そんなに緊張する必要ないんです。
立夏ちゃんのお友達なら、なおさら気楽でいて欲しいな。
だから今日のおやつのクッキーは
大橋さんのおみやげです。
まだ残っているぶんは
これからのおやつにちょうどいいですね。
春風はどうも、こんなとき
お客さんを迎える大人の会話は難しくて。
まだ子供っぽいのでしょうか?
いい年をして王子様なんて言っているような子は
幼くて
恥ずかしいかしら。
王子様は、こんな春風は恥ずかしい?
でも、本当に王子様だったんだもの。
子供っぽく、いつか出会えるといいなと憧れていた王子様が
本当に目の前に現れたんだもの。
どんなに子供っぽくても、
大人の女性らしく振舞わないといけないときに
戸惑うとしても
春風は、嘘はつけません。
王子様は本当に春風と結ばれていたの。
春風のところに来てくれました。
大きなお姉さんになっても密かに抱き続けていた
幼い願いは
本当に叶うことがあるの。
春風がいい子にしていたから?
それとも、これが運命?
あるはずがないなんて
あきらめないでよかった。
今、なんだか伝えたい気持ちになったから、言います。
いつでも王子様には伝えたいの。
私の家に来てくれてありがとうございます。
春風は幸せです。
あとは、もう少し大人の対応ができる
ちゃんとしたお姉ちゃんになれたら
春風は完璧ですね。
パーフェクト春風ですね。
無敵です。
実はもう今のままで、何が起こっても無敵かな。

観月ちゃんの踊りも立派でした。
参考にしてもらえたみたいで
春風も自慢の家族を見てもらえて、鼻が高いの。
電話で失礼だったかもしれない会話は
気にもしていなかったみたいに
明るくお話ができました。
大橋さんはいい人ですね。
でも、劇の間だけでも
ヒカルちゃんと相思相愛になるかと思うと
なんだかもやもやして
相手はあんなにいい人なのに
いけない春風です。
本当は春風がいちばん
義経さんも弁慶さんも心から愛しているのに。
誰よりも愛している自信があるのに。
劇の内容と役者さんは違いますよね。
でも、気持ちは整理するのが難しいの。
クラスの劇では春風が参加するのは無理だってわかっています。
春風の頼もしい弁慶さん、
お願いしてもいいですか?
私を守って矢を受けてほしいなんて言いません。
あなたがどんな役だったとしても
春風は名もない脇役。
ただ尽くすだけで、その名が残ることなんてない。
どこにいたのかもわからない
いたのかいなかったのかもわからない
舞台の端っこの人ですけど
だけど、歴史に現れなかったとしても
あなたを愛していることは何も変わらない。
この愛はいつまでも。
春風は誓います。
また叶えたい夢が、今日一つ増えてしまいました。
こんな素敵な月夜が続く頃、
千年も恋人たちを見守るあの月が証人で
どうかあなたが義経で
私は永遠に変わらない愛を抱く静御前でいさせてもらいたい。
そんな夢。
この愛は、古から変わることなく、なんて。
ただ今夜だけでも、いけませんか?
明日は春風に戻ります。
また千年後も愛を誓えるように。
だから、今夜は
演技でもいいから。

ヒカルの偽日記

『体でぶつかる』

土曜日に体育祭。

日曜日に文化祭。

体育祭の練習も
しなくちゃ!

花形種目になるのがリレー。
今年はシンデレラリレーじゃなくて
男女混合400メートルリレー。
よかった。
霙姉に、前から言っておいた甲斐があった。
あんまり恥ずかしいリレーなら
私は出ないぞ!
言っておきながら
体を動かすのが好きだから
出るだろうなと自分でも思っていた。
どうせ出るなら、迷いなく全力を出せる種目がいいな。
霙姉は、前に一回やったんだから
また同じことをすればいいだけじゃないかって。
そうかな。
またオマエをつかまえに行けるかな?
ともかく、今年はあまり奇抜な種目はない。
それから体育館は使わずに
校庭の種目が中心。
全校生徒の一体感を目標にして
正面から堂々と運動会!
という種目が多い。
血が騒ぐな!
玉入れ、
騎馬戦、
綱引き、
ムカデ競争。
団体競技の得点は多いぞ!
もちろん個人競技で得点を稼がなければ
優勝は狙えない。
障害物競走、
パン食い競争、
借り物競争。
でも今年は応援合戦がないんだ。
盛り上がったら
大声を出したいのにな。
咆哮したくなる。
私も立夏と同じ野生の血が?
そのぶん、いつも応援するよ。
クラスの仲間が出場しているときと
家族のみんなと
そして、がんばっている選手を全員。
おかしいか?
でも、体育祭は勝ち負けにこだわるものじゃない。
参加することに意義がある。
真剣な顔で立ち向かうやつを
応援したいな。
オマエもだ。
がんばれ!
私が参加する種目は──
どれも参加したかったから
全部!
は、だめだった。
1人で最大3つ。
その中でもやっぱり力が入るのは
体育祭最後の種目になるリレー。
おまけにアンカーを任せてもらった。
学校の男女比の関係で
男女混合と言いながら
男子の出番は3人目だけ。
私たちのクラスでは
オマエだ。
受け取ったバトンは
たとえその時の順位が何位だったって
全力でゴールまでつないでやる。
約束だ。
もちろん文化祭の出し物も練習している。
台詞はほとんどないけど!
しかも、もしもド忘れしても
まわりの出演者がうまく進めてくれるって。
いいのかな、こんなだらしない主役で。
基本的に剣道の動きを取り入れた殺陣で
飛んだり跳ねたりしないし。
義経なのに。
大道具の演出で動いているように見せればいいって。
そこまでしてもらってるのに
剣を取って向き合ったら
演技を忘れて
勝手に体が動いてしまうものだよな。
向き合う相手がオマエだったことが力強い。
ちょっと無茶して叩いても
頑丈そうだし。
やっぱりきょうだいだからなのか、
私も頑丈だ。
ちょっと無理して叩いても大丈夫だから。
でもそれで話が変わってしまわないかな?
がんばらなくちゃ!
いくら相手がオマエだとしたって
舞台の上で、慣れない戦場だからって
そう簡単には負けない。
主役がこんな適当な調子でいいのかなと思うけど
しっかり練習したら
あとはやることをやるだけだもんな。
そう思いたい。
でないと迷ってしまうし。
こんな自分でいいのか、なんて
期待してもらってるのに弱気になりたくない。
昨日はせっかく大橋さんに来てもらったのに
体操着に着替えたついでに
結局、体育祭の練習も始めてしまって
しかも競技にない相撲で
力比べまでして。
体を動かし始めると、調子に乗ってしまうタイプなんだ。
私は。
だけど、体でぶつかってわかりあえたような気もする。
昨日みたいな機会があって嬉しかった。
大橋さんは意外と根性あるんだな。
こちらが組んだら、向こうも応えてくれた。
力はずいぶん差があったけど
正面から戦おうとしてくれるいい女だ。
やっぱり私は演技より
体で語るほうが向いてるんだな。
こんな経験を積み重ねないと
相手を心から信頼して一緒に劇をするのもちょっと不安で。
いつも本気になって向き合っていないと
気持ちが伝わらないなんて。
友情って、
よくわからないな!
それとも、こんなのは私だけかな。
結局、大橋さんには一回も投げられることはなかったけど
戦いを重ねた後の握手は
決して嘘じゃなかったと思うんだ。
恋人役を演じる自信がなかったとしても。
何があっても相手を信じて舞台に上がれる。
私はその時、決して後悔はしない。
力いっぱいぶつかり合える友達だからな。
よし、次はオマエだ。
かかってこい!
これまでだって何度も繰り返してきた
本気で向き合える関係を
まだまだ重ねていくんだ。
いつだって、お互いの本気を
確かめ合っていこう。

霙の偽日記

『辻斬り』

学園祭の準備のために
体育館に行ったら
オマエとヒカルが
今日も練習をしていた。

休日も大変だな。
ご苦労様。

充分に練習して
思い残すことのない舞台発表にして欲しい、
とは思うのだが。

これから数日は
台風の影響で天候が不安定になりそうだ。
体育祭の練習が校庭で行えない場合、
体育館に移動することになる。
おそらくスケジュールの調整が必要になるだろうな。
演劇の練習は、場所を制限される可能性がある。
もしかしたら舞台の使用が中止になる場合もあるかもしれない。
舞台を自由に使える時間は、もうあまりないものと思って
早めに準備しておいてくれ。
演技の稽古だけならば
教室などでもできるが
狭いところで竹刀を振り回すなど
危ない真似をしないように。
よく怪談にもあるだろう。
学校で危険なことをして
幽霊になる話が。
怪我にはくれぐれも気をつけることだ。
幽霊の話は
泊り込みで支度をする生徒に教えるものだから
オマエたちには関係ないか。
うちなら晩御飯には全員が揃うから
学校に残る人間がいたら、ちゃんと確認できるからな。
いや、晩御飯の後で学校に出かけて
その場に残っていた人間と合流する手もあるな。
だめだぞ。
幽霊が出るぞ。
学園祭の準備中に怪我をして
幽霊になって、今も学園祭に出たくて
さまよっている幽霊だ。
その仲間に引き込まれたくなかったら
泊り込みや
危ない練習はしないこと。
どんな怪我をした幽霊かって?
そうだな、確かこんな話だ。
女装ミスコンテストに出場するために
夜を徹して女装の練習をしようと
慣れないドレスで暗い校舎を歩いたばかりに
つまづいて階段から落ちたそうだ。
私が提案した女装ミスコンテストが却下になったのも
そのためだ。
オマエを着せ替えして遊びたかったのに
出演者が他にあまりいなかったんだ。
いやいや、幽霊のせいだ。
そのような事情で私たちのクラスの出し物は、コスプレ写真館に決定した。
春風と蛍のクラスの衣装も借りる約束ができている。
これでオマエも
大正ロマンや
猫耳メイドが
思いのままに、着たい放題だ。
ぜひ来るように。
姉のお願いを聞いてくれなかったら
今後、いったい何をされるかわからないぞ。
演劇の衣装も撮影したいだろうから
そちらは、劇の後で写真部が撮りに行く。
文化祭の記録として生徒会でも活用したいから
ぜひ協力して欲しい。
こちらは、生徒会長としてのお願いだから
生徒が嫌だと言ったら、無理にとは言わない。
まあ、記念だと思って気軽に撮影に応じてくれたら助かる。

しかし、舞台での練習時間を奪ってしまいそうなのに
こんなことを言うのも勝手な話だが
ヒカルの演技は本当にあれで大丈夫なのかな。
今日も見ていたら
竹刀を持ったら、向き合う相手のことしか見えなくなる
ヒカルらしい真剣な様子だった。
真剣すぎて
演技を忘れて
本気の勝負になっていたな。
小道具に用意された演劇用の竹刀は生徒会でも一応確認しているし
練習でも舞台でも防具はつけることになっているはずだから
怪我はしないと思っていたが
ヒカルが本気だと話が違ってくる。
面を狙うか
小手か、胴か。
隙を狙う鷹の目だ。
踏み込んで、鍔元で切りつけるようにしないと
剣は意外と届かないものだと、ヒカルは考えているそうだ。
背景の五条大橋もあいまって
見た目はほとんど辻斬りだな。
弁慶がそれなりに耐えてくれないと
劇にならない気がする。
しっかり鍛えるように。
ただ、あんまり無理をしすぎても怪我の原因になるから
休憩も練習の一部だと思って、ほどほどにな。
なんだか心配だから
練習時間については、生徒会長特権を使って
ちょっとは融通を利かせてやりたいが
でも、そんな特権ありませんと生徒会の仲間に却下されることが多いから
どうかな。
まあ、何かあったら相談してほしい。

今日、ステージを見に行ったのは
私も出演する予定があるから。
学園祭の舞台発表で軽音楽を演奏する時間帯もあり、
はじめに、デモンストレーションとして
生徒会が舞台に立って、
2曲ほど演奏する。
私の担当はジーン・シモンズだ。
学生の活動であっては、火が吹けないのは残念なところだな。
というか火を吹いていい場所は日本にはあまりない気がするな。
しかし、深い暗黒を愛する私が
このような白塗りをすることになるとは皮肉なことだ。
運命は、私に何をさせようとしているのだろう。
ああ、ジーン・シモンズか。
運命は何の目的があって、私にジーン・シモンズをさせようというのか。
恐るべきは、私でも止めようのない大きな力である
女子高生のノリというやつだ。
というわけで、出演する演目は異なっても
私も舞台に立つ仲間。
やがて消え去る定めであっても
せめてこの学園祭の間だけは
若々しい青春の時間を過ごそうではないか。
それから、演奏する曲はまだ決定していないから
リクエストに応えられるぞ。
近いうちに、私の部屋にオマエを招こう。
共に地獄の闇を体験しながら
選曲を相談したいものだな。

虹子の偽日記

『ごくう』

おっす!
おら
ごくう!

かめはめは!

えい、えい。

にじこは
おんなのこ。
かわいいものがすき。

かわいいな、
おはな。
かわいいな、
あかちゃん。
かわいいな、
でんしゃ。
かわいいな、
おべんとうばこ。

おんなのこは、
らんぼうしないの。
けんかはにがて!
いけません。
なかよくしましょう。
なかよく
おどって
うたいましょう。

かめはめは

ひとにむけてうったら
あぶない!
だめよ。

にじ、
かめはめは
だせないの。
ぶくうじゅつも
とべないの。
できるのは
げんきだまの
げんきをあげることだけ。
ごくうにげんきあげる!
げんきだま、うてないから
げんきをあげる
よいこ。
にじは、
ごくうじゃなくて
にじこでした。

ヒカルおねえちゃんは
たたかって
なかよくなるの。
けんどうでも
すもうでも
テニスでも
かけっこでも
かってもまけても
ゆうじょうがうまれるよ。

にじこも
たたかったらいいかしら。

マリーおねえちゃんと
おうかんをきそって
たたかって
ゆうじょうがうまれるかしら。

このまえね、
おすもうして
なかよしになれたの。
でも、
おすもうするまえから
とってもなかよしだったの。
マリーおねえちゃん、だいすき!
けんかしても
なげられても
いっしょだよ。
うれしい、いっしょ。
かぞくだよ。

りゅうびさまは
かんうさまとちょうひさまと
けんかしてなかよくなったわけじゃないの。
ももをみながら
ちかいあったら
そのときからもう
ぎきょうだいです。

ほのかちゃんとうみちゃんは
よくけんかして
ことりちゃんははさまれちゃう。
けんかしなくたって
ことりちゃんはなかよし。
ゆうじょうのかたちって
いろいろだね。
みんなでえがお。
すーぱーじゃんぷ!
それって
ぶくうじゅつ?

ちがうの。
ぶくうじゅつじゃないけど
がんばってすすむには
しゅぎょうがひつよう。
かっこよくおどるのも
たいいくさいではしるのも
ぶくうじゅつとおなじくらい
しゅぎょうしなくちゃ。
ヒカルおねえちゃんがいってた。
だから、
きょうもがんばって
れんしゅうしていたよ。

アイドルだって
りゅうびさまだって
ヒカルおねえちゃんだって
まいにち、いっしょうけんめい。

かめはめはがだせなくても
げんきだまがつかえなくても
だいすきなひとと
なかよく
はりきっていきます。

げんきをあげたり
げんきをもらったりするのは
げんきだまのためだけじゃないんだって。

おにいちゃん!
にじこのげんきあげる。
だいすきなおにいちゃんに
あげるね。
おにいちゃんは、ごくう?
にじこのげんきで
げんきだまをだしてね。
ごくうじゃない?
げんきだま、だせなくても
にじこのげんきを
うけとってください!

星花の偽日記

『運動しよう』

注文の多い料理店。

正しい意味での、
注文の多さ。
その注文の数は
いちどに
20人分!

おうちの注文は
料理店じゃないですね。
本番でも、たくさん注文がもらえるかな。
童話と違って
お客さんが食べられたりはしないので
そこは安心です。

春風お姉ちゃんと蛍お姉ちゃんは
文化祭の模擬店で喫茶店をするの。
それで、試作品がごはんに並ぶ毎日。
朝は喫茶店のサンドイッチ。
夜は喫茶店のナポリタン。
デザートは
ミニサイズのバナナパフェ。
明日の朝はモーニングメニューの厚切りトーストで、
夜に備えてあんみつの材料の買い出し予定。
おいしいけど
このままでは太ってしまいそうだと
不安の声も。
そういえば、喫茶店でヘルシーメニューって
あんまり聞かないですね。
納豆とか。
においがあるから?
焼き鮭とか。
ないのかな?
春風お姉ちゃんは和風だけど
甘味処だから、ごはんやおかずはあんまりないの。
喫茶店のメニューは、基本的に洋風。
そういう文化なのだそうです。
和食は、駅のそば屋さんが担当なのでしょうか?
でも、おにぎりがあるとうれしいからと
蛍お姉ちゃんがこだわりたくて
春風お姉ちゃんと話し合っているみたいです。
喫茶店だけど
おにぎり対決。
もともと、甘味処で出す料理として
小豆入りのおこわのおにぎりを予定していたら
もっと種類があったらいいのかな、と
蛍お姉ちゃんに相談したのが
盛り上がるきっかけだったそうです。
もう準備期間も残り少なくなって
試作品も気合が入ってきました。
おにぎりとはいえ、おろそかにできない情熱。
おいしいよ。
たくさん食べて太ってしまう心配をするのは
小学生では早いかもしれませんが
もりもり食べたから
体に力がみなぎって
お外で遊びたくなってしまうのは当たり前のこと。
気候もいいし、
そんなに太っているわけじゃないけどね、と
見栄を張りながら
青空の下に出陣です。
お兄ちゃんたちの体育祭は
学校を二つに分けての勝負。
奇数のクラスが赤組で
偶数のクラスが白組。
1年C組所属、赤組のヒカルお姉ちゃんは
正々堂々と戦いたくて
勝ち負けはあんまり気にしていないみたい。
でも、特進クラスの氷柱お姉ちゃんは白組。
勝負になったら負けるのが嫌い。
たとえどんな勝ち目のない相手だからって
戦う前からあきらめるなんてできない。
霙お姉ちゃんと相談しながら、作戦を練っています。
燃えています。
かっこいいです。
今日の夕方のおうちでも
紅白戦をしました。
ダイエット目的は最初から二の次でしたが
そんなこと忘れるくらい白熱したよ。
今日のお庭に揃った面々は、小学生までなの。
一番上の小雨ちゃんが、偶数番目の白組のリーダー。
麗ちゃんが赤組のリーダー。
星花は白組の軍師を担当しました。
夕凪ちゃんとは別の組になってしまったけど
勝負で手を抜いたら、小さい子を相手にしているみたいになってしまう。
たとえ夕凪ちゃんでも、庭競争は本気で戦います。
僅差で勝利だったよ!
小さい子を相手にしたら手を抜いてしまいますけどね。
みんなが楽しく遊べるかな。
油断していたら青空ちゃんにまさかの敗北を体験したけれど
うん、
本当は、勝ち負け関係なく楽しむことが一番なんです。
大金星の誇らしい小さな笑顔もかわいかったです。
得点もほぼ同じというところで、最終決戦。
まあ、細かく点をつけていたわけじゃないから、
だいたい同じ点かなという雰囲気を見て
これで勝ったチームが勝利、ということに決めた
ジャンピングチャンス扱いの最後の種目は
体格が違っても大きな差がつきにくい
借り物競争でした。
一人ずつ借りてくるものを書いて並べたら
いったい誰なんだろう?
まだ帰ってくる時間じゃないのに
借りてくるものを
お兄ちゃん!
と、書いた子は?
それを拾ったさくらちゃんが泣いちゃって、
お兄ちゃんいないの、
おにーちゃーん!
みんなでお兄ちゃんの痕跡があるものを探しながら
やっと帰ってきたおにいちゃんに飛びついたのは、
そういうわけです。
おかえりなさい!
今日の敢闘賞は、最後までお兄ちゃんをあきらめなかった
さくらちゃんですね。

明日と明後日は、台風の影響でお天気が崩れそう。
あんまり大変なお天気にならないことを祈ります。
もし、学校の練習ができなかったら
雨がひどくならないうちに
早く帰ってきてね。
そしたら一緒に遊んでもらってもいい?
力が有り余っている子供たちがいます。

海晴の偽日記

『もうすぐ学園祭』

いよいよ間近。

学園祭が
今週末に迫ってきたわね。

いいなあ。
学生らしくて。
生き生きしてるね。
フレッシュだね。
まぶしいな。

お姉ちゃんは
もう戻れない
青春時代。

大学の学園祭って
それまでみたいに先生たちが指導しながらではなく
学生会が主体になって
もう少し大人の企画力。
タレントを呼んだりね。
私はまだ呼ばれないけどね。
こんな大きな活動もまた学生の形だけど
高校までの学園祭とは
違うなあ。
戻りたいっていうより
なんだか郷愁というか
ふるさとは遠くにありて、というか。
私も木花の出身だから
いま現役で学園祭の準備をしている家族を見ていると
とても懐かしい。
ああ、そんなことあったなあ。
入学したときは、先輩たちの活動を追いかけているだけだった。
やっぱり小学生とは違うんだ、ってずっと遠くに眺めていたら
いつの間にか自分たちが下級生を引っ張る役になっていると
急に気づいたときの、あの感覚。
自分はまだ、憧れだったお姉さんたちみたいほどは
全然立派になっていないのに
ある日、気がついたら同じ場所に立っている。
不安だけど、
できるかわからないけど
でも、やらなくちゃ。
そしたら、力が足りないから
なんとなく予想していた通り、失敗ばかりで。
思っていた以上にうまくいかないことが見つかって
泣きたくなったり
実際、泣いたりね。
妹たちと弟クンも
泣くことある?
その時は、恥ずかしがらなくていい。
私も通ってきた道だから、わかるよ。
うまくいかなくて
準備中はケンカもして落ち込んで
でも、乗り切ったときにちょっとわかりあえたような気がする
そんな友達がいたら
どんなに失敗だらけでも
苦しくても、それでよかったと思えるんじゃないかな。
キミとヒカルちゃんはそんなふうになれる仲良しだと思います。
このイベントを通して
私の大事な家族に、たくさんの友達が見つかることを
願っています。
真剣になって参加すれば
いい思い出になるよね。
がんばってね、と声をかけたい気持ちであって
お姉ちゃんも
いーれーてー!
って言いたいわけじゃないのよ。
さすがに。
いくら楽しくたって
遊びとは違うもんね。
学園祭の準備っていうのはね。

だいいち私は大学の学園祭にだって
参加できないし。
忙しいです。
現実逃避をしている場合じゃない!
大学一年生の海晴は
お天気お姉さんの経験も一年生。
このごろは、あまりにも不安定な秋のお天気に
天気図と、流れの速い雲を見ながら
半泣きです。
初めての挫折?
予想していたよりもずっと大変な仕事だった。
お天気を伝える役目。
長年勤めている熟練の気象予報士さんと
話し合いながら予報をしているけれど
私の予報は間違ってばかりです。
あまりに悲しいので
しばらく家に引っ込んで
天気図だけ眺めて暮らしたい。
かわいい弟クンを抱っこして
モフモフするだけでお給料がもらえる仕事に就職したい。
でも実際にそんな仕事があったとしても
お天気お姉さんとして、やりたいことがいっぱいある。
毎日笑顔で大事なお天気を伝えたい。
まだまだあきらめたくないので
弟モフモフはアルバイトでやらせてください!
賃金が発生してなくてもかまわないから!
思えば、乗り越えられないと思っていた壁に
人生で何度もぶつかってきた。
必ず乗り越えてきた、なんてとても言えない。
挫折することのほうがずっと多かったかもしれない。
でも、後悔することがたくさんあっても
つらいばかりじゃないの。
未熟な自分が、必死にもがいただけの思い出であっても
あのとき、仲間と協力して作り上げた学園祭が
今の私を動かす力のひとつです。
がんばってね。
この歳になったら、もう経験できない
幼い時代のイベント。
今年の学園祭を作り出そうとしているみんなは
今は夢中でぶつかるだけであってもいい。
過ぎた後には必ず、残るものがあると
同じ学校を一足先に卒業した先輩から
励ましの言葉を贈りたくなりました。

氷柱の偽日記

『体育祭の練習』

次の土曜日が体育祭。
準備期間は、残すところあと一日。

ところが、日曜日は文化祭なので
そちらの準備も一日かけてまとめないと。
体育祭の後にまだ準備をしているような無計画な連中が
ときどきいるらしいのよね。
霙姉様が心配していたわ。
そんなバカがいたら困るって。
霙姉様は、バカまでは言ってなかったけど。
でも、言いたくなるんじゃないかな。
無茶な予定を立てたって
できるわけないのにね。
そりゃまあ学生のすることだから、
なにもかも計画通りに動くとは限らないわ。
年に一度の学園祭だから張り切って
無理をしがちなのもわかる。
でもね、
できないものはできないんだもの。
人間、腕を羽ばたかせて空を飛んだりできないのと同じで
無理なものは、無理なの。
そうよ、
いくらなんでも
家族に許可を取るとか
そんな簡単には無理だし
言わなくたってなんとなく
わかってくれなきゃ。
言わないで伝わる気持ちなんてなかなかないものだって知ってるし
そんな甘えているような年頃じゃないのもわかっているわ。
でもだからって、なんであの写真が選ばれたのかって話であって
そうなると私だって言えないし。
特進クラスだって、
結局は身も心も女子中学生なのよ。
ちょっと勉強ができるだけで
機械みたいに理性的になんてなれない。
と、これは関係ない話。
まあ、文化祭の準備を体育祭の開催まで持ち越しても
うまくいかない場合が多いと
霙姉様たち生徒会も、ことあるごとに
手を変え品を変え伝えようとしてきたから
みんなわかっているでしょう。
準備が終わらないような心理状態では、体育祭に参加できない。
激しい運動の後にまだ準備しようっていうのも無理がある。
だから明日のうちにちゃんと文化祭の準備を終えて
全校生徒がベストコンディションで体育祭を迎えられるよう
早めに就寝するのが、木花の生徒のたしなみよ。
だから明日には、ジーン・シモンズもついに準備を終えていると思うわ。
もしかしたらもう地獄からやって来ているかもね。

せめて、文化祭が先なら
疲れる運動を後回しにできて
ぎりぎりまで準備期間を使えるのに!
という声は、生徒会にも届いているようだけど
木花の学園祭は、文化祭のほうも相当のものらしいから
別に順番が入れ替わっても変化はないって。
だったら、体育祭が先のほうが適度なメリハリがあって
生徒も気持ちの準備がしやすいから、この順番になっているみたい。
海晴姉様が入学したときに、もうすでにそんな話でまとまっていたと聞いたわ。
そこまで言われるような
伝統の文化祭って一体。
私も小さい頃から遊びに行ったり、去年は自分でも参加したけど
そんなだったかな。
一年生だから、やることなすこと初めてだらけで
夢中で言われるままにやっていたら過ぎて行ったような感じだった。
思い出すと確かに、先輩たちはかなり
張り切っていたような光景が浮かぶわ。
海晴姉様はアイドル衣装だったような。
いえ、これはきっと、単なる悪い夢と混同しているのね。
去年の記録写真にも残っていたって
そんなのは何かの間違い。
むじなでも出たのよ。
何か化けるやつが。
こんなのが生徒会長の伝統になって
もしうっかり私の代まで天使家の生徒会長が続いているようだと困るから
最悪でも下僕がヒカル姉様を止めてよね。
そんな心配は先の話か。
結構パワフルな文化祭になるわよ。
気を引き締めてかかること。
もちろんその前に、体育祭もしっかりやるのよ。
下僕とはチームが違うから
変なことを始めたりしても私が止めるわけには行かないのはちょっと不安。
そこは、余計なことをする気がすっかりなくなるまで
私たちの白組が叩きのめしてやるから
それでよしということにする。
歯ごたえのある戦いにならないとつまらないから、本気でかかってきて。

体育祭の準備ができるのは
実質的に今日が最後。
午後は全校で校庭に繰り出して
最後の合同練習、と言っても
入場行進の練習やら
開会式の段取りやら
こまごまとした確認が主な目的。
そんなつまらないもので練習時間が減るのはなんだか理不尽な感じ。
中学や高校になってまで、
体育祭に保護者が応援に来るなんて
あーあ、
そんなことされたら
子供みたいに
活躍しなきゃ!
っていう気持ちがちょっとしてきてしまうじゃない。
我が家では、私と同じ白組のメンバーは
霙姉様と立夏、それから私で三人。
なんだかパン食い競争に強そうな面子が揃ったわね。
別にそこばかり狙って得点を稼ぐわけではないからね。
白組には、ヒカル姉様をはじめとして有力選手が何人もいる。
そういう場合は2位でもいいから、得点を狙って
チームの勝利に貢献してほしい。
これは私の案だけど、霙姉様がリーダーみたいなポジションだから
その口から白組全員に伝達が行き届いている。
白組にいる有力選手は、なるべく参加する競技を分散して
同じ競技なら、組分けを別にして
細かく全体で得点を狙っていく作戦。
運動が苦手な人たちも、少しでも上を狙って得点をかき集めて。
今回は個人の勝敗ばかりではなく、チームに参加する気持ちでいてほしい。
最後に白組の全員が、自分たちのつかんだ勝利を喜びたい。
もちろん、ただの学生の体育祭だし、
別に勝つことばかりが目的じゃないってわかっている。
ただ、やるからには、本気で勝利を狙ってみたいから。
このくらいしないと、ヒカル姉様を相手にして勝てるなんて思えないもの。
できることは全部してみたいの。
私だけの努力じゃなくて、白組が一丸となって戦わないといけない作戦。
知恵を出したのは私だけど
参加するときは、勝利を目指す一人の生徒。
トップで指揮する霙姉様だって、運動場に立てば
白組のために戦う、ただの生徒。
こう見えても私たち、運動神経はまあまあだから。
敵の強さは充分にわかっている。
本気で挑んでも叶わない相手でも
個人の力だけが体育祭の勝敗を決めるわけではないと
思い知らせてあげる。

下僕も、今日はしっかり練習したでしょう?
後で言い訳なんてしても、聞く気はないからね。
正々堂々、打ち負かしてあげるから
本気でかかって来ることね。

それから、明日には文化祭の準備も
心残りがないように仕上げないと。
あの、文化祭の当日になっても
私のクラスの展示には来なくていいから。
家族みんな、出し物を回る予定がたくさんで
忙しいみたいだし。
私のところはいいのよ。
本当にいいからね。
わかったわね。

あさひの偽日記

『うっぶー』

ぼっば!

うば、
おば──
あおんば。

おっおっ
おっば!

ぶっぶっ
ぶ!
うっうっ
うっぶー!

ふんぬふんぬ。

あっば、んばっ
ぶばっ。
おっぶ!

(うんどうするぞ!

 あさひのとくいな
 きょうぎは──
 たまいれ。

 たまをもって
 かごまでとぼう!

 きょうもあしたも
 こさめのむねから
 おにいちゃんのむねへ
 とんでいく!

 だっこにまんぞくするまでとんでいく。

 あさひは、だっこされにとんでいくの
 うまいんだから。
 じしんがある!)

蛍の偽日記

『青春の日々』

大人になってからでは
決して取り戻すことができない
青春の弾けるような時間。
そのうちの、大きな出来事の一日が
もうすぐ終わろうとしています。

赤組も
白組も──
勝利を目指してたたかう体育祭。
全校が一体となって
駆け抜けた結末は
惜しくも、蛍とお兄ちゃんたち赤組の
敗北で終わりました。

運動の得意なメンバーの多さでは
赤組が優勢だと見られていたんです。
ヒカルちゃんも、まわりの期待に応えて
活躍を重ねました。
でも、白組はどんな展開になっても
あきらめずに、少しでも点を重ねて
チーム全員がひとつになったよう。
一部の生徒を除くとなかなか点を奪えなかった赤組は
少しづつ、だけど確実に点を引き離されて行き
最後の競技となる400メートルリレーが始まる寸前、
ついに逆転不可能な点差が開き、勝負が決まりました。
赤組みんな、
力が及ばなかった物足りなさと
全力で戦えたすがすがしさで
とまどっていた様子。
どこか落ち着かないような。
そんな中で、ヒカルちゃんは
負けが決まっていても
応援に来てくれた家族に
気が抜けた走りは見せたくない。
最後まで本気で走りたいと言ってくれました。
負けがわかっていても全力で走るのが
あるべきスポーツマンのかたちだって。
次の戦いに向けて体調を維持するような
プロの仕事はあるとしても
自分はただ一人の人間として
後のことも何も考えないで
ただ、受け取ったバトンをゴールへ届けるために走る。
リレーの前、
励ますように
ヒカルちゃんは春風ちゃんと蛍につぶやいて
グラウンドに向かいました。
全校生徒と、たくさんの家族たちと
ずっと一生懸命応援してくれた私たちの家族の
みんなが見守る中、
ホタの大事なお兄ちゃんとヒカルちゃんが走り抜きました。
全力を尽くして、ゴールの後に言葉も出なくなるほど走りきった
最後の競技が終わりました。
私たち、
家族にいいところ、見せられたかな。
麗ちゃんも、ぶらり途中下車の旅をあきらめてまで
応援に来てくれたのだもの。
それに、朝ごはんは春風ちゃんと蛍の
敵に勝つ!
特製カツサンドを用意して
赤組も白組も仲良くテーブルを囲んで一緒に勝つサンドをほおばる光景に
本当に、どちらも勝てればいいのになんて無茶なことを考えていたけれど。
お昼のお弁当は、海晴お姉ちゃんが指導して
小学生のみんなが作ったお弁当。
きっとこちらも全力の20人分です。
家族の愛情は決して貸し借りではないとわかっていても
体育祭でがんばることで、どうしても応えたいと思ったの。
蛍たちは負けてしまったけれど
勝ち負けだけじゃなく、蛍もヒカルちゃんたちみたいにかっこよかったでしょうか。
そして、見事に勝利をつかんだ
霙お姉ちゃん、氷柱ちゃん、立夏ちゃん。
悔しいけれど
強かったね!
祝福を伝えたいです。
それにしても、へとへとに疲れたね。
たぶんこんなに本気で走るなんて、大人になったらもうないよ。
全力の一日でした。
後になって、ヒカルちゃんから
もう負けが決まっているからかえってプレッシャーを感じないで走れたと
みもふたもないことを教えてもらったのも
ただお兄ちゃんから渡されるバトンだから、本気で走りたかったと
そんな打ち明け話も体育祭の思い出。
あんなに盛り上がった学校のみんなにも
これだけは教えられない
蛍の体育祭が過ぎていきました。

でもまだ、学園祭は終わっていない。
明日は文化祭。

お兄ちゃんは文化祭の準備
もう終わりましたか?
ホタは実はまだなんです。
氷柱ちゃんに聞かれたら
怒られちゃう!
ここだけの話にしてください。

蛍は計画性が足りないんです。

試作品も含めて
たくさんの衣装、
たくさんの料理。
製作は、クラスの得意な子たちが何人も担当するので
蛍一人の負担は実は大したことはないの。
でも、クラスの子のサイズ計測に忙しくて
自分のサイズは、春の身体測定に合わせて作ったら
できあがりの衣装は、思いがけなく袖が突っ張る事態に。
まさかそんな、
ちょっとくらい太った場合に備えて
横幅は余裕を意識して仕上げたのに
改めて図りなおしてみたら
まさかこの歳になって背が伸びていたとは。
半年間で3センチの飛躍です。
犬のおまわりさんは少しくらいのサイズの違いも問題ないけれど
時間限定シークレットの予定だった
おさるのくのいちは
袖までぴったり合わないとサマにならないのに。
よりによってなんと直しにくい衣装を選んでしまったのか。

体育祭に真剣になって
疲労困憊のこんな状態で
夜になってから手直しするなんて
かなり無理があると、
理性で判断する前にもう体が知っている。
明日の接客も笑顔を絶やさず大変なんだとわかっている。
でも、ちょっと手直ししたくらいでうまく仕上がるかどうか分からないけど
時間を決めて、せめて自分の気が済むまで試したいと
クラスの子に相談したら
それはどう見てもフラグだって反対されました。
気がついたら窓から日が差して
ちゅんちゅん鳴き声が聞こえている朝が
決定してしまうフラグ。
蛍も分かっています。
文化祭も、リレーと同じで
参加する全員で作るものなんだから
蛍一人が自分の都合で無理をして
バトンをとり落としたら情けない。
そんなふうに迷っていたら、
もしも蛍が甘えられる
本当に信頼できる相手が家族にいてくれるなら
その人に相談して、時間を区切ったらいいって。
必ず約束を守ってくれるという期待ではなくて
約束が守られなかったとしても
相談したところで、早く寝るように諭してもらうだけだったとしても
絶対に相手のせいにしないで、その人を信頼していられる。
どんな結果になっても、自分の気持ちが変わることのないくらい
心から信頼している相手が家族にいると思えたら
任せてもいいんじゃないかと
今日の体育祭の蛍と家族たちの様子だと、それもありかもしれないと
友達が言ってくれました。
お兄ちゃん、体育祭でどんなに疲れているのかよく知っています。
もしもお兄ちゃんが0時にまだ起きていたらでいいんです。
そのとき、蛍がまだ裁縫の作業中だったら
もう寝る時間だと教えてくれますか。
お兄ちゃんがもしその時に近くにいてくれるなら
こんな小さな維持を張るのも
あきらめられると思う。

明日は午前中に、体育館でクラス発表の鑑賞。
お兄ちゃんとヒカルちゃんの劇と
立夏ちゃんの創作ダンスが本番です。
見るだけの蛍まで緊張してきちゃう。
お兄ちゃんは、緊張しすぎないでね。
緊張してしまったら、手のひらに人です。
ヒカルちゃんにも教えてあげてね。
蛍たちのクラスの喫茶店はその後、
体育館で軽音楽などの自由発表が始まってからなので
午前11時の開店です。
たくさんの人に来て欲しくて、メニューも豊富でおねだんおとく。
なぜかお子様ランチだけでも2種類も用意しました。
気に入ってもらえるようにがんばるから
ぜひ一度足を運んでみてください。
そういえば、氷柱ちゃんは家族のみんなに
つまらないから自分のクラスの展示発表には来なくていいと
必死で伝えているの。
本当に行かないほうがいいのでしょうか?

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