アルケイディア&キュクレイン

アルケイディア&キュクレイン TOP  >  2013年08月

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春風の偽日記

『女の子は肉食』

むんむんします。

ついつい、勇気を出して
薄着を選んでしまう
この季節。
海が呼んでいるようで
水着に憧れる季節。
涼しげな水音が、まぶしい空想の中へ
私たちを招いています。
なかなか海には行けないから
シャワーで汗を流してさわやか。
暑い時期を乗り切りましょう。

家族にいっぱい食べてもらいたい毎日のメニューも
悩むところ。
あんまり重いものは、食欲がなくなりがちの夏には苦しいし、
かといって、軽すぎると栄養をがっつり補充できるか心配だし
それに、見た目で食欲をそそるような盛り付けも難しい。
涼しげな麺類やトマトは、今の時期には便利だけど
毎日では飽きてしまうかもしれないわ。
今日もそうめん。
明日もそうめん。
きらめく夏休みだって、食事の時間はお楽しみ。
なのに、こんなことでいいのかしら?
悩んでいたところに、霙お姉ちゃんからのリクエスト。
今日はスタミナをつけるためにお肉がいいって言うから
ぜひとも、王子様にも気に入ってもらって
おいしいと言ってもらって
お肉記念日になるように
春風は張り切って作ります。
夏のお肉は、きつい子もいるかもしれない。
何がいいかな、と悩んで
ローストビーフか、
チャーシューを冷たい麺料理に合わせるか、
悩んだけれど
暑い地域の知恵を借りることにして
沖縄のおいしいゴーヤチャンプルーがいいかな。
これでは、今年の旅行の行き先候補も沖縄が優勢になってしまうかな。

お肉でスタミナって、考え方が単純でしょうか?
でも、みんな食べたい。
食べて力を付けたい
女の子たち。
毎日、暑くてもだらけないようにしたい。
探して見つかる、素敵なこと。
自由研究が止まらない!
学校に提出できない自由研究がいっぱい。
やることが毎日たくさんあって、
どれだけ時間があっても、どれだけエネルギーが有り余っていても
ぜんぜん足りないくらいです。
夏の一日を充分に活用したくて、
あーちゃんだってちっちゃいおめめをくりくりに開いて
家族の見守る中、精一杯の世界を探検しています。
そんなふうにしているもの、体力が必要ですよね。
といっても、あーちゃんにはお肉はまだ無理ですね。
おいしいミルクを作ってあげたいな。
夏の魔力は赤ちゃんも元気にしてしまうから
年頃の女の子なんていちころ。
もっと張り切っていきたい。
がんばりたいな。
家族の幸せのためにできること、たくさんあるかな?
夏場に燃え上がるのは、太陽だけではありません。
でもね、王子様。
春風は怖がりなの。
この季節は、ついついはめをはずしてしまう若い人が
大きな音を立てて道路を走ったり
誰にでも声をかけてきたりします。
今日の食材の買出しでも、怖そうな格好の若い人を見るだけで
臆病ですよね、
何をされたわけでもないのに怯えてしまって。
見た目だけで決め付けたらいけないのに。
こんなとき、もし王子様が一緒にいてくれたら
怖いことなんて何もない。
世界が二人だけになってしまって
他はいっさい気にしない、世界一幸せな夢の中です。
頬を引っ張っても目が覚めない現実だったらな……
そうなったら、お買い物も忘れて二人きりになってしまいたくなるかしら。
いけませんね!
楽しみな晩ごはんなのに、そんなもったいないこと。
こんなにかわいい家族に囲まれて
たくさんのパワーをみんなからもらっているのに
夏休みにみんながいると
王子様を家族にとられてしまっているようで
二人だけの世界まで
あなたとどこかへ逃避行してしまいたいなんて
いけない春風ですね。
怖がりだけど、
あなたとなら。
王子様は、クールなファッションも試してみたくなりますか?
春風がおびえてしまうような。
でも、あなたが今はそんなふうにしていないだけで
もしも、愛するただ一人の運命の人が導くならば
どんな恐ろしい世界だって、ためらわないつもり。
春風はどこまでも着いていきます。
女の子は強いんだもの。
お肉も食べるよ。
力を付けます。
普段からエネルギーをとることに詳しいのは
きっと、何かあった時にあなたに、力いっぱい捧げたいから。
私の全てを、あなたに。
それが女の子の生まれながらの才能、だったらいいな。
尽くす力はきっとあると思います。
どんなことでも言ってね。
王子様が手を引いてくれたら、
やんちゃなことでも
どんなことでも。
夜露死苦!
です。

そんな春風の、今日の精一杯。
毎日の暑さに、ほんの少しでも涼しさを届けられたらと
かわいい音を鳴らす風鈴を買ってきました。
この家に、幸せな風がこれからも吹いてくれますように。
ついでに、王子様にひとときでも気持ちよくなってもらえますように。
嬉しい音色を届けてください。
キッチンは火を使うから温度が上がるけれど
体調には気をつけながら、
暑さに負けずに。
愛する家族に向かう気持ちを止められない。
今日も愛するあなたのために
尽くしていいですか?
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吹雪の偽日記

『朝顔』

今日は、朝顔の話をします。

物理学の分野において
エネルギー保存の法則は例外なく成り立ちます。
理由のわからない場所からエネルギーが発生することはなく、
また、エネルギーがどこへとも知れぬ場所へ
忽然と消滅してしまうということもない。
したがって、この世界は全体を数式によって正確に表現することが可能であり、
生命もまた、数式の集合体であると予想できる。
ただし、気象予想に関係するカオス理論などが説明するとおり、
理論的に可能であるということは、ただちに実現できるとは限らない。
生命は無数の要素が絡む不確定性のかたまりである。
そのため、成長を予想することは現時点では不可能です。
計算機の発達が成功を続けても、追いつける気配もない。
今後も生命は、長く神秘の霧に閉ざさ続けるでしょう。
しかしそれは、いつか全てが解明される日が来ない、ということを意味はしない。
すぐに結果が出るものではないと分かっていても、
いえ、それは永遠に近い年月続くと思われる秘密に挑む
ただの無謀だと知っていても
試みをやめない。
私もまた、匹夫の勇に踊らされる一人に過ぎない。
分かっているということは、やめるという理由にはならない。
人の理性の限界が、常に挑戦の限界を意味するものではないと考えます。
果たして、小学二年生の知識量と調査環境で、どれだけのことが明らかになるのか。
朝顔は興味深い研究対象です。
学習した通りに種をまいて育てれば、
学習した通りに芽を出して伸びる
一見単純な構造の生命体でさえ、
同じ鉢植えの環境下で、同じ太陽のエネルギーを浴びて育つのに
どうして様々に個性的な成長をするのか、不思議です。
まず発芽しやすい条件か、そもそも種によって違いがあり、
芽が顔を出す順番にも少しずつの差があり、
つるを伸ばす速度もまちまちで、
用意してあげた支えにどのようにつるを巻くか、
性格によるものかと疑うほど、千差万別。
もちろん、花が咲き始めるまでの期間も
花の数も、一つのクラスだけでも様々な例が存在します。
私が今年、学習教材として育てている朝顔は
数が少ない成長をします。
終業式の日、学校から持ち帰った鉢植えを庭の花壇の空いた場所に置いて
現在、遠くから見ると、やけに緑色の範囲が広い
花壇にしては不思議と一色だけに偏って見える部分があったら
それは私の朝顔です。
つるは丈夫です。
学校で教わったとおりに水をやっても
姉たちの経験に基づくアドバイスを実行しても
名前を付けてやって愛情を示しても
つぼみをつけることもありません。
ちなみに名前は、
赤い朝顔が関羽、
ピンクの朝顔がサマンサ、
次に花が開いたらその場合はアントワネットになる予定です。
毎日記録する観察日記では、緑色のクーピーのみ消費が激しい状態で、
姉たちが自分のパレットから喜んで分けてくれたピンクと赤のたくさんの色鉛筆は
王子様との出会いを待つ森の美女のように
パレットのすみっこで身動きもなく眠っています。
今まで家族の誰も経験したことのない事態。
19人姉妹の12番目で初めて遭遇した、稀有な謎です。
何が原因なのでしょう?
もともと、こういうことはよくあるのでしょうか?
いつか、この不思議な成長の理由が
エネルギー保存の法則によって解き明かされる日は来るのでしょうか。
それとも、この成長もまた、朝顔の正常な発育の一種なのか。
成長が遅いだけかと思っていましたが
もしかしたら、こういう性格の子なのでしょうか。
関羽とサマンサは。
もう、よく育つつるのほうに思い入れがある状態になってきました。
名前を付けて
こっちも愛情を注いでやるべきなのでしょうか?
我が家では今年も、一週間くらいの家族旅行を予定しています。
その間は、おとなりの奥さんに朝顔のお世話をお願いすることになっています。
話をしたところ、快く引き受けてもらって、
朝顔の世話には自信があるとのことでした。
小雨姉と時々家庭菜園の相談をすることもある関係です。
おとなりの奥さんは、植物の栽培に関しては名人と言っていい腕前。
もし、関羽とサマンサの成長が遅いか
それとも私の育て方がうまくなかったなどの原因で
家族旅行から帰ってきたときに花盛りになっていたとしたら
私はとても複雑な気持ちになると思うのですが
どうしたらいいのでしょうか。
いえ、それならばいいのですが、
逆に、帰ってきたときに万が一、今の花が枯れてしまっていたら
ただでさえ少ない花のことで、衝撃は大きいと予想できます。
関羽とサマンサが元気であるように、よく頼んでいますが
なにしろ生きているものなので、
現在は生存さえも数式で計算できるものではありません。
名人が手を尽くして枯れるならあきらめるべきなのでしょう。
しかし、できれば、未熟な腕前であっても
私が最後まで面倒を見て、こだわっていたい気持ちがあります。
不合理な思考ですね。
生き物ならば、最後まで生きるために尽くしたいであろうに。
私の手で育てられて、この子は幸せなのでしょうか?
ともかく、しばらくは私の手から離れることになります。
どこに旅行に行くにしても、朝顔は持っていけません。
旅行先を決めるじゃんけんは、明日の予定です。
なるべく早く帰ってこれる旅程を提案したくて、
少ない日数でも満足できるようにと、移動範囲を近場に絞って
星花姉は中華街に、
麗姉は都内の路線に、
海晴姉は近場の温泉地に──
協力を頼んでありますが
今はまだ優勢とは言えません。
夏の海水浴は、あまりにも強い誘惑のようです。
これはもはや、ひとつの欲望と言っても良いでしょう。
海水欲です。
それはともかく。
家族旅行は大切なもの。
本当は、どこに行くか、何をするか、
楽しめるか、ということよりも
大事な人を思いやることができて
愛する人の、普段はなかなか見えない新しい姿を発見して
お互いが、今までよりも大事になる。
そんな旅行になれば、理想的だと思います。
そのためには、予定を立てる段階から正直に意見することが大事だと
教わっています。
私は、この家で過ごす生活を大事に思っています。
たとえ朝顔がなくても、それは変わりません。
今年はたまたま例外的な動機があるというだけです。
夏の家族旅行が、格別の魅力を持っているものであることは否定しませんが
規模の大きい旅行に限定する必要はないということが
私の提案です。

真璃の偽日記

『バカンス』

むかしむかし。

おじいさんは、
海へバカンスに。

おばあさんも
海へバカンスに。

桃太郎も
かぐや姫も。

鬼も
乙姫も
みんな、海に向かいます。
バカンスのために。

フランスではいつもそうなのよ。
桃太郎だって、フランスに生まれたらきっと。

マリーも思い出すわ。
遠い前世──
地中海までバカンスに出かけたこと。

潮を含んだワイルドな風のにおい、
砂浜に照り返すまぶしい日差し、
寄せては返す波の音。
じゅうじゅう焼けたイカの香ばしい味わい、
ソースの味が強烈な焼きそば、
焦げた焼きとうもろこしのコクのある甘みを
まとめて
レモンの風味のラムネで流し込む
海の恵み、というか
砂浜のとれたて名物。

フランスの冬はほかほか焼き栗がおいしいって
よく聞くから
別におかしいと思ってもいなかったんだけど
やっぱりおかしい?
この記憶。
吹雪ちゃんが調べたら、
フランスにバカンスの習慣ができたのは
革命からずいぶん後。
マリー・アントワネットはあんまり地中海に行かなかった。
どうやら、
前に家族旅行で海に行ったときの思い出らしいの。
波に足を取られて、かき氷を落としたさくらが
泣いてしまったこと。
なぐさめて、分け合って食べた焼きそばの味。
女王のためだけに築かれた
海辺の別荘だと思っていたものは、
砂で作ったお城だったこと。
海辺に一日でお城を建てた、記憶の中の魔法使いは
夕凪お姉ちゃまだったのね。
あの城はどうなったのか、女王としては管理しておかないと、って
ずっと心配していたの。
革命に紛れて、誰かのものになってしまったかも、
私たち家族がいつか出かけるとき、今も泊まれるようになっているかな?
波にさらわれて、今はもうなくなっちゃった一夜の夢。
気にしていたなんて、笑っちゃう話ね。
フェルゼン!
今度は本当の城を作るわよ。
何事も、愛をこめて一生懸命作り上げたものが
本物なの。
たとえそれがまた、一晩で崩れる砂の塊だったとしても──
今度は夕凪お姉ちゃまに作ってもらうんじゃなくて
フェルゼンとの愛で築き上げるんだもん。
そう!
運命のじゃんけん決闘はマリーが勝ち抜いたので
夏の家族旅行の行き先は
フランス地中海に決定です!
と言いたいけど、
マリーはまだ小さいから
お姉ちゃまたちのアドバイスを受けて
変更です!
真の旅行先は、
南の島の本物の夏。
トロピカルでセクシーな
沖縄よ。
出発は次の次の月曜。
まだ一週間以上あるからって
安心していられない!
みんなで水着を買いに行きたいし
立夏お姉ちゃまと夕凪お姉ちゃまは、旅行までに
半分以上は宿題を進めておかないと
旅行先に持っていって、宿題することに決まっているの!
吹雪ちゃんが予定を計算しなおして、このままで旅行に行ったら間に合わないって
わかったから。
マリーと観月も、自由研究を手伝うのよ。
吹雪ちゃんも罪なことをするわね。
近場で旅行を済ませるための説得の材料だったらしいけど
旅行が沖縄に決まったら、もうじたばたしても仕方がないって
張り切ってシーサーについて調査の準備を始めたわ。
立夏お姉ちゃまたちにはとばっちりよね!
フェルゼンは、宿題は進んでる?
もし余裕があったら、手伝って!
自由研究のテーマがまだ決まってないんだって。
吹雪ちゃんは、観月ちゃんに手伝ってもらって
沖縄の伝説の生き物を調べるの。
つまり妖怪の情報。
星花ちゃんは、沖縄の王様の歴史を調べることに決めたんだって。
エキゾティックでいいわよね。
マリーが小学生だったら、沖縄のお姫様の歴史を調べるのに。
立夏お姉ちゃまも、夕凪お姉ちゃまも、歴史は苦手なの。
というかそもそも、研究が苦手らしいのはどうしたらいいのかしら。
暗雲たちこめる自由研究よ。
伝説の生き物といえば、マリーの昨日の夢に出てきて
今日のじゃんけんで全部パーを出すように言っていた
毛むくじゃらの塊は
あれも妖怪っぽかったけど、なんだったんだろう?
女王としては、この小さなかわいらしい生き物の真剣なお願いは
聞いてあげなくちゃいけないわ! って、
そしたら連戦連勝。
きっと沖縄の神様か何かが、またマリーたちに会いたがっているのね。
何かが呼んでいる夏の旅、歓迎してくれているかな。
もしもこれが、女王の命を狙う悪人の罠だったとしたら
マリーが危機に陥ったとき、
フェルゼンは助けに来てくれるわよね。
期待しているわ。

霙の偽日記

『道行』

旅先では
様々な出会いがある。

見たことのない景色。
その地ならではの文化。
新しい概念に触れ、
旅の果てに
知らない自分を発見することもあるだろう。

儚いことだな。
景色も文化も、自分自身もまた
永遠の時間を経験するような気でいるなんて。
宇宙を構成する一粒、見えないほどのかけらでしかないのに。
なにもかも、砂浜の文字のように当たり前に消えてしまう。
それが、あらゆる生まれ来るものの定めだ。
特別な発見が、私たちをどこへ連れて行くのか。
ただ滅びの道へと向かうだけなのに。
決して止まらない歩み。
例外はない。
砂浜も波も、この星さえも、
やがては大いなる宇宙の懐に抱かれ──
ふるさとの場所、無に帰って行く。
無理して新しい経験を得る理由など、まったくない。
こんな暑いときに、わざわざ暑い場所へ出かけていくのは
何を求めてのことなのか。
短い生、消え去るのみの全てに与えられたわずかな時間。
私は何も得ることなく
保養の名の下に
ただひたすら、のんびりするだろう。

だいたい、発見だったら、どこにでもあるものだ。
海晴姉は毎日毎日飽きもせず、鏡を覗き込んでは
どんな恐ろしいものを見つけたのか、悲鳴を上げている。
ご苦労なことだ。
楽しいのかな。
身支度にあんなに時間をかけていては
ほんのひとときの命を有意義に過ごすことなど
とてもできないな。
私なんて、
この季節にはとても心地よい短髪に櫛を通し
服を選ぶのが面倒なら、マントの暗黒に全てを秘め隠して
それだけでいい。
この旅行、宿泊先に着いたら
私は、私に与えられた運命が望むがままに
ごろごろし、
だらだらし、
まったりと──
この身のどこにも休める部分がなくなっても
体を休めることに決めている。
本来のリゾートの目的を果たすのだ。
その時私は、安逸に身も心も溶け出して
頭の中にはただまぶしいリゾート地の光のみが湛えられた
人の限界を超越した怠惰の精霊と変わり果て
無とひとつになるのかもしれない。
私が沖縄に求める、ひとときの完成だ。
まあ、そんなに思い通りにはならないだろう。
なにしろ右も左も分からない小さい子たちが、山盛りで一緒だ。
多少は導いてやらねばならない。
見守ってやりたい場面もあるに違いない。
そして、頼むから放っておいて欲しいと言われたとしても
どうしても見物に行って土産話を持ち帰りたいときも
必ずあるだろう。
この旅行が、私たち家族全員が共にする経験である限り、
絶対にあるだろうと私は確信する。
一人ひとりの姿を
目に焼き付けておきたくなることがある、と。
やがて消える運命に逆らう、奇妙な衝動であろうと
ちっぽけな私たちは、
崩れる砂浜に刻み付ける。
この記録が永遠に続くようにと。

おそらく、どれほどの決意をしていても
私たちの家族旅行からあわただしさを拭い去ることはできない。
せめて、心構えだけでもゆっくりとしたリゾートを心がけよう。
旅行先ではいつも、新しい文化に出会う。
家族が無意味に困らないよう、予習はしっかりとしておきたい。
旅の喜び、出会いもその一つと言っても決して過言ではない。
恐れて萎縮するばかりでは、楽しめる旅も楽しめないし
気をつけろと言っても、なかなか聞かないのが小さい子供だ。
せめて、どのようなトラブルも対処できるようにしたいものだ。
なるべくなら、トラブルが起こる前に予測できるくらいにな。
生徒会活動のついでに、学校の図書室から借りてきた関連書物は
決して浮かれているわけではない。
準備にはどれだけ時間をかけても足りない。
とはいえ、時間は無限ではない。
旅行前の一週間から、あわただしさが始まるかもしれないが
この暑さに疲れて体調を崩したりしないように──
何もかも滅びるものだと悟りきって、時には休むのも悪くない。
覚えておくといい。

ところで、宿題はきっちり済ませてあるか?
旅行の準備は、意外なところでうっかりしがち。
油断していたら、どこで予想外の事態が起こるかわからないぞ。
その時は協力して乗り越えよう、
家族のため、
楽しい家族旅行のために。
私は学習計画は順調なんだが、
この暑さに、快適に過ごすことばかり求めるあまり
ついに部屋からかび臭い匂いがし始めた。
匂いばかりは、マントの暗黒でも覆いきれない。
私の部屋が滅びに向かっている。
普段から覚悟はしていても、
旅行を前にしたこのタイミングで滅びを迎えたくはない。
そういうことなので
海晴姉の宣言で、すぐに部屋を片付けない場合、
旅行先でおやつ抜き。
もちろん、みんなが準備で忙しいので
誰の手も借りずに一人で、との厳しい言いつけだ。
果たして、可能なのだろうか?
さて、
もしもオマエが、私と一緒でなければ
悲しさのあまりに、ちんすこうの味も分からなくなるというなら
私としては、オマエを止めることはできないのだ。

星花の偽日記

『うみ』

音楽の
がく、は
楽しいと書く。

というわけで
歌います。

うーみーは
ひろいーなー

てんかも
ひろいーなー

こうめいさまは
いるしー

じゅきゅうにんしまいも
いるしー

せかいにたったひとり
だいすきな
ごしゅくんさま

おにいちゃんも
いるー

これは、
沖縄の伝統的な歌ではないけれど。

夕凪ちゃんの自由研究は
沖縄の音楽と踊り。
行く前に下調べをして
疑問点をまとめ、
行った先でたくさんのことを知る
楽しそうな宿題。
音楽の、がく。
です。
旅行の予定では
沖縄民謡と踊りの舞台を
見ることができるよ。

いつでも踊って
すぐ歌う
夕凪ちゃん。
新しい持ち歌が増えるかな?
元気なことでは
星花もそんなに変わらない。
研究は、王様の歴史だけど
隙を見つけては
歌って踊る
小学四年生。
違うところといえば、
夕凪ちゃんがマホウ使いなのです。
それと、
粘り強さはちょっと自慢の星花。
という違いがあるくらい。
夕凪ちゃんの進まない宿題を
ときには優しく、
ときには褒めて伸ばし、
ときにはお菓子で釣って、
一心同体になって支えます。
かわいい夕凪ちゃんに
身も心も尽くす
世話女房の役目です。
あんまり厳しくするの、得意じゃないの。
氷柱お姉ちゃんは、こんな星花を
甘すぎるって言うけれど
そんなことないよね?
氷柱お姉ちゃんだって、本当は
夕凪ちゃんに甘いんだもの。
厳しくしないとためにならない、って気を張ってるけど
実は隙を見ては甘くしてしまう氷柱お姉ちゃん。
音楽のがくは
家族仲良く
みんなで楽しく、と同じ字。
全員揃っているから楽しいの。
でも、氷柱お姉ちゃんの意見もやっぱり正しいようで、
厳しく指導で立夏お姉ちゃんの宿題は進んでいます。
立夏お姉ちゃんは自由研究なんてないもんね。
今のうちに、まじめに進めないと。
とっても大変そう。
星花は、夕凪ちゃんが中学生になったときに
立派に指導できる中学二年生になるでしょうか?
先生ではなくて、お友達みたいな。
お姉ちゃんというよりは、女房役みたいな。
二人の関係。
がんばった夕凪ちゃんに
今日も手作りのお菓子をふるまう
ねぎらいの人、星花です。
夕凪ちゃんが自分から、歌と踊りが好きだからって
自由研究のテーマを発見できたときの嬉しさ。
吹雪ちゃんも手を繋いで、三人で輪になって踊ったよ。
楽しむものだから、本当は成績なんて関係ないですよね。
音楽の授業のリコーダーは、練習して上達するのが目的だけど
もっと本来の目的があるものかも、と
夕凪ちゃんと遊んでいると時々思います。
試験が難しい音楽の分野、
さらに成績が付けにくい自由研究。
夕凪ちゃんが張り切っているし、いいものになると思います。
他の宿題も──
家族みんな、気にかけてくれていること、
できるだけの手助けをしようとしているように見えるのは、
星花の未熟なお菓子作りをこっそり手伝ってくれる春風お姉ちゃんと蛍お姉ちゃんを
見ていて、なんとなく感じます。
楽しい旅行に、できるかな。
歌って踊ってばかりじゃないと思うけれど
こんなに素敵な家族とみんなで行くんだから。
楽しむ準備は、みんなが夢中。
小雨お姉ちゃんの自由研究も、下調べが進んでいます。
蛍お姉ちゃんがみなぎる気合でサポートする、沖縄の服飾。
それから、麗お姉ちゃんも宿題があるのか聞いていないけれど
モノレールのことを一生懸命チェックしています。
氷柱お姉ちゃんだって、立夏お姉ちゃんの監督や
小さい子たちに必要なものの細かなチェックをする合間に──
霙お姉ちゃんが学校から借りてきた本を読んで、勉強しているよ。
宿題じゃなくても、真剣です。
お兄ちゃん、準備できた?
何か手伝うことある?
愛するご主君様との絆を誓う
熱い血潮で
いつでも手作りを差し入れいたします!

さくらの偽日記

『ラジオたいそう』

ちゅんちゅん、
ちちち。

ごあいさつ。

いちにちがはじまったよ。
きょうもげんきだよ。

つたえてる──
なつのあさ。

さくらも、げんきに
たいそうをはじめます!

かぞくといっしょの
ラジオたいそう。

おおきいおねえちゃんは
いそがしくて、なかなかさんかできない
ラジオたいそう。
ちいさいこは
あさから
みんなでそろって
うでをのばします。

そらちゃんだって
おとにあわせて
みんなにあわせて
せをのばして、とびはねる。
さわやかないちにちをはじめます。
りっぱだね。

おにいちゃんと
りっかおねえちゃんは
よくさんかするの。
えらいですね。
けんこうてきだね。
きもちのいいたいそうは、
からだによくきくたいそう。
いちにち、げんきでいられる
まほうのおどり。
まほうつかいがかんがえたの?
あさがはじまったら
ちからいっぱいのたいそうで
いいはじまり。
かぞくに
ことりに
おはようございます。
さくら、きょうもラジオたいそうするの。
みんながそろう
なつやすみです。

ラジオたいそうのおどりは
おぼえたけれど
そしたらね、
なつやすみのおわりにね、
おまつりがあるんだって。
おまつりには、ぼんおどりをおどるよ。

なつやすみのはじめにも
ぼんおどりのおまつりがあって
おわりに
またあるの。
ちがうところで。

さくら、まえのおまつりで
おどるまえに
つかれてねちゃった。
どんどん、
ぴーひゃら、
りんごあめも
ゆめのなかです。

おまつりのおどり、
おにいちゃんのせなかだったの。
もしかしたら、
ヒカルおねえちゃんのせなかだったの。
ラジオたいそうのおどりを
おぼえたさくら。
はなまるはんこが
しち、はち、きゅう、じゅう──
りょうていっぱい。
りっぱ?
こんどは、ぼんおどりも
できるのかな?

おぼんのおどりが
ぼんおどり。
ごせんぞさまをおむかえすることだよ、おぼん。
ぼたもちをつくっていただく、おぼん。
きてくれるよ、
てんごくにいる、おじいちゃんやおばあちゃん。
あったことのない
ひいおじいちゃんやひいおばあちゃん。
さくらのことをしんぱいしている、ごせんぞさまが
みにきます。
げんきでいるよ、っておしえてあげて
あんしんしててんごくですごしてもらうために
みてもらうよ、ぼんおどり。
てあしをのばして、せをのばして
おどるよ。
さくらの、ぼんおどり。
ラジオたいそうじゃないの!
ちがうおどりなの。
さくら、ちゃんとできるかな?
おきなわにいってね、
うたにあわせておどるのも、
べつのおどり。
なつやすみのあと
ようちえんのうんどうかいでおどるのよって
マリーおねえちゃんたちがおしえてくれたのも
べつのおどり。
うわーん!
そんなに、おぼえられないよ!
さくら、うまくできなかったら
おにいちゃんのおどりのまねしていい?
なんでもおどれるおにいちゃんだもの!
ぼんおどりのときと、
おきなわのおどりのときと、
ようちえんのうんどうかいのとき。
ついていきます。
めいわく?
ぼんおどりに、さくらがうしろでちょこちょこしていたら
おどるのにじゃま?
そうだったら、どうしよう!
おにいちゃんは、まねっこさくらは
きらいですか?

蛍の偽日記

『秘密です』

ファーストキスと
初恋は、
レモンの味。

ほんとかな?

蛍の秘密、
お兄ちゃんには気づかれているかもしれないの。

体型よりも重要な秘密。
スタイルだって
体重だって
追いつけない大問題。

おこづかいの使い道より
大事な秘密。
無駄遣いをするとか
どちらかというと、お買い得に目がないとか
そんな困った子供みたいな癖と比べたってなお、
家族に知られてはいけない
恥ずかしくて
いけなくて
誰にも明かせない
秘めに秘められた真実。

ばれてしまったら
どうなるんだろう。
だけど、
隠してはおけないよ。
蛍のことを見てくれている、家族のみんな。
一緒の時間をずっと過ごしたい、
とても大切な、蛍の一生の宝物のみんなに──
もう、ごまかせない。
お兄ちゃんも、とっくに知っているでしょう?
蛍はごまかしたくない気持ちになってしまいました。
怖がらずに、言うね。
迷惑かもしれないけど、
本当のことなの。
その秘密っていうのは、
蛍が、実は
少し──
考えが足りないということです。
やることをやらないで、大変なことに夢中になってしまうの。
みんな、小さい子たちも
おばかじゃいけない、ってがんばっているのに!
お兄ちゃん、妹がおばかで悲しいかな。
ううん、学校の成績のことじゃないの。
夏休みの宿題も順調に進んでいます。
実はところどころ引っかかったりしているけれど
誰にでもあること。
蛍が落ち込んでしまうのは、
お兄ちゃんに、とても迷惑をかけてしまったこと。
だって、夢中になったら止まらなくなる
考え無しなんだもん!

明日はいよいよ、旅行の準備の総仕上げ。
出発前の一番のお楽しみ。
みんな準備が整って、それなりに時間が取れて
誰に必要で、一人一人にどこまで必要でないか、
去年からどれだけサイズが変わって
嬉しく、元気に、大きくなったか。
あるいは、成長期を過ぎたはずなのに
どれだけ横に伸びてしまったか。
なーんて。
それを確認してから、いよいよ買出しに出発の
ついに来ました。
わくわくと、どきどきと、
期待と不安。
女の子の覚悟が全て詰まった
ももいろ体験、
水着選びです。
だけどね、
お兄ちゃんのことは、蛍が知っているんだもの。
既製品の水着なんかよりも、何が似合うか。
見ているもの。
蛍の大好きなお兄ちゃんだもの。
絶対に。
賭けてもいいんだから。
お兄ちゃんに一番似合う
最高の水着は、
どこのデパートにもなくて、
蛍の手で作り出せるもの
たったひとつだけなんだもん。
お兄ちゃんの雄姿を飾るのに
どんなファッションデザイナーの手も
借りないんだから!
南の島の、輝くビーチに舞い降りるお兄ちゃん。
蛍の想像なんて、全然追いつかないよ。
すごいことになると思います。
楽しみだな。
だから全力で!
こんなことしかできない蛍だけど
お兄ちゃんの素敵な旅行に貢献したい。
そう思ったんだけど、
大事な衣装だもんね。
妹なんかに任せるの、心配だよね。
鼻息の荒いいのしし娘が
下半身をぐるぐる回ってサイズを測っても
どうしようってなりますよね。
ごめんね。
お兄ちゃん。
最高の水着は、いつか
将来のお嫁さんに作ってもらってね。
もしくは、蛍がお嫁さんになってから
作ってあげるね。
明日は、お兄ちゃんもデパートで一緒に水着を買うんですよね。
その時は、蛍が少しだけ意見してもいいですか?
今度は迷惑をかけないように
自分を抑えられるよう、がんばります。
できることがあんまりなくても
ほんのちょっとでも、お兄ちゃんのお役に立ちたい
小さな妹。
実はまだまだ、寂しがり屋で甘えん坊で
お兄ちゃんに全身で伝えたい。
大好きだよ。
甘酸っぱい気持ちじゃないよ。
いつでもふんわり、やわらかな甘さ。
蛍の毎日です。
どこに行っても、これからも、そうですよね。

あとね、春風ちゃんは水着と一緒に
ねまきを選ぶんだーって、スキップしています。
お兄ちゃんはどうしますか?
旅行は小さい子も一緒だし、
大変なことも多いと思うの。
ドキドキすること、
慌てるようなこと、
そして、いつか優しい思い出になるような経験。
私たち楽しい家族のことだもの。
きっと、いっぱいありますよね。
だから夜はとっても疲れて、ぐっすり休みたくなるんじゃないかな。
慣れない場所でも気持ちよく休めるように、
ホタの提案としては
ゆったりしたパジャマを持って行ったらいいと思います。
枕投げやトランプで夜更かしなんてしていたら
体力が続きませんよ。

小雨の偽日記

『花飾り』

思い切った服装が
苦手な小雨です。

選ぶ服は、どうしても
地味なものばかり。
恥ずかしいのと、
それから、
きれいに着てもらえない服に
悪い気がしてしまうから。
本当は、小雨じゃない子が着てくれて、
とってもきらきらして、
もっと似合っていて、
一日が明るくなる、
努力のたまものに、なれたのに。
ちょっと大変なときがあっても、
がんばってみる
女の子のおしゃれ。
華やかなことが苦手で、いつも逃げてきた小雨は
服を選ぶとき、
かわいいとは違うの。
奇妙な状態です。
たぶん、あんまり
見ていて不愉快ということにはならないだろうけど
どうなのかな?
冒険したほうがいいと励ましてもらったときも
このくらいなら大丈夫、
見ていて悪いことないよね、
と気を使って、
それで、どうせ気を使うなら
最初から冒険しないほうがいいんじゃないかと
結局、無難に。
着慣れたものに戻ってしまう
一歩も踏み出せない冒険。

失敗したり
転んだりしながら
いろいろ試して、見つけていくって
小雨には難しいです。
手を出す前からおびえてしまう。
勇気を出して進んでみたって、
途中でつまづいて引き返してしまう。
弱い小雨です。
だって、間違ってしまうよりはいいから。
だって、取り返しのつかないことになってしまうかもしれない
新しいことを始める力なんて
小雨はなかなか出せなかった。
なぜだろう──
お兄ちゃん。
いつも、小雨のことを元気付けてくれるの。
ときどき、お兄ちゃんのことを考えながら
普段できないことをしています。
小雨はたぶん、
あの、
こんなことを言ってしまったら
また引っ込み思案だって笑われるかな。
小雨が勇気を出せるのは、
他の女の子みたいに華やかじゃないけれど、
ときどき褒めてくれる家族の言葉。
小雨は他の人が見逃してしまいがちな
小さな問題によく気がついて、
手を貸してあげられる、
細やかな思いやりの持ち主だって。
本当は、そこまで褒められるほどのことはしていないけれど
でも、嬉しいです。
小雨の小さな個性に気がついてくれる。
こんな未熟な小雨のこと、放り投げたりしないで
いつも見守ってくれます。
小雨の特徴、
あるかないかもよく見ないとわからないような
芽生え始めたばかりの個性は、
みんなが言ってくれるような小さなこと。
決して、華やかな世界に憧れたり
かわいさを競ったり、
そんなことは、できないんだと思います。
小雨ががんばれそうなことを見つけて、
これでいいんじゃないかな。
地味だけど、
ちょっとだけ、細かな世界に優しいかもしれない
小雨の個性を、そのままに。
それが小雨のおしゃれだったら、って。
よく見ないとわからないくらいの花飾りで飾るくらい。
今日の水着選びは、それでいいと思ったんです。
地味でもいいかな。
そんな、小雨です。

お兄ちゃん、どう思う?

こんなふうに
ささやかな決意をして
お買い物に行った小雨が、
立夏ちゃんのすすめに、ついその気になって
信じられないくらい大胆な水着を
なぜか選んでしまったことを。

家に帰ってきてみんなに見てもらって、
小雨ちゃん、思い切ったねー!
大評判です。
みんなが笑顔で歓迎してくれるけど、
あの、
思い切ったのは小雨じゃないんです。
立夏ちゃんが熱心に、
これしかない、って言ってくれたから
なんだけど……
もしかして小雨は、やってしまったのでしょうか。
パレオもない。
スカートもない。
言い訳なんてきかない
真剣勝負という感じの水着です。
立夏ちゃんが言うには、ストロングスタイル。
ガチンコなんですって。
お店で試着してみて、
恥ずかしい、
でも
これなんだ!
と思って。
お兄ちゃんに喜んでもらえるかもしれない、
と、なんだか体が熱くなって。
決めてしまったのですけど、
やっぱり、
小雨、
いきなり暴走しすぎたでしょうか。
大人しいところからだんだん体を慣らしていったほうが良かったですか?

ヒカルの偽日記

『にんじんさん』

にんじんは、
英語でキャロット。

栄養素のカロチンの名称は
キャロットが由来。
それほど、カロチンが豊富に含まれる食材らしい。

カロチンは、人間の体内に吸収されると
ビタミンAに変わる。
ビタミンAが欠乏すると、
肌がカサカサしたり、
風邪をひきやすくなったりする、
らしい。

カロチンは油に溶けやすく、
油を使った調理法で
吸収率がよくなる、
らしい。

ただ、にんじんの特有の甘さと味は
熱を加えると出てくるものだから
苦手なら、生のサラダで食べても
いいらしい。

全部、聞いた話。
自分で勉強したのは
にんじんの英語名だけだ。
もし私の不注意で
間違っていたらごめん。
教えてくれたのは、吹雪と蛍だから
詳しく知りたいなら、話してみるといい。

そんなふうに
にんじん推しの
理由は、
ただでさえ熱くて食欲がなくなりがちな
このごろ、
嫌われもののにんじんは
残されてしまう一番の候補だから。

この季節、
トマトやきゅうりは
家庭菜園で取れる。
あまり量はないし、家族全員に渡るってほどじゃなくて
新鮮な食材は貴重な感じがする。
それに、家族みんなが
育つところを見ている、
花壇の一角。
物珍しさもあって、
嫌われがちな野菜にしては、みんなよく食べてくれる。
一生懸命作るところを見てるから、残しにくいのかもな。
でも、にんじんは家では作っていないし。
畑で取れた新鮮な素材!
っていうアピールはない。
にんじんさんとかわいく呼んでみたって
味のほうは大人。
嫌いな子にとっては、
なかなか気持ちを改める機会がない
悩みの一品。

それを聞いたときは、
おなかをすかしていればなんでもおいしいよ、
と思って。
運動するといいな、
私が指導しよう、
と提案したけれど、
暑さと疲れでますます食べ物が入らなくなると
即却下。
暑さに負けず元気なのは
私とオマエだけ。
いや、そんなこともないと思うけど。
暑さに強くて、夏だって運動しておなかをすかして
なおかつ好き嫌いがまったくない
元気なよい子は
私とオマエくらいしかいない気配。
家族の悩みを聞かせてもらったのに
参考になる意見が出せなかった。
吹雪も夏の暑さに弱いタイプ。
食べたほうがいい理屈がわかっていても、
理屈では体が動かないことって、
あるらしい。
理屈に縁がない私だから、わかってやれない。

そういえば、
春風と蛍の料理を食べても
おいしいな。
吹雪や立夏の作ったアイスを食べても
おいしいな。
コンビニに寄って買い食いをしても
おいしいな。
あさひの離乳食まで
おっ!
おいしそうなのを
食べてるな!
って、声をかけたら
そこまで!?
という顔をされたほど。
いや、あさひがそんな顔をしたわけじゃなくて
ごはんをあげていた蛍に。
こんなことでは
参考になる意見は出せないのかなって
あきらめていたんだけど、
思いついた。

ミキサーにかけて
にんじんジュースにしよう!
にんじんの栄養もとれる、
熱中症対策に必要な水分もとれて
一石二鳥。
私でも、いいアイデアをひらめくことがあるんだな。
オマエも一緒に作っていいよ。
同じ大食らい同士、たまには家族にこんな形で貢献したいよな。
大丈夫、
にんじんを切るくらいできるから。
調理実習の成績は普通なんだ。
まあ、学校では親切なクラスメイトに
よく助けてもらえるからっていうのもあるか。
みんな、自慢の腕前を疲労するのが嬉しいんだな。
こんなに上手です!
今すぐでもお嫁に行けます!
どうですか!
って、
私がお嫁にもらってもいいみたいなことまで
言い出す勢い。
まさか女の子同士で結婚するはずがないし、
夢中になってしまうくらい、料理が好きなんだな。
でも私だって助けてもらってばかりじゃない。
学校の授業だ、ちゃんと勉強してる。
ほら、こう。
包丁は、
猫の手!
な?
にゃーん、
だ!
オマエも包丁を握るときは、
もう片方の手を
にゃーん、
だぞ!
ちゃんとな。
恥ずかしがるようなことじゃない。
みんな、こうやって大きくなったんだから。
たぶん。
オマエが手伝ってくれなくちゃ、一人でやっちゃうぞ。
ほら、どうだ。
私だって切るだけなら
まあまあ、それなりじゃないかな。

あさひの偽日記

『うおっば』

あーたん
うおっば

あんばっば!

うわうん
うん──
うおらば!

ふぅー。
わっちゃ。

うわっふ、うんうん。
あんば、わお!

(あさひのなまえは
 たいよう。

 だっこすると
 あついよ!

 だっこだいすき
 あせかきだいすき──
 あせもによわい!

 みずぎでかいけつだよ。
 うれしいな。

 にこにこ、うすぎ。
 はだかもいいよ!)

吹雪の偽日記

『ブーメラン』

気温は午前中から
急上昇して。
今日も真夏の一日でした。

日課のラジオ体操や、
朝顔の観察。
それぞれの朝を過ごした後。

涼しいうちに宿題を済ませたい
学生らしい努力も
空しいものとなって、
正午を迎える前にはもう
屋内のあちこちで、うちわを力なく扇いで
寝転がる姿が見つかります。
涼しそうな場所を探して
駆け回る子供たちの声が
高く響き渡る夏空は──

水蒸気も足りないのか、
上空との気温差で生じる
わずかな白い雲は
太陽の日差しもほとんどさえぎることなく。

夕方近くになって
本格的な活動をはじめようと
集まってきた薄雲が
青い空を落書きのように白く染めながらも──
積乱雲にまで発達することはありませんでした。
それでも、
さっと短時間の雨が届き、
涼しい風を運んでくれました。
この程度でいいのかもしれませんね。
やっと温度の下がり始めた空気に誘われて
一日の終わりの、少し優しくなった太陽の光を求めて
この時を待ちかまえていた姉妹が
水溜りを跳ね上げ、夕焼けめがけて駆け出していきます。
もし、もう少し強い雨が降ったら、
旅行直前なのに明日は洗濯で精一杯になってしまったでしょう。
家のどこから引っ張り出してきたものか、
おもちゃの小さなブーメランを遠くに投げては
追いかけていく子供たち。
戻ってくるものだから、追いかける必要はないと思って
見ていたのですが、
どうも投げるときの技術で
戻ってくるかどうかが左右されるようです。
ブーメランといえば、
水着売り場で君を取り囲んだ姉たちの
熱のこもった議論から漏れ聞こえてきた単語が
印象深く耳に残っています。
自分の水着を選ぶ権利は、キミ自身にあります。
結局、どの水着を選んだのかは
旅行の途中で確認できるでしょう。
水着は投げるものではありません。
どうして水着のことを思い出したのかというと、
戻ってこないブーメランの落下地点まで走って行って
頭から滑り込んでキャッチする
少し本来の目的とは違った遊び方をしている小さい子達が
雨の後の泥だらけの庭に飛び込んで濡れた服を
今にも脱ぎ捨てようと
邪魔そうにしているのを見て、
最初から水着を着用していれば
洗濯の際に効率的だったのではと考えただけで
言葉の響きも強烈な
ある形容をされる男性用水着の
言語感覚が頭を去らない、
というわけではないと思います。
私は夕凪姉と比べると、
流行歌が耳に残らないほうですから。
そもそも、水着を着て泥遊びをしていては
すぐにだめにしてしまうから、有効な提案ではないのですが。
投げ上げられるブーメランは、
大声から逃げたがっているみたいに、人の手を避けて
あらぬ方向へ向かいます。
夕立とも言っていいのか迷う程度の降雨の後、
ほのかな風は、せいぜい体感に影響するほどで
決して強くはないものでした。
それほど、予想もつかない動きを目指す道具ではなかったような。
ブーメランは、子供の遊具として利用されるものですが
その原理は、数学的な解釈を受け入れ、魅力的に思えるものです。
揚力の働きや、歳差運動の影響など
分析を始めればきりがない。
涼しい風に誘われたのか、
私としては珍しく、
体を激しく動かすと想定される道具を積極的に受け取って
実体験で分析を始めた、
あの私らしくない光景は──
もしかしたら、今日の暑さが見せた幻だったのでしょうか?
充分な技術がなければ戻ってくる見込みのない
歯がゆい挑戦を、
何度も、何度も飽きずに。
夕焼け空に向かっていくパステルカラーの回転体を
ほこりが苦手な私が、追いかけようとするなんて
暑さに揺らぐ、ただの頼りない幻のはず。
お気に入りのワンピースのすそに跳ね上がった
まだらの泥汚れが、
答えを知っているかもしれません。

夕焼けを迎えたその翌日に
晴天がやって来るという言い伝えには、
ある程度の科学的根拠があります。
明日は、こんなに暑くならないといいですね。

氷柱の偽日記

『前日』

いよいよ明日は
家族旅行、出発の日。

で。

夕凪が熱を出して
寝込んだのが
昨日の夜。

というわけで
今日は
運命の一日だったわ。

まったく。
日ごろの暑さやら
このところ集中してやっつけた宿題やらで
疲れがたまっていたのかもしれないけど。

でも、
昨日の夕立ちの後で
涼しくなった日暮れ時に、
外で遊んで泥だらけになった服を
洗濯機に放り込んでから、
調子に乗って
そのまま何も着ないで
パンツ一枚になって
飛び跳ねたり
踊ったり
ベッドに飛び込んで
泳ぐ練習をしたり
していたらしいから。

誰かが注意すると、
そのたびに
いま服を着るところだから!
と、
蕎麦屋の出前みたいな言い訳をして、
晩御飯の時にはもう鼻水をたらしていたわ。
とうとう、ラジオ体操に欠席一回。

私が見つけていたら
おしりをひっぱたいてでも
服を着せていたのにね。
ちょうど、叩きやすそうな格好だもの。

下僕も、水着を着ているときは
同じような半裸なんだから
叩かれたくなかったら
悪さをしないようにね。
どうしてもというときは、
覚悟して。
おしりに気をつけることね。

夕凪は絶対に一日で治すって言い張ったけど、
もしも夕凪の熱が
今日のうちに熱が下がらなかったら、
無理をさせるわけにはいかないし
旅行は中止。

誰かを置いて出かけるなんて
家族旅行じゃないもの。
もし強行して、よけいに具合を悪くしたら
絶対にいけないし。

飛行機やホテルには、
今夜のうちにキャンセルの連絡をしておく
予定になっていたけれど。

気合のおかげか
マホウのおかげか
付きっ切りで見てあげた星花ちゃんのお手柄か、
夕凪にしては珍しく
不満も言わないで
一日中、ベッドで大人しく我慢していた
根性がものを言ったのか、
まさか、
本当に一日で治せるものだなんてね。

今日の夕立で
涼しく、すやすや眠れたのが良かったのかな。

一応、しばらくは様子を見ていてあげて。
本当は、病み上がりの体で長旅は良くないと思うけど
この旅行をあんなに楽しみにしていた夕凪なんだし。
宿題もがんばっていたし。
今日も一生懸命治したんだから。
それに、家族揃っての旅行なんて
誰かがお嫁に行ったり、家の外に出て行ったら、もう無理だもの。
一人暮らしを始めるようなことがあっても
予定をあわせるのが難しくなるかもしれない。
今のところ、お嫁に行く心配は全然いらないけれど
いつまでも続くか、それはわからない、
家族みんながたくさん経験しているほうがいい、
今年も、
来年も、
続いたらいい。
と、思う。
だから、
明日から沖縄旅行開始よ。
しっかり準備はしたんでしょうね?
もし忘れ物があっても、
取りに引き返すことなんてできないからね。

なぜか、霙姉様が持ってきたガイド本は
私がまとめるみたいになって、
いつのまにか計画を実行する
責任者のポジション。
ご主人様の激務が大変だと思ったら、
下僕もしっかりサポートすることね。

予約したホテルは
リゾート地の恩納村で、
一週間の滞在予定。
あっちに行ったりこっちに行ったりとか
頻繁な移動は、
人数と参加者の年齢を考えて、今回は控える判断よ。
あまりぎっしりスケジュールは入れないで、
近場を見て回るくらいの、ゆったり道中になる予定。
夕凪の体を心配したってわけでもなく
最初からの計画通り。
ちょうどよさそう。
麗はモノレールを熱心に調べていたようだけど
空港からホテルへの移動もバスになると思うわ。
あの子が無理を言い出すようなら、その時は
ちゃんと対処できるでしょうね?
それから、あんまり遠くの名所に出かけたいみたいな
お願いも却下するように。
あと、週間天気予報では
那覇のあたりは、旅行中ずっと
くもりか雨らしい。
もしも天気の悪い日に海に出たがるような子がいたら
きちんと言い聞かせないとだめ。
私たちは、沖縄でのんびりするために行くんだから。
いいわね。
旅行先で気が大きくなってしまいそうなときは、
行って帰ってくるだけで冒険なんだということを
忘れないように!
みんなが無事に過ごせるように
がんばらないとね。
もちろん、私のサポートは重要な役目だって、
わかってるでしょうね?

明日は朝早くの出発で、
長時間の移動。
小さい子たちの世話を焼きながら、だから
体力が必要になるわ。
もう家族の誰もへばって倒れたりしないように
下僕も早く休んでおくこと。
これは命令よ。
はしゃぐのはまだ早いからね!

じゃあ、おやすみ。
家族みんなが喜ぶ
いい旅行にしたいわね。

夕凪の偽日記

『タンケンタイ』

一時はどうなることかと思ったけど
ホテルについてしまえば、こっちのもの。

というわけで、お兄ちゃん!
タンケンしよう。
見て!
ここがホテルの非常口だよ!

さっき、お姉ちゃんたちに
あっちだよって教えたら、
防災意識が高くてえらいね、
って褒めてもらえた!
氷柱お姉ちゃんだけは
じっとしていることもできないの、
ってあきれてた。
お兄ちゃんは、どう思う?
夕凪、えらいかな?
それとも、落ち着きがないかな?
実は、氷柱お姉ちゃんが正しいの。
じっとしていられないだけなの。
いよいよだもの。
夕凪の旅が
始まってしまったもの!
家族一緒の、沖縄旅行。
ママだけはお留守番。
お仕事って大変だね。
同じテレビの仕事、
海晴お姉ちゃんは夏休みがとれて、よかったね。
まだぜんぜん売れっ子じゃないことに
感謝だね!
って言ったら、怒られたけどね!
海晴お姉ちゃんのチョップは立夏ちゃんに受け継がれつつあるけれど
まだ現役の痛さなのです。
こんなふうに、ホテルを駆け回っているだけだってことに
気付かれてしまったら
また怒られるかな?
調子に乗りすぎて、周りの人に迷惑をかけてしまったら
いけません。
旅行のルール。
観光地は、うちの家族だけのものじゃない。
麗ちゃん製作のしおりにも、グルグルマークつきで
書いてある注意事項。
夕凪、ちゃんと迷惑にならないように
大人しくタンケンできると思うな。
それに、クーラーが効いて涼しいからって
部屋にこもってなんていられない。
海に出かけるのは明日までおあずけ!
そりゃそうだ。
みんな、移動で疲れた。
わかっていても、盛り上がる気持ちは
止められない。
気をつけて歩きまわるよ。
暴れているのがばれないように、
じゃなかった。
知らない人に迷惑をかけないように。
たくさんの人が集まる、リゾート地。
みんなで気持ちよく過ごすためのマナー、
守りたいな。
あのねーお兄ちゃん。
夕凪、大暴れだけどさ。
明日からも、近くの海に泳ぎに行くくらいで
そんなに遠出はしないじゃない?
夕凪の元気が
沖縄中にあふれ出しそうなほどなのに
海水浴で収まるのかな。
本当は、ホテルの中だけじゃなくて
せっかく来たんだもの。
島から島へ飛び回って
沖縄をしゃぶりつくす一週間にしたいな!
水族館に出かける予定になっているのは超楽しみとして、
動物園に行って、ヤンバルクイナを見たい。
さんご礁を探しにスキューバダイビングしてみたい。
マリンスポーツはいっぱい。
石垣島のマングローブだって興味があるよね。
おいしそうな夏のスタミナ源、
沖縄料理も夕凪たちを待っている。
めんそーれって言って待っている。
あと、歴史ある首里城、
は、名所らしいけど面白いのかな?
などなど、
言ってみたところで、無理なんだけどね!
夕凪の今年の夏休みは、一度きりなのに!
これでいいのか!
でも、思ったんだけど
夕凪、沖縄名産はなんでもかぶりつきたいのに
泡盛は無理。
子供にはお酒の味が分からない。
そんなに飲みたいわけでもない。
だけど、海晴お姉ちゃんだとか
大人の味を、いつか体験するって張り切っているの。
そんなにいいものなの?
チョコレートボンボンがおいしいお年頃になると
憧れるらしいの。
だから、家族は沖縄にはまた来るよ。
おいしそうな泡盛を求めて、またやってくるよ。
夕凪がお酒を飲める年になったら、
また家族旅行に沖縄に来て飲もうね!
そう決めたから、夕凪は今はまだ
沖縄まるかじりはいいかって。
予定通り、海で泳いで過ごすよ。
ここに泊まっているかぎり、海水浴に行きたい放題。
泳ぎまくり。
一週間も泳いでいたら、どうなるのかなあ。
泳ぎの得意な体に進化して、うろことか生えてくるかなあ。
足も魚に変身する?
そうなったら、
人魚姫はおにいちゃんと結ばれて
いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
あのお話は悲しい終わり方らしいけど。
でも、お兄ちゃんだって今日見たでしょ?
広い空と、
気持ちのいい潮風。
幸せになれないわけがない。
昔の人魚姫も、早く沖縄に来ればいいのにね。
泡になってる場合じゃない。
もっともっと、泳ごうよ!
沖縄中にとどろく元気なエネルギー、
それが女の子、
人魚姫!
泳ぎが得意でも、
準備運動はしっかりね!

待ちきれない夕凪は
今日はホテルのタンケンタイ。
こんなに胸をわくわくさせるんだから、
ホテルのどこかに
何か秘密があるに違いない。
もしかしてマホウの力かな?
こっちは大きなホール。
何人集まったらいっぱいにできる?
あっちはきれいで広い玄関。
夕凪たちが元気に飛び出して行って
疲れたーって駆け戻ってくる
巨大なチェックポイント。
人がいっぱいのホテルは、
どれだけかかったら見て回れるの?
明日の海水浴がまだまだ遠い先のことに思えるほど
待ちきれない夜。
このタンケンで、何を見つけるのかな。
休めと言われたって
そう簡単にはできない夕凪です。

虹子の偽日記

『りょこう』

なつやすみが
はじまってから、
おうちのみんなは
あつさでふうふう。

まいにち
まいにち
まなつです!

こんなとき
だからこそ。
ひこうきにのって
バスにのって
ホテルについて
レストランにいって
くだものがはいった
ジュースを
ちゅうもんしよう。

うーん、
にじこ、
りょこうちゅう!

あついあついひを
すごそうよ。
こころもおどる
りょこうです。

ひこうきをおりると
もうそこは、
みなみのしま。
ハイビスカスのかおりがするよ。
ヤシのきがならんでるよ。
はんそで、
むぎわらぼうし、
あおいそらのいろ、
しろいくもの
さわやかなにおい。

ついに
とうちゃくだ!

あーちゃんも、
りょこうさきでたべる
トロピカルりにゅうしょくに
ごまんえつ。
そこにはいっているのは、
みなみのかぜと
むねのときめき。

そらちゃんがいうよ。
うみがみえるよ、
にぎやかだ。
ここは
りゅうぐうじょうか?
ちがうの、そらちゃん!
おきなわだよ。

さくらちゃんがいうよ。
だっこしてねる
くまさんのぬいぐるみを
わすれてきちゃった!
うわーん、かなしいな。
もうおうちにかえりたい!
ないちゃった。
さくらちゃん!
これからにじこたちは
ここでくらすのよ。
がまんしなくちゃ!
くまさんは、たのもしいぬいぐるみ。
かっこいいよ。
いっしょにねむると
こわいゆめをおいはらってくれるよ。
だから、くまさんがいなくても
おにいちゃんがいっしょにねてくれたら
へいきなの。
かっこいいよ。
にじ、なにもわすれてないけど
おにいちゃんといっしょにねる!

とうちゃくのひのばんごはんは
ぶたにくステーキ。
にじはまだたべられないから
おこさまランチ。
おいしいよ。
おにいちゃん、もうおとなだから
おこさまランチがたべられなくて
かわいそう。
ちょっとあげる!
おこさまランチにはいってた
おほしさま。
うみのしまに
そらからふってきた
ごちそうだよ。
だいじなものだけど
おにいちゃんにあげる!
おきなわのあじがする?

きょうから、おきなわでくらす
にじこたち。
あたらしいしごとをするの?
うみのしごとは、
やっぱり、かいぞく?

おてんきおねえさんだった
みはるおねえちゃんは、
きょうから
かいぞくおねえさん。
おてんきぼうと
よほうのうでまえは
うみのそこにしずめた。
かぎづめと
よこくじょうがチャーミング。

なぞのおねえさんだった
みぞれおねえちゃんは、
きょうから
なぞのかいぞく。
あんこをうばう
なぞのかいぞく。

にじこもがんばって
かいぞくのしごとを
しなくっちゃ。
えんかいをする?
うたをうたう?
おさけはだめだから
ジュースでえんかい。
ざいほうをみつけだしたら
さからうものの
いのちだけはたすけてあげようね、
おにいちゃん。

霙の偽日記

『繁栄』

寄せては返す潮騒と
ぎらぎら照りつける太陽。
海を求める妹たちのおたけび。
砂粒までもが意思を持って燃え上がろうとしているかのような
夏の光景を見ていると、
なんだかこのまま
全てが塵になることまで忘れて
生命が脈動を伝えながら
連綿と続く永遠を信じてしまいそうになる
活気に溢れた浜辺に
私は立っている。

本当は、歓声が届きそうな
あの高い空の向こうには
静寂の絶対零度を抱く宇宙が
広がっていて、
大きすぎるように見えるこの星も
いつかは一粒の塵に変わっていくことが
疑いなく決められているのだと
知っているはずなのに。

繰り返す波の鼓動が
未来永劫まで
いつか人間が子々孫々を伝え、
やがて消え去るその時を越えてなお、
ずっと──
変わらずこうして
揺るぎのない営みを続けているような
そんな気がしてくる。

生命の活動を感じるのは
海が命の源だというばかりではなく。
溢れるエネルギーをこの見に受け取るのは
太陽の光が私たちを育んだためとは限らず。
命あるものの繁栄を祝福するこの気持ちは
ただひとつきりの理由、
今ここに生きることを信じて
持てる命を限界まで燃やし尽くそうとする
家族たちの過ごし方を見てのこと。

ここは、無の回帰を思わせる要素が
勢力を失う傾向にあるのかもしれない。
形ある何もかもが遠い未来に滅びを迎えるはずなのに。
暗黒に思いを馳せるあの魅惑すら溶かしつくすのか。

野生に返り、
滅びなど知らないで
ただ刻み込まれた本能のままに
繁殖を続ける
そのような快楽も、この地にはあるのだろう。
広大な地球を知り、向かい合う
家族たちの歓喜がそれを伝えているようだ。
オマエも──
野生に戻ってみたっていいはず。
魂の叫びを見せつける家族に、
あのうるさい氷柱も、きっとこの海の前では文句なんて言わない。
保証はしないが。

海水浴初日の今日、
海に向き合う姿勢は家族それぞれ。
波にくるぶしをひたして歩くだけで
満足する者、
おびえてその先へ進めない者、
海が穏やかな様子を注意深く観察して
いよいよ兄や姉の手を取って
泳ぎの練習を始める者や、
最初から迷うことなく駆け出して行く者、
いろいろだ。
砂浜を活動範囲にしていても、
ビーチボールを追いかける者もいれば
砂遊びにひたすら飽きず興じる者、
ビーチパラソルの下で寝転がって過ごすのが
目的の者、さまざま。
私は日差しを避けて、
家族に何かあったときにはすぐに飛び出せるよう
待機する役目。
決してぐうたら弛緩しきっているわけではないが
そんなふうに見えることは否定しない。
しかし、いつでも鷹の目を光らせている。
もしも波間に、家族の誰かが
ポロリの瞬間を迎えるのを見つけたら
流された水着を届ける準備は
万全だ。
今年は何人が、背伸びをして水着を選んだことだろう。
あるいは、家族たちの集う浜辺に起きる小さなイベントを
避けられないような水着を?
それは、やがて確実に訪れる
この地にとっては、滅びよりも似合いの瞬間なのだろう。

家族みんなが心地よく疲れきって
夕食の後は眠そうにしているのは揃って同じ。
一日の終わりを惜しんで抵抗しようとしたり、
素直に睡魔に襲われるまま陥落を果たしたり、
それでも、明日になれば
疲れなど忘れて、また海に出て行くのも
同じなのだろうと願いながら
今夜は眠ることにしよう。

せっかくの星空だが、
月明かりの下で、遥かな宇宙の真理に思いを馳せる夜は
しばらくは堪能できそうにないな。

観月の偽日記

『シーサー』

かつては、
霊峰で修行を積んだ
偉い人でもない限り
空を飛んだりはできなかったが。

時代は移り変わるもの。
飛行機に乗ってどこまでも飛べるようになって
空の不思議たちと翼を並べて、わらわも
思いのままに遠くへ行くのじゃ。
飛行機に乗って、
きゃ、
きゃくしつ
じょうむいん
さん?
にも、会ったぞ!
蛍姉じゃが惚れ込んで真似ている
あれが本物じゃ。
生のアテンションプリーズじゃ。
憧れの職業。
狐が化けたわけでもなく
狸が化けたわけでもなく
蛍姉じゃでもなく
本物!
厳しい訓練をつんだ、本職のひと。
修行時代には、本当にドジでのろまなかめだったのかと
怪しむほど
てきぱき、自信にあふれて
飛行機の運航を支える
すてきな働くお姉さん。
あまりにも立派で、
見ていると
寿命が三年は延びそうじゃ。
たいへんお世話になったの。
兄じゃよ!
同じ姿勢で場所に長く座っていると
体に悪いという。
飛行機に乗るときは、
たまに少し体を動かしたり、
水をもらわないといかん。
遠慮なくお姉さんにお世話になるのじゃぞ。
飛行機をよく知る先達に、
少々遠慮しながらも
きちんと甘えるのじゃ!

空を飛ぶ
大きな力を手に入れたとて
過信は禁物。
人が大空の主であるかのように
我が物顔でのさばっていても、
妖怪たちにつゆほどの影響などなく
変わらぬ営みは続く。
この地に来て知ったこと。
土地の守り神は、どっしりと腰を下ろして
小さな人間たちを見つめている。
ホテルのお庭にも見つけたぞ。
悪い子を戒め、
善行を薦める
いにしえよりいます守護。
このホテルも、シーサー様の像に守られておるのじゃな。
ありがたいことよ。
人の身には限界がある。
わらわをとりまく畏敬すべき力に支えてもらいながら
人として霊たちに感謝をする
千年二千年と変わらぬ関係。
少し便利にすごせるようになったとて、
忘れてはならぬ謙虚な心。
あまり、悪いことはせぬようにな。
怒られるぞ。
おねしょを隠したり
にんじんを残したり
みみずにおしっこをかけたりしたら
シーサー様がちゃんと見ていて、
こら!
いたずら好きの
あくたれこぞうめ!
心に語りかけてくること、請け合いじゃ。
それは言葉ではなくとも響いてくるはず。
きちんといい子にして
礼を尽くせば
気持ちもさわやか。
いいことありそうじゃ!
明日は、旅歩く足を少し伸ばして
琉球村でお祭りの踊りを見たり
着物体験をする予定。
華やかでかわゆらしい伝統衣装に袖を通して
シーサー様にも認めてもらえるであろうか。
それから、予約をしてあるのが
シーサー絵付け体験だそうな。
ありがたい神様に
静かな祈りを捧げる儀式
ということは特になく、
かわゆいちっちゃなシーサー様に
きれいな色を思い思いに
一生懸命、塗ってさしあげて
みんなで楽しむのだと聞いた。
わらわのシーサー様が
一番きれいな姿になってもらえるといいがな。
兄じゃも、がんばって良いものにしないと
シーサー様が吠えかかってくるかもしれぬ。
がーお!
一週間限りの滞在ではあるが、
遠い土地からやって来たこの家族の幸せも
どうか支えてくださいますよう。

立夏の偽日記

『おひさま』

こいぬかな
こいぬじゃないよ
おししだよ。

南国おししは
カラフルおしし。

強烈なお日様と
青い海に
よく似合う
原色キラキラ。

キュートです。
ていうか、
みんなの塗ったやつ、
どいつも
派手だネ!
この子の顔がもう自己主張強いから?
きれいな色が似合うのは。
絶対、保護色って顔じゃない。

どんな色を選んだって
黙って受け入れてくれる気がする。
強そうなすまし顔。
20人分、それぞれの派手な色。
絶対これがかっこいいと
お姉ちゃんも妹もお兄ちゃんも真剣だった
全員の色を
たくみに着こなす
ファッションモデルみたい。
おしゃれシーサーがずらり、
こうして見ると
女の子19人と男の子1人の
パンツを干した物干し竿か
水着で出て行く砂浜か
いい勝負ができるネ、ライバルだ。
いくら伝統の生き物だからって
負けてられないもん。

伝統衣装を
着付けてもらうリカは
ワクワク
かわいいかな──
ドキドキ
似合うかな──
振り子のように
やる気と弱気を行ったり来たりのところから
はじまりました。
周りを見たら、
みんな、結構いい。
純和風の麗ちゃんだって
すっかり、海の王国に育った
ウワサの美女。
船に乗ってお兄ちゃんが迎えに来るレベルだ!
似合うのは、
健康的に焼けたから?
美白を死守するのは
人をリゾートに引きずり出す、あの太陽の下では
意味のない決意だよね。
さて立夏は
どちらかというと、
いつも心にミニスカート。
胸の奥から飛び出す元気はまるで
ローラースケートとポニーテール。
海は海でも
たぶんウェストコースト。
バーベキューをするのなら
かなりのアブラミびいきだ。
蛍おねーちゃんに作ってもらう浴衣も
裾つめようよ、のリクエストだヨ。
立夏の思春期の生肌が
呼吸をしようと外に出たがっている。
こんなんで、
きれいで上品そうな琉球の上流ファッション。
ダイスキな人に、かわいいって言ってもらえるでしょうか?
笑われない?
オニーチャン、どうだった?
リカはね、
もともと派手なので、
日本人から見ても
わあオリエンタルだ、
って感じの服は
意外にも合うようだ。
シーサーになんか負けていられない。
こんなに素敵な姉妹の誰にも
負けられない。
着飾ってしまったらリッカも
キラキラしてて
太陽みたいで
一緒に住んでる男の子だって
惚れ直すほどだと思ったのデスが
どうでしょう。
リッカにこれは
一応、ありだな
くらいに思ってもらえたら
嬉しいな。
心も熱くなってくれたなら
嬉しくて嬉しくて
飛び跳ねちゃうな。

これで、沖縄旅行中の大イベントは
あとは美ら海水族館行きが待っているのみ。
出発前は不安だった天気も
ここまでは、嬉しい晴れ続き。
家族一同が認める晴れ女として
やるしかないね。
別に何かするというわけじゃないけれど。
水族館には、日曜日に行くよ。
バスで片道2時間以上の旅です。
移動だけでかなり大変そうなので、
金曜、土曜はほどほどの活動で
体力を温存しておけと
氷柱お姉ちゃんのアドバイス。
あんまり、海に出て
そこまでしなくてもというほど
全身の筋肉を余すところなく使って
海水浴を満喫したり、
砂浜を特に目的も決めず
あっちにこっちにダッシュしたり
オニーチャンと
時間も場所も関係なく
あっつい汗を流してくっつきあったり
したいから
無理な相談だと思うヨ。
誰も止められないとわかっている
浜辺を過ごそうね。

小雨の偽日記

『帰宅』

ただいま帰りました!

私たちが
毎日生活している
このホテルのお部屋に。

なんだかすっかり馴染んで──
虹子ちゃんが言うとおり、
このままこの場所で暮らしていけそうな気が
するほど。

嬉しいのは、
海が見える
いい眺めだけではなく。
冷房が効いた
心地よさだけではなく。
ここにいれば、家族が揃う。
一人で帰ってきたときも
誰かが待っているときも
やがて必ず。
みんなが帰ってくる場所なんだと
いつのまにか
理屈抜きで体が覚えてしまったよう。

家族がいてくれる
安心のお部屋です。

吹雪ちゃんは
冷房も嬉しいみたい
かな?
気温が高いと、とても大変そう。
熱を逃がすのが苦手なのでしょうか?
それとも、体の中に回転の激しいパーツがあって
私たちよりもずっと温度が上がりやすいのかも?
頭の回転が速いって、とっても大変なのかもしれませんね。
ときどき心配になるの。
吹雪ちゃんは、甘いお菓子と比べても
涼しいところが大好き。
もしも悪い人が、お菓子じゃなくて
冷房で誘って、連れて行こうとしたら
暑さで判断力が弱りがちな吹雪ちゃんは
もしかしたらついていってしまったり
しないでしょうか。
まだ小さい吹雪ちゃん。
見ていてあげてくださいね。

そういえば、麗ちゃんの小さい頃、
鉄道の話で誘われたら
ついていっちゃうんじゃないか?
小雨が勝手に心配していたことがあったけど
いくら好きなものでも、麗ちゃんは
ああ見えてしっかりしているから安心です。
でも、しっかりしすぎて
自分の意見を貫こうとしすぎて
ときどき強情で、
お姉ちゃんたちがあんまり怒ったら、
思いつめて家出してしまうんじゃないかと
不安になることがあります。
優しいお兄ちゃんになら、お願いできます。
本人はいいって言うかもしれないけれど
麗ちゃんのこと、
気にしてあげてください。

そうなると、しっかりしていない小雨は
お兄ちゃんがいるよ、ってだまされて
ついていってしまわないでしょうか。
でも、ただでさえ忙しいお兄ちゃんに
これ以上負担をかけるわけにはいかないし、
小雨のことは気にしないでいて。
なんとかして
自力でもどってこられるように努力します!

部屋に帰ってくると、
ほっと息をつく
沖縄旅行。
家にいるように快適でいられます。
いいホテルで本当によかったですね。
月曜日にチェックアウトするまで
あとは、予定が詰まった
土日を残すのみ。
土曜日は雨が降るということで
おみやげなどのお買い物に。
日曜日は、みんなが楽しみにしている
美ら海水族館の見学です。
なんだか、あっという間でしたね。
気ままに泳いでいられるのも
あとは明日、
お買い物の後で余裕があったら
雨でも屋内プールがあるから
という話ですけど、
今のところはみんな、それどころではないみたい。
蛍お姉ちゃんは、珍しいおみやげに興奮しすぎないようにと
自分に言い聞かせている真っ最中だそうです。
お兄ちゃんも、いざとなったら止めて欲しいって頼まれましたか?
小雨がいても何もできないと思うので、
もしもの時には、蛍お姉ちゃんの相談に乗ってあげてほしいです。
そういうわけで、明日はみんなそちらに意識が行っています。
沖縄の太陽に背中を押してもらったおかげで
ようやく着ることができた小雨の水着も、
もう今年の出番はなさそうです。
ヒカルお姉ちゃんが、海が青すぎるだけで
なぜか泣けてきてしまったというので
その横に並んで、家族みんなで海を見た旅行。
とっても短く感じる旅行。

小雨も、
家族に助けてもらったり
飛行機でも、バスでも、ホテルでも
従業員さんや、見知らぬ人にまで親切にしてもらって
楽しく過ごせています。
まだ、家族以外の人は怖く感じることも多いけれど
みんなが帰ってくるホテルの部屋があるおかげで
どうにかやっていけています。
あと数日、何事もなく
私たちが本当に暮らしている
嬉しい家へ無事で帰れるよう、
小雨はがんばります。

ママは荷物になって大変だから
おみやげはいらないって言ってましたけど
それもさみしい気がします。
小さくても、控えめでも
気持ちを届けることができたらと思うの。
明日は、何かいいものが見つかるでしょうか。

さくらの偽日記

『なきむし』

うっ、
うっ、
うわーん!

さくらかなしいの。

おかいものの
だいじけん。

たいへん!
こさめおねえちゃんが
ひゃくえんだまを
おとした!

それをさがした
りっかおねえちゃんが
なぜか
ごひゃくえんだまを
ひろった!

そのよこで
せいかおねえちゃんが
あきかんを
ひろって
ごみばこにすてた!
ぽいすてきんし!

ごみをひろうのって
えらいね。
でも、ちいさいちいさい
さくらくらいのこは
われたびんでけがをしたり
よごれがついちゃったり
するかもしれないから
ごみがあったら
おとなにいいましょう!
さくらが、えらいおねえちゃんになれるのは
ずいぶんさきのこと。

またまた
おかいもの。
やったね!
ほりだしもの。
しんせんなゴーヤが
おねうちかかく。
ほくほくかいこんだ
ほたるおねえちゃんは
かえってきてから、
にもつになっちゃう
どうしようって、
うろうろかんがえこんでいます。
おにいちゃん!
ほたるおねえちゃんは
にもつをながめてあるいて
かんがえながら
ぱくぱく
ぱくぱく
たべてるの。
たってたべるの
いけないの!
バーベキューのときだけです!
かんがえるって
おなかがすくね。
おにいちゃんも、なにかたべる?
かっておいたおやつがすくなくなってきたから
おみやげをいっこあけて、みんなでわけた
ちんすこうショコラ。
かりかり
よくかんで。
さくらがゆっくりたべても
とけないチョコの、
あまいあじ。
ゴーヤどうしよう。
このまえ、バーベキューしたけど
あしたもやいてたべる?

あしたのよるが、おきなわに
ありがとうとバイバイまたねの
さよならばんごはん。
あさってはね、
ごはんはあさごはんだけ。
おうちにかえるの!
さくら──
かなしいの。
おにいちゃんと
まだここにいる!
もっと
おきなわで
おにいちゃんと
バーベキューたべる!
うわーん!
どうして、かえってしまうの?
たのしかったのに。
うみにはいって、
めずらしいおやつをたべて、
よるはおにいちゃんといっしょに
おふとんのなか。
あさがきたら、シーサーがいる
にわをあるくよ。
おうちではできないんだもの。
まだりょこうする!
さくら、これから
いっしょうりょこうしたいけど
そんなのいけないことなの。
わーん!
わーん!
さくらをなきむしにさせてしまう
りょこう。
たのしいのに、どうして?
そしたら、みんながね、
おうちにかえったら
さくらちゃんのだいすきな
ひよこのおちゃわんとおはし、
かんうとサマンサとアントワネットと
アルエルとひゃくごけい、
それに、あさのラジオたいそうが
まっていてくれるんだからって。
そうだった!
おにいちゃんとまたラジオたいそう
できるね。
まいにちのあさの
おたのしみです。
おうちにかえったら
おおきなシーサーとは
おわかれだけど
ちいさなシーサーは
つれていけるから
よかったね。

あしたは、ひこうきのいちにちまえ。
まるいちにち、おきなわにいられる
このなつさいごのひ!
すいぞくかんにいくんだよ。
たくさんさかながいるの。
ちいさいさかなや
おおきいさかなや
かわいいさかなや
こわいさかな。
こわいさかなって
こわいかな──
こわかったら、おにいちゃんにかくれていい?
おおきなすいそうがあって、
それはもう
おおきなおおきなすいそうに
さかながみずのなか。
そんなにみずがいっぱいあるところにいって
さくら、ちゃんとおよげるかな。
じゅんびうんどうしてから
いきます!

綿雪の偽日記

『明日には』

うっとり
かいてき
海の中。

いったい
海の水を
どこからどこまで切り取ったら
こんなに大きな水族館になるのだろう?

青く光る水の
ふもとを歩くと、
実際に海の底を散歩する
そんな経験なんてないけれど
こんなふうなのかしら?

広い世界で
見たことがないものがあって──
そこには、
おもしろい魚が
たくさん。
まだ一年生のユキには
本で読んだものとも違う、
テレビで見たものとも違う、
想像だってできなかったような
不思議な景色。

水族館と聞いて
ぼんやり思い浮かべていた
子供っぽい空想は
とても、こんなに大きなものを
作り出せない。

驚くような
大きな水槽に
こんなにも
声も出なくなるほど
たくさんの
新しい発見が
すいすい
ゆらゆら
どの子も、その魚らしい動きで
横切って、浮いて沈んで
どこか気持ち良さそうに
泳いでいます。

おうちの子たちの
きらきら見つめる大きな瞳は
旅行中にいつもあったその表情と同じ。

たくさんのことを見つける旅行。
知らなかった新しいことを
いつのまにか、両手からこぼれそうになるまで
集め続けていた
ユキたちの家族旅行。
明日は飛行機に乗っておうちに帰ります。
みんなは何を見つけたんだろう。
ユキみたいにたくさん?
びっくりするね。
ユキの今の気持ちが
ひとりだけのものじゃないなんて。
同じ気持ちで、
いろんなことがあったね、
楽しかったねって
砂浜でも
水族館でも
ベッドに入ろうとしている今も、
みんなの顔が伝えているよう。

お兄ちゃん、
ユキはこんな顔をしているみんなを
前にも見たことがあるよ。
一日を一生懸命に
楽しく送って、
おうちの鏡で髪をとかすとき
そこに映っている家族の顔。
そんなみんなとちっとも変わらない
ユキが見せている、
今日も一日を過ごせました、
いろんなことがあったな、って
満足そうにしているユキの表情。
せっかく旅行に来たのに、
おうちにいるのと同じだなんて変かしら?

毎日過ごしている嬉しいことに、
旅行に出かけて
少し離れた場所で
振り返ってから気がつくなんて
不思議ですね。

おうちに着いたら、
とうとう戻ってくる
ユキのいつもの毎日に
大きな声でただいまを
言わなくちゃ!

麗の偽日記

『それどころじゃない』

旅は嫌いじゃない。

心残りといえば
ゆいレールには乗れなかったけれど──
いい旅でした。
私は自分で思っているよりも
窓から見える海に
心を動かされるのかもしれない。

また行こうねって言ってる子も
多いから
今度は違うルートを通ることになるかもね。

それともあなたは
また同じ場所に行きたい?

家に帰ってきて
これからは、元通りの日常が始まります。

旅もいいけど
これはこれで。
また近くを歩くと
目が行く線路に
出会いがあるかもしれない。
一瞬、きらめいて
過ぎていく
またたくような踏切の
胸のざわめき。
旅行の間、時々懐かしく思った、
私が遠くに置いてきた風景。
帰ってきました。
私の住む町にも、
いいところがたくさんあるって知っている。

それに、家には
慣れ親しんだものが
たくさんあって
ほっとする。
そうだ、一応言っておくけど。
吹雪ちゃんの朝顔に105系の名前を付けたのは
私じゃないから。
いえ、本当に。
ただ、朝顔の世話を手伝っただけなんだけど
一緒に作った、感謝の気持ちだって。
私なら、もうちょっと名前を付けるときに悩むけど
まあいいか。
それから、さくらちゃんはうまく言えてなかったけど
アルエルじゃなくて
人魚のアリエルね。
アールとエルじゃあ、右と左ね。
しかも位置が逆だし。
帰ってきたら、暑さのせいで
元気がなくなって見える花。
時期的に、そろそろしぼんでしまうのかな。
吹雪ちゃんがまたお世話をしてあげたら
お母さんが帰ってきたと思って
また元気になるのかな。
妖怪の研究も含めて、
生命に関心があるこのごろの吹雪ちゃん。
妖怪って生き物でいいの?
本物のシーサーには会えなかったみたいで、残念ね。
琉球村でシーサーに色を付けるときは
本物のサンプルがないから困っていたみたいだけど
その顔が、まるで
どんと来い!
と言ってるみたいだったって。
望むところだ!
と。
待ってました!
と。
そんな顔だった?
お兄ちゃんの顔はあんなに怖くはないのに
なぜか、いつもの優しいお兄ちゃんを思い出して
つい夢中になっていたって。
自分で気に入るくらいにはできたみたいで
良かったわね。
私のは、あんまりかっこ良くならなかった。
あなたが水着を選ぶとき、
私の意見もみんな気にしていたけれど
あまり参考にしないほうがいいかもね。
ましてや、男の水着なんて興味はないし。
浜辺は慣れないことがいっぱいで
水着に気を使うどころじゃない。
私の水着は、立夏ちゃんには
これほどのものがあるなんて!
と驚かれるほど
大人しい水着。
うっとおしい水着選びの買い物だったけど
まあ、このくらいなら。
それなりの色合いの水着。
面倒が多そうで
ちょっと心配だった海水浴も、
思ったより、快適に過ごせました。
水着のおかげだとしたら、感謝するところなのかな。
複雑な気分。

帰ってきて、困ること。
それは、まだまだ続くこの暑さもあるけれど
たまった洗濯物がすぐ片付くのは助かるところ。
小雨ちゃんの水着が冒険的だったのは
夏の暑さがいけなかったからで
小雨ちゃんに文句を言うようなことじゃない。
と、思うようなあの頼りない布地も
簡単に乾きそうなものをさっそく洗濯して
物干し竿でひらひらしている姿を見ると
なんだか頼りないくらい。
あんなに活躍していたのに、
今年はもうお疲れかな。
問題は、これだけあると
どうしても一家総出の大仕事になってしまうこと。
嫌ってわけじゃなく、
なんて言うか、
水着も、下着もあるのに
男の人に手伝ってもらって
いいのかな。
よくないわよね。
霙姉様は、家事も大変だから全員の手を借りないといけない、
恥ずかしさとかそれどころじゃないって
達観したようなことを言ってる。
それはまあ、宇宙の大きさに比べたらささいなことだとしても。
私には、それどころじゃないで済まない問題。
あんまり洗濯物をいじりまわされたくないから
私が片づけをがんばるからって言ったけれど
えっ、ていう顔をされたというか
いやいや、という顔をされたというか
そうよ、たたみものなんて上手にできないわよ。
自分の好きで不器用に生まれたわけじゃないのに!

旅行から帰ってきて
さっそく一騒動のはじまり。
大きなお仕事になりそうな、どっさりお洗濯。
まあ、旅行の計画で
団体割引の相談まで出てきたときには
うちの家族は普通とは違うところもあるのかなって
そんな気がしてはいたけどね。

青空の偽日記

『ねぼすけ』

おへやに
ただいま。
かぞくに
ただいま。

おかえりなさい!

かえってきたよ。
りょこうから。

おうち、
げんきだった?

ひさしぶり、
ふるいくつ。
すなばであそぼう、
ふるいくつ。
どろだらけ。
そうそう!
こんなだった。
まだつかえるから
よごしていいくつ!
ひさしぶりだから
きつくなった?
そら、まだまだふるいくつはいて
あそびにいく!

ひさしぶり、
えほん。
あいかわらずげんきに
ガラスのくつ。
ぬぎすててはしれ!
なんどよんでも
こりずにのみこむ
いっすんぼうし。
おなかがいたくなるよ。
かわりない
えほんのなか。

おうちはそのままよ。
りょこうがおわったら
おうちでねるよ。
ひさびさに。

かえってきてから
さいしょのあさ!

もう、
そらがあさおこすおしごと、
ないない。
やだ!
やだやだ!
そら、まいあさみんなの
おへやにいって
くすぐっておこす!
みぞれといっしょに
へやをまわる!
なんでだめ?
そら、おうちでもまいあさ
はやくおきるよ。

ねてるところに
はいりこみたいの!
しずかにおきてて
こっちがぎゃくに
くすぐりかえされたいの!
やるかやられるか、
じゃくにくきょうしょくだ!
やせいのおきて。

くうか
くわれるか。

くすぐるか
くすぐられるか。

おどるか
おどられるか。

だいしぜん!

どうせなら
おどろうよ。

なつやすみのおわりに
ぼんおどりがあるよ。

なつやすみってなに?

ぼんおどりは
おしえてもらった!
よーし、
やるぞ!
おうちにかえってきても
おどる、
そらはおどる。
みんなおどる。
たのしいおどりを
おどる。

でも、
おうちでは
くすぐっておこしちゃだめ。
おにいちゃんも
おこしちゃだめ?
おにいちゃんなら
いい?
いいでしょ?
ねて!
すぐねて!
いま!
いますぐ!
くすぐるよ。
はやくはやく。
ねた?
もうねた?
ぐっすりねた?
ねたふりしてそらをおどかすの?

なつのうみは
しずかな、なみのおとが
とおくからきこえると
ねむくなるんだって。

おにわで、はるかが
きれいなふくを
たらいでていねいにみずあらい
しているよ。
ちゃっぷんちゃっぷん
みずのおと。
おうちにも、なみのおと。
ねむくなった?

あさひの偽日記

『わおっば!』

わ、
わ、
わおっば!

あんばばば!
おおんばっ!

ふうぅ
ううう──

ふえぇ……

おんば、ばっ!
あーたん
わっちゃ。

あいあい
あわわ。
ううんお!

(た、
 た、
 たいへんだ!

 うみが
 なくなった!
 どこにもないよ!

 あんなにおおきなものが
 きえちゃうなんて──

 よのかなには
 ふしぎなことがあるものだね……

 このばしょ、おぼえてる!
 こっちがあさひのおへやだよ。

 はいはいで
 いそいでもどるよ。
 ついてこい!)

真璃の偽日記

『女王のお祭り』

夏の旅行も
とうとう終わってしまったわ。

楽しい時間ほど
過ぎ去るのは一瞬。

さよなら!
またね!
さざなみのエメラルドブルー。

そのうち、
一年くらいかけて
旅行しましょう!

そうなるのは──
マリーやおうちのみんなが長い休みを取れる
大人になってからね。

あら、
大人になったら
フェルゼンとふたりきりで旅行に行っても
いいんじゃない?
もう子供じゃないんだし。
大人になったら。

女王の魅力で
ホテルを貸切にしようね。
あの海も。
砂浜も。
星も月も、
おひさまだって
愛するふたりだけの
貸切。
いくらなんでも
そんなことをしたら
みんなが困ってしまうので
大人がかばんに入れていく
どうしても必要な最小限のものは
一番大事なものだけ。
お互いを何よりも大事に思う
愛し合う気持ちだけを
貸切にして
旅行に行きたいな。
お忍びね。
どこの新聞だって、取材お断り。
海晴お姉ちゃまが頼んできても
ママが頼んできても
テレビに映せない
家族水いらず。
ふたりの旅を
守り抜くわ!

まあ、そんな先の話はおいといて。
夏休みも半分が過ぎて、
みんながそれぞれ
今のうちにできることを
今だからこそ。
何をする?
宿題をする。
電車の絵を完成させる。
夏服でファッションショーをしておく。
もう少しになった夏休みを
まだまだ楽しみたくて
仕方がないの。

盆踊りをするお祭りを
小さい子は楽しみにしているみたいだけれど
お祭りがやって来たら
それで本当に
今年の夏休みは終わり。

夏休みのはじめにあったのは
盆踊り保存会の主催。
気合の入った
盆踊り精神。
暑い夏の始まり。

夏休みの終わりにあるのは
街の商店街と子ども会の主催。
イベント盛りだくさん。
のどじまんもあるし、
花火も上がるわ。
盆踊りというよりは、
去り行く夏を惜しむような
お楽しみの一夜。

いえ、一夜じゃなく
連休の間のお祭り。

もちろん、どちらも
マリーが輝くお祭り。
盆踊りでみんなの視線を集める
エレガントな振る舞い。
誰もがため息をついて眺める
手の届かない存在の
その横に
フェルゼンがいるのも
お祭りには当たり前の風景。
夏のはじめも
終わりが来ても。
身分や年齢の差を乗り越えて
ときどき意地悪な運命が与える
どんな試練にも離れずに
寄り添う二人なのよ。

楽しみね。
日本に生まれて
日本で育つ
マリーが踊る
日本の踊り。
盆踊りよ!

女王の華麗さは、
前世のフランス仕込み。
情熱のリズムは
フェルゼンと育てている
家族愛。

ああ、
夏休みが終わってほしくないような、
早くお祭りの日が
来てほしいような!
女王の休日は、
揺れる心で過ごすものなのね。

海晴の偽日記

『日焼け』

天気予報で
注意を呼びかける毎日が、
見習いお天気お姉さんに
戻ってきました。

テレビの前の皆さん、
暑さに気をつけて!
そんなとき
頭に思い浮かべるのは
大事な家族のこと。

大丈夫?
無理してない?

あんまり暑いせいで
霙ちゃんみたいにおかしなことを口走ったり
していない?

宇宙の炎に巻かれて
塵に帰ろうとする快感だって。
夏の暑さは宇宙とかじゃないから!
あきらめないで対策してね。

立夏ちゃんみたいに
暑い中でも平気で外に飛び出したりしていない?
暑さなんてかまわないヨ、
よゆうよゆう、
よゆうっスよ、
と汗だくで
サッカーボールを追いかけ回している。
最低限の帽子だけでは熱中症は防げない。
夢中になりすぎないでね。
言ってもあまり効果がないのがもどかしい。
適度に休憩して欲しいな。
一緒に遊ぶときは、よく見てあげてね。

暑さでへとへとに
弱っている時期、
みんな、
自分の体をいたわって!
これでよく
沖縄旅行なんて行って
全員無事に帰ってこれたなあと
感心するくらい。
旅行ではあれでも
猫をかぶっていたほうなのね。
どうかな。
そうでもないかな。

キミも、あんまり夏場は
無理はしないでね。
言っても聞かないかもしれない
そんな生き物が
男の子だってわかってる。
家族のためによく働いてくれているけど
無理をしすぎたら困るな!
困ったことがあったらなんでも言ってね。
どんな大変なことがあっても
本気で助け合おうとする
世界に唯一の存在の私たち、
家族です。

天気予報で届けるのは
情報だけじゃなくて元気な笑顔。
私も、朝の予報で
テレビの向こうの家族に向かって
元気な笑顔を届けます!

今は、
少し日焼けした笑顔。

日焼け止めはしっかり塗っていたけれど、
なにしろ夏の海。
元気に楽しむ子たちが
うらやましくなって
いつの間にか混じってみたくなって
日差しの下に飛び出して
こんがり焼けました。
焼けてしまいました。

ぎらぎらまぶしい
太陽の誘惑に
負けてしまいました!

小さい子たちを見ていたら
私の日焼けなんてたいしたことないか、
と思っていたけれど
テレビの映像は正直でした。
笑顔の口元から覗く白い歯が
さわやかに輝いて見えるほど
一目で分かる
小麦色。
私、焼けました。

健康的でいいねって
褒めてもらえるのが
ちょっと複雑。
テレビに出る人間なんだから
もっと気をつけたかったのに。
誘惑に弱いお天気お姉さんだけど
これから荒れた肌は見せないように
今後のお手入れを徹底します。
応援してね。
家族にしかこんな情けないこと
相談できないんだもの。

嬉しかったのは
若いからできるって言ってもらえたこと。
花も恥じらうお年頃は
春風ちゃんと比べたって負けないと思うんだけど
どうかな?
言いすぎかな?
とうが立ってきた?
日焼けが許されるぎりぎり?
来年から先が心配だな。
だってあんなに海を楽しんでいるのを見て
我慢なんてできない。

あさひちゃんが大きくなるまで
続けられたらいいね、
楽しかった
家族で行く旅行。
かけがえのない家族が
ただ、一緒に過ごすだけでいい。
みんなにそう思ってもらえるようにっていうのが
長女の願いです。
日焼けの心配は少し優先順位が下がるの。
いけないね。
どうしてもテレビに出られない
悪いお姉ちゃんになったら
もう健康的なお嫁になって
結婚するしか道はない。
相手はもう決めてしまったけれど
ね、
いいよね?

そうなった時に
あの人は今みたいな番組に
変わらぬ笑顔で出演できる
有名人になる野望を抱いて
今は張り切っています。

蛍の偽日記

『夏服』

あっつい
あっつい
日が続いて。

蛍みたいに
お肉が余計についている
女の子じゃなくても
とっても厳しい
夏の暑さ。

本当に夏休みも
折り返し地点を過ぎたのかしら?
本当にそのうち
夏服を着なくてもいい日が
来るのかしら?
薄着ではできない
重ね着、
暖色、
大人のセンスで
秋色おしゃれ。
いったい、いつになるのでしょう。
ずいぶん遠い先に感じるな。

早く少しは涼しくなってくれないかなあ
と、ぼんやり物思いをしている間にも
気がついたら
無意識のうちに
フリル付きワンピース水着を参考に
小さい子に良さそうな
かわいいノースリーブを
ひとつ仕上げていました!
暑さって、困ったものですね。

まあ
気がついたら無意識にっていうか、
何冊もお裁縫の雑誌を並べて
メジャーを持ち出して
さくらちゃんのサイズを計らせてもらって
みっつよっつデザインのアイデアを出しては
ボツにして
わかっていて作った衣装なので
実は、わざとです。
てへ。

ウェストのゴムも
あまりきつくないようにしたから
観月ちゃんでも着まわせると思うけど
こういうの、似合うかな?
マリーちゃんには、小さいかな。

手作りの衣装だと
リボンの位置にまで気を使って自由に。
なんだかいいですよね。
襟元を広めに、胸のリボンはちょっとルーズに。
涼しさと、まだ早いおいろけを意識した
小さい女の子の魅力を丸出しに。
こんな服でも、夏の後半を
元気に過ごすお手伝いができたら嬉しいです。

ふだんから
幼稚園や小学校の小さい子たちは
蛍の作った服を着て行ってくれるから
たまに帰ってきた子に
評判がいいって言ってもらえるんです。
服だけじゃなくて、
蛍のことも。
なんて聞かされると
ええっ!
って。

お裁縫が得意で
お弁当作りも上手な
お姉さん。
そんな子がうわさになっていると聞くと
どんな大和撫子なんだろう!
一瞬思ってしまいます。
とても蛍のこととは思えませんよね。
一緒に住んでみないと、わからないものがあるかも?

本当の蛍は
思い立った勢いで
服を作ってしまうような子だし。

夏休みの宿題だって
実は──

やろう、
やろうと
思っているうちに、
そろそろやらなきゃ、
やばいかも?
の、
レッドゾーン突入寸前。

宿題から逃避したら
かわいい服ができているんだから
世の中は分からないものですよね!

もっと乙女心をくすぐるような
宿題が
たくさんあればいいのに。

あっ!
お兄ちゃん!
蛍の場合は
乙女心じゃなくて、
主婦の堅実やりくり精神だろう、
なんて思いませんでしたか?
そんなことを言われたら
蛍は泣いちゃいます!
と言いながら
笑ってしまいます!

自分でも思っちゃった。
蛍は乙女心でいいのかなって。
面白いことを思いつくものですよね。

星花の偽日記

『暑さとたたかう』

夏休みは
いつ終わる?

今年の夏休みは
30日まで。
ところが、その後が土日なので
実際は
9月1日まで。
宿題を先送りしがちな子に、
油断!
宿題を済ませた子なら
なんだか得をしたような
9月まで続く夏休みです。
授業日数はもう決まっているから、得はしていないです。
気分の問題。

そんな都合もあって
今年のお祭りの開催日は
8月31日と
9月1日です。
9月に夏祭りなんて、なんだか経験ないな。
その時期でも浴衣で過ごせるかな?
晴れてくれるでしょうか?
まだずいぶん先のことを
言っても仕方ないけれど
やっと暑い日が途切れた
曇りの一休みの今日。
明日も曇りの予報で
週間天気予報に並ぶ、もくもく灰色の雲。
暑い日は、過ぎちゃった?
このまま気温が落ち着いていって
秋が来るのでしょうか。
でも、曇りでも汗がにじみ出る蒸し暑さだったから
まだ秋は違うかな?
大変な暑さが続くのも困りものだけど
夏のお祭りなんだから
夏らしい日に行けたらいいですね。
そんなに暑すぎない
ほどほどの暑さでいいので
夏が続いてくれるでしょうか。

たぶん暑さは
急に引っ込んだりしない
8月まっさいちゅう。

今年の暑さは
乱世と言ってもいいほど。
こんな時には
猛将には程遠い星花でも
家族を守るために、矛を手にして。
矛は例えです。
得意なことを見つけて。
8月の気温という戦場に
20人家族がくつわを並べて立ち向かいます。
ママも入れて21人。
全員が無事に切り抜けられるように
死力を尽くしましょう!
この時期、つらいのは
食欲がなくなりがちなこと。
ジュースを飲んでばかり、
甘いものを食べてばかりでは
ご飯が入らなくなってしまいます。
冷蔵庫には麦茶を。
冷たいものばかりでは
おなかに悪いかもと思ったら
星花が急須で緑茶をお入れします。
水分補給はしっかり。
さらに
塩あめと、
おせんべいで
塩分補給のお茶うけ。
微力ですが、
補給線を確保し
兵糧庫を守り抜くことは
どんな戦いにも必要なこと。
勇猛でなくても
星花が力になれたら。

ごはんの支度の
お手伝いもするよ。
何を食べたら
無理せず栄養をとれる?

見るだけで力がわいてきそうなメニュー。
誰かがかじりついたら
つられて手を出してしまう。
食欲増進、
栄養満点。
思いつく理想の料理は
そうだ!
マンガ肉!
お兄ちゃんが男らしく食べているのを見たら
みんな、よだれが出てくるよ。
女の子だって
ときにはかぶりつきたい!
はしたないかもしれないけれど、
力をつけることがいちばん大事だもん。
でも、実際にはなかなか用意できない料理なので
今できることは
スパゲッティをゆでたり。
お兄ちゃんは、アルデンテは得意なタイプ?
星花は、気合を入れてゆですぎて
やわらか、くたくた。
サラダに入れたらちょうどいい
そんな妹です。
あとね、明日作るのは
辛すぎない奇跡のカレー。
揚げ物に馴染むようにチキンで味を取る
柔らかな風味が詰まった
カレーパンを揚げるの。
暑くてもおいしく食べられそうな
不思議な揚げ物です。
おやつにもいいし、
刻んだ野菜も栄養に良さそう。
きっと食べたら力がつく。
夏においしいとうもろこしを入れて
歯ごたえも良く
楽しくもりもりいただける。
うまく作れるかな?
不肖星花、
家族の元気を守り抜くために
キッチンに出陣いたします!

春風の偽日記

『天使なので』

ふと、
目を覚ますと。

薄暗い部屋の中に
ひとつの気配。

ベッドの側に立つその人は、
長い髪から
ぽたぽたとしずくを垂らして
立ち尽くしています。

困った目をして何かを見つめている
裸の女の人……

だれ!?

恐ろしいその正体は
お盆に迷い込んで戻れなくなった
気の毒な魂なのか
春風を見初めて迎えに来た
魔物なのか……
どうせ迎えに来てくれるなら
王子様がいいのに!
春風をさらっていけるたった一人の人。
王子様が来てくれないなら
春風は行かない!

ぷんぷんしていたら
わかっちゃった。
春風がどれだけ王子様を愛しているか
ということは普段から春風はわかってしまうので
そこではなく、
濡れているのは一汗かいてシャワーの後だから。
きのう曇っていたから乾かないかもしれない、
とタオルを洗濯に出さないで
うっかり体を拭くものがなくなってしまって
部屋まで探しに
いけない子供みたいにずぶぬれでお風呂場から歩いてきた
ヒカルちゃんです。
夜明け前のまぼろし。
曇りの日のおねぼうなおひさまが届けた
小さないたずら。
わかったことは、
今でもヒカルちゃんはいけない子供でした。

怪談の季節です。

まぎらわしいだけで
怪談じゃないですね。
怖い想像をしてしまったのは、
このところ、よく話題になるからかしら。

呪われた山奥の村に迷い込んでしまって
たたりが!
遠い外国、古いお城に住む貴族の
怖い儀式が!
いたいけな生き物をいじめた
むくいが!
亡くなったご先祖様が
助けてくれた!
危機一髪!
こわーい、
ふしぎ、
そんなことあるのかな、
背中がぶるぶる、ぞっとするお話。
春風はつい先が気になって
聞いてしまって
後悔するの。
怖い!
さくらちゃんは、怖いときは
おなかが痛くなっておトイレに行きたくなるって。
小さい頃、泣いてばかりでさくらちゃんに似ていた
怖がりの春風はいま、
こんな怖いときに
どうするのでしょうか?
それは、春風もまだ知らない。

昔、春風が何も覚えていないくらいの頃に
観月ちゃんが言うかわいいキュウビちゃんみたいな
小さな動物が
ベッドに見に来たような記憶は
本当にあったことなのかな。
あの時はどうしたんだっけ、
怖くて泣いたでしょうか。
お姉ちゃんにしがみついてしまったとしたら、恥ずかしいな。
ヒカルちゃんに慰めてもらったかもしれないな。
それとも、守ってくれているものだと思って
あまり怖くなかったのかな。
よく覚えていない、昔の話。
王子様がいたら、話を聞いてもらいに行ったと思います。

ほのぼのしたお話ばかりじゃない。
怖いから
怪談をやめましょう、
というわけにはいかない。
春風は、苦手だなとわかっていても
聞く分には楽しんでいるかもしれないし
つまり好きなほうなのかもしれないし。
ああいうのも、
刺激的で
誰かと一緒に話の輪を囲んで
きゃーっ!
盛り上がる感覚は、
なんとなく夏のだいごみ。

でも、ベッドに入ると怖くて
なかなか寝付けない。
一人じゃ心細いからって
ヒカルちゃんのベッドに入っていくわけにもいかないし。
どうしたらいいですか?
王子様。

あんなに不思議なことが
本当にあるのでしょうか。
やっぱり、見間違い?
それとも、本当にいる?
私たちの知らない生き物。
現代の科学では説明できない
昔から伝わる何かが
私たちの住む世界のすぐ隣に
当たり前のような顔で
巣食っているのかも。
そんなことがあったら
春風どうしよう……
なんて考えていたら
いきなり思いつきました。
そうだ!
私にとっての一番の不思議な存在は
今は味方なんです。

お空から降りてくる天使は、
奇跡の存在。
さて、名字が天使だというだけの我が家。
名前はたぶん関係なく、みんなが特別で、毎日かわいい。
ここにいてくれるそのことが、奇跡。
だけど春風にとって一番の特別も
この天使の家族の一人なの。

王子様!
春風を怖がらせる悪いおばけを
退治してください。
それとも、春風に勇気をください。
おばけにも何ものにも負けないようにと
あなただけが使える魔法。
春風によく聞く魔法を
出し惜しみしないで。

この世に
王子様がいなかったら
怖くて
春風は生きていけないわ。
どうかお願いします。
春風を助けてくださいね。

ヒカルの偽日記

『スピーディー』

ヒカルお姉さんの
お天気予報。

明日は晴れかも。
晴れたら外に出て行きたい。
庭でもいいし、
公園でもいい。
時には学校に行って、
頼まれていた部活の助っ人が
できたら嬉しい。
あんまり暑すぎたり
体調が良くないときだったら
窓際を歩いたっていい。
日陰で休んで、涼しい風を浴びるだけでもいい。
晴れていると、それだけで
一日を気持ちよく過ごせそうな気がしてくる。
さわやかな輝き、
深呼吸。

もしかしたら
明日は曇りかも。
曇ったらいつもより多めに
体を動かしたい。
限界まで試してみたい気持ち、
抑えきれない。
蒸し暑さには油断できないけど
あんなにぎらぎら輝いていた太陽が
どこにもないなんて信じられない。
あとからあとから噴き出す汗は
今日は夏の気温じゃなくて
別の強烈なエネルギー。
自分の中にある、挑戦したい気持ちが
どこにも逃れる術はなく
汗だくにさせる。

これは天気予報じゃない。
どこからおかしくなったんだろう?
晴れでも曇りでも
まあいいやって
体を動かしにふらっと出て行くから
いけないのか。
こだわりは別にないし。
細かいことはかまわない。
だけど海晴姉も細かいことは気にしないほうだな。
いや、時々うるさい用件にはうるさいけども。
家では天気のことでそんなにこだわってはいない。
お天気お姉さんになるためには
何が必要なのか。
お天気お兄さんでもいいよ。
私も期待されているみたいだけど
才能がないから
後継者になるとしたらオマエじゃないかな。
と言ったって、オマエがこれからどう成長していくのか
わからないな。
高校一年生。
未来はまだ、うすぐもりに隠れているみたい。
私は人より少しだけ
ぼんやりと方向が見えている。
細かいことは気にしない方向に向かうだろうと。

でも、天気にこだわらないと言ったって
雨が続いたらたぶん困るな。
ちょっとくらいの雨ならまだなんとかなる。
夏だから、裸になってシャワーを浴びたらすぐ乾く。
とか言ったら、また裸で歩かないでって
怒られるかも。
子供じゃないから、ちゃんとわかってるのにな!
後でちゃんと、濡れた床を自分で拭くのに。
でも、小さい子が真似をするかな。
拭き残しがあって誰かが滑っても大変だ。
細かいことを気にしないのも問題だな。
もし私が裸でいるのを見つけたら
オマエにもちゃんと注意してもらえると助かるな。
お願い。

ちょっとくらいの雨だと思って
飛び出していったらやっぱりだめかな。
もし、私が雨の中を走りたくて
うずうずしているようだったら
止めてくれ。
でもそうなったら、
うずうずしすぎていたら
ちょっとくらいは大丈夫だと言い張って
私がオマエを
雨の中に付き合わせるかもしれない。
溢れる行動力を誰も止められなかったら
まあ、その時はその時で。

明日は一応、晴れの予報だけど
時間帯によっては曇ったり降ったりする
不安定な天気らしい。
あんまり雨が降ったら嫌だな。
とはいえ、家族の体を考えると
猛烈な暑さが戻ってくるのも困るな。
わがままかな?
天気のことはどうにもならない。
まあいいか。
晴れるか曇るかしたら、外を走るよ。
暇だったら一緒に行くか?
暑すぎないといいな。
雨が降ったら濡れて帰ってもいいくらいの
暖かさになるかな。

涼しい日が続くと、
このままだんだん秋に近づいていくのかなって思う。
あんなに暑かったのに
季節が変わるのは早いものだ。
明日くらいからよく晴れてくれないと
最近暇そうなペンギンのかき氷機も
来年の活躍の時を待って、そろそろ冬眠に入るだろう。
いやペンギンはずっと寒いところに住んでいるから
冬眠はしないか?
暑い夜に遊んだ花火も
まだ少し残ってる。
これを片付けるくらいには、まだ夏は続くかな。

花火といえば
月末のお祭りは結構派手に上がるよ。
週間天気予報だと、そのあたりの日はまた雨らしい。
予報が外れればと願っているなんて
お天気お姉さんに悪い気がする。
やっぱり私には向いていない仕事だな。
こんな話は海晴姉には秘密にしておこうよ。

麗の偽日記

『やりのこしたこと』

半袖だと
冷えるかな。

一枚重ねたい涼しさが
知らせているみたい。
夏休みもあとわずか。
残り一週間の
カウントダウン。

宿題はもう終わったから
焦ることはない。

電車の絵は
どこに提出するというわけでもなく
気まぐれで描いていたものだから
下手だからって気にならない。
自分でまあまあと思えるならそれでいい。
愛はあると思う。
技はないとしても。
まあ、誰かに見られるかもという話になったら
良くない気がするだろうけど。
しまっておくだけのものだし。

だから、
なんだかこのまま終わって欲しくない
なんて気持ちになるのは
思ったほどレールの上を
走り回ることができなかったから
なのかしら。

日本中に敷かれたレール。
この長い休みで
私はどこまで乗っていくことができるのか、
わくわくしていたわりに
乗れなかった。
近所を回るくらいでした。
まあ、わかっていたけれど。
無謀な空想の翼を羽ばたかせただけで
実現はあきらめていた。
小学生なんだから。
それに、近場を歩くだけでも
一日かけて
休みでなければできないことを
おこづかいと相談しながら
なんとかやり遂げた。
小学生にできる夏休みとしては
充実していたと思う。
最初から高望みはしていなかったから
やりのこしたことは
特にないと思うんだけど。

学校が始まるのは
嫌じゃないんだけどな。
きちんとした規律正しい生活。
毎日、立派に役目を果たす
お姉さんたちや電車たちのように
私たちも一歩ずつ将来を目指します。
どこかすがすがしい。
なんで気が進まないの?
いじめられているわけでもない。
友達が言うには、
いじめとかなくてよかったね。
しっかりしている子が多いクラス。
麗ちゃんを初めて見たときには
しっかりしすぎて
いじめるほうだと思ってた。
そうなの?
私、誰もいじめたことはないわよね。
言い方がきついのかなあ。
学校は何とかうまくやっていけてます。
男もいないし。
ずーっと私の周りに
どこにもいなければ
気分は落ち着いていたのに。
家にいるほうが自信がないくらい。
夏休みに
お手伝いで男と並んでキッチンに立つようなときは
えーってなったし。
あなた本当にできるのって
それなのに
休みがもう少しあったらいいなんて
どういうことなんだろう。

みんなは夏休み最後のお祭りで
ぱっとはしゃいで
一区切りの感覚があるから
いいのかもしれないけれど。
私にはそんな、気分の切り替えみたいな
大きな山ではない。

夏休みに後悔がない生き方。
やりのこしたことがない
完全燃焼を実感するなんて──

たぶん、
夏休みを利用して
好きに乗りまわれるようになるまで
夏の終わりの
はっきりしないもやもやは続くのね。
終わって欲しくないというわけではなくて
ただ、
もう少し
あったら
もしかしたら
というだけ。
それだけです。
気持ちが引き締まらず
そんなに暑くもないのに
ダラダラしている原因は
それだけ。

夏休みが終わっても
特に問題はないです。
デザートにスイカが出るのも
今日が、今年最後になるかも。
嫌でも訪れる夏の終わり。
始まる普段どおりの生活。
私は、それが嫌ではないんだから
もう少ししたら
気持ちを整理して
迎える準備をきちんとしておこうと思います。

陽炎の立つ
汗臭いプラットホームも
もう来年まで経験することもなさそう。
汗臭さはともかく
あの夏らしい景色は
暑苦しいわりに
そんなに苦手でもなかったな。

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