アルケイディア&キュクレイン

アルケイディア&キュクレイン TOP  >  2013年03月

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吹雪の偽日記

『雨の魔法』

科学には様々な法則が存在します。
質量保存の法則は、ニュートン力学においては正しいとされていましたが
現代では、実は完全な説明ではなく
近似的なものであったことがわかっています。
光の速度に近づくと、物質はそれまでの法則では説明できない
振る舞いをすることがあるからです。

現代物理学でもまだ解明できない謎はたくさんあります。
もしも、現時点で提出されている全ての謎の正体が単なる間違いであったとしても、
これから先も解明不能な謎が出現することはない、とは言えません。
科学の歴史は、古い常識が新たな発見に覆されることの繰り返しです。
もちろん、多くの場合は体系的な科学に従った常識的な解釈が正しいようです。

夕凪姉が、言語と身振りによって願望を果たすことを試みたとして、
それが必ず成功すると保障する物理法則は、
今のところ発見されていません。
しかし、今後も見つからないとは限りません。
もしかしたら、今でも時には成功しているのかもしれません。
いくつかは夕凪姉が意図した通りではなく、偶然によるものと考えられますが。

雨降りの日を、
今年最後の雪遊びの日に変えようとする今日の魔法は
どうやら成功しなかったようです。
今日は、各地で春一番が観測され、
春の始まりを告げるような暖かい日でした。
夕凪姉の力では、天候まではなかなか思い通りにならないのでしょう。
あるいは、春を待ち望む人が、さらに強力な魔法をかけたのかもしれません。
私は考えたのですが、
魔法の成功とは、常に願望の成就という結果を迎えます。
もし、同程度の魔法の力があり、それぞれが相反する願いをかけた場合、
科学的な解釈をすれば、その時点でパラレルワールドが発生すると思われます。
魔法が成功した別の世界が、魔法の数だけ誕生し、
枝分かれしていくのです。
そうではないとすれば、魔法にも力の大小を体系化できる理論が存在するか、
単に夕凪姉の魔法が失敗しただけであるか。
今の時点では、判断する材料がありません。

明らかに科学と相容れない考え方によって重ねられた
錬金術の研究が、後に現代科学の重要なきっかけとなったように、
夕凪姉の一見無謀と思える挑戦が、
やがては人類の未来に必要な法則を発見する礎になる、
そんな可能性もないとは言い切れません。
また、仮にそんな法則につながらなかったとしても、
何も不満に思うことはありません。
夕凪姉の存在が、私たち家族にとって必要であることは変わらないからです。
無謀な挑戦を繰り返す姿も含めて、
私たち家族は、夕凪姉と過ごすことでかけがえのない日々を過ごしています。
少なくとも、私はそう感じています。
私の家族は全員が、誰一人として欠けてはならない大事な存在であると。

春の兆しが見えたとはいえ、
明日は風が強く、寒い日になるとの予報です。
もしかしたら、また雪が降ることもないとは言えません。
キミも最近暖かいからと言って油断せず、
毎日の体調管理には気をつけてください。

急な寒さに、誰かが風邪を引くようなこともなく
毎日を無事に過ごすことができたなら、
私たち家族にも、まもなく雛祭りの日がやって来ます。
いえ、日付上の雛祭りは、その時点で存在する全ての物質が体験します。
正確に言うなら、私たちには、家族で過ごす楽しい雛祭りの日が来る、ということです。
その日が激烈な体験になるのか、心穏やかに過ごせる日となるのか、
いずれにせよ、家族にとって良い雛祭りになることを祈ります。
祈りが物理的な効果を発揮する法則も、今のところは見つかっていません。
できることがあるなら、家族の準備を手伝うほうが効果的です。
何度も雛祭りを体験してきた、頼れる先輩がこの家には多くいますので。
キミも、女の子のお祭りとはいえ手伝いをする機会もあるでしょう。
私は埃っぽい作業が苦手なので、時には頼ると思います。

女の子のお祭り──
女の子に含まれるとは言っても、
なんとなく、私にとっては縁遠いもののように感じるお祭りです。
雛人形を美術的に分析する審美眼も持ち合わせてはいませんし、
雛祭りの料理が特別に好物であると歓喜するほどでもありません。
ただ、雛あられはここ数日は家族内での消費量が多く、
菱餅もちらし寿司も、当日分の分配を多く取ろうと狙っている子がいます。
人気の食品なのですね。
もしキミも希望しているなら、早めに言っておくと良いでしょう。
女の子が中心のイベントということで、もらいにくいようでしたら、
私がもらってきて分けることもできます。
いらないですか?
あまり好きではありませんか?
女性の好みに合致した食品なのでしょうか。
私は女性的な趣味や特徴といったものがあまりないので、
判断ができません。

なんだか家族がそわそわして、
うきうきと準備をしているような気配に、
自分の誕生日が近いことを知っている青空が、
つられてはしゃいでいるようです。
イベントの日に偶然生まれただけですが、
青空にしてみれば嬉しいことなのかもしれません。
しかし、氷柱姉の発言を参考にすると、
何か特別な日に生まれることが、必ずしも嬉しいこととは限らないようです。
青空はこれから、この日をどのように思うのでしょう。
今のように望ましいものとして? それとも、疎ましく?
雛祭りの日に生まれたから、特別女性らしくなるとする信頼できるデータは
今までに見たことがありません。
姉妹のうちでも非常に勇敢で、積極的な傾向がある青空が
女の子の成長を祝う日に生まれたこと。
何かの意味があるのか、ただの偶然なのか、まだいずれとも言えません。
氷柱姉は、不快な日に生まれたことを嘆いていますが、
誕生日と記念日との一致が偶然では終わらず、何かの意味を持つこともありえます。
あまり不快な日を過ごすというのも望ましくありません。
ホワイトデーはどうしても男性が関係する可能性が高くなるイベントです。
氷柱姉が自分の誕生日をどう感じるようになるかは、キミにかかっているでしょう。
青空にとっても、今年の雛祭りが良い日になればいいですね。
これは、私たち女性陣にかかっているでしょうか。
私は女性らしくないので、あまり力になれないと思います。

雛祭りを迎えるにあたって、実は一つ重大な懸念があります。
私は学芸会が苦手で、また、積極的に大きな声を出すことをしません。
おゆうぎの歌も、音楽の授業も、特別に楽しんだ記憶はありません。
ひょっとしたら私は、歌があまり得意ではないのかもしれません。
小学校の高学年になって、クラスで合唱に参加するようなことを考えると、
今から不安です。
雛祭りは歌って楽しんで、という場面も見かけるイベントです。
一人で静かに本を読んでいるのは心安らぐ時間ですが、
決められたとおりみんなで家族行事に参加したいという意思も強く持っています。
もし私が楽しく歌うことを断ったら、みんなが疑問に思うことでしょう。
小さい青空などは驚いてしまうかもしれません。
歌うのがどうしても嫌だというわけではないのですが、
私には歌を楽しむ能力がない気がします。
立夏姉など、あんなに音程が外れても楽しそうだというのに。
楽しさとは、何なのか。
これもまだ法則は見つかっていません。
しかし私の考えでは、キミといるときに感じることが多いようです。
キミは私の苦手を克服する助けをしてくれるのでしょうか?
しかし、私が歌を楽しめるようになるとしたら、
それは本当に魔法のようですね。
現代の科学法則では見つかっていない魔法の使い方を、
キミならば私に教えてくれるでしょうか。
これまでの体験を考え合わせると、
その確率は決して低くないと思えます。
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虹子の偽日記

『ぼんぼり』

りんりん
ぼんぼり。

ぼんぼりりん。

ぼんぼりって、
おひなさまのおひさまのこと。

やさしいおかおのおひなさまを、
うつくしくかざる、きれいなあかり。

ぼんぼり、
ぼりんぼりん。

どうしてぼんぼりは、
こんなにおもしろいおなまえをしているの?
きれいで、かわいいのに。

にじこ、しってるの。
ぼんぼりは、ちょうちんのなかま。
あんどんのおともだち。
ちょうちんも、あんどんも、おもしろいおなまえでしょう?
わたしがあかるくするものは、よるのまっくらやみだけじゃない。
こころだよ!
っていう、おもしろくてすてきなおねえさん。
それが、ぼんぼり。

でもね、
ちょうちんはあかるいだけじゃなくて、
こわいのよ。
えほんでよんだよ!
まんなかで上と下にまっぷたつにわれて、
べろべろばあ!
って、こどもをおどかすの。
ちょうちんをもってあるいているひとは、
それはこんなおかおだったかい?
のっぺらぼうなの!
こわいねー、
おっかなーい。
きっと、にじ、びっくりするよ。
だからね、にじね、ちょうちんをみかけたら、
おにいちゃん!
ちょうちんだよ!
いやーん!
って、おにいちゃんのせなかににげこむよ。
ふくのなかにもぐりこんで、
あったかーい。
ちょうちんおばけのことなんかわすれて、
すやすやねむるの。
あさになったら、あーこわかった。
おにいちゃんがいてくれてよかった!
にじこがそんなおはなしをすると、
みんなは、ゆめをみたんだっていうけれど
おにいちゃんはほんとのことをしってるの。
だって、どんなときでもたすけにきてくれるんだもんね。

だけど、ぼんぼりはやさしいから、
よるにみかけても、
あかりできれいなおひなさまが、
ひなにんぎょうはかおがいのちです!
って、のっぺらぼうじゃないのよ。
にじこ、ぼんぼりすきよ。
かわいらしいの。
かわいいにじが
ぼんぼりとなかよくしていたら、かわいいかわいい?

だから、
ことしのにじは、ぼんぼりがかりです。
ぼんぼりのあかりをつけるおてつだいを
まかされたの。
うわあー、おおきなしごとだあ。
でもね、にじこできちゃうんだから。
どうするかというと、
はい、
コンセント。
これをね、
にじはちいさいから、でんきをつかったらだめ。
あぶないよ。
まだちっちゃくてぶきっちょだから、
いけないよ。
だから、
だいすきなおにいちゃんにおねがいして
コンセントをさしこんでもらいましょう!
おにいちゃん、
にじこがまかされたぼんぼりのコンセント、
おしごとをてつだってください!
おにいちゃんがいてくれたら、
ぼんぼりはぴかぴかするよ。
にじことおにいちゃんのふたりのちからで、
ぼんぼりはかがやくよ。
ほーらね、
にじこ、ぼんぼりのおしごと、しっかりできたでしょう!

ぼんぼりがついたから、
きょうはたのしいひなまつり。
あかりをつけて
おうたをうたえば
ひるでもよるでも
みんなのたのしいひなまつり。
いよいよ、きょうがそのときね!
あれ? ひなまつりはあしただったかな?
でも、おひなさまももう、はりきってすましがおをしているし、
ぼんぼりついたし、
たのしいし、
きょうはもう、ひなまつりだよね?
きのうも、きょうも、ひなまつり。
あしたも、あさっても、ひなまつり。
ひなまつりケーキは、まだかしら?

そらちゃんのおたんじょうびも、もうきた?
きのうもきょうも、あしたもあさっても。
そらちゃん、おめでとう!
にじのかぞくで、ありがとう!
ずっとずっと、だいすきよ。
いっしょうかぞくでいましょうね!
ハッピーバースデー!

ひなまつりがきたら、
そらちゃんとあそぶの。
おにいちゃんも、
にじことそらと、みんなとひなまつりしましょうね。
まいにちが、おんなのこのおまつり。
おにいちゃんがだいすきな、おんなのこたちのおたのしみ。
ぼんぼりはきらきら、
おなかはぐうぐう。
ひなまつり!
おにいちゃーん。
ちらしずしって、つくるのがたいへんなんだって。
おてつだいにいこうよ!

氷柱の偽日記

『男らしさ』

私はそれほど
女の子らしいタイプじゃない。

素直じゃないってよく言われるし。
かわいくないし。
よくわかってる。

雛祭りの日になったわね。
ふん。
あんまり、女の子の成長を願いましょう、とか
女の子らしくこの日を楽しみましょう、とか。
私なんかには、あんまりありがたみがない。
というか、
もっとこの日にふさわしい人がたくさんいるんだから、
今日は私も裏方に回って
みんなが楽しめたら、それでいい。

いつも忙しくしている春風姉様も、蛍ちゃんも、
いかにもかわいらしい女の子って感じだもの。
後ろに引っ込んでる場合じゃないでしょう。
ヒカル姉様だって、女の子らしいところが──
あるんじゃない?
たぶんあるでしょう。
どう思う?
雛祭りに、花のようにほころぶヒカル姉様の姿が、
想像できるような、できないような。
でも、私みたいにかわいくない子とは違うんだから、
ヒカル姉様だってもっと女の子らしく楽しんでもいいと思うわ。
それから霙姉様。
うーん、いつも、どう行動するか予想がつかない人だから
とりあえずおいといて。
海晴姉様は素敵な女性でしょう。
妹たちは、みんな雛祭りの華やかなお祝いが似合うわよね。
ちょっとだけ、女の子らしいことに複雑な思いがあるらしい
麗ちゃんや星花ちゃんだって、
いい楽しみ方は普段から結構できてると思う。
かわいい趣味で、
元気で、明るくて。
雛祭りって、きっと楽しいわよね。
うちの家族の、私以外の女の子みんなにとっては。

私はどうせ暇になるから、
裏方の仕事を担当してもいいわ。
当日に必要なことなんて、そんなにたくさんあるわけじゃないし。
お手伝いを買って出たからって、蛍ちゃんはこんな日にまで
人にメイド服を着せようとはしないだろうし。
そういうわけだから、
あなたの仕事はないわよ。
雛祭りに手伝ってもらうことなんて、
もう何にも。
男は身の程をわきまえて、
女の子のお祭りの日なんだから、肩身を狭くして
隅に引っ込んでいなさい。
なに?
寂しいの?
雛祭りのお楽しみに参加したいの?
下僕の分際で?
わかってるのかしら?
あなたは、男の子。
家族みんなが、あなたに男らしさを期待してる。
たくましく、かっこよく、タフで勇気があって
家族の中心になる頼りになる人。
それが、実際はどうなの。
寂しいからって、
女々しく擦り寄って、
私たちの楽しいお祭りに参加しようなんて、
ずうずうしいのよ。

そもそも、あなたは私たちの下僕。
頼れる男の人だなんて、期待外れもいいところだわ。
男らしくないからって、かわいい女の子になれるわけでもなし。
どうして、こんなに情けない人がうちの家に来たのかしら?
下僕呼ばわりされても、普通に受け入れて
ろくに言い返すこともしないし。
ヘラヘラと腹が立つ顔で、毎日、毎日。

まったく。
私はどうして、あなたのことになると
こんなにイライラするのかしら。
下僕が救いようもないほど能無しだからかな?
ああ、不本意な下僕を持ってしまったわ。
こんなのが、私たちの家族のたった一人の男性だなんて。
こんなのしかいなかったのかしら?

こんなのしかいなかったのか。
私たちの家族は、
他にいるっていうわけじゃないもの。
最初から選べない。
生まれたときから決まっているというだけの、
家族の一人。
あなたが、唯一の男の人。
そう決まっているだけ。
何を言ったって変わらない。
不満でも、
不愉快でも、
あなたが無知で無力で男らしくなくて
恥知らずの甘ったれでも、
私の家族であることは
いつまでも決して変えることはできない。

そうよね?
だから──
雛祭りに参加したい?
女の子のお祭りよ?
あなたが、自分の男らしさにプライドも何も持たず
ただ、あなたが家族と一緒に過ごしたいというのなら、
そうすれば?
私たちが断りたくても、
あなたは家族なんだもの。
わがままを言う権利はある。
家族行事に参加する権利はあるものね。
権利って言うか、
義務なのかもしれない。
好きにすれば?
女の子の遊びだから、あなたは楽しくないかもしれないけど。
私は、女の子らしいとは言えないからちょっと離れて
みんなを見ていることにする。
もし、誰かがはしゃぎすぎて無茶を始めたら、止めてあげる。
仕事の合間に、見ていてあげるから。
好きに楽しめばいいじゃない。
家族なんだから、そうすれば。

あ、そうだ。
早めに言っておくけど、
雛人形の片付けは、あなたは手出ししなくていいから。
ガサツな手で触られたら、どうなるかわかったものじゃないし。
うちの子達は、まだ婚期を焦ってもいない。
家を出て行くのは当分先のことよ。
といっても、みんな気立てがいい姉妹だから、
お嫁に行くのが遅れることなんてないだろうけど。
私の他は、全員がそう。
誰かが言っているように、全員が愛する長男のところへ
お嫁に行くなんて、そんなことはありえないとして。
片付けが遅れたらどうこう、なんて馬鹿らしい迷信は信じないの。
とにかく、それは急がないでいいわ。
みんなで遊んで、体力を使うことは目に見えているし。
夜にはぐったり疲れているだろうから、ゆっくりすれば。
別に下僕に気を使うわけじゃない。
そんな体調のときに片付けなんてされたらたまったもんじゃないと思ったの。
雛人形を壊される危険を少しでも減らしたいだけよ。

春風の偽日記

『桃の節句』

白酒をいただいて
酔ってしまったふりをして
王子様に甘えようとしていたのに
勇気がなくて実行できなかった
春風です。

あんまり王子様の負担になったら
いけないと思って。
あさひちゃんも、青空ちゃんも、
大喜びで雛壇に登り出して
止めるのが大変だったでしょう?
きっと、小さい子たちも、
あんなふうにきれいなお雛様になりたかったんだと思うの。
それで、雛壇の一番上で
お兄ちゃんと二人で並んで
みんなに祝福されてみたかったんじゃないかな。
春風もその気持ち、わかるんです。
右も左もわからない小さい頃に王子様がいてくれたら
どんな無茶でもしてしまうわ。
今はそんなこともなくて──
少し寂しいですね。

桃の花が咲くのはまだ早い季節だけれど、
お花屋さんで買ってきたものと、
幼稚園の子たちがお絵かきして持ってきた
雛祭りの桃の絵を飾ったので
自分も描く、って
たくさん飾られた桃の花のきれいな絵。

曇りがちの寒い日だったけれど、
お部屋の中はどこでも、女の子の熱気でムンムンです。
日曜日で、家族が揃うから嬉しくて
家の中なのに走り出してしまう子や、
お兄ちゃんに飛びかかる子。
怒られたり、
めげなかったり、
カルピスがこぼれても、桃の枝が折れても
家族の誰かが必ず見つけてフォローしてくれて、
王子様もお疲れ様でした。
雛祭りだというだけで、うきうきして
賑やかに、騒がしく。
女の子らしいかは分からないけれど、
みんなが元気に育つのが約束されているような
嬉しい日でした。

華やかなお祭りになったかな?
王子様の思い出に残るような雛祭りになったかしら。
子供ができたら、今日のことを参考にして
いっぱい楽しませてあげたいな。
気が早いかな?
早くても十ヶ月先のことですものね。
あ、でもそうすると、来年のこの日には子供がいるかもしれません。
どうなるのかしら?
気が早いといえば、
桃の花が咲くのはもう少し先だけど、
実がなるまではもっと時間がかかります。
桃の節句のお祝いなのに、
家族の人気は、みかんにいちご。
なんだか不思議ですね。
みずみずしくて身がしまった桃は、まだだいぶ先。
情熱の夏の季節に味わえる果実です。
春もまだなのに、こんなに熱気のこもった一日を過ごして
それなのに夏になったら、私の思いはどうなってしまうのでしょう?
家族みんなと仲良く過ごしているあなたを見ているだけで、
なんて優しい、私の王子様──
この胸にはもうどこにも、これ以上の思いを詰める場所はないほど
あなたへの気持ちでいっぱいになっているのに
まだ苦しくなるのですか?
毎日膨らみ続けるこの気持ちは
爆発することなしに、抑え続けていられるのでしょうか。
特に、こんなふうに素敵な姿を見られる日はなおさらです。
夏になる頃には、
春風の思いが、この体を離れて形になるのかもしれない。
新しい桃の実がなって──
それは何になるのでしょう、王子様。
ラブレターかな?
新作のお料理だったら、王子様も嬉しいですね。
もっと王子様が嬉しくなるものが、他に何かあるんじゃないかしら?
あなたの気持ちを知りたいです。

雛祭りにほころびはじめた桃の花は、
毎日を一生懸命に過ごすうちに実を付けて、
次の世代のために種になります。
春風は今、どのあたりだと思います?
もう、子供らしい無鉄砲はなかなかできないから、
つぼみとは言えないかな。
でも、まだ冒険を知らない年頃だから
花を咲かせてもいないかもしれないの。
どちらとも知らず、揺れる乙女心。
相手はもう、他にないって決めているのに
このまま放って置かれて時間が過ぎて、
花も咲かせずに終わるのですか?
それでもいいかな。
こんなに好きになれる人と、
こんなふうにひと時を過ごしているというだけで
春風は世界一の幸せものなんだもの。
これ以上を望んだら、ばちがあたってしまいそう。

ばちがあたってもいいから、
もっとあなたと幸せになりたい。
春風はいつでも待っています。
臆病に身を震わせる、開きかけた桃の花。
あなたを待ちきれなくなったら、
春の風に吹かれて飛んでいって
こっちから、愛しい人をつかまえます。
できるかしら?
春風の初めての冒険になるかしら。
それとも、
初めてなのに、二度目も三度目も
一生分の冒険をしてしまうかも?
遠慮しないでね、王子様。
春風は、触れたら落ちてしまう花とくらべたら
もう少し頑丈なほうだと思います。
どうぞ、春風をあなたのものにして
試してみてください。

霙の偽日記

『闇色』

柿食えば
ちゅうくらいなり
法隆寺

なんと物悲しい句だろう。

聖徳太子だって
柿を食べるなら大きいほうがいいのにな。

中くらいの柿に
世を呪っただろうか。
気持ちは分かる。
期待していたごちそうが
思ったほど大きくないと、それはもう悲しいものだ。
たちまち精神は日食を迎えたように闇に沈み、
明かりのささない牢獄となって閉ざされる。
解放のときはいつとも知れず
永遠を過ごすことになるかもしれない
井戸の底のように深い夜の中。
中くらいとは、恐るべきものだ。
この宇宙に、ちょうどいいというものなど何もなく、
全てはエントロピーがたどるように、形を取れなくなり
滅びの定めに従うのみ。

考えてみれば、
柿が大きかったところで
それもまた宇宙の塵となって消える定め。
中くらいのおやつに、悲しむ私の闇もまた
あのような心の激動を前にしてはとても信じられないことであるのに
必ず消え去るのだ。
限りなく深い、あまりにも深い宇宙の懐へと。
私たちは例外なく、一切の嘆きを残さず滅んでいく。
だから、つらいと思うことなど何もないのだ。
悲しみもこの広大な宇宙に拡散して、もう思い出せなくなる。
そんな時は必ず来るのだ。

私でもいまだ、定めを全て受け入れることができるのか自信がない。
ましてや、滅びなど縁がないもののように人生を謳歌するものたちは。
姉妹たちがどのような人生観を抱いていようと
永遠の前では儚いものだというのに、
みんなは自分の信じるものを求めていく。
ためらいもなく、がむしゃらに、
驚くほどに、ひたむきに。
私はただ見守るだけなのだ。
たとえ、焼き芋の大きさで奪い合いを演じようとも
仕方ないこと。
妹たちの姿は昔の私だと懐かしく眺めて
見守るのだ。

そうだ、柿は今の時期にはあまり見ないからな。
これから春に向かう真っ最中の、寒さが居残るこんな日。
温かく私たちの手のひらから歓喜を伝達してくれる、
深紫と黄金色などの言葉でも表しきれない複雑な色合いをした、
まるで魅惑を詰め込んだ暗黒物質の神秘のごとく
私の心をつなぎとめるもの。
塵に変わるまでのひと時も捨てたものではないと、
消える定めとわかっていながらもそんな幻想を抱いてしまう
一瞬の光。
それが、私たちの手元に届けられた
この冬最後となるかもしれない焼き芋なのだ。
少しでも大きいものを、とは当然の望み。
オマエがいたのなら、妹たちをどう裁くだろう。
いや、裁く権利など誰が持つというのか。
このほくほくとした喜びの前において。
話し合いか、じゃんけんか、
あるいは、子供同士だし元気にすもうで──
おやつ時にほこりを立てるのも考え物か。
解決策など、求めるものを知っているなら簡単に出るものだ。
この家の誰も、おいしい焼き芋で悲しい顔をするべきではない。
世の中は儚い。全てが私の希望のままになるとは限らない。
だが、今回はそうでもない。
私はただ、公平になる程度にわたしの焼き芋を分けてやるだけでいいのだから。

限りあるわずかな時間を
家族と仲良く過ごせるなら、
何もかも消え去ると決まっているこの世界に
他に求めるものなど何もない。
あまりない。
ないこともないが、
儚いものと思えば、まあいい。

週間天気予報では、明後日あたりから暖かい日が続くそうだ。
ということはつまり、焼き芋もまた、消え去る運命を避け得ない。
しかし、誰も知ることのできない私たちの運命なるものが許すならば
来年もまた、この喜びに満ちた出会いが訪れるかもしれない。
全てが塵となるまでのわずかな時間にも、
短いサイクルで繰り返される、まるで輪廻を思わせるような営みがある。
永遠に続く夢など幻と知っていながら、
別れては出会う得がたい経験に希望を託すこともある。
来年もまた、このような穏やかな時間を家族と過ごせるようにと願う。
これからの春、桜餅と柏餅の宴を心安らかに迎えられるよう。
今日この日を過ごせたことに感謝し、
あんこがぎっしり入った大きな桜餅を夢に見よう。
また今年も出会えるようにと、幻と区別がつかない夢を。
三月になったばかりで、気が早いようだが、
早く桜が咲かないかな。

夕凪の偽日記

『春の約束』

はっぴーは
夕凪におまかせ!

らっきーも
夕凪がなんとかする!

はねむーんは
夕凪とお兄ちゃんの
二人でね。

聞いてよ、
お兄ちゃん。

思ったんだけど、
夕凪とお兄ちゃんが二人きりなら
どこにいても
気分ははねむーんでしょう?

だから、なんとかして
お兄ちゃんと二人だけで過ごせないかと思って。
それなら、お兄ちゃんが一人でいるところを狙って
夕凪が突入していけばいいんじゃないかな。

なんでお兄ちゃんのお部屋には一人で入っちゃダメなの?
そうしたら取り合いになるから、って聞いたの。
いれかわりたちかわり姉妹が出入りしていたら
お兄ちゃんも落ち着けないでしょうって。
でも、夕凪がいても落ち着いていられるよね?
夕凪、お兄ちゃんが大人しくしてなさいって言ったら
絶対大人しくできるよ。
お兄ちゃんがおあずけって言ったらできるし。
でも、お兄ちゃんはやさしいからそんなこと言わないかなあ?
だからいいかなあと思うんだけど、
なんでダメって言われるんだろう。
これじゃあ、ケッコンするときまでなかなかはねむーんできないじゃない。
ねえ?
それならお兄ちゃんが、部屋から出て一人で待っててくれればいいかな──
と思ったんだけど、
部屋を出て一人でいたら誰かが見つけるよね。
どっかないの?
隠れ場所。
そんないい隠れ場所があったら、
夕凪は嬉しくなって家族みんなに自慢するよ!
お兄ちゃんを独り占めできるはねむーんすぽっと!
でも、夕凪の秘密の場所だから入れてあげないもーん。
って。
どこかないかなあ。
この家の中って、秘密基地見つけた! って思っても
どこでも霙お姉ちゃんのおやつが隠してあるし。
なかなかないんだよね。
どこのおやつも製造日が最近だから、いつも使ってるみたいなの。
隠れてるところを発見したことはないけど、
あんなにいろいろ隠れ場所知ってるんだし、そりゃ見つからないよ。
年の功だよね。
たくさん知ってるのは。
ずるいよね。
夕凪はちょっと遅く生まれただけなのに!
ママももうちょっと、順番を考えて生んでくれればよかったのに!
夕凪が長女だったら、
ちゃんとみんなをかわいがるし、問題ないと思うな。
お兄ちゃんを長女の権力で独り占めしたかったのに、
なんでそうならなかったんだろう。
お兄ちゃんも、残念だなって思うでしょ?

だから、この春は
野望を実現させる計画!
あ、長女になるプロジェクトってわけじゃなくて。
はねむーんのほうだよ。
今からもう、時々話に出ているの。
今年の春休みは、どこかへおでかけしようかって。
早く決めておけば、準備とか楽だって言うし。
泊まるなら予約もできるからって。
まあ、春休みの旅行はだいたい日帰りかなあ。
あんまり長くないから、春休み。
遊んだりのんびりしてたらあっという間に終わっちゃう
一瞬のお楽しみだよ。
ちょっとでも多くのデートを堪能できるように、
今のうちから知恵を振り絞らなくっちゃ。
行き先は、お兄ちゃんと二人きりになれる場所がいいんだけど
家族旅行でしょ?
そんな行き先あるかなあ。
こういうときに年の功が便利そうなのが霙お姉ちゃんなのに、
今回は相談相手にならないんだよー。
今からライバルになりそうなんだよー。
このままじゃ、霙お姉ちゃん提案のお花見に決まっちゃうよ。
それもいいけど、みんな一緒ですぐ目に付くような配置で座るでしょ?
家族の目を盗んで二人きりになる場面なんてなかなかないよ。
ましてや、夕凪は絶対気分が盛り上がって、物まね大会なんかはじめるよ?
超ウケを取るよ?
今のうちから歌番組を見て、ネタを仕込んでるよ?
あんまり色っぽくならないじゃない。
お子様って感じになりすぎて。
夕凪のマジカルなラブバラード、どうしてセクシーにならないのかなあ?
元気がいいって褒められるのは、たぶん何か違うよねえ。
だいたい、いい雰囲気になっても、みんないるもんね。
お花見の途中で抜け出すのも難しいじゃない。
歌って注目を浴びながら、ちょっと用を思い出してとか言えないじゃない。
何飲むー? とか聞かれたら、そのままなごやかな雰囲気になだれ込むじゃない。
みんなの目を盗んで二人きりなんて、ムリだよ。
ムリムリ。
お花見になったらたぶん、夕凪すっごく楽しんでるもん。
あんまりはっぴーで、
あんまりらっきーで、
お兄ちゃん楽しいね! っていう家族はねむーん。
もう二人きりのはねむーんのことなんか頭からすっ飛んでるよ。
きっと。

だから、お兄ちゃんにお願い。
夕凪と二人きりになれる旅行、
何か考えてね!
霙お姉ちゃんの提案に反対の意見が出せる子って、
今回はあんまりいないんだよ。
吹雪ちゃんも、埃っぽいのは苦手だけど
代わりのアイデアも別にないって。
だからいいかって言ってるの。
そういうんじゃなくて、自分の意見があったら主張しなくちゃ。
相談してたら、図書館がいいって言い出したから止めたし。
それ春の旅行じゃないよ!
お休みにいつでも行けるよ。夕凪も付き合うよ。
吹雪ちゃんは本当に、図書館以外に行きたいところあんまりないのかな?
夕凪はいろいろあるんだけどなあ。
お兄ちゃんのお部屋とか。
これも旅行じゃないか。

お兄ちゃんはどこへ行きたい?
夕凪とはねむーんできるところがいいんじゃない?
遊園地、動物園、水族館なら
見たいものや乗りたいもの別で分かれて行動してもいいけど
どこのチームにも小さい子がついてくると思うんだよね。
小さい子が固まると、面倒を見るほうも大変だし。
やっぱり旅行中に隙を見て、って難しいかなあ。
ローマの休日みたいにならないかなあ。
あ、それならローマ行く?
お兄ちゃんが行きたいって言えば聞いてくれそう!
夕凪が考えたことは黙っていれば、
みんなたいして不自然に思わないよね!
ローマで休日しようよ!
ジェラート買ってね。
真実の口に手を突っ込んでびっくりさせようとしても
夕凪はだまされないぞ!
日帰りでどのくらい楽しめるかなあ?
行きに何時間くらいかかるの?
飛行機で行くなら、麗ちゃんは怒るかなあ。
その前に夕凪はお姫様じゃないから、連れ出してもらえないかな?
マホウを使ってお姫様に変身すればいいのか。
休日が終わったら寂しいお姫様の仕事に戻るのも嫌だし、
変身するくらいでちょうどいいよね。
夕凪はそれまでにマホウを完成させておくから
旅行先のほうはお兄ちゃんがなんとかしておいてくれる?
約束だよ!

お兄ちゃんは王子様なんだし、
お姫様とケッコンしたほうがいいよ。
あの映画に合わせたら新聞記者だっけ。
どっちでもいいから、
お姫様を連れ出してくれないと!
休日になったら、夕凪を案内してね。

立夏の偽日記

『まっぱ』

オニーチャン──
今日さあ、
やけに暑くなかった?

暑かったって言って!
言って、言って!
リカのことスキだって言って!

あ、やっぱり?
やっぱり、リカのことそんなにスキだったんだ?
じゃなくて、暑いってことね。
急にどえらい陽気になったネ!
お空の上で何があったんだろう?
やっぱり天使たちも、リカのヘソ出しが早く見てみたい?
冬の間、相当オシャレしたし。
生足が出てたって、寒くない!
気合入れて、女の子してたもんね。
なんか、認められちゃった?
立夏よ。
今度は、薄着になりなさい。
みたいに、期待されてるんジャナイ?
神様がそう言うならしょうがないな!
でも、実は全然そんなことなくて、また寒くなったら
どうしよう?
ちょっと前まであんなに、ほら、
生足が出てたって、気合でカバー。
寒くないは言いすぎだったネ。
まだまだ春は先だから、って思ってたから
えっと、その。

急にあっつくなっても、まだ服出してないんだよね。
そろそろ春の服の準備を、って
おねーちゃんたちにせっつかれていながら、
やったことと言えば、
自分のタンスをひっくり返して
過激なパンツを見つけて小雨ちゃんに勧めることばかり。
姉妹なんだから、もっと下着も共有しようよって。
やっぱりマズいか。
オニーチャンは、どうせスカートがヒラヒラ揺れるなら
チラチラする中身はセクシーなほうが嬉しい?
リカはね、ワオって言わせたいから
セクシーも時にはいいよね、みたいな感じだけど、
それならパンツは姉妹それぞれが自分で選ぶほうが
ふいに見えたときに予想つかなくてドキドキするかなって考えるの。
だから使いまわしはしなくていいかなあ。
服は選んであげたいのに、パンツは違う。不思議だね?
小雨ちゃんも、一つ二つ気にいったのを持って行っただけだから
チラッと見えたときにこれは立夏と同じだって心配はあんまりないね!
ていうか、オニーチャンはリカのパンツだけ見てね。
それがいちばん、って思えるようにがんばるから!
まあ、先にがんばるのはタンスの片付けだね。
春服コーディネートをお披露目できるのは、いつのことになるやら。
できれば、春が終わる前に部屋が片付いて欲しいなあ。

そんなわけで、
急に暑くなってもまだ薄着の季節じゃないし。
この気温には、
これはそろそろ、おやつとかデザートにアイスも合うんじゃない?
昼間の汗ばむあの熱気!
リカにアイスを作れと要求しているよう。
大丈夫、もう失敗は繰り返さないって。
作ったアイスが多すぎたら、ちゃんと吹雪ちゃんも呼んで分けるし!
だから今度は心置きなくいっぱい作れるじゃない?
それから、最近の体重の増減は──
夕凪ちゃんが体重計にいたずらしたりしなかったりしてるだけだってば。
おなかのお肉なんて、冬を越す助けになったと思えば許容範囲だヨ。
それに、ちょっとくらい危機感があるくらいがいいと思うんだよね。
もうすぐ春休みが来るから、毎日のんびり過ごせるかもって気分で待ち受けてるけど、
短い休みだし、ゴロゴロしてたらすぐ終わっちゃうよね?
ぼやぼやしてると肉もやばいよ! って自覚していたら、
毎日運動の名目で遊んで、オニーチャンを連れてはしゃぎまわって、
充実した春休みを過ごせるんじゃないかな?
今年の立夏は、そんなふうに計画的なんだヨ。

だから、アイスを、ね?
あんまり暑くて困っている子もリカだけじゃなくてたくさんいるし。
青空ちゃんなんて、暑いからって脱ぎだしちゃう。
汗をかきながら自分の服を引っ張って、
おぎょうぎ悪いのが分かってるから、まず確認に来るの。

まっぱになっていい?
まっぱになっていい?
まっぱっぱ!

そうだよね、みんな暑いよねって
リカも脱いでいいカナって気分にもなるんだもん。
あの時にオニーチャンがいたら、大変だったよ。
思いっきり脱がされてたよ。
リカの手で。
暑いんだし、ブレイコウだってば!
よいではないか!
よいではないか!
青空ちゃんに変な言葉教えたってあとで怒られちゃうから、
よいではないかはふたりっきりのときにね。

まだ3月はこれから。
今の時期、暖かいように思っても
日が落ちてびゅうびゅう吹く風が冷たく感じたりするよね。
そんな季節にアイスは勇気が必要に見えるけど、
寒いときには、リカがくっついて暖めてあげるから
ねえ、いいでしょ?
今年もそろそろ、アイスデビューしようよ!
寒くなったら体を寄せて、
ほっぺたをぴったり合わせて。
ドキドキほかほか暖かくなったら、今度は手だけ合わせて。
見つめ合っても照れないくらいの距離でいようよ。
憧れのオニーチャンの顔を、心臓バクバク向き合える距離は
どのくらい?
もしリカが勇気を出して、恥ずかしさなんて吹っ飛ばせたら、
ゼロ距離だ?
そしたら、今度はさっきアイスを食べた時より短い距離で
食べさせ合って、
甘い時間を過ごした後は
抱き合ったらいいんじゃない?

蛍の偽日記

『朝食』

わがやの朝食は
もちろん──
そう、
みんなの大好きがいっぱい詰まった
山盛りメニュー。
小説の3巻にもあるとおり、
イングリッシュブレックファスト。
小説の3巻?
なんだか、私たちを題材にした小説があるみたいな言い方ですね。
私たち家族なんて、小説で扱うほどでもない
わりとどこにでもありそうな、平凡な日々を送る家族。
普通の暮らしで誰にでも起こる出来事で一喜一憂、
何も特別なことはなく、ただ平凡に、家族を愛しているだけの私たち。
違うところといえば、
実は夕凪ちゃんが魔法使いだったこと、
くらいでしょうか。

よく似ているところがあって共感もできる面白い小説の話はともかく、
平日の朝の定番は、そんなふう。
家族がたっぷり栄養を取って一日をしっかりがんばれるように、
ホタと春風ちゃんの願いを込めて、
量も種類も充分に取れる、朝一番のお楽しみ。
お兄ちゃんは、気に入ってくれているでしょうか?

今日は、お料理の栄養の本を読んでいたんだけど、
栄養表示の一覧に、くさやが載っているの。
お兄ちゃん、くさやってそんなにポピュラーなのかな?
だけど、干物は塩分が多くなるから気をつけないとね。
お魚はなるべくメニューに取り入れていきたいんだけど、
夕凪ちゃんは骨をとるのが苦手みたい。
早く食べたくて焦っちゃうのかな?
ちゃんとお皿に取り分けているもの、逃げませんよ。
落ち着いてね、って言ってあげないと。
もし何か思わぬ出来事があって、どら焼きみたいに消えてしまっても、
ホタがまた用意してあげるからね。
なんて、朝の定番メニューは、焼き魚もありですよね。
それで、あんまりくさやは関係ない話なんですけど。
蛍ってときどき、話がそれてしまいがちなんです。
お兄ちゃんに聞いて欲しいことがたくさんあるからなのかな。
夕凪ちゃんみたいですね。お姉さんなのにね。
話したいことがたくさんある妹って、ちょっとうるさいでしょうか?
いつでも近くにいてほしくて、実はそんなに話を聞いてもらわなくてもいいと思う妹もそう?
迷惑にならないか、心配しながら甘えています。
話っていうのは、ちょっとだけ焼き魚の関係。
食事の栄養の本によると、
朝食はエネルギー生成の効率がいいご飯がおすすめですって。
そうなの?
お兄ちゃんも、朝は日本食がお好みですか?
家族みんなに元気に一日を過ごしてもらいたくて
胃袋担当を買って出た蛍としては、
みんなの笑顔のために張り切るのは
ビックリマーク付きの優先事。
なにしろ家族がいっぱい、好みもそれぞれのにぎやかな家なので
そんなにすぐには要望に応えられないかもしれないけど、
蛍はときどきお兄ちゃんの言うことは妙に素直に従ってしまいがち。
小さい頃は一緒にいられなかった分、取り戻そうという気持ちなのでしょうか。
他の子たちの希望をいったん置いておくくらい、順位が上になりそう。
みんながそろう場所で、あからさまにお兄ちゃんが一番というわけにはいかないけれど、
時々は、お兄ちゃんのことを一番だと思うホタの気持ちを
届けさせてください。

できるだけみんなに満足して欲しくて
おいしい朝食を運ぶのなら、
高級ホテルみたいなビュッフェスタイル?
さすがに毎日は難しいけど、
今度、お休みのときにじっくり時間をかけて用意してみるのもいいかも。
きっと楽しいと思うな。
あれも食べたい、こっちも迷う、そんなふうに目移りするなんてなかなか経験できないから、
誰でもテンションが上がると思います!
定番が大好きな麗ちゃんも、そんな時には冒険してみたくなるかな?
ホテルのレストランと比べたら、さすがに蛍なんてちっぽけな見習いもいいとこですけど
家族みんなに向かう愛情では絶対に負けません。
どんな高級ホテルよりも蛍主催のビュッフェが嬉しいって思ってもらえる
果てしない目標に向かって!
実力では本物のシェフにかなわなくても、蛍のハートで補えるように
細い腕に力を込めてがんばってみたいです。
冬の間に太い腕になってしまったかもしれないけれど。
ところで、実際にビュッフェスタイルの朝食にするとしたら、
蛍はシェフなのかウェイトレスなのかメイドなのか、
どのコスプレをすればいいのでしょう?
お兄ちゃんの好みで選んでもらっていいですか?

ここ数日暖かい日が続いて、
かわいい妹たちの熱意に打たれ、ついにアイスを解禁してしまったことで
やっぱり、久しぶりのアイスに夢中になって
ご飯を食べられなくなる子が現れ始めました。
こんな時こそ、おいしく食べられるものを!
大事な朝食をしっかり取ってもらうために、毎日が工夫の連続です。
それでね、あんまり甘いものを摂るとのどがかわくみたいで、
今日はみかんが大人気。
少し前までこの家では果物界のエースだったいちごは、
このまま暖かくなったら、買い足す機会もないでしょうか?
残りを家族全員で分けるには、ちょっと足りないくらいの量が
中途半端にあまっているけど、
お兄ちゃん、
今後のメニューについて、相談に乗ってもらっても大丈夫なら、
話し合いながら、台所でいちごを私たちで分けてしまいませんか?
この冬を締めくくる味覚の、そのひとつ。
お兄ちゃんと、去り行く楽しかった冬に笑顔でありがとうを告げながら。
これからの春を迎えたいです。

星花の偽日記

『雄飛』

まだ、ときどき風は冷たいけれど
一日ごとに暖かくなっている実感がある季節。
というか、急に暑くなりすぎている気もします。
花粉症の人は急いで対策をしないといけないようです。
お兄ちゃんも、花粉症には気をつけてください。
って、風邪じゃないんだし、気をつけてっていうのはおかしいですね。
もし花粉症になってしまったら、
よく効くお料理を春風お姉ちゃんや蛍お姉ちゃんが知っているかも。
星花はそこまで気が利いた子ではないので
ティッシュの箱を持って駆けつけるくらいが精一杯です。
あとは、鼻をかんで赤くなってしまった時のお手当てが、
お姉ちゃんたちから塗り薬をもらってくればなんとかこなせるでしょうか?
未熟者ですが、
困ったときは家族で助け合いたいし、一声かけてください!

いろいろなことがやって来る春です。
この毎日の暖かさに、
新しい日々が訪れるような感じもしています。
別れと出会いの季節が来て、
でもなんだか、別れだけじゃなくて
晴れやかに進んで行けるような──
なんだかそんな気分になれる、いいお天気。
何かが始まる季節。
お兄ちゃんがこれから天下の覇権を取りに出かけるのに
うってつけの気候です。
これは、天がお兄ちゃんの出現を待ち望んでいるのでしょうか。
星花はまだお供ができるほどには育っていないのですが、
いつか立派にご主君様をお助けできるように
毎日、運動に勉強に、それから学校の活動に、張り切って励んでいます。
今日は、星花が所属している環境整備委員会の活動で
学校の花壇を見て回りました。
お世話になった先輩方や、
この一年で成長した後輩たちが揃って──
暖かい、のどかな陽気のこの日に
私たちが重ねてきた実績を振り返り、
やりこしたことがないか最後の確認をしながら
穏やかな時間を過ごしました。
まもなく卒業してしまう先輩たちに、
後顧の憂いなく前へ進んでもらえるように。
それから、もし私たちが来年から別の委員会を選ぶとしたら
後輩たちが苦労しないよう、教えておけるように。
放課後だけでは足りなくて、
この土日には、また委員会活動で集まる予定です。
花壇をきちんと見て回る、というよりは
せっかく仲良くなったみんながもう少し一緒にいられたら、と
誰ともなく提案したこと。
この陽気で一気に咲き出した花のお世話も、しっかり後輩に託しておきたい。
そんな名目で、
お休みの日、普段はあまり着ないようなおしゃれな私服で
ちょっと新鮮でうきうきするような、
だけど、この特別は最後だからと証明しているみたいで寂しいような?

卒業する六年生の先輩たちに、
お世話になったお礼の寄せ書きを贈ろうと
こっそり話し合っています。
星花は、この重大な布陣の総大将を任せてもらえることになりました。
おうちではまだ、よちよち歩きの小さな妹にしか見てもらえないことが多いですが
小学校の生徒としてみれば、信頼を受けているのかもしれません。
こんな頼りない星花だけど、
仲間たちと助け合って成功させることができたらと思っています。
先輩たちに喜んでもらいたい気持ちは、委員会の子たちみんな同じですもの。
こんな経験を積み重ねて、お兄ちゃんに手柄をたくさん報告して、
いつかお側でお仕えできるようになりたいです!
今はまだ、不安とか失敗談とかを聞いてもらうことのほうが多い星花なのですけど
なれるでしょうか?
お兄ちゃんに助けられながら、
それに、友達みんなに支えてもらいながら
人に頼ってばかりで申し訳ないけれど
未熟なまま、もうしばらくやっていかなければなりません。
総大将なのに、号令をかけて格好良く仲間を率いることはできないみたい。
先輩からも後輩からも、教えられてばかりの毎日です。
委員会の仲間たちは、
かわいい後輩がいっぱい。
あやとりが得意な子や、
なぞなぞをたくさん知っている子。
もともとお花の飼育に詳しい子、ゼロから学ぶ子。
お調子者の女の子、大人しくても慎重なところが頼りにされている子。
みんな、楽しく明るい学校生活を過ごしたいことは、気持ちは一つ。
その中で、星花がどう役に立っているかというと
あんまり特徴がなくて地味なポジションのような気がするんです。
いつも助けてもらっているお礼に、
この土日は、手作りのお菓子を用意して喜んでもらえたらと考えているんだけど
いきなりで、みんなびっくりするかなあ?
女の子が多い家に育って、家事の手伝いをよくすることでは有名みたいだし、
いいかな?
星花も少しは、立派な先輩たちみたいに
お姉さんとして活躍できればいいんだけど。

うちの家族のことでは、お兄ちゃんも学校ではたまに話題になります。
お兄ちゃんが知らないところで話題になってしまっていて、申し訳ない気もします。
女の子ばかりの家にやってきてくれて、
私たちの中心にいるお兄ちゃん。
そんなかっこよくて立派な男の人は、みんな気になるみたい。
一度見てみたい、なんて言われたらお兄ちゃんは困るかもしれません。
でも、星花のかわいい後輩たちは
悪い子なんて一人もいないと自信を持って紹介できます。
もし気が向いたときにでも遊びに来てくれたら、嬉しいです。

春が来たからといって、星花がいきなり新しい道に進むわけではありません。
いつか花が開くとしても、もっとしっかりしてから、もう少し先のこと。
その時が来て、力不足を後悔しないように、
まだ子供で未熟であっても、一生懸命に過ごしていきたいです。
お兄ちゃん、
星花がいつか大きくなって、まだのんびりしていたら
三顧の礼で迎えに来てくれたらとお願いするのは、
星花みたいなたいしたことのない子だと、厚かましいですよね。
やっぱり、お兄ちゃんを追いかける側になりたいな。
永遠を誓う義兄弟の契りを結び、
生死を共にすることができる
その相手がお兄ちゃんだったら
星花は何も思い残すことはありません。
早く、お兄ちゃんが頼りにする星花になりたいものだけど
そんなに急にはいかないみたいなので
気長に待ってもらえたら嬉しいと思う、弱気な星花です。

麗の偽日記

『憂鬱』

やっぱり
あなたも──

私のことを慰めようと思っているの?
春のダイヤ改正で、
また、私の気分は憂鬱になる。
新しい出会いよりも
切ない別れが重くのしかかるのは、
二度と取り戻せないものが
どれだけ大事なのか、知っているから。
悔やんだって何にもならないことは、わかってる。
前向きにならなきゃいけないのにね。
うつむいてばかりなんて情けない、周りの人にも笑われちゃう。
役目を終えて、誇らしく退場していく車両たちにね。
誰も、無念の思いで去っていく人なんていない。
私が勝手に悲しくなっているだけ。
だけど、
こんな思いを持っていたら、いけないの?

落ち込んでいたって、何かが変わるわけじゃない。
私が本当に電車を愛しているなら
新しいことに挑戦する人たちがいるんだから、応援してあげないと。
いつまでも、同じところにとどまっているなんて
電車にも人間にもできないこと。
そんなことを目指したらいけない。
自分に言い聞かせたところで、
悲しい気持ちがなくなるなんてことはない。

私がしなければいけないことは、
失われた大切なものを忘れないこと、それだけじゃなくて──
それだけじゃなくて。
でも、春が来たから何がはじまるのかって言うと
私には何も喜ぶことなんてないし。

新しいことが始まる変化の季節だからって、
ある日いきなり私の体が人間から電車に進化した、
なんてことは絶対にありえないって、
いくら私が子供でも、そんなことはわかってる。
ありえないと思う。
まずないわよね。
本当にないのかしら?
もしかしたら、広い世界なんだし
たまにはどこかでそういうことが起こっていても──
もちろん、
起こらないことは起こらない。
人間は水の上を歩いて渡ることはできない。
そんなことが起こったらただのトリックだし。
春が来たって、
どんな望ましいことがあるっていうの?
できないことはできないのに。
私が大きくなったら、
今は全然想像もできない方法で
とても無理だと思っていたことを可能にできるのかしら?

それまでに
どんなに悲しい思いをするかもわからないのに
あいまいな未来に希望を託すとか
とてもやっていられない。
でも、儚い願いを繋がなければ
私は一歩も前に進めない。
悲しんでばかりなんて、良くないことなのよね。
良くないことでも──
良くないからって言い聞かせたら、自分の気持ちが変わるわけじゃないもの。

他の人たちは、こんなときにどうするの?
悲しい思いをするのは、世の中に私だけだって
そんなわけはないって
私は知っている。
だけど、どうすればいいのかは誰も教えてくれない。
その痛みは、自分で乗り越えなくてはいけないなんて
その場しのぎのことを言ってごまかして。
本当は、みんなただ忘れるだけなんだわ、きっと。
でも、私は忘れない。
絶対に忘れたくない。
何が何でも、そんなの受け入れられない。
悲しいままでもいい。
忘れて次へ進むなんて、私には無理なの。
私だって時々は、
そうしたほうがいい、
それでいい、
って決めたんだと思い込むときもある。
本気でそのつもりなのか、それともただの気の迷いなのか
ふらふら、はっきりしないまま。

私も、
立派な車両たちみたいに、一生懸命走り続けて
胸を張って引退していくことができたなら
こんなに苦しまなくてすむのかな。
納得行かないって、その時も泣くのかしら。
だいたい、電車になることなんてできない。
銀河鉄道999にでも乗らないと。
しかも、私はどちらかというと
メーテルだってみんなに言われるし。
それは見た目だけなんだけど。
かと言って、鉄郎でもないけど──
まあ、詳しくないから、本当は鉄郎なのかもしれないけれど。
でもビフテキは好きじゃないから、やっぱり違うわね。
男の子なんだから、あなたが鉄郎をやっていればいいわ。
一人で。
私はメーテルにもならない。
よく知らないから、気がついたらメーテルになっているかも。
それはないか。
私がなりたいものは、
たぶん、違うんだけど。
それが何かは、まだ私もわからない。
無邪気に電車の運転士を目指していた幼稚園の頃とは違う。
あのときより、もっとたくさんのことがあって
好きなものが増えて
悲しい出来事がある。

結局、春が来たからって、そんなにいいことはない。
何が起こるって言うの?
ひとつ学年が上がったくらいで、
たくさん電車に乗りに行けるわけでもないし。
横断歩道を渡ろうとしているおばあさんを助けたら
実は鉄道会社の偉い人で
電車乗り放題のゴールドパスをもらえるわけでもないし。
そんなパスないけど。
男嫌いも変わらない。
そんなの、変わるところなんて想像できないし。
何も私の気持ちを変えられないのなら、
このままでいられるように
私を取り巻くものが何も変わらなければいいのに。
変化は何も、私のためにならない。
春が来ても、
七夕のお願いも、
クリスマスプレゼントも、
あなたは、初めて出会った時期を思い出せば
私たち家族に訪れたクリスマスプレゼントだって
姉様たちは時々言うけれど
私は、そうじゃないと思う。
ただ面倒が増えただけ。
私のほっと安心できるこの環境に
よりにもよって男が!
でも、考えてみればうるさい子はうちにもたくさんいるから
もともと安心できる環境というほどでもなかったわ。
賑やかなこの家になじんで、
いつのまにか、最初からいたみたいに
すっかり、全員が認める家族の一員みたいな顔。
あなたが来る前に、誰にこんな話をしていたのか
もう思い出せなくなっている。
私の悲しい話。
一人で大事にしまって、どこにも持って行かない
私だけの秘密だったのに。
聞いてくれて、ありがとう。
こんなつまらない話、すぐ忘れてくれたらもっと助かるわ。

綿雪の偽日記

『蝶』

春は変わっていくものが多い季節。
いもむしさんだって、もうすぐ蝶になるの。
海晴お姉ちゃんの天気予報も、
新しいコーナーを計画中。

そのアイデアの一つが、
天気予報アイドルの育成なんです。
もっと身近に、
今までよりも親しみやすい天気予報を目指して。
でも、毎日の欠かせない番組なんだし、もう充分かも?
とにかく、新しいことが始まる春です。
アイドル募集は、女の子が優先。
それから、年齢制限なし。
あさひちゃんもアイドルになれるかしら。
よだれ系アイドルですね。
時代をリードする、ファッショナブルおむつ。
元気で、たくましくて、
大きな夢を胸に、狙っているのは大好きなお兄ちゃん。
お兄ちゃんのことを大好きなのは、あさひちゃんだけじゃないですね。
見ているとかわいくて、
みんなが赤ちゃんを欲しくなる
新時代のアイドル天気予報。
そんなのがあったらいいけど、
今のところは、予定はないみたい。
それで、ユキが海晴お姉ちゃんに誘ってもらって
オーディションを受けてみると、
君こそが探していたダイヤの原石だ!
未来の天気予報を担うスターだ!
ということで、試しにダンスのレッスンを受けることになりました。
病気がちで、体育も休むほうだし、あんまり筋肉はないけれど
踊れるのかな? ちょっと不安。
だけど、迷惑をかけてはいけないなんて引っ込んでいたら
なんにもできない。
海晴お姉ちゃんは励ましてくれました。
こんなふうに言ってくれたの。
ユキががんばるつもりなら、
それを助けるのが、コーチのお仕事。
もしも迷惑をかけても、それが必要なときもあるんだから
いつか蝶になって羽ばたくために──
決して後で悔やまないように。
ユキもできるでしょうか?
ダンスのレッスンを受けるのは、ユキともう一人の、
同じ年頃の女の子。
きれいで、才能があって、明るくて元気で
病気なんか簡単に跳ね除けてしまいそうな、しっかりした子です。
あらまあ、細くて体力もなさそうな子が来た。
あなたについてこれるのかしら?
ちょっとだけ、怖いかも。
でも、ユキもやると決めたからには、やってみたいです。
レッスンが始まったら、
そのときがシンデレラストーリーの始まり。
怖いと思っていた子にいっぱい助けられて、
つらいレッスンを励ましあったよ。
その子も、才能だけでどんな苦労も乗り越えてきたわけじゃない。
苦しいことも、向き合うだけで泣いてしまいそうになる壁も、
大変な努力と、手を取り合う友達のおかげでどうにかやってきた。
だから、ユキにもがんばってほしいって言ってくれたよ。
病気だからって、負けないで。
悲しいことがどんなにたくさんあっても、
たとえ死んでしまうことがあったとしても、それで終わりじゃない。
私はそれを知ってるんだ、って言ってたよ。
女の子の名前は、ミキちゃん。
ユキの大事なお友達。
新人アイドルのユキが、とうとう大きなステージに向かう前に、
忘れないで、って言っていました。
大事なことは何なのか、忘れないように。
ミキちゃんとの思い出と、
それから、たくさんの楽しい時間を、
大事な人と過ごしたこと。
いもむしさんだったユキは、たくさん栄養をもらって
そうやって蝶になってはばたいて──
お兄ちゃん。
ユキがいちばん大事にしたいことは、お兄ちゃんといること。
ユキとお兄ちゃんがいる、この家族です。
アイドルの夢は、ステージにあがる前に終わり。
今日は、風が強くても、日差しがあるからあたたかかったよ。
おうちの中にいれば寒くなんてない、おだやかな日。
日曜日に家にいて、幼稚園の子や、もっと小さい子たちとお昼寝をするには、
ちょうどいいお天気でした。

吹雪ちゃんに言ったら、
昔、蝶になった夢を見た人が、
自分は夢を見ていたのか、
それとも、蝶が私になった夢を見ているのか
そんなことを考えたっていうお話を教えてくれたの。
ユキは、アイドルになる夢を見ていたのかな?
それとも、アイドルとして忙しく活動しているユキが、
のんびりと大好きなお兄ちゃんと過ごす夢を見ているのでしょうか。
ユキはね、せっかくいい夢を見るのだったら、
アイドルよりも、もっとなりたいものがあるの。
そんなことを言ったら、ぜいたくでしょうか?
でも、夢の話なんだから、ちょっとくらいいいよね。
わがままだって、ぜいたくだって、それも全ては目が覚めれば消えてしまう夢の中。
ユキは、病気で体調が悪くなるなんてことはこれから全然なくて、
毎日元気に学校に行って、新しいことをたくさん経験して、
伝えきれないくらいの出来事をお兄ちゃんに聞いてもらえるような
元気な女の子になりたい。
毎日しっかりお勉強して、お兄ちゃんに褒めてもらうの。
体育の授業では、走ったり転んだり、擦り傷をたくさん作って
これじゃあ将来どんなふうに育つのか、心配させてしまうんです。
かけっこでも、跳び箱でも何でもいいから
クラスで一番を競えるような得意なものがあって
なんでもできるほどじゃなくてもいいの。
ひとつだけでも、得意なものが欲しいな。
そんなに自慢するほど上手じゃなくて、ちょっと得意なだけでもいい。
ユキがこっそり胸に潜めているくらいでちょうどいい、小さな自慢。
そんなふうに楽しく過ごす普通の生活を
お兄ちゃんにはなんでも聞いてもらって、
ときどきは褒めてもらって、
少しでいいから、お兄ちゃんが自慢に思うこともあるくらいのユキになりたい。
誰もがあこがれるきれいなアイドルになるよりも、
それがユキの一番の夢です。

天気予報アイドルの計画は、まだ企画中なんだって。
それよりも、毎日必要なことをまずしっかり伝えるのが、
お天気キャスターの大事な役目なんだそうです。
明日は強風に注意。
これまでの暖かさから、急に普通の3月の気温になります。
テレビの前の、この予報が必要な人たちにしっかり届いて欲しい。
海晴お姉ちゃんの真剣な顔は、そう伝えています。
もしあんまり寒くなったら、ユキは学校に行ったらいけないもの。
あんまり無理をしたらいけないものね。
天気予報は、大切なことを伝える立派なお仕事。
ユキは明日も学校に行きたいなら、早く休んで体調を万全にしておくことですね。
できることは、それだけ。
もしもお天気が悪くて学校に行けないなら、仕方ないことなんです。
でも、不安なまますぐに眠れるかどうかユキにはわかりません。
もう少し気持ちが落ち着くまで、お兄ちゃんとお話をしていたら、やっぱりだめですか?

お兄ちゃん、もしもお兄ちゃんの時間が大丈夫で、
このあとユキがまだもう少し起きていていいなら、
夢の中で大評判だったユキのダンスを見ていきませんか?
本当は特別じょうずなわけじゃないかもしれないけど、
あんなに元気に踊れていたんだもの。
ミキちゃんも、病気じゃなかったみたいに踊っていたよ。
とっても楽しい夢の世界には、もう一度行ってみたいけれど
ユキはきっと、あの世界でもすぐに芸能界を引退して
お兄ちゃんと過ごすことを選ぶと思います。
元気なユキが、いつかお兄ちゃんの自慢になるように
ユキの一番がお兄ちゃんで、
今日もお兄ちゃんが、ユキを元気にしてくれているんだと伝えたいです。

ヒカルの偽日記

『絵本の日』

今日も風は冷たかったけれど
ユキは大丈夫、元気に学校へ行ってきたよ。
寒いと言っても、もう3月も中旬になる。
うちの姉たちも桜の開花が気になる季節。
数日前までは、春が来ないうちに
もう初夏になりそうな天気だったけど──
私は今日みたいにゆっくりと季節が変わってくれるほうがいい。
急な変化には、誰だってそう簡単についていけないものだし。
と思うけど、オマエが来たときはすぐに馴染んだ子が多かったな。
どこか、そういうものだと前から思っていたなんて言った子もいるし。
我が家にはずっと、不思議と何か足りなかった気がしていたって。
そこに当たり前みたいにすっぽり入ってくるものなんだって。
いずれオマエが来るものだと、最初から決まっていたような感じ。
それまでだって楽しくても、幸せでも、平凡でいることに何の不満もなくても
なぜか欠けていたような、必要なもの。
物足りなかった心のどこかに、気がつかないほどかすかな隙間風。
一人やってきただけで、こんなに暖かくなるものなんだろうか。
いったい、なんなんだ?
これからの私たちに、また新しくそんな変化なんて起こるのかな?
嬉しい、騒がしい、当たり前の、
私たちの日常の小さな一部分。
いつも通り過ごす日々は何も変わっていないはずなのに
オマエが入るだけでずいぶん違った景色に見える。
思い出深い昔の日々も懐かしいけれど、
そんな頃に戻りたい気持ちが全くないのはなぜだろう。
まあ、戻ろうとしても、もうオマエを家から追い出すわけにはいかないし。
その分、おかしなことをしたらしっかり叱って、
叩き直してやらないと。
夕凪のいたずらに付き合ったり、
拾ってきた猫をかくまってやったり、
虹子の納豆を代わりに食べたり、
あたりは、問題なく許せるとして。
風呂を覗いたりしたら驚く姉妹が多いだろうけど、
オマエはそんなことはしないか。
家族なら一緒に風呂に入るし、覗いて楽しいこともないもんな。
意外とおかしなことはしないんだな。
男って、もっとよくわからないものだと思っていたんだけど
一緒に生活してみないと見えないことがある。
全然、普通だ。
勉強もそんなに好きじゃないって言いながらしっかりやってるし。
苦手なわりに、結構教えてもらえるし。
私の運動にも付き合ってくれるし。
同じ歳っていうのもあるけど、
きょうだいで誰より、一番近いような感覚までしてくる。
すると、やっぱりオマエも、春になると変な気分になったりするのかな。
この日々が通り過ぎてしまうと困るような、わけのわからない気分。
過ぎ去る時間を止めるわけにはいかないのに。
別に、新しいことが始まるのが嫌なわけでもないのに。
特別に変わってしまう具体的なことなんて何もないのに──
なんだか、寂しいような、怖いような、
よく似ているけどまったく別の感情のような。
新生活に向けて忙しくしている間はあんまり気にならないけど、
ふと息をついたときに、物足りなくなる気持ち。
まるで、誰かに近くにいてほしいと
私の体のどこかでつぶやいているみたい。
変なの。
まあいいや。オマエも片づけが大変じゃないか?
古い教科書をまとめて、来年の分を入れる場所を作らなくちゃ。
高等部になったら、一年前の教科書も後で見直すことが増えるって春風が言うから
どうしようか考えていたんだけど──
中等部の頃にも同じように言われて、こないだまですっかり忘れていた。
まとめて押入れに放り込んだけど、見直す機会なんてなかったよ。
だから、まあいいかと思って。
うちにはさいわい、勉強で困ったときに教えてくれる人がたくさんいるんだし。
頼りにしてるぞ。
嫌いだからって、あんまり勉強をサボるなよ。
私も、できることがあったら助けるよ。
できそうなことって、体を鍛えるときくらいしかないかもしれないけど。
その時は相談して。
今年の教科書をきつく縛って押入れに持っていったら、
懐かしいものを見つけた。
もちろんそれは、中等部のときの教科書。
この時期の私はまだ鍛え方が甘かったのか、
縛り上げた紐にも、まだ余裕がある。
今ならもっと圧縮できるのにな。
後で縛りなおすから、暇だったら手伝って。
オマエが手伝ってくれたら、古本圧縮の記録を更新できるかもしれない。
それから、他にも見つけたもの。
ずいぶんボロボロになったけれど、今でもよく読まれている本。
これから先もしばらくは、すぐに取り出せるような場所においておかないと。
私たちも小さい頃に使っていた、一番最初の教科書。
いつまでも色あせないというには見た目のほうは自信がないけれど、
内容は文句なし、
今の子供たちにも新鮮なお話の数々だ。
オマエはどんな絵本を読んで育っただろうか。
たとえば、100万回生きたねこの内容って、覚えてる?
さっき見直したけど、こんなに切ない終わり方だったかな。
バーバパパの子供って、7人だけで寂しくないかなあ。
ウォーリーを探すことにかけては霙姉は実力があった。
あの性格でいつも正解をじらすものだから、悔しい思いをしたっけ。
あさひが必要としなくなるまで、もう少し活躍しそうな、
ほこりっぽい押入れで見つけた宝の山。
それとも、あさひが大きくなってからも
うちにはこれを引き継ぐ子が現れるかもしれない。
そうか、これから嬉しい変化があるとしたら
また当たり前みたいに赤ちゃんが増えていくってことだな。
ママはその気がないみたいだし、
オマエがどこかから赤ちゃんを連れてきたら、
やっぱり私は怒るところなんだろうか。
それとも、家族たちが喜びそうだし、私もそれを見て一緒に嬉しくなるのかな。
うーん、考えてもわからないか。
それより、今のところは早く作業を終えてしまおう。
私が当たり前に新年度を迎えるための、忙しい時期。
また今年の春も、オマエと普通に過ごすつもりだ。

さくらの偽日記

『おかし』

もうすぐホワイトデー
なんだって。

なんの日だろうと
おもっていたら、
びっくり!
びっくりしたの!
さくら、なにかあると
すぐびっくりしちゃう。
あのね、さくらが、びっくりしやすいんじゃないの。
ふしぎなことがいっぱいあるの!
なぞがなぞをよぶ
おおきなちきゅう。
お兄ちゃん、さくらを守ってね。
それでね、
なぜびっくりしたかって、
お兄ちゃんしってた?
ホワイトデー。
そんなことってあるのかな?
ふしぎ、ふしぎのおはなし。
さくらがお兄ちゃんから
おかしをもらえる日。
あ、おかしはいつももらってるけど、
さくらがもらっても、
もう!
お兄ちゃんは、あんまりさくらちゃんに
あげすぎたらだめ!
って、おこられないんだよ。
なぜかって、
それは、
さくらがバレンタインにチョコをあげたから
いいことをしたねっていう
ごほうびなの!
いいことをしたら、ほめてあげましょう。
よくできたね。
そらちゃんがおりこうで、さくらもうれしい!
にじこちゃんはたのしくて、いいとおもいます!
ゆうなおねえちゃん、かしこくてすごいね、
さくらはそんなけいさん、おもいつきませんでした!
みんなみんな、やさしい、いいこ。
うれしいわがや。
だから、バレンタインにお兄ちゃんがよろこんだら
ありがとうのおかえし。
きっともらえるって、おねえちゃんが言ってたよ。
さくらちゃん、がんばったね!
さくらはね、
がんばったっけ?
おやつのおいしいチョコを、
ぱくぱく
ぱくぱく
自分でたべてたよ。
あれ? さくら、おかえしのおかし──
もらえないの?
お兄ちゃんにもあげたけど、
自分もたくさんたべていた
くいしんぼうの
さくらはわるいこ?
ごめんなさい!
お兄ちゃんのことすきだけど、
おやつにチョコがあると、
あっ!
うれしい!
おいしいチョコレート、
お兄ちゃんといっしょにたべる!
おさらにならんだ
しろくろもよう。
しろいのはかわいいから、さくら!
くろいのはかっこいいから、お兄ちゃん!
でも、お兄ちゃんもおさらにわけてもらっているの。
お兄ちゃんってかわいいの?
さくらは、かっこよくないけど
チョコはくろくても甘いから、
かっこいいだけじゃなくてやさしい子。
お兄ちゃんみたい。
きっとお兄ちゃんだったら、
さくらにやさしくしてくれる。
でもたべすぎたらいけないよ、
さくらはまだちいさいから、
よくたべてよくねて、いっぱいあそぼうね。
さあ、
チョコおいしいよ!
って、
言ってくれるかなあ?
やさしい、お兄ちゃん。
それで、
さくらは、
たべてしまいました──
バレンタイン、
お兄ちゃんにあんまりチョコをあげられなくて
ど、
どうしよう。
ひとりだけおかしがもらえないと、さみしいよう──
それに、お兄ちゃんがさくらのことすきじゃなかったら
こわいこわい──
おなかがいたくなる。

お兄ちゃん!
さくらはいまからでも
お兄ちゃんをすきだって言うので
きらいにならないで!
お兄ちゃんのために、なんでもしてあげたい
ふくらむきもち。
さくらのとくいなおゆうぎ、
みてください。
きょう、ようちえんでほめられたばっかりの
とくいなおうた。
おねえちゃんたちも、
さくらのことすきになるって。
じまんのいっきょく!
こいするいっきょく。
さいた、
さいた、
さくらの
はなが。
ならんだ、
ならんだ、
うめのはな、
もものはな、
あじさいのはな。
どのはなみても、
きれいだ
なっ!
ね?
きあいをこめて
うたいました!
う──
うえええん!
お兄ちゃん、ごめんなさい。
じつは、
ほんとうは、
ちがってるの。
あじさいのはなは、
まださいていないの。
うたをきいたお兄ちゃんが
あじさいのはなをたのしみにして、
みにいって、
がっかりしたら
さくらのせいなの!
さくら、お兄ちゃんのたのしいおはなみ、
だいなしにしちゃう!
さくらは、なさけない子で
お兄ちゃんに、チョコもおうたも
しっかりあげられないの。
おかしはしょうがないけど、
ううん、おかしもさみしいけど、
でも、
どうか、さくらのことをすきじゃないなんて
そんなことは言わないでください。

青空の偽日記

『のらねこにゃん』

ねこ──
どこいった?

いないの。
ねこ。
いつも、
おにわにいた
ながーい
ひろーい
びろーん
うとうと、ねころぶ
ねこ。
みたことないほど
のびるよ。
ぽかぽかあったかくなると、
ながなが、びろびろ、
のびるいきもの。
ねこ!
あれは、なにでできてる?
あのね、
あったかいをすっとばして、
あつい!
まなつ!
なんごく!
せきどうふきん!
みはるがいってた、あついばしょ。
いま、せきどうふきんでしょ?
だから、
ねこも、
どんどんのびるの。
おにわのはしからはしまで
びろーん
ながいよ。
えっとねえ、
ひゃくまんめーとる。
のびる。
あついからねえ。
よくある、よくある。
おにいちゃん、
うそだよ!
そんな、のびないよ!
だまされた?
おにいちゃん、
すぐだまされるね!
そらが、かしこいから?
うふふ。
それでね、ねこがね、
きょう、みにいったらいない。
いつもはぽかぽか、ひがあたる、
おにわのいっとうちに、
こにくらしい
つらがまえで
にんまり。
おにわのどうぶつのぼす。
ふんぞりかえってたのに
いない。
そらも、
おやぶん!
って、えさをもっていったのに
いない。
にげるときねえ、
すぐに、ちぢんで
すっとんでいくの。
あーんなに、のびてたのに
そらがぱたぱたはしってったら
びくっ!
すたっ!
ひゅーん!
いなくなる。
きえるの、はやすぎ!
おまえは、ゆうれいだった?
そうじゃなくて、
はえなの?
もしかしたら、
あれが、まきゅう?
おにいちゃん、
ねこってなにもの?
はしっていくときに、ちぢむの。
だいたいねえ、
ごせんちくらいになる。
ちぢんでとぶ。
うそだよ!
そんな、ちぢまないよ。
おにいちゃん、まただまされた。
どうしてそんなにだまされるの?
ひとをうたがうことをしらないの?
つららがいってた。
おにいちゃんはあれなんだって。
あれ。
おひとよし!
それでね、
きょう、かぜがふいてた。
そらをはこんで、とばすかぜ、
たつまき!
はるいちばん!
たいふう!
そら、かえってきたみぞれとそとにでたから、
てをつないだから、
とばなかった。
でも、ねこはかぜでとんじゃった?
だからいなかった?
どうして、ねこはおうちにいれたらいけないの?
ほたは、ときどきねこになる。
にゃんにゃんにゃんのごろあわせ、
ねこのひは
ねこになる!
にゃーん。
わんわんわんのごろあわせ、
いぬのひも、
ねこになる!
にゃーん。
しまうまうまのごろあわせ、
しまうまのひも、
ねこになる!
にゃーん。
しまうまのひなんて、
ないよ!
おにいちゃんの、おひとよし!
おもしろい、おひとよし!
ほた、ねこだけど
おうちにぼすねこいれたらだめなんて、かわいそう。
とばされちゃうよ? どうしよう。
ねこも、にんげんになればいい?
にんげんになったら、おうちのかぞく?
にじゅういちにんめのきょうだい。
きっと、なれるよ!
そらも、ねこになれるの。
にゃーん。
でんしゃにもなれる。
はっしゃしまーす。
あと、かんう。
いきるときもしぬときも!
すきなひとと、しぬまでいっしょのいきもの。
かんう!
おやつがチョコのときも、あんこのときもいっしょ。
かんう!
のびても、ちぢんでもはなれない。
かんう!
おにいちゃんは、そらのかんう。
そらは、おにいちゃんのかんう。
かんう、ふたり!
かんう、にじゅうにん!
あとねえ、そらねえ、おにいちゃんにもなれる!
そら、だいすき!
そらって、かわいい!
そらはいいこ!
やっぱり?
おにいちゃんは、そらのことすき!
そらはね、そらにもなれる。
おにいちゃん、だいすき!
おにいちゃんのおひとよし!
だっこして!
もっと!
ねこも、にんげんになる?
いつなれる?
ねこ、どこいっちゃった?
はやくかえってきたら、
おうちのねこにもあわせてあげる!
にゃーん!
そらだよ!
ほたもいるよ。
おにいちゃんは、ねこ?
ねこじゃない?
そらねえ、
しまうまにもなれる!
おうちのしまうまは、
しろと、ピンクの
しましま。
おにわにいるよ。
ぼすねこのけらい。
うろうろ、うじゃうじゃ、
ぽっくりぽっくり。
ピンクのこうしん。
うそだよ!
だまされた?

真璃の偽日記

『キャンディー』

生まれ変わっても続く
永遠の愛は
この世の中にあるけれど、
いくらなめてもなくならない
奇跡のキャンディーは
どこにもないの。

マリーは女王でもあるけれど
まだ幼稚園の年長さんだし
甘いものが必要なのよ。
それなのに、小さいからたくさん食べたらいけない
この理不尽。
なんてこと──
女王でも思いのままにならないことって
たくさんあるわね。
とはいえ、
人の上に立つものは、ちょっとくらいのことで
へそを曲げたりしたらいけないの。
忍耐強く、強い意志を持って
民衆を導いていかなければ!
それができないなら、
革命を起こされて
つゆと消える運命。
前世のマリーは、すこーしだけわがままだったの。
もっと人々を大事にするべきだったわ。
美しい宝石も、華麗な芸術も、
毎日汗を流して働く人たちが
世の中を支えているから成り立つのだということを
もう忘れたりしないわ。
パンがないときは
自分の身を捧げて──
僕の顔をお食べ!
って、言ってあげられる優しい女王にならなくちゃ。
子供らしい知識も、将来の役に立つものなのね。
捧げるのは、あんぱんの顔じゃなくて慈愛というところは注意。
無邪気にマンガごっこしている小さい子達じゃないんだし、
マリーのかわいらしい顔を自由にできるのは
愛する人だけじゃないとね。
フェルゼンの愛の証、
今日の記念日に受け取ったわ。
さくさくとした食感も楽しく、
ふわっとバターの甘い香りが広がる
おいしいクッキー。
素敵よ、苦労して探したんじゃないの?
フェルゼンは、無骨な男の人。
不器用なところもかわいいタイプで
女の子に振り回されて──
本当は、しっかりしているところもあって
決めるところは決める、マリーのりりしい恋人。
きっと、このクッキーは、愛を示すために
世界中を走って必死で探し求め、
嵐の街を駆け巡り、
革命の戦火を潜り抜け、
ライバルと剣を打ち交わし、
愛のために海を泳いで渡り、
ぼろぼろになりながらも、疲れた体を引きずって
ついに届けた情熱の結晶。
いいのよ、謙遜しなくても。
マリーには全部わかっているんだから。
本当は違うとしても、
もしも必要なら、実際にそんな困難に挑むことになったとしても
ためらわないだろうって──
そんなフェルゼンの愛は、ちゃんと伝わったわ。
だから女王としてするべきことは、
ちゃんと見ていてどれだけ立派だったか、教えてあげること。
この家族はあなたがいなくては成り立たないと。
マリーはまだ小さい女王で、
甘いものも
愛情も
大人の人よりもたくさんもらわないといけないでしょ?
今度も女らしいマリー・アントワネットになるために、
体も心も、成長中。
フェルゼンと愛し合って経験を積み重ねたマリーだもの。
これから大きくなれば、もう姉妹の誰も追いつけないくらい
魅力的になるわ。
前世のマリーも絶世の美女だったけれど
愛されて育って、比べ物にならないくらい美しく立派になるんだから。
フェルゼンは、そんなマリーにふさわしいただ一人の男性。
こうして家族として生まれて、長い時間を過ごせることに感謝。
大きくなったときに、運命の人に出会えるか不安に思うことももうない。
そして、家族だから、結び合う絆は永遠だと信じ合える。
二人を引き離すものはもう何もないわ。
いいえ、あったとしても、負けるものですか。
バレンタインに誓い、
ホワイトデーにもこうして誓って、
また来年もしましょうね。
恋人同士の、永遠の誓い。
もしもこの生涯に
フェルゼンがギロチンにかけられそうになっても
マリーが必ず駆けつけて
女王の威厳で解放させるわ。
なめてもなくならない
不思議なキャンディーよりも尊いもの。
マリーとフェルゼンは、もう手にしているの。
でも、もしも本当にそんなキャンディーがあるのなら
マリーのために命をかけて手に入れてくれるわね。
甘いものが必要な子供のうちに届けてもらうのが理想なんだけど、
一番に大事なのはフェルゼンそのものなんだから、
今すぐになんて無理は言わないわ。
二人で、一生をかけて探していくのもいいかもしれないわね。

小雨の偽日記

『楽しいホワイトデー』

学校のお友達は、
ホワイトデーに愛のこもったおかえしがもらえるのか
それは大問題。
小雨ちゃん、どう思う?
ふだんあんまり仲良くしていない男子にチョコをあげて
進展がないままこの日を迎えて──
やっぱりだめなのかなあ、と悩む子もいます。
また別の子で、よく話をする男子にあげたけど
冗談か、ただの義理チョコだと思われていたらどうしようって
不安になっていたり。
それから、チョコは思い切っておこづかいをつぎ込んだし
ちゃんと3倍返しをしてもらえるのかな、と心配している子。

小雨に相談してもらっても、
なかなか適当なことは言えない大事な問題だし、
かといって、チョコをあげた相手の気持ちは
小雨には全然分からないことなんだし
どうしよう、どうなるのかな、
小雨のお友達は、みんな幸せになれるでしょうか。
お兄ちゃんは、そんな時なんて答えてあげるの?
みんながお兄ちゃんに相談していたら、
きっと小雨が相談してそうなるみたいに
安心できると思うんだけど、
お兄ちゃんは、みんなのお兄ちゃんじゃなくて
小雨の家族だけのお兄ちゃんです。
だから、小雨はお兄ちゃんがそこにいたら
してくれそうなことをいっしょうけんめい考えて、
なんとかお友達の心を軽くできないかとがんばって、
だけど、安心してもらえるようにはなかなかなれなかった。
だらしのない小雨です。

クッキー、マシュマロ、キャンディー。
どれをお返しにもらうかも
意味が違うんだそうです。
しかも、いろいろな説があるって。
もしかしたら、今日、何のお菓子をもらうかで
人生が変わってしまうかもしれない。
そんなに大げさな話じゃなくても、
女の子が心を込めて本当の気持ちを伝えたのに
もしも思いが届かなかったら
誰だって絶対つらいですよね。
だから、今日のお返しは大問題。
バレンタインでカップルになれなかったなら、
一ヶ月も待たされた後なんてもうあんまり期待できないって
そうなんですか?
小雨は、あんまりバレンタインを経験していないから
自分の話を参考にアドバイスすることはできなくて。
お兄ちゃんにチョコをあげた後、どうだったかなって思い出すと、
次の日は恥ずかしくて顔も見ることができなかったり、
こんな小雨へのお返しなんかで困らせてしまったら申し訳ないとか
どうも情けない思い出しかないような気もするんですけど
いつも、チョコをあげられて良かった、
よろこんでもらえていたらいいなって、それだけだった、と思いながら
アドバイスを考えたんです。

一ヶ月待たされて何もなくても、
人の気持ちはそれぞれだから、大丈夫。
小雨なら、一年経っても気持ちは変わらずに
待ち続けていると思います。
どんくさい小雨ですから
十年、二十年──
それとも、小雨の一生。
なんの音沙汰がなくても
希望が何一つなくたって
普通にして待ち続けていると思います。
チョコをあげたくらいで、
ううん、こんな小雨が好きになったくらいで
お兄ちゃんに応えてもらえるなんて厚かましい望みは
小雨には持てないの。
かなわないとしても、チョコをあげることができたら
小雨は満足して
それで一生終えても何も悔いはありません。

みんなに言ったら、
あきれられました。
相談に乗ってあげるはずだったのに、
小雨のほうが心配されてしまって。
小雨ちゃん、
もっとガツガツしようよ!
うーん、そうしなくちゃいけないかも。
がんばってみるね、ってその時は本気で答えていたんですけど
後になって真剣に検討してみると
お兄ちゃんの前にいたら、気持ちがふんわり。
お兄ちゃんのことを思うと、ほっこりあったか。
お話ができたらいつも特別な時間。
心臓の鼓動も大きく、血がめぐって体が熱くて
これが生きている実感?
小雨にはそれで満足。
それ以上を求めるつもりなんて全然ないのは本当なんです。
特別扱いなんてしてもらわなくてもいい、
放っておかれても、
お兄ちゃんと家族として生まれて、生活できるなら
もう充分なんです。
これ以上何かもらったら
罰が当たってしまうかもしれない。
小雨の中身が充満しすぎて
破裂してしまうかもしれない。
でも、破裂はしませんでした。
罰も当たらないでしょうか?
小雨のためにお兄ちゃんが行動してくれるなんて、
いいのかな?
今日、こんなに嬉しいのなら、
いけないとしても、小雨は止めることはできないでしょうか。
それに、いけないことじゃないのですものね。
海晴お姉ちゃんも、言ってます。
家族が仲良しでいることは、とても美しい。
幸せで嬉しい。
小雨も、本当にそうだなって思います。

お兄ちゃん、
ホワイトデーのお返し、どうもありがとうございます!
小雨は、お友達の話を聞いて
お返しにもらうお菓子にどんな意味が込められているのか
小雨も悩むのかな、と思っていたけれど
こんな小雨のことを気にしてもらえただけで嬉しいから
実際は全然気になりませんでした。
家族みんながとっても喜ぶ日になって、
やっぱりお兄ちゃんは、みんなにとって特別なんですね。
すごいなあ──
小雨もそんなふうになれたらと思うけど、
なれるわけがないので、
あこがれるだけです。
それと、気持ちを伝えるだけ。
ありがとうって、何度もしつこいですか?
お兄ちゃんの気持ちも考えずに、迷惑ばかりかけていて肩身が狭い小雨ですが
でも今日は言わせてください。
小雨はお兄ちゃんの妹に生まれて
これ以上何も望むものはないほど嬉しいっていうことを。

あ、でも、
氷柱ちゃんはなんだか不機嫌そう。
自分の誕生日なのに、家族の中心でいられなくて寂しいのかな。
誕生日くらいは主役でいられたらという気持ち、
小雨にもわかります。
お兄ちゃんは、小雨の誕生日には
小雨を一番みたいにお祝いしてくれますか?
でも、そんな時もお兄ちゃんが活躍していたら
小雨は自分のことなんてどうでもよくなって喜んでしまいそう。
それとも、もしかしたら
お兄ちゃんのエスコートでお菓子をもらえるこんな日に
思いもしなかったくらい胸が弾んでいる今みたいに
お兄ちゃんは、小雨の知らない気持ちをたくさんくれるのでしょうか。
消極的な小雨だったら、
お兄ちゃんがいないとずっと経験できなかったこと。
これからも、どきどきして体が熱くなってしまうと思います。
小雨は、たくさんの特別をもらって、胸に詰め込んで、
破裂しないでいられるように、がんばっていきます。

海晴の偽日記

『赤ちゃん』

かわいいあーちゃん。
ほら、何か言ってる!
なぁに?
お兄ちゃんのことが気になるのかな?
のぼりたいみたい。
そうか、そうか。
そうだよねえ。
私が赤ちゃんで、こんなに立派なお兄ちゃんがいたら
くっついて離れたくない、
遊んで欲しくて仕方ないだろうし。
そこに、
お兄ちゃんがいるから!
登山家にもなるわよね。
でも、
海晴はもうずいぶん大きくて、
お姉ちゃんとしては、だいぶベテラン。
弟くんを困らせてまで、登頂を目指すことはできないし。
まあ、そんなことをしなくても
他にも愛情表現の手段はたくさんあるか。
してあげたいこと、
ひざまくら。
してみたいこと、
星の観察。
彗星も来るし。
それから、
編み物は、ついに今年も
間に合わないうちに春が来てしまって──
来年にはまた大きくなってるキミにはあげられないね。
男の子用のデザインで作ったけど、
来年の冬までに完成させて
麗ちゃんにあげようかな?
あんまりヒラヒラ女の子らしいものが好きじゃないみたいだし。
お兄ちゃん用に作っていたものだと知ったら、
受け取ってくれなくなるかしら。
まだ小さい女の子の気持ち、
どうなのかしら。
私も、小さいときがあったはずなのに──
なんでだろう、よく覚えていないなんて。
あのときに、頼りになるお兄ちゃんがいたら
喜んでお下がりをもらっていたのかな。
繊細な時期だから、気を悪くするかも。
ずいぶん変わってしまったようで、
もう戻れないあの頃。
なんだか、今この瞬間にきらきら輝いている真っ最中の妹たちが
まぶしくて、うらやましい。
あの頃と変わらないのは、
編み物がいつも途中になってしまうこと。
大人になってもこのままなんて、思ってなかったなあ……
あの時、あこがれていたお姉さんたちみたいに
私もなれるかな、と夢を見ていた頃。
いま、憧れのお天気キャスターの先輩たちと親しくなって
ありがたいことに、指導してもらえる立場になって
追いかけていて、わかったこと。
憧れのお姉さんたちも、
意外としっかりしていないの。
本番にまったくNGを出すこともなく、
どんなトラブルも冷静に対処する先輩も、
お酒を飲むとかわいかったり
部屋を片付けるのが苦手だったり
後輩に厳しすぎるせいで怖がられて悩んでいたり
それに、トラブルが起きても冷静だって尊敬して見ていたら
本番の後で、超焦っちゃったって汗びっしょりになっている。
先輩たちも完璧じゃない。
それでも、長い間勤めて責任ある立場になる。
結婚してお母さんにもなる。
私も、なれると思う?
今のまま、うっかりしがちで
頼りなくても。
こんなにかわいい赤ちゃんを授かって
育てられるのかな?
きっと、たくさんの人に愛情をもらって
助けてもらわないと無理だよね。
私もまだまだひよっこ、
あーちゃんといっしょだね!
とはいえ、違うところもあって
あーちゃんが大きくなるのを待って、同じ時期に赤ちゃんを産むわけには
いかないと思うのよね。
ねえ、キミの意見も聞いてみたいんだけど
例えば、春風ちゃんが赤ちゃんを欲しがっているとして、
いつくらいになったら、問題なく結婚していい時期だと思う?
やっぱり、学校を卒業して、一人前の社会人になって
仕事をきっちりこなせるようになって、
かっこいい一人の大人の女性として
やっていける自信がついたとき?
家族に助けられて成長して、
社会に出てたくさんの人と真剣に向き合い、
信頼されるようになって
子供を育てる支度が整ったとき──
まだ未熟なところも足りないところもたくさんあるけれど
誰でも当たり前にそうなんだ、と納得して
その上でやっていくことができるような
大人になったとき。
まだ遠い目標だけど、
そうなるのは、私が姉妹で一番早いかもしれない。
もし私が、結婚相手の候補になれた時。
姉妹で誰よりも一番早く、愛する人に気持ちを伝えて
応えてもらってもいい?
後から追いかけてくる、できのいい妹たちに
追い抜かれないようにがんばるね。
できのいい子ばかりじゃないって意見もあるだろうけど、
みんな素敵なところがあるから、油断できないし。
世界的な活躍をしているフィギュアスケートの選手たちが
16歳、17歳の若さでしょう。
年下であんなに活躍している人たちを見ると──
すぐ追い抜かれてしまいそう! って慌ててしまう。
でも、慌てたからって急に成長するとは限らない。
世界のトップだって、すぐ結婚できるわけじゃないし
きっと、こんなにかわいい赤ちゃんを育てられるわけじゃないもんね。
大丈夫、私も負けていないところがある。
……と思う。
仕事をがんばって、番組の人たちにも信頼されてきている。
といいな。
まだだめかな、まだ全然、自分のことだけで精一杯。
番組を協力して作っている人たちに気を使えることも少ないし。
年下の子より、全然余裕がない。
お姉ちゃんも、もうちょっとしっかりしないといけないの。
こんな頼りないお姉ちゃんを
応援してね、あーちゃん。
私一人ではできないことがたくさんあるの。
できたら助けてくれると嬉しいな、
私の信頼している弟クン。
そのかわり
キミが弱気なときには、
何があっても助けに駆けつけてあげるから。
いつか、人生を共にしたいと思ってもらえるように。
キミに、そんなふうに。
いったい、いつのことになるんだろうね?

あさひの偽日記

『うんぱっぱ』

うんぱっぱ
うんぱっぱ

おっぶるお、
どんどんどん。

あっびゃー!

あんばば、
ばばばば!
ぶぶぶぶ!
ぼ!

あーあー。

あー?
んま?
ぱっぽっ。
んっちゃー?

んーあー
ちょっちょっ。
むーむー
ちょっちょっちょ。

んのー
あえー
おー。

んばー
あにゃにゃにゃ
おうんばっば!

(ずんたかた
ずんたかた

おもちゃのたいこ、
どんどこどん。

あさひはじょうず!

もうすぐ、おはなみ
たのしみだね!
げいをして、もりあげるぞ!
おうたもうたうよ。

せつなさにはー

せつなさってなに?
おいしい?
ぱりぽりしてそう、はごたえがよさそう。
はえたてのはで、あじわえるもの?

さむいあいだ、れんしゅうした
ふゆのうた。
じょうずだよ!
このごろ、あったかくなったけど
どうして?
ふゆはどうなったの?

はじめてー
であったときからー

じょうずでしょ?
はやくこいこい、
たのしいはなみ!)

観月の偽日記

『桜』

古より、巨木はあがめ奉る対象であった。
年ふり経たものは、畏敬すべき魂を宿す。
ましてや、天を突く高さ、大勢の大人が集まってやっと囲める太い幹。
巨大な、不思議な、それは生きるものたちの中心。
いつの世も、偉大なる存在として敬われてきた。

兄じゃは、わらわたちの家族の大きな柱、
中心の巨木であるおのこ。
どれほど偉大な力を持っているのであろう。
わらわたちは、兄じゃの恵みを受けながら
飛び交う蝶か、さえずるうぐいすか、
祭りをする元気な子か、
横でゆっくり育つ小さな幹か、
そのあたりじゃ。
まあ、兄じゃは樹木ではないし、オーラも違う。
山に出かけたときの木々の気配も心地よいものじゃが、
あれはマイナスイオンと呼ぶらしいの。
癒し系じゃ。
兄じゃは家族を落ち着かせるだけではないから、
マイナスイオンは出ておらぬ。
何が出ておるかというと、
わらわが兄じゃを好きになる
謎の力じゃ。
兄じゃから妖怪が飛び出して、わらわの心臓を矢で射抜いたのかも知れぬ。
大きな存在には、そのようなもののひとつやふたつもおるであろう。

霊が宿るのは大きいものばかりではない。
芽を出したばかりの双葉であっても、偉大な生命力に満ち満ちておる。
小雨姉じゃの手入れする花壇には、今日も不思議な力がいっぱいじゃ。
また、巨大な岩も、鬼も、崇拝を受けてきた。
であるならば、花壇の小石も、角がある小さな虫も、力に溢れていることは疑いない。
毎日青空が新しい虫を発見して喜んでおる。
小雨姉じゃは、どんな虫も殺せなくておろおろしておる。
のどかな春。
生き物がこぞって動き出す気配。
そんなこの頃の、尊敬すべき巨木は
やっぱり、あれじゃな。
桜じゃ!

桜の花がなぜあんなにきれいに咲くか、
兄じゃは知っておるか?
うむ。
桜の木の下には、
実は、死体は埋まっていない。
死肉を食らうあさましいものたちが
桜の木を狙ってくるとは聞いたことがないからの。
桜が美しいのは、
人に見てもらいたいからなのじゃ。
わらわたちと楽しく、一緒に騒ぎたいからなのじゃ。
でなければ、あれほどまでに華やかに咲く理由はない。
あっちの桜にも、
こっちの桜にも、
もうすぐ咲く季節に備えて、
そわそわと化粧や衣装選びを始める
乙女心いっぱいの妖精が集いはじめた。
どこかで見たことのある光景じゃの。
イベントを前にした我が家のあわただしさに、よく似ておるな。

つい先だってより、
九州、四国で開花のしらせが続々と届く。
海晴姉じゃの天気予報によってじゃ。
いま、桜前線はどのあたりであろうかと、気になっていた。
というか、九州や四国とは、どこのあたりじゃ?
吹雪姉じゃに尋ねてみると、
「観月は日本の歴史に興味があるようなので、
 昔の言葉で説明してみましょう」
と言って、教えてくれた。
九州とは、筑紫、薩摩、肥前、肥後──
おお! 知っておるぞ!
そうか、あれのことであったか。
肥後と言えば、
あんたがたどこさ、の手毬歌に出てくる国じゃ。
そうじゃそうじゃ。
あれは九州であったのか。
そう言えば、以前の家族旅行で九州に行ったときには
古い地名はあまり気にしておらなんだ。
惜しいことをしたの。
肥後と言えば、確か他にも
ガラッパがいるのは、あのあたりではなかったか?
旅行に行ったときに、会ってみたかったのう。
相撲が得意というから、教えてもらえばよかった。
そうすれば、わらわは小さい体で、兄じゃも投げ飛ばすぞ。
そーれ!
ひょーい!
とな。
でも、まだ出会っていないから
兄じゃ相手の初金星はお預けじゃ!
うーむ、惜しかったの。
ガラッパのほうでも、かわいいわらわに稽古を付けることができなくて
さぞ残念であろ。
今頃は、桜を愛でておるかもしれぬ。
それを言うなら、河童に似合うのは
黄色い桜じゃな!
かっぱっぱじゃな!
河童の花見が、黄色い桜とは
わらわはうまいことを言ってしもうた。
どやぁ。
じゃ!

今日はついに、東京都心で染井吉野が開花したと、
海晴姉じゃもテレビの向こうでにこにこしておった。
近いうち、上機嫌で遊んでくれるかもしれぬ。
その時は兄じゃも一緒にどうじゃ?
いよいよ春も本番じゃの。
こんなにいい季節、わらわも浮かれて
桜の咲いたお祝いじゃ、
おやつの時間に少しおまけもよかろうと
せんべいの袋を開けて
ぽりぽりしていたら
そんなに食べちゃダメでしょ! と
氷柱姉じゃに怒られてしもうた──
どうやら、氷柱姉じゃの春はまだ遠いようじゃな。
おいしいせんべいは、
花見の本番が来るまでの辛抱。
宴のための豪華な料理も、
喜びを彩るゆかいな芸も、
尊く、華やかな
桜の木々と遊ぶ
お祭りの日のお楽しみじゃ。

春風の偽日記

『はなみじゅ』

くちゅん。

ちーん。

はなみじゅ──
はなみずが、

とばり──
とまりません。

花粉症になってしまったのかしら?
天気予報で、毎日繰り返すお知らせ。
今日も花粉の量は非常に多いでしょう、
花粉症の方は対策をしっかりと。
対策──
って、なんでしたっけ?
頭がふわふわして
考え事がうまくできないの。
ぼんやり浮かんでくるのは、
王子様の顔だけ。
あ、これは花粉症ではなくて、
恋の病の症状です。
もちろん、そっちも治っていない病気。
どんな薬でも症状を抑えることはできません。
恋ってつらいですね。
胸の鼓動はもう、二度と私の言うことを聞かないの。
ただ、愛する人を思うだけでドキドキ、バクバク。
会えないとわかると落ち込んでしまう。
まるで機械的な反応を繰り返すだけみたい。
恋をした、ただそれだけのために
まるで悪魔と契約を結んで、体を持っていかれて
今は、元の肉体のひとかけらも残らないみたい。
恋に身を捧げた機械になってしまいました。
あなたと出会う前の私はもう、この世にはいないの。
そんなものは世界のどこにも、ひとかけらも残っていません。
だけど私は、変わり果てた自分を悔やむことは決してありません。
それよりも、私にこんな気持ちを与えてくれた人に
感謝しています。
つらくたって、どんなときも嬉しい気持ちがあふれ出して止まらないの。
王子様が応えてくれなかったとしても恨んだりしないわ。
でも、もしも思いが通じたなら、天にも昇る気持ちになります。
そのための努力を続けたいんです。
それだけは許してもらえますか?
決して迷惑はかけないから、ただ愛し続けることだけを。
思いがけなく、気持ちを伝えてしまいました。
ぼうっとしているせい?
それとも、最初から隠しておくことができない気持ちだったの?
おそるべしは、花粉症ですね。

鼻水は出るけれど、
風邪ではないと思うんです。
悲しいわけでもないのに涙が溢れて、目が赤くなって、
絵本のうさぎさんみたい。
くしゃみがでて。
だけど、それ以上重い症状があるわけでもなくて。
熱はないみたいだし、
食欲はきちんとあるし、
すっぱいものが食べたくなるわけでもないし、
炊きたてのご飯の匂いがつらいわけでもない。
症状から見て、これはやはり花粉症?

実際になってみないと
わからないことは多いけど、
大変ですね!
妊娠って。
じゃなかった。
花粉症って。
言い直さなくっちゃいけなくて
残念です。
早く、
早く──
花粉症が治ればいいのに。
って、
そっちじゃないか。
それにしても、このまま鼻水が止まらなかったら、
普段の生活もままならないの。
恋をして、自分が変わってしまうのは
どうしようもないから仕方がないけど、
花粉症で王子様のために尽くせないのは、
許せない!
こんな鼻水、気合で吹き飛ばしてしまえればいいのに!
ずるずる。
無理でした。
せっかく、今の季節は
香りのいい春の山菜が取れる時期。
それなのに、鼻が詰まっているなんて。
ほのかな苦味と、あたたかみのあるやさしい芳香は、
大人の味わい。
うど、ふきのとうはしっかりあく抜きをして。
たらの芽の香りを楽しむには、やっぱり。
さくさく、あつあつ、
豪華なてんぷら。
いいですよね!
といっても、この鼻水では調理も難しそう。
蛍ちゃん一人では、とても家族全員分なんて作れません。
せめて春風が指示をして、誰かに手伝ってもらえたらと思うんだけど。
油を使う料理は、小さい子には任せられないし
大きい子になると忙しそうだし。
あっ!
王子様!
こんなことを頼んでしまうのは、
はしたないかもしれないですけど
春風の緊急事態なんです!

もしも王子様と仲良く、
新婚みたいにキッチンに並んで
共同作業をすることができたなら、
花粉症のつらさなんて
どこにも残らずに
飛んで行ってしまいます。
ばいばいきんです!
どんな力でも吹き飛ばせない春風の憂鬱を
残さず消し去ってしまう私の好きな人。
王子様にお願いを聞いてもらえるなら
春風は花粉症で死んでしまっても思い残すことはありません。

鼻をかみすぎたところが赤くなってしまう
恥ずかしい春風だとしても、
王子様から離れて隠れているなんて
もう、できそうにありません。
もし鼻水がひどいときには
ティッシュを鼻につめてでも
あなたに尽くしたいです。
どんなに恥ずかしくても、もう止められないの。
でも、春風の恥ずかしいところを見ることができるのは
王子様ただ一人だけです。

麗の偽日記

『細かいこと』

しょうゆ、
塩、
味噌。

魚介、
とんこつ。

暖かい日が続いて
今年は桜の開花が早い、といっても
なにしろまだ3月。
一日ずっと強い風が吹いて、
夜からは雨も降る
こんな日は、
急に寒くならないか、
体調を崩す子がいないか
家族としては、心配になるところ。
まだまだ小さい子も多いし、
気温を気にせず無茶をしようとする子も、
その無茶に引きずり込もうとする子も──
私はもちろん、
もちろん──
そう、
引きずり込まれる側。
そうでしょう?
家族を巻き込んでいくような
押しの強いタイプじゃないわ。
いえ、それは、ときどきは
まあ、たまには
自分の意見も主張するけど。
だからといって、
春が来たから
露出を増やそう!
なんて、人の趣味も考えず
さらに自分の体も省みず
女の子らしくなりたいと、本能だけで突き進む
立夏ちゃんと比べたら
大人しいくらいだわ。
もう少し自己主張したほうがいいのかな、と
自分でも悩むくらい。
まあ、そういうわけだから
今日の夕飯は、あったかいラーメン。
そんなに寒い日でもなかったけど、
ラーメン好きは我が家にも多いものね。
味付けはというと、
冬の寒さには北海道の知恵を借りて、
札幌名物、味噌ラーメン。
それに決まるまでは多少の議論はあったけどね。
どんな味にだって、それなりの持論を持つファンがついている。
でも最終的には、全員が賛成の方向で決まったわ。
みんな大好きなのね。
日本の味。
味噌っていうと、あれでしょ?
ぬか味噌。
春風姉様と蛍ちゃんがときどき交代でかき混ぜて
キュウリやナスや、漬物にしているやつ。
あれを入れるんだよね。
今日のラーメン。
そう言ったら、
違うよ!
違うよ!
違うよ、麗ちゃん!
味噌だけど!
ラーメンには入れないよ!
そこまで言わなくても。
それはまあ、料理をあんまりしないわよ。
でも、そんな間違いは細かいことだから、いいじゃない。
私、大雑把すぎる人には我慢できないことも多いけど
あんまりこだわるのも、どうかと思うわ。
そんな細かいこと、興味がなかったらわからないし。
もう少し、人に伝えようとする姿勢が必要よね。
相手が当然知っているだろう、みたいな態度じゃなくて
丁寧に、わかりやすく、専門用語も控えて、
根気強くやさしく教えてあげられなかったら
なかなか伝わらないでしょう。

あなたはどちらかというと、大雑把なほうのタイプね。
私の特別に苦手なタイプ。
女の子の多い家で、
ましてや──
繊細な年頃の私たちの前で
平気な顔をして
あんなことも
こんなことも!
男がいるっていうだけで
困ることは山ほどあるのに
それが、気を使うことを忘れた問題児。
仲良しの意味を履き違えて
節度を知らずに
べたべた
いちゃいちゃ。
お手伝いの義務をいいことに
洗濯して、干して、取り込んで。
当たり前みたいな顔をして。
もちろん、お手伝いは当たり前なんだけど。
でも、男って本当にあまりに物事を気にしないで
なんにも考えていないんだって
あなたを見ていると、改めて認識させられるわ。
雑なのは、立夏ちゃんもそうなんだけど
もうちょっと違うような。
どうして、もっとこっちの思うようにしてくれないの?
このくらい、わかってくれないの?
必要なこと、言わなくてもわかってよ。
って言ってると、私のほうがわがままみたい。
違うわよね?
最初から、全然関わらないようにしていればまだマシなのに
それも許されないなんて、ひどい話。
ううん、あなたはどんどんおかしな事件を起こすから、
関わらないで欲しいと願っても仕方ない。
どうしても我慢できないことは伝えるのが、家族の関係。
冗談で聞いただけだし、まさかとは思うけど
あれは本当なの?
靴下を何日も、同じものを履いているって。
匂いが気にならないからって。
まさかね。
ありえないわよね。
いくら男でも、常識くらいはあるでしょ。
常識がないのが、男かもしれないけど。
それに、話によっては、
靴下どころか、パンツまで。
いくら男でも、それはないと信じたいけれど
普段の態度を見ていると
いったい何をしでかすのか。
それから、他にもこんな噂。
あなたが、姉様たちに──
こんなことを確認しても、何にもならないか。
きっと、嘘だもの。

納得いかないことばかりの
男の存在だけど、
でも、ときどき思う。
この人は私の家族。
こんなに不愉快だらけの人間でも、
男にしては、うちの家族で仲良くやっている。
姉様たちが言うみたいに、男の人でなければできない大切なことがあるなんて
私は今でも感じたことはないけれど。
がさつでも、だらしなくても、許せないことが時々あっても
家族として過ごしていけるんだなあって
感心するくらい。
それに、男だからといって何もかも理解不能ってわけじゃない。
あなたも夕飯のメニューに好きなものがあって
ときどき嬉しそうに真剣に食べている。
男でも、おいしいものを食べて嬉しいのは同じなんだ。
なんだか、とても考えられないことだけど、
あなたを見ていると、男も同じ生き物なんだなって変な感覚。
春風姉様の味噌ラーメンは、家族みんなが喜ぶ絶品。
あなたも、よく嬉しそうに食べているわね。
いい歳をして汚い食べ方で、男って嫌だなあと思うけど。
そのくらいは我慢できないほどでもないから、好きにすれば。

夕凪の偽日記

『透けブラ』

お兄ちゃん!
あつは
なついねえ!

前から読んでも
後ろから読んでも
夏あついな!
に、ならないか。
ちょっと惜しい。

まだ夏じゃないけど。
気分は、夏でいいかも。
今日は夕凪、
上着をスッポーンと脱ぎ捨てて
シャツだけになって
汗だくになって遊びまわって
帰りにアイスを買ってきた!
もう夏を満喫した!
あとはプールで遊べたら、
しばらくは夏はいいや。
二ヶ月くらいは。
都合のいいことに、明日は休日。
昼と夜の時間が同じになる
マジカルな日を記念したお休み。
夜が大好きな霙お姉ちゃんも
昼間は大暴れのあーちゃんも
仲良く楽しい
どまんなか。
気候もよくて、
寒いと調子がいい吹雪ちゃんも
冷え性の蛍お姉ちゃんも
にこにこ、うふふの、ちょうどいい日。
春の始まり。
夕凪が待ちに待った、お兄ちゃんと遊べるお休み。
それなのに、
明日はくもり──
神様、
わかってないなあ!
せっかくのお休み、
お兄ちゃんと一日一緒にいられるのに。
まあ、春休みになったらいつでも遊べるからって
星花ちゃんは言うけれど
春休みなんて短いし!
五秒で終わるよ!
というのは、大げさだけど。
この感じ、わかるでしょ?
春休みは、あっという間。
なにしろ、過ごしやすい陽気だから
毎日昼寝してしまいがち。
なんの罠?
そんな短いお休みが過ぎたら、
びっくりすることに一つ上の学年なんだよ。
そんな心の準備、できるような時間じゃないよ。
ああ、一瞬だあ。
今のうちから、楽しむ準備を整えておかなくちゃ。
進級する心の準備は、まあいいや。
精一杯遊びたい春休みの前の
貴重な祝日を、
お兄ちゃんと、かんかん照りではしゃぎたかったのに。
でも、あんまり暑いと吹雪ちゃんやユキちゃんは調子が悪いみたい。
家族がそろうお休みだから、このくらいでちょうどいいのかな。
今日だって吹雪ちゃんは、
風通しのいい涼しい場所を探して、家の中をうろうろしてたよ。
埃っぽいのも苦手だから、なかなか大変な放浪の旅。
結局、ユキちゃんの部屋にいた。
あの部屋は、暑くもなく、寒すぎることもなく。
わりかし適温、いつでも春分、
夢心地の別天地。
体が弱いユキちゃんが休むのに、おうちでいちばんいいところ。
吹雪ちゃんも、あんまりうるさくならないようにしたいって。
そのうち夕凪もあの部屋で過ごしてみたいな。
ユキちゃんが元気になったら、たまに夕凪と部屋を取りかえっこしよう。
お兄ちゃんは今でも元気だから、すぐにでも取りかえっこできる。
夕凪のベッドは丈夫だから、お兄ちゃんが寝ても大丈夫だよ。
跳ねても壊れないんだから。
お兄ちゃんの部屋で寝るのはどんな気分だろう?
いつでも大丈夫だよね。
入れ替わってみようよ。
あとね、夏になったら、今度こそビニールプールを出して遊ぼう。
きっとだよ!

で、上着を放り出して帰ったから、
家に帰ってから怒られた。
そしたらね、後から帰ってきた星花ちゃんが
これは夕凪ちゃんが着ていったやつだ、って持ってきてくれたの。
今朝、胸のハートにこぼした、目玉焼きのソース。
調子に乗ってこしょうをかけすぎて、くしゃみが出たときに飛ばしたソース。
ごしごしこすってごまかしたけど、よく見たら間違いない!
よかった!
ソースもこぼしてみるものだ!
夕凪はいいお姉ちゃんを持ったよね。
星花ちゃんありがとう!
一生ついていくね!
星花ちゃんがお兄ちゃんと契りを結んで生きるときも死ぬときも一緒になったら、
夕凪はそのお手伝いについて行くね。
今日はずいぶん薄着になっちゃったけど、
怒られるほどじゃないよね?
夕凪はまだ小学生なんだし、薄着になるくらい普通。
もうちょっと大人になったら、ブラが透けるからまずいって聞いたけど。
まだだし。
早いし。
ぺったんたんの、つるっつるだし。
でも、あこがれるのはかわいいブラ。
夕凪は割りと成長が早い女の子だから、
もうそろそろスポブラをつける頃じゃない?
星花ちゃんのクラスだと、もう何人もブラをしている子がいるって。
夕凪は身長なら星花ちゃんを追い越すくらいだし、
いつブラをつけてもおかしくないくらいには成長してきたよね?
そうなったら夕凪だって、恥ずかしくないように気をつけると思う。
ブラ一つで、大人の女のしぐさ!
いいなあ、ブラをつける女の子。
夕凪がつけるならピンクがいい!
それか、情熱の赤!
星花ちゃんに相談したら、色がついてると透けるんだって。
体操着は白だし、下着の色が透けたら大変。
だから、小学生のスポブラは白で決まり。
そんなー。
大人みたいなふんわり乙女色のファッションは、
ずいぶん先の話。
というか、中学生になっても、制服は白なんだよねえ。
やっぱり、透ける?
お兄ちゃんとおそろいの征服になるのは嬉しいけれど、
下着の色も白だなんて、中学生なのにまだ子供みたいじゃないかなあ。
だから、氷柱お姉ちゃんと同じ特進クラスになる!
大人の上品さが増した、かっこいい黒。
大丈夫、夕凪はやればできるんだから。
今からがんばれば、入れるって!
だけど特進クラスになったら、それからも勉強が大変になるんだよね。
それはちょっと、
気が進まないなあ。
中学生になったら、お兄ちゃんと同じ学校。
その時にはもう大人だし、帰りには一緒に寄り道しよう。
アイスを食べて、肉まんを食べて、たい焼きを食べて、焼き芋を食べて
二人きりの放課後を過ごしたいな。
勉強ばっかりの生活なんて、夕凪には耐えられない!
ブラが自由になるのは、いつの日か?
かわいいブラをしたいけど、
それには早く大きくならなくちゃ。
バランスよく栄養を取るようにってお姉ちゃんたちから言われてるし、
小学校の勉強もしなくちゃいけないし、
放課後に校庭の場所をとるダッシュの競争も続くし、
大人になるって大変だ。
いつか夕凪が立派に育ったら、
最初にブラを付けたときに、一番にお兄ちゃんに見せに行くね。

さくらの偽日記

『しらないひと』

お兄ちゃん、
ごめんなさい。

おいしいおかしを
あげられなくて。

もしかしたら、
きょうは、たくさんあったかもしれない。

きのうね、
ようちえんのかえりみちに
あったの。

しらないひと。

かわいいおじょうちゃん、
どこにいくんだい。
おじさんのおうちは
おかしがいっぱいだよ。
こどもは見たことのない
すてきなものが
やまもりなのさ。
もっとほしいなら
たくさんかってあげるよ。
たべたいだけ、あげてもいいんだよ。

えっ!
そんなおうちもあるんだ?
おかしやさん?
おかねははらわなくていいの?
あやしいな。

おかしがもらえたら、
お兄ちゃんとわけたいの。
たのしい、おやつのじかん。
おやすみの日は、お兄ちゃんといっしょのおやつ!
見たことがないおかしがあったら
よろこんでくれる?
さくらは、お兄ちゃんといるとうれしいから
お兄ちゃんも、さくらとおやつをたべるのがすきで、
もっといっしょがうれしいな、
って、おもってもらえたらいい。
さくらのしらない、
おいしいおうち。
そんなのがあるっておしえてあげたら
お兄ちゃんはびっくりするかな?

だけど、
さくらは泣き虫だから
しらないひとだ!
こわい!
このひと、さくらをどうするつもりなんだろう?
なにされちゃうの?
こわいこわい、
どうしよう、
お兄ちゃん、たすけて!
うわーん!
だれかー!
わんわん、泣いちゃった。
そしたら、
いなくなってた。
こわかったよう!

お姉ちゃんたちに話したら、
それはたいへんだ!
みづきお姉ちゃんに話したら、
まものじゃ!
みんなが言うの。
とってもこわいね!
さくらちゃんがぶじでよかった!

あのひとは、赤ずきんちゃんのおおかみなんだって。
あやしいおとなのひとは、こわいひと!
こえをかけられたら、おおごえでたすけをよばなくちゃ!
うっかりだまされてしまったら、
おうちにさきまわりされて、
おばあちゃんをたべられちゃう。
さくらのおうちには、おばあちゃんがいないから、
お兄ちゃんがたべられちゃう!
うわーん!
うわーん!
お兄ちゃん、たべられないよね?
つよいよね?
だけど、おおかみってわるだくみがとくい。
あまいことばで
ひとをだますんだって!
だまされないでね!
お兄ちゃん!
さくらも、あぶなかったの。
ずるがしこくて
こわいひと。
おおかみ!

お姉ちゃんたちはね、
おかしなんかよりも
さくらちゃんがだいじよ!
って言うの。
さくらも、もうおかしにつられたりしません!
あんなこわいできごとは
もうこりごり。
これからは、おおかみをみたら
すぐ、おおごえ出してにげるよ!
きをつけます。
お兄ちゃんに、かわったおかしをとどけてあげられなかったけど
いいよね?
かぞくがおおかみにたべられてしまうのは
いやだもの!
お兄ちゃんも、お姉ちゃんたちも、
ずっとずっと、たべられていなくなったりしないで
これからもいっしょにいないと
さくらかなしいの。

それでね、
さくらは、お兄ちゃんにおかしをあげるために
しらないひとにたよらないで
ちゃんとれんしゅうして
しゅぎょうして
ぱてしえになる!
ゆうなお姉ちゃんが、言ってるよ。
マホウつかいになるのも
ぱてしえになるのも──
りっぱなしごとにつくためには
しゅぎょうがだいじ。
お姉ちゃんたちも、言ってるよ。
おてんきおねえさんも
おいしゃさんも
うんてんしさんも。
どりょくしているから、なれるんです。
はるかお姉ちゃんと、ほたるお姉ちゃんが
すてきなぱてしえになったのも
しゅぎょうしたから。
これから、お兄ちゃんのために
すてきなおよめさんになれるように
たゆまずしゅぎょうをつづけるんだって。

ぱてしえは、ちいさい子みんなのあこがれ。
それとも、お兄ちゃんは
さくらが、ちがうしごとをするのもいいと思う?
ぱてしえよりも、さくらがあこがれるのは
およめさん。
おかしよりもだいじなものは
かぞく!
さくらは、まだちいさいから
さらわれないようにするところから
はじめます。
さらわれたら、おとなになれないし
どんなしごともできなくなっちゃう。
さらわれたら、お兄ちゃんがいないおうち。
おかしがあってもたのしくないよ。
お兄ちゃんのところにおよめにいくまえに
さくらがさらわれて、どこにもいなかったら
さくら、どうすればいいかわからないの。

おおかみも、だいすきなかぞくがたくさんできて
わるだくみしないでいられたらいいとおもいます。

観月の偽日記

『夜来たる』

昼と夜の長さが
同じになる
一年にたった二回だけの日。

そして、
これからはだんだんと
昼の時間が長くなっていく。
それでも──
夜がなくなることはない。
暗闇に隠れ住まうものが
行き場を失うことは決してない。
見よ、
夜が短くなるにつれて
闇は熱を持ち
体温を孕むようになる。
深みまで染み込むように、濃厚さを増し
牙を立てるがごとく、夜は人の世に食い込む。
もしもこれが海を渡った
遠い白夜の国であっても
暗がりは消えるものではない。
いずこでも匂いを感じる、
死の気配、
淀む穢れ、
異界は時に山であり、時に森であり
彼らはそこに住むよう定められた。
いかなる神の血を受け継いだか、
異形や異能は、人が知ることのない領域。
われらは、その者たちを祭ることしか許されぬのじゃ。
どこにでもいるぞ。
柳の下や、四つ辻、井戸の底ばかりでなく
武者人形のがらんどうにも
家具の隙間にも
ハイカラなベッドの下にも
ビデオテープの中にも。
どれだけ日のさす時間が長くなろうと、彼らはどこかで跳梁する。
なぜならば、
それが実在するものだからであろう。
理知の目には見えぬとも、
気がついたとき、どこかに必ずいる。
短い夜に密集し、
濃い影の内部に凝縮される。
いかにも、夏の夜に怪を語るわけじゃ。
おそれ、うやまい、怯えながら
身の無事を乞わねばならぬのだから、
その知識を得るために。
わらわのような、少し心得のあるものだけが
少しやんちゃをしすぎたモノノケをつかまえて
こら! いかんぞ!
と、こらしめるくらいが関の山。
なーに、
この役目も、言うほど恐ろしくもない。
あやつらも臆病者で、好んで人を襲うことはあまりない。
つきあってみれば、なかなか話が分かる。
このキュウビのように、何かと力を貸してくれる
かわゆらしいものもおるしの。
時にはのさばる連中も多いが
この家にはわらわがいるし、
兄じゃも心強いし。
なんとかなる。
消し去ることはできぬ、古き友。
これからはじまる熱き夜を、共に堪能していきたいものじゃ。
どこにでも見つかるからの。
探さなくても、向こうからやってきて賑やかになるであろう。
おっ!?
これは!
兄じゃ、動いてはいかん!
なんというものを連れて来たのじゃ、
その肩にあるものは!
心配しなくとも良い、わらわがついておる。
そっとかがんで、
接吻するように
近づいておくれ。
ほれ、
うまいこと取れたぞ。
小さな子でも、頼りになるであろ?
これがついておった。
桜の花びら──
家に持ち込んだら、また掃除が大変になる。
春風姉じゃは、こないだ青空の汚れようを見て
もう、男の子みたいに元気なんだから!
おうちにはもう、男の子はお兄ちゃんがいるのにね!
王子様ったら、いつも元気です!
きゅん!
とのことじゃ。
しかし、青空にしとやかさを求めるのは、もうちょっと育ってからじゃな。
この季節は家中、掃除の仕事で大騒ぎ。
新学期に向けて、部屋の整理整頓が大変らしいぞ。
わらわのような幼稚園組も、
掃除の先輩の姉じゃらに教わって、
ちょっと背伸びのお手伝い、小学校仕込の雑巾がけをしておる。
床をはいはい、
おしりふりふり、
しぼりきれていない雑巾で、びちょびちょ。
役に立っておるであろうか?
姉妹が一丸となって、
霙姉じゃの部屋の、密林のような散らかりように立ち向かう。
あの部屋には、どれだけ得体の知れぬものが住んでおるか
想像するだけでもうきうきするではないか。
春分の日というよりは、ひたすら掃除におおわらわであった。
おおわらわと言われても、大きいのか、わっぱなのか、
さて、さっぱりじゃ。
どういうことであろう?
のどかな春先というのも、意外とゆっくりしていられぬものじゃな。
兄じゃも、この騒ぎの隙に妙なものに体を乗っ取られぬよう
日ごろからよく身を清めることを心がけるのがよいぞ。

ヒカルの偽日記

『報酬』

麗が健康に気を使って
舐めているプロポリス。
この季節になると、
のどかな陽気で気持ちが緩んだり
変わっていくことが多くてそれどころじゃなかったりして
忘れているときもよくある。
麗は電車みたいに正確に行動を決めて動くのが望みだけど
もちろん小学生だし、なかなか予定通りにはいかないみたい。
あと、健康のためには
好き嫌いを直すのも重要な気がする。
それから、毎日のトレーニングで体を鍛えるのもいい。
ともあれ、健康に気を使うのはいいことだ。
立夏にも少し見習わせたいな。
でも、立夏はあれがあの子らしいんだから、いいかもしれない。
麗も立夏も、ずいぶん性格は違うけれど
みんなかわいい私の妹だ。
麗よりも小さい子たちや立夏は、
プロポリスなんて苦いものをどうして?
と、首をひねっているけれど
そういえば似たようなことを私も言われる気がする。
どうして、苦しい思いをわざわざ?
毎日きっちり、あんなに大変なトレーニングをするなんて。

プロポリスが苦くても、健康にいいならあまり気にならないのと同じで
私が走る理由は、たくさんのものが報酬になるからなんだろう。
体を動かすのは楽しいし、
強い体を作れる。
もしかして、家族みんなを守れるようになりたいから
続けられたのか、と思ったこともあるけど
オマエがいて、だんだん家族を任せられるようになっても
私は好きで走っている。
オマエはまだまだ頼りないときもあるから、それで鍛えたりないのかな。
この時期は、年度末だから道路工事が増えて
通らないほうがいい場所をよく見かける。
せっかくだし、朝のジョギングのコースを、
そのときの気分で少し変えたりする。
暖かくなってきて、なんだか浮き浮きして
新しいコースを開拓してみたいのかも。
普段は横目で通り過ぎる脇道。
気になっていたところも、そうでないところも
道がありそうだと覗いてみると
小さい頃に冒険したかすかな記憶のある見慣れた風景や、
覚えているところがあっても、工事で変化した道なんかが見つかる。
当然と思って繰り返す習慣に、少しだけ新鮮な風が吹く。
意外な狭い横道から自転車が顔を出して、ぎょっとしたり。
狭い道、そんな路線があることも知らなかったバスが、ゆっくり進む後ろを
カルガモの親子みたいに何台も車が連なってついていく。
あんなふうにゆっくりした風景が、なんとなくほのぼの思えるのは
穏やかに暖かくなって、過ごしやすくなったこの季節だからだろうか?
のどがかわいたとき、初めての自動販売機、目を引く色合いを見つけて
そこでは、あたたかい飲み物が減って
つめたい青のマークがやけに目立っていることに気づく。
まだ微妙な頃合なんだなと、機械が迷っているみたいでちょっとかわいく思える。
その変化が日に日に、自然に思えるようになる気温。
白と薄桃の景色を通り過ぎることも、少し前からは日常的な風景になっている。
自分ではどうにもならないことで変わっていく環境に、落ち着かない感じがして、
でもなぜか新しいことに挑戦してみたくなる、わけのわからない感覚。
これが、春が来たってことなのかな?
オマエも何か始めるつもりなら、
毎朝のジョギングに連れていってやろうか。
春休みも待っているし、健康的な習慣に興味があったら
気軽に始められるタイミングだ。
麗も一緒に連れ出してみようかな。
さわやかな季節を全身で感じられて、
体にいいことは請け合いだ。
鍛えていると、電車に乗るよりちょっと歩いてみるかってなるけど
そうなるのは麗は歓迎しないかもしれないな?
まあいいか、こういうのは、参加してみて損はないことだ。
オマエの意見はどうだろう。
運動能力に関しては、私は家では少数派。
体を動かすのはいいことだとわかっていても
毎日がっつり鍛えるのは大変だと思うほうなのか?
人間は、動き回っているほうが自然だって気がするから
私は何も苦にならないんだけどな。
パワーあふれる子供たちに付き合っているから、そんなふうになるのか。
だけど、頭を空っぽにしてぼーっとしているのも嫌いじゃないな。
オマエがこの家に来てからだろうか。
オマエは、わりと動じないほうだもんな。
のんびりしているっていうか。
うちみたいな大家族に馴染むのも早かったし、大物なのかな?
どうも私は周りに影響されやすいのかもしれない。
もし誘われたら、細かいことを忘れて、ゆっくりしていそう。
なるようになると、身を任せて。
時にはそれも私の自然な姿なんだと受け入れるんだろう。
それはともかく、明日からも走るのは変わらない。
オマエがジョギングに参加するきっかけがつかめないって迷うなら
私みたいにうれしいことがたくさんあれば
自然に続けていけるようになるのかな。
私はただ、走っているだけで満足だし
これ以上を求めようとも思わない。
でも、オマエと一緒に行けたらと誘いたくなるのは、
もっと楽しいかもしれないって予感がするからなのか。
欲張りなんだろうか。
私がこんなに楽しくいられるように
オマエもそうであればいいなと思っている。
もし、走る喜びを感じてみたいならぜひ協力したいんだ。
最初の一回くらいなら、自動販売機のジュースをおごってあげてもいいよ。

青空の偽日記

『かえるのこ』

おたまじゃくしは
おとなになると
なんと!
かえるになる。

なんで?
かわりすぎ!
べつもの!
どうやってかわる?
へんしんする?
がったいする?
そしたらね、
おしえてもらったの。
ちがうの!
せいちょうする。

おたまじゃくしは
かえるのあかちゃん。
かわいいあかちゃん。
ちっちゃくて、
あたまがでかい。
かわいいね。
よしよし、
べろべろばあ、
たかいたかい!
でもね、
おしえても
おどりもうたも
おぼえない。
せいちょうは、
にんげんとちがうんだって。

せいちょうして
はえてくる。
あし!
からだくねくね、
あたまぶんぶん、
あしはにょろにょろするよ。
どこからはえてくる?
あし。
そらにもはえてくる?
でも、もうあるから
そんなにいらない!
はえてきたら、こまっちゃう。
みぞれもね、
はえてきて、
こまっちゃうって
いってた。
おやしらず。
うちゅうのちりより
くらだないから
あきらめるか!
さわやか、
おやしらず。
はえてきた。
にんげんにも、
はえてくるのね。
そりゃ、かえるにもはえる。
ね!
あしがはえたら
つぎは、てがはえる。
それから、
はがはえる。
かえるに、はがあった?
はじゃなくて、
したをのばしてたべる。
したがはえる?
かえる。
どえらいものがはえてくるね!
したって。
べろべろしたら
おぎょうぎがわるい、しただよ。
おくちのまわりの
みるく、
さとう、
かれー、
けーき。
べろべろしたら、わるいこよ。
てぃっしゅでふきましょう。
もっとはやすもの
えらんだらいいのにね!
かえるも。
はえるといいもの、
おちんちん!
そらにも、そのうちはえる?
おちんちんついてたら
おにいちゃん。
かわいい、
おもしろい、
かっこいいおとこのこになるの?
そら、なれる?
そらは、おんなのこのひにうまれたの。
こないだ。
こないだ、うまれた!
だからね、おんなのこ。
かわいいおんなのこ。
おんなはあいきょう、
おんなはどきょう、
おんなはきゅんきゅん。
おんなだよ!
ほかに、
はえるといいもの。
ひげ!
せいかがだいすき
はやしたい
ひげ!
ひげ!
まげ!
まげ?
ひげがりりしい
おとこどうしのゆうじょう。
えいえんのちかい。
あれあれ、おとこだ?
そら、おんなのこ。
ひげ、はえない。
でもね、
ゆうながひげだんすしてた。
ひげ、
はえたの?
つけたり、はずしたりしてた。
ひげはべんりね。
ほしいときに、はえるのね。
そらもそのうち、ひげはやす!
ひげで、おどって、ふらふーぷする!
はえるって、いいな!
なんでもはえろ!
ほかに、はやしたいもの。
とってもいいもの。
どあ!
うららのよろこぶ、
どあ!
でんしゃにかかせない
めいわきやく、
どあ!
うららがこうふん、
かんつうとびら!
おたまじゃくしも
はやそうよ、
かんつうとびら!
あっちもひらくよ
こっちもぷっしゅー
おわすれものには
ごちゅういください!
かさとか。
どあ!
おたまじゃくしも
かさ、するの?
もうぬれてるのに。
かさがほしかったら
はえるといい!
そらもはやしたい、
ひげと、どあ。
ゆうなちゃん、それかして!
だめだめ、さいずがあわないよ。
こどもがつけても、ずるずるおちちゃう。
ほら、このとおり! ってなったよ。
こどもだから、まだはえないの。
ひげと、どあ。
はやくはやそう。
はやくおおきくなれ。
あかちゃん、おたまじゃくし。
あかちゃん、そら。
かわいいあかちゃん
よいこのあかちゃん
うれしい、あかちゃん。
だから、
おとなになったら
あかちゃんがはえてくる?
かわいいなら、ふやそうよ。
おとなは、そのきになればはえてくる。
いろいろ!
だから、
あかちゃんもはえる!
おにいちゃんも、あかちゃんをはやすの?
おとなだから?
おたまじゃくしは、あかちゃんをいつはやす?
おとなということは、
かえるになってから?
おにいちゃんからはえてくるあかちゃん、
なんにん?
そら、なかよくする!

海晴の偽日記

『新しい──』

おにいちゃんったら!
あしたのおてんきも
わからないの!?

いいとしして
なにやってんのよ!
それでも、私のおにいちゃん?

しょうがないなあ。
そんなことだろうと思って
しらべておいたから!

そんなに、おてんきが気になるなら
きいていけばいいじゃない!

せっかく、かわいい妹が
天気図とにらめっこして
よほうしてあげるんだから!

おにいちゃんのためなんかじゃないわよ!
ただちょっと
気になっただけ!

いい?
いっかいしか教えてあげないから
ちゃんときいてよ。
どうせ気がきかなくて
たいしたことができないなら
だまって
わたしのことだけ見ていればいいの!
ふん!

どう?
私、こういうのは得意じゃなくて。
どうしても、
大好き!
お兄ちゃん、
海晴が一生懸命調べた
天気予報聞いてね!
って、なっちゃう。
私にお兄ちゃんはいないけど
うちの妹たちを見ていると
あ、しっかりしてるお兄ちゃんだ。
こんな人になら
私も甘えてもいいじゃない?
家族なんだもん。
ついでに姉でもあるし
甘えてもらったらうれしいな。
家族なんだもん。
大歓迎よ。
って、君を見ていると
そうなるの。
それでも、誰かが
素直になれないのは、なぜかしら。
こんなに優しいお兄ちゃんなのにね。
いじわるなんて、しないよ。
あっ、それとも
してるの?
氷柱ちゃんが、かわいいから?
だめよ、あの年頃の女の子は
傷つきやすいから
優しくしてあげなくちゃ。
それは、わかるわ、氷柱ちゃんはかわいいけど。
面白いけど。
だめだよ。
なんでもわかってくれる大人の女性じゃ
ないんだから。
そういうお付き合いは、私がしてあげるから。
私なら、ときどきかわいがってもらうだけで
がまんできるよ。
女心に不器用で
ときどき戸惑っているキミが
短い言葉でも、伝えようとしてくれるだけで
ああ、弟くんはがんばってるな、
ってわかってあげられる
経験豊富な大人の女性。
どこで経験を積んだかというと
妹18人!
すごそうな響き。
すごい経験だよ。
今では、男手が来てくれて
だいぶ変化がある。
助けてくれるだけじゃなくって
嬉しいことをたくさん運んでくれる
男の人でしかできない
天使の仕事があるじゃない?
キミにとっては
家族が、姉妹19人。
経験を積んだ長男になれるのは
いつだろう?
もう、なってる?
じゃあ、氷柱ちゃんが怒ったときには
任せてもいいかな。
天気予報の番組では
春の新企画として
人形劇を考えているの。
番組の新しい名物になれるかな。
どうして人形のモデルが氷柱ちゃんなのかというと、
うちのきょうだいはかわいいですよ!
と、私が主張したのが理由の一つ。
妹役として、知的な役割は、氷柱ちゃんがぴったりなの!
そう説得したら、
しょうがないわね!
こんな時に頼りになるのは、私しかいないのね!
いいわよ!
快諾してもらえました。
私が言うのもなんだけど、
氷柱ちゃんの将来がちょっと心配だわ。
キミがついていてあげてね。
あ、ちょっとお願いがあって、
氷柱ちゃんの天気予報コーナー、
さっきのだともうひとつ迫力が足りないから
お兄ちゃん役のモデルとしても
一緒に考えてくれたらな。
キャッチーな決め台詞が欲しいかな。
でも、あの子がそんな決め台詞を用意したい相手は
キミひとりだけかな。
私は、決め台詞はシンプルなほうが好きだな。
結婚しよう!
それだけでいいの。
覚えておいて、
参考にしてね。

さて、知的だけど素直になれない氷柱ちゃんとはまた違った
明るくてめげない、海晴お姉ちゃんの予報はというと
明日は午後から雨が降る可能性があります。
お出かけには傘を持っていくのが無難よ。
ついに満開になって、私たちを迎える準備を整えた桜だけど、明日は残念。
雨で散ってしまわないといいけれど。
お花見日和は今日だったかも、とはいえ、
せっかくだから、みんなが春休みを迎えてからのほうが
気持ちものんびりできるし、本番の予定はまだ先。
もしも花の見ごろが過ぎてしまったとしても、
家族が揃って見に行くんじゃなきゃ、意味がないもの。
大丈夫、私たちはいつも一緒なんだから。
誰か一人でも欠けてはいけない家族の決まりは、
楽しいことも同じ。
キミも、氷柱ちゃんと何かの抜け駆けはしないようにね。
みんなが待ってるんだもの。

虹子の偽日記

『にちようび』

あったか
ふんわり
にちようび。

おにいちゃん!
にじこと
がっこうと
どっちがだいじなの!

にじこ、
おにいちゃんがいちばんよ。
だから、おにいちゃんも
がっこうよりにじこでしょ。

すきあっているもんね!
にじ、おにいちゃんのおくさん。
にじ、おにいちゃんのあいじん。
むすばれようよ。
まりーあんとわねっとのうまれかわりは
マリーおねえちゃんじゃなくて、じつはにじこなの。
たぶんね。
こんなに、いつでもいっしょがいいんだもの。

にちようびは、
おにいちゃんがおうちにいる
うれしいひ。
あさから、ばんまで。
おはようから、おやすみまで。
おにいちゃんをみつめる、にじこ。
おうちでいっしょ。
おでかけするときも、ついていっていいのよ。
だっこして
おんぶして
はなれない!
にちようびって
さいこう!
もし、
おにいちゃんが、がっこうにいかなかったら
まいにちにちようび?
にじがおねがいしたら、がっこうにいかない?
でもね、
がっこうにいっておべんきょうして
はたらいてかせがなくちゃ
おいしいごはんがたべられない!
にじはおなかがすいてもいいから
おにいちゃんといっしょがいいんだけど、
でも、たべないとしんじゃうの。
しんじゃうと、もうおにいちゃんにあえないんだって、
ええーっ!
じゃあ、にじもしなない!
ずーっとしなない!
おにいちゃんも、しなないでね。
ひゃくねん!
ひゃくまんねん!
ひゃくおくまんねん!
にじ、しなないもん。
だから、おにいちゃんは
にじがおいしいごはんをたべて
すくすくそだつように
がっこうのおべんきょうで
かせいできてください。
にじがこのままおおきくなったら
ひゃくおくまんねんたつと、どのくらいになる?
おおきいのは、みはるおねえちゃん。
あんなふうになるには、なんまんねん?
おにいちゃんになるには、なんおくまんねん?
おにいちゃんのおよめさんになれるのは、いつ?
それまでおにいちゃんといられるように
がっこうにいってもいいよ。
にじ、おうちでいいこでまってます。
がっこうからかえってきたら
おかえりなさい、
あなた!
きょうは、いくらかせいできましたか?
たくさんおべんきょうしたら
おおがねもち。
それで、おおがねもちのしるしは
アイス!
アイスをかってきて
たべられるのが
じりつした、おとなです。
にじこも、はやくちゅうがくせいになって
おべんきょうしたおかねでアイスをかうの。
りっかおねえちゃんは、そうしているの?
にじは、アイスをかって
おにいちゃんとわけてたべる。
おいしいですか?
おいしいです。
おとなのかいわ!
いいな!
おとなって、いいな!
でも、おにいちゃんががっこうにいってるあいだは
さみしいの。
がまんしてるの。
かえってきたらあそんでね。
にちようびはあそんでね。
はるやすみもあそんでね。
いよいよ、はるやすみがはじまるんだって!
たのしみ!
にちようびじゃないのに
かぞくがみんないるの。
がっこうにいかなくていいって
きまりのひ。
しかも、ながいこと!
はるやすみは、なんまんねん?
にちようびは、なんねん?
きょうは、にちようびだから
おにいちゃんといっしょだったよ。
やったね、
にちようび。

きょう、あたたかだったけど、
おてんきよほうはあめだったのに
なんで?
おにいちゃんはせがたかいから
くもをふきとばした?
ふーって?
おてんきにしてくれるものは
てるてるぼうず。
つくってつるすと
はれになる。
くもをふきとばす?
ふーって?
あれ? おにいちゃんはてるてるぼうずじゃないよね?
なんだか、わからなくなってきちゃった。
にじにおてんきのこと、おしえてください。
どうしてあめがふるの?
どうしててるてるぼうずをつるすと、はれるの?
はれてるほうが、あったかでうれしいのに
あめでも、ゆきでも、
おにいちゃんがいっしょだとうれしいのはなんで?
はれてなくてもいいのね。
おてんきは
おにいちゃんがきめるの?
みはるおねえちゃんがきめるの?
おにいちゃん、あしたは
ゆきをふらせてください。
またあそびたいな。
うまくつくれなかった
ゆきだるまのりべんじ。
ゆめにでてきて
にじちゃん、じょうずにつくってねってよんでいる
ゆきだるま。
にじはあれからずいぶんおとなになったから
きっと、なんでもつくれるとおもう。
ゆきで、
おうち!
ゆきで、
おにいちゃん!
ゆきで、
らーめん!
はやくふれふれ、
ゆき!
でも、はれたらあったかいから
はれもだいすき。
きょうは、おてんきだったから
あそんだ、あそんだ。
にちようび、さまさまだ。

さみしかったのは、
みんなそろっていなかったこと。
みぞれおねえちゃんが、
がっこうによばれたの。
えっと、
ほしゅう?
ついし?
って、みはるおねえちゃんがそわそわしてたけど
そうじゃなくて、
せいとかいかつどう。
らいねんのしんいちねんせいを
おでむかえするじゅんび。
こうとうぶには、おにいちゃん。
ちゅうとうぶには、りっかおねえちゃん。
かわいいおとうとといもうとのはれぶたい。
ぜんりょくでむかえてやるぞ!
やるきまんまんだ!
にじこも、はやくみぞれおねえちゃんにむかえてもらいたいな。
それからね、
いっしょにいられなかったのは、
ほたるおねえちゃんが、
おはなみのおべんとうで
なやみすぎて、
ねつをだしちゃった。
わーん、かわいそう。
はやくよくなるように
ゆっくりやすんでね。
あのね、
かぜでねつをだしたら
さむいさむいの。
たいへん、あったかくしないと。
あったかいのは
おひさま。
は、おへやにもっていけないから、
もっとあったかいもの、
おにいちゃん!
にじがだっこしてもらうと、
ぽかぽかして
よくねむれるの。
おにいちゃん、
はやく、ほたるおねえちゃんをだっこしてあげてください。

蛍の偽日記

『微熱』

うーん
うーん──

おにぎり
サンドイッチ──

からあげ
手羽先
ハンバーグ
かぼちゃサラダ
カスタードプリン──

はっ!
お兄ちゃん?

ホタ、
いま幸せな夢を見ていたような。

すみません、
蛍はもう少し寝ていなくちゃいけないんです。
そんなに熱があるわけじゃないの。
39度2分なんて
蛍からすればほんの微熱。
休むほどじゃないの。
頭は普通に回転しているし
よく寝て体力はありあまっているし
むしろ、働かないのがつらいくらい。
でも小さい子にうつったら
蛍と違って、重くなってしまうかもしれない。
だから、全快までは我慢です。
蛍、なさけないけど
我慢は
あまり得意じゃないの。
もうお姉さんなのにね。
ついうっかり、
ご飯を作りすぎてしまう。
安いからって
おかずの材料を買いすぎてしまう。
かわいくねだられて
小さい子におやつをもう少し。
気がついたら、
蛍のおなかにも
見慣れないお肉が
ちょっぴり多め。
まあいいか
もっと大事なこと、
家族が笑顔でいること、
そのためなら、太るくらい。
食べなくて痩せるのは、悲しいですもの。
おいしく、楽しく、みんなで栄養をとるのが家族の活力。
でも、家族の力になれるならうれしいんだけど
欲望に弱い蛍は、あまり姉として見本にならないんです。
あんなふうになっちゃいけない!
欲望に負けて食べ過ぎたらいけない!
と、思われてしまったらどうしよう。
いえ、欲望に負けないでいて欲しいのは正しいんですけど。
太りすぎるのを気にして、とるべき栄養をとれなかったら
蛍のせい!
だから蛍も、時には妹たちの手本になることを意識して
わがままを言わないで、治るまで寝ています。
手本なんて大げさな話じゃなかったですね。
風邪で休んでいないといけないときに、
子供みたいに落ち着かないほうが、恥ずかしいというだけです。
蛍は自分で思っていた以上に子供なのでしょうか。
そういえば、自分がお姉さんになったと実感する機会も
普段そんなにたくさんはないような?
立派なお姉さんって、どうしたらなれるんだろう。
蛍はただ、家族みんながかわいくて、大好きで、
お世話をしたい、その気持ちだけ。
蛍の体は甘やかしだけでできています。
それじゃあ、いけないでしょうか?
珍しく難しいことを考えていたら、うとうとしてきました。
明日には元気になって、みんなと過ごせるかな。
ちょっと落ち着かない、ベッドで過ごす非日常。
考えすぎるのもいけないと思うんです。
病気の時には、弱気になってしまうから。
蛍がいなくて、みんなご飯をちゃんと食べているかな。
春風ちゃんは結局、鼻かぜで熱が出なかっただけみたいなの。
花粉症じゃなくてよかったけど、
蛍にうつしてしまったって、気にしていないでしょうか。
ただ蛍が不摂生で寝込んでいるだけなのに
変に気を使わせてしまっていないか、心配です。
それから、同室のよしみで看護を担当してくれている氷柱ちゃん。
氷柱ちゃんもなるべく小さい子に会わないようにして、
蛍のせいで申し訳ないな。
ひとつ上のお姉さんなのに、全然しっかりしていなくて。
蛍がもぞもぞ部屋で作業を始めるので
いつも以上に目を吊り上げています。
寝ていなさい! って、
氷柱ちゃん、そんなに怒鳴ると喉によくないよ。
氷柱ちゃんの体にいいものを食べさせてあげなくちゃ、
蛍も休んでいられないと思うんだ。
寝込んだタイミングのせいで
お弁当で悩んだ知恵熱みたいになって、
うなされて出てくる寝言もおいしそうなんだそうです。
氷柱ちゃんが、蛍のせいでおなかをすかせてしまわないでしょうか。
あんまりお料理が得意じゃない氷柱ちゃんだし、
体に優しい夜食を作ってあげられないと、蛍の風邪もよくならない気がするの。
お兄ちゃん、氷柱ちゃんがあんまり偏った食事をしないように
見ていてあげてください。
カップラーメンとか、栄養食品とか
お腹がすいたら、合理的だからと適当に済ませてしまいそう。
氷柱ちゃんが消化と吸収のいい夜食を作る姿が
想像できないのはどうしてなんでしょう。
ううん、氷柱ちゃんの持ってきてくれるおかゆ、おいしいよ。
春風ちゃんの得意な、ほんのりお塩の味付けと
それから、ほのかに優しい、知らない味が喉を通り過ぎると
氷柱ちゃんよりも先に、
なぜかお兄ちゃんを想像してしまうの。
ごめんね、氷柱ちゃん。
詳しい話を聞く前に、寝かしつけられてしまうので
まずは体を直すことが一番です。
お兄ちゃんがいてくれるんだし、
安心していられるのは確かなんだけど、
どこか、うまく言葉にならない胸のうち。
お兄ちゃんのことを思うと、
なぜか眠れなくなるんです。
病気なのにあまりしおらしくない蛍です。

立夏の偽日記

『キラキラソワソワ』

春になると、
なんだかむやみに
心が弾む。
まぶしくって、明るくって
太陽も、リカが外に出てくるのを待ってる。
うきうきの季節。
そりゃあ、落ち着かなくもなるよネ。

このままだと、どうなってしまうのか!
少し前、急にあったかくなってきたかと思ったら
春を実感するまもなく、ぎらぎらの日差しに
ああ、
光を浴びる時間!
って、決めちゃった。
心も体も、肌を出す方向でスタンバイ。
今週くらいから寒い日が続いても
急に切り替わらないヨ!
恋の季節に向けて
ハートのエレベーターは上昇中、
一直線に、恋する人へ
つかまりに行くヨ。
もしくは、つかまえに。
生涯たったひとりの
ステディにお願い。
リカのおしりにポッと灯った
ピンクの火を止めて!
やっぱり止めないで!
いつまでも、こんな調子。
誰にもどうにもならない気持ちだもん。
春になっちゃったんだから、しょうがない。
自然が要求するままに任せよう!
オニーチャンは、
リカがこんなだと困る?
オニーチャンに怒られたら困っちゃう。
だって、リカにも抑えられないこの気持ち。
対抗する手段は
どこにもない。
全面降伏しちゃおうよ、
恋の天使に。
もう、
春のせいにして!
春のせいって言うと、T.M.Revolutionみたいだ?
あれは冬だけど。
夏には、夏のせいにして。
冬には、冬のせいにして。
それでも言い訳が足りないなら、
リカのせいにしていいからね。
試してネ。
春の奇跡。
だから、
ホタおねーちゃんも、
この春先に来て冒険した衣装を着て
風邪くらい引くし、
熱があっても落ち着いていられなくて
様子を見ようと出てくるよネ!
オニーチャンも見た?
廊下をこっそりうろうろしている、ピヨピヨパジャマ。
あと、この前着ていた冒険ルック。
春のせいだ!
この風邪は!
治らないのだって、そわそわさせる春がいけないんだけど
だからと言って治さないわけにはいかないと
氷柱ちゃんが引っ張って行っちゃった。
ベッドでタイクツしないように
家族みんなで本を差し入れしたから
もう一日くらいなら大人しくしてくれるかな?
麗ちゃんの本は、寝つきに良さそうだし。
って言ってるのがバレたら、怒られる?
ナイショにしてね。
わあ、またオニーチャンとの間に秘密が増えちゃった。
全部、墓まで持っていかなくちゃ。
そして、二人は死んだあとも同じ墓に入ることを
誓い合ったとさ。
天国に行くとしてもラブラブ、
うらめしや~って化けて出るときもラブラブだね。
何もうらめしくないね。
大往生だね。
まあ、結婚は残念ながら少し早いか。
リカも女の子としてはまだピヨピヨだもんね。
ピヨピヨ。
冒険のミニスカート、
ホタおねーちゃんがよくなったらリカもリクエストしてみようっと。
でも、くもりの日が続くと風邪を引いたらいけないか。
リカは熱を出しても
絶対、大人しく寝ていられないし。
よく休んでいられるなあ、この上機嫌な陽気に、って。
いくら体を治すためとはいえ。
そんなの無理ってことくらい、わかるよね!
ガマンがきかない、
まだまだお子様なのかな?
ねーオニーチャン、
リカは今の時点で、どのくらいちゃんと女の子?
エネルギー充填は何パーセント?
海晴おねーちゃんを100パーセントとして
今どのくらい?
というか、海晴おねーちゃんが100でいいのかな?
霙おねーちゃんも方向は違うけどしっかりしてるし、
春風おねーちゃんも、ヒカルおねーちゃんも、
100?
120?
ホタおねーちゃんは、100まであとどのくらい?
風邪のときにちゃんと寝ていられるようになったら大人?
もう、いいところいっぱいあるもんね。
そしたら、またリカのライバルが増える?
リカがまだ追いつけないうちに
距離を突き放すなんて、ずるいよ。
オニーチャンは、リカをおいていかないで
待っていてね。
すぐに100パーセントになりマス。
本当だよ?
絶対、適当なんかじゃないよ。

家族の春休みの予定だけど、
ホタおねーちゃんは、すぐには無理できないし
お花見は、行けたらいいねっていうくらいで
どこか別のお出かけに変わるかもしれないって。
春休みに入ったとたん、天気は微妙で
おまけに当然、行楽地は大混雑。
リビングの海晴おねーちゃんは、真剣になって天気図と相談して
その横で麗ちゃんは、難しい顔で時刻表を検討して
そのまた横で吹雪ちゃんは、特に関係なくまじめに図鑑を読んでるヨ。
あんなふうに同じ顔をして並んでいるのを見ていると
やっぱり家族なんだなって思うよネ。
ついつい、つられて。
リカも本気で見つめていたくなる
好きなもの。
だからオニーチャンはすぐ横にいてね。
いけないかな?
勝手にリカだけの一番にするのは。

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