アルケイディア&キュクレイン

アルケイディア&キュクレイン TOP  >  2013年01月

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近況と、海晴の偽日記

ペロペロイラストの彩色段階が届いてから、いつの間にかもう一ヶ月です。更新サボってます。
届いた嬉しさで踊ったり回ったりしていたら風邪を引いてしばらく寝込んだことが更新ペースに関係している可能性もありますが、別にそんな、かわずフルチンダンスをしていたというほどでもないので別に風邪や更新頻度はそういうことは関係ないかもしれません。
イラストについては、感想というか簡単に触れるくらいになりますが、さすがみぶなつきイラストというか、ストーリー性というか、想像させるのが上手いというか、自然に染み込んでくるようなキャラクター性の伝え方というか、ぶっとんでるのに地に足が着いている、なんだろう、ポップっていうのかな、なんか違うかな。
まだ完成ではないということで、意外性が強いところとか、この後の処理で雰囲気が変わっていくものなのかな、ということが気になったりします。さわやかな笑顔の吹雪だったり、誰よりも乙女に突き抜けた春風の装いだったり、実は密かに姉妹でも一、二を争うセクシーさをしているのが青空とあさひだったりするそのへんのかなり見る側の暴走が過ぎた感想も含めた印象がどうなるのか、という?

マンガの二巻単行本だとか、G’s本誌のシスプリイラストとか、そのへんもまだ語っていなかったりするし。
不思議なのは、特にマンガのほうの個性というか、これに日記の代わりみたいな感覚を託すのはまた違うのだろうか、とか……いいことなのかもしれないし、あまりに過剰な期待をしていたせいで違ってしまうのかもしれないし、まだ何ともいえないんですけど、例えば本誌のほうで、クリスマスの季節に気持ちが盛り上がってるところにこういう続き物が唯一のべびプリっていうのが、なんだろう、寂しいって感覚のようだけどたぶんなんとなく違って、このマンガってやっぱどこか普通のメディアミックスマンガの範疇じゃないもっといいものを描いてくれてるって言うのはあるところに、急に変な話のようだけど、日記が終わったときにイベント更新があるかもっていう話を見て、真っ先に「ああバレンタインのことか」と思って、でも他にもイベント更新があるのかもって思っていたら今までないし、今の時期はラブライブを盛り上げていくんだろうなって思うと、もしバレンタインにもイベント更新がなかったら俺のたうちまわるんじゃない? みたいな想像をすると、月一回のマンガにはできないことがあるのだろうか、とか……

他にもいろいろ思うところがあって、まだ全然そんな力はないんですが、少しづつべびプリの偽日記を書いてみようかなと考えているところです。
風邪で寝込んでいたときに俺死ぬかもって弱気になったのが「このままでは死ねない」みたいなあれもあるような? もう治ったからそんなの忘れてしまったような? バレンタインどうなるんだろう……

物は試し、という域を出ていない内容になりますが。
海晴お姉ちゃんの偽日記。

『雪の予報』

なんとなんと、
関東地方のお天気は──
雪!
雪の予報です!

と、
そんな仕事が、このところ続きます。

朝方は特に、解けた雪が凍る可能性があり
路面が滑りやすくなります、
また、水道管の凍結に注意が必要です。
体調には充分注意して
暖かくしてお過ごしください──

なんだか、そんなことばかり言ってる気がして
そろそろ飽きてきちゃう──
キミだってそうでしょう?
例え、ブラウン管越しでも、
愛する海晴お姉さまのまじめな顔ばっかりじゃ寂しいものね。

たまには、ないかしら?
さあ、今日からは、
春のような陽気にご注意ください!
浮かれてとろけそうな熱波の到来に、
女の子たちは熱い愛のこもったチョコが溶ける心配をしなくっちゃ!
お兄ちゃんたちは鬼のタイツのまま油断してうろつかないこと!
どんどん暖かくなってくる過ごしやすい日々に
うれしくなって老若男女が満開の花の中で踊りだすでしょう。

なんて──
そんな、幸せの到来を告げる天使みたいなことを
自慢の元気な笑顔で視聴者にお送りできるのは
あと何ヶ月先のことになるかしら──

ああ、この寒い季節!
明日の私の予報は、どうなっちゃうのかな。

テレビの前のあなたも、どうか──
寒い夜には、かわいい弟とのスキンシップでちょっとぬくもりをもらいながら、
素敵に育っている妹たちの、心のこもった創作料理に身も心もほかほかにしてもらって、
愛らしい小さい子たちの無邪気な寝顔にじわりと温かな胸のうちで明日もがんばろうって思いながら、
愛に溢れた冬の毎日を楽しくお過ごしください。
さあ、遠慮なんてしないで、
私たちはずっとこれからそうして過ごしていく家族なんだから──

とは、なかなか公共の電波で放送できないとは思うの。
それとも、言ってみてもいいのかな?
たまには、うちのこんな幸せを
世界中に自慢してみたいもの。

どう思う?
明日の朝の天気予報、楽しみになってきた?
この夜、キミの態度次第で決まるかもしれない、
海晴お姉さまの幸せ予報。
明日も必ず、せいいっぱいの真心を詰め込んで
あなたに届けます。

もしいつか、私の予報を独り占めしたくなったら
いつでも言ってくれていいからね。
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綿雪の偽日記

『雨の日のおうち』

あめ、あめ、
ふれ、ふれ、

お兄ちゃんが──

お兄ちゃん!
やっぱり、大きなお兄ちゃんお姉ちゃんになると
学校のお勉強は忙しいですか?
氷柱お姉ちゃんも、下校の時間は一緒にいられないの。

今日は曇りがち、お昼過ぎも雨になりそうなお天気でした。
お兄ちゃんが迎えに来てくれたらいいのに、
それとも、ユキがお兄ちゃんを迎えにいけたらいいのに、
ときどき窓の外を見ながらぼうっとすることの多い日でした。

雨の日は、おうちに帰ると
ママがお風呂の支度をして待っていてくれるときがあるの。
それで、ママが忙しいときは、霙お姉ちゃん!
学校もだけどおうちのことも大事、って
両方できる霙お姉ちゃんはすごい!

冷えた体を、お風呂とミルクであっためて、
ユキはお熱が出ていたらお風呂はいけないけど、今日は少し暖かい日だったから体調は良かったの。
ほかほかになってお兄ちゃんを待っていると、

ふと──
今日はこのまま、
お兄ちゃんをお迎えに行ったらいけないかな?

天気予報で言っていたみたいな大雪だったら、
ユキの外出はきっと許されないわがままだけど──
ユキなのに、雪に弱いなんておかしな話ですよね、
本当はユキ、こんな体だけど実は雪には特別に強いんじゃないかしら?
ときどきそう思うけど、本当はそんなことなくて……

でも、今日は雨のちくもりの日だったし、
気温も低くなかったし、
お兄ちゃんだってこんなお日様が不安定な暗い日を一人で帰るのは寂しそう、
ユキ、きっとお兄ちゃんに心配はかけないから、
たまには、今日くらいは、ユキも元気に出かけていってお兄ちゃんと楽しく帰れたら、
ううん、せめていつか、今よりもう少しだけでも元気になったら──
今より元気に、外に出て行けるようになったら──

暖かい部屋で、ユキはたくさん幸せな夢を見ながら
チビちゃんたちと
「お兄ちゃんまだかな?」
「お兄ちゃんまだかな?」
「氷柱お姉ちゃんのほうが早いかな?」
って、はしゃぎながら──
お兄ちゃんの帰りを待つ、いい子にしていました。

おかえりなさい、お兄ちゃん。
あったかい牛乳がいいですか?
お風呂にしますか?
それとも、
小さい子たちとユキがいい子に待っていた暖かいお部屋に来て
遊んでくれるかな?
その前にまず、うがいと手洗いからですよ!
ウフフ、ユキなんだかお兄ちゃんのお姉さんみたい。

雨の日って、
楽しいことがたくさんありますね。

観月の偽日記

『弓』

あずさ弓、
ま弓、つき弓──

よい子の遊びには貴賎なく、
浮かれる騒ぎに上下の差はなく、
わらわくらいの年頃ではまだ、駆け回るだけで充分に世を楽しむもの。
果たして三千世界の余興と歓楽、何が子供の気を引くであろう。
青白の和幣を枝に折りかけて舞うてぞ開く天の岩戸──と、いうでもなし、
ただここにある、膨らむ胸と小さなおしりは、
幼稚園で教わった歌と踊りに震えるものじゃ。

雪が積もるも嬉しいもの、降らぬもまたよき趣向。
あまり積もれば、麗姉じゃはまたへそを曲げる──
平常運転がままならぬもまた、おもしろかりし、
そう言って割り切ることのできぬ麗姉じゃの趣味もまた、興あるもの。
品ももとめず、品ももとめず。

しかし、今年の雪はどうなっておるのか、
夕凪姉じゃが潜って泳いで大笑いして家族一同つられて大爆笑するほど積もったこともあれば、
時には心配していたほど積もらぬようでもある。
気まぐれというのか、時と場所によって思わぬ差があるというのか、
どこかに、風神に捧げる俵でも積まれたものか。
神も昔は人と言う。あるいは、風神もあんこを好むものかの。
うむ、どのような神饌が捧げられたとて、わらわの姉妹の誰かが喜んで持っていってしまいそうじゃの。
なに、神を敬う真心が何よりのもの。海のものから山のものまで取り揃えることもない。
おけ、わらわの家族が寒い季節も健やかであれと
榊を取り垂でよ。
おけ、本文たる学業を収めよと、我が家の学生たちに、知恵の黄金が降り注げと
篠を手ぶさにとるがよい。
おけ、たとえ多くの望みが叶わずともくじけずいられるように、
ここにしかいない大事な家族たちがどのようなときも助け合っていけるように、
いつまでも家族の愛が変わることなく続くように、
弓を、剣を、鉾を神前に立てるがよい。
そして、冷蔵庫のあずきゼリーが早く固まるようにと神棚に米粒を捧げ、
夕食の好みは我が家の誇り、蛍大明神に相談し、
献立の参考にしてもらうとともに、お手伝いを楽しく過ごせばよい。
わらわは、時には手巻き寿司の気分じゃ。

そういうわけで、雪ばかりか、どのような寒さも風も関わりなく、わらわは健康じゃ。
いくらなんでも、子供とはここまで風の子だったであろうか、と
このごろはあのヒカル姉じゃでさえも自分を棚に上げて感心するほどの
暗く冷たく、しかし小さな子の心を浮き立たせる、冬の寒い日。
早く日が暮れるから、力が有り余っているのであろうか。
裸踊りで天照大神を呼び戻すでもなし、
上着を放り出すまで飛んだり跳ねたりするのはどういったことか?
兄じゃ、今日も日が暮れてもずっと、眠り込むまで相手をしてもらうぞ。
嫌だといっても、子供だからきかぬのじゃ。
なんだかんだで兄じゃは付き合いがいいからの。

あるいはこの日は、今日もまた褻衣の日よ、平常運転と言えるかもしれぬ。
例え今日が大雪であったとしても、馬鹿天気に裸で踊りだそうと変わらぬ。
家族がいつでも兄じゃに集まり、愛する気持ちを伝えようとにぎやかに、だからあたたかく──
遠くから、麗姉じゃの笛が平常運転を告げておる。
もうすぐ姉妹たちが遠慮なく集まってくるぞ、
遊んでもらいたいのはわらわだけではないのも、いつもの通り。
何があっても喜びと愛だけは変わらずにあり続ける、すべ神のよき日じゃ。
今日も兄じゃは、なかなか寝かせてもらえぬようじゃな。

立夏の偽日記

『ハーディ・ガーディ』
(立夏)

鉦と太鼓で
女房を探せ!

リカがまだちっちゃくて
コロコロプクプク走り回っていたときからいつも、
クラスのみんなで合奏のイベントがあると
「立夏ちゃんは元気だから太鼓ね!」
「器用な楽器は似合わないよね!」
「間違っても歌や笛には手を出さないでね!」
なーんて、
オカシイなー? と思いながらも
リカ、おだてられるとヒャッホーってはりきっちゃうし
太鼓のネイティブなリズムがリカを夢中にさせる、
リカの眠れる大自然を揺さぶる──

オニーチャン!
女房は太鼓を叩いて探すってことわざ、
リカだって知ってるの!
教科を問わず、テストの点は意外な問題で稼ぐことに
定評のある立夏、
国語の点はまあまあ、ふつう!

よかったねぇーオニーチャン。立夏がいて。
立夏が太鼓でどこまでも付き合えば、
雪がしんしん、寒さに耐えて繋いだ手を離せない北でも
太陽サンサン、水着も放り出す南でも
東へ東へ、大西洋の暖かな風と潮を渡って──
また西へ、神秘と魔法のアラビアの王国へ──
どこまでもオニーチャンにしつこくついていくリカが、
素敵な人はいませんかー?
愛に溢れたかわいい人はいませんかー?
太鼓の音で出てきませんかー?
こんなに兄思いの妹がいる素敵な家族、
あなたも参加してみませんか?
あっ! もしかして──
青い鳥は最初から家にいたんだ!
って気がつくまで、
昼も夜も、嵐の日でも熱波の日でも
おしどりみたいにぴったりくっついて離れないんだから!
太鼓が大好きな子が家族にいてこんなに嬉しいことはないね、オニーチャン!
そのときが来るまで、リカも腕を磨いておかなくっちゃ。

昨日誰かが見ていた映画のDVD、
リカはほとんど寝ていて良く見てないけど、
あの歌に合わせて今日はリズムを取りたーい。
よかったなー、あの華やかなダンス!
シャンデリアの下でカードがきらめいて飛び交い、
絹とビロードのレディたちは音楽の中を泳いで、
ああ、インディアンの襲撃に揺れる町の運命は、
ホッホーイ!
オニーチャン、あのインディアン最後はどうなった?
愛する人と手に手をとって、夕日のほうへ馬を走らせる、
リカそんな夢を見たような気がするからそういうことにしようかな。

よく覚えてなくても、
めちゃくちゃでも、
楽しけりゃいいじゃない、
家族なんだもの!
リカ、歌うよ!

こっちへ来なよ
友達よ、
みんなでバーを
取り巻きながら、
寛い心で
飲もうじゃないか、
独身者よ、つまづくな
女房持ちも、がんばれよ。

リカのプリティー・ウェイトレス、
ハーディ・ガーディ・ハウス。
まだお酒は飲めないけど、きっともう少しだよ。
ババ抜きはできる、どんなふうにでも踊れる、音楽と歌は鳴り響く、
たぶんこれからも、誰かが寂しくて踊れなくなってもきっとその時も
いつまでもこの家で、愛する人を迎えます。

真璃の偽日記

『マリーのすてきな午後三時』

ふわふわスフレは
かわいいスフレ。

ねえ、不思議に思ったことはないかしら?
それとも、一度も疑問に思ったことのない
かわいいフェルゼンなのかしら?

どうして我が家のおやつやデザートには、
あの、
やさしくふんわり、
とろけてやわらか、
ぬくもりと夢のような甘さが
スプーンひとつでおくちいっぱいに広がる、
あのスフレがめったに並ばないのか、
って──

変でしょう?
これには、ちゃんとした理由があるのよ。

それは──
おやつを食べる機会が多いこの家では、
作りおきが冷凍保存できる
スポンジケーキやバターケーキにパイ生地、
作りやすいタルト生地やクッキーが
便利だということ。

さらにもうひとつ、
おやつの時間がまちまちになるのが普通で、
たまに海晴お姉ちゃまやヒカルお姉ちゃまみたいに
食事の時間がずれることもあると、
できたてあったかのふっくら感が命のスフレよりも
冷めてから食べるシューにエクレアにプリン、
夏場のお供にムースやババロア、
温かなお菓子は焼き芋にたい焼き、スイートポテトのがっつり系が人気だし、
冬場についついとってしまうカロリーを思うと、そうなるわよね……
まあ、マリーのお願いがあればもちろん聞いてもらえるんだけど、
あの素朴なスフレは我が家では意外と高嶺の花なの。
フェルゼンなら分かる? この気持ち。
それとも、マリーの親しみやすさのおかげで、遠い憧れにため息をこぼす経験はないのかしら?

だから、お姉ちゃまたちがいつも帰って来れない三時には、
冷蔵庫のクグロフを分けるのも楽しいけれど、
早くオーブンが使えるようになったらいいと思うの。
マリーのお手製のスフレをみんなの前に並べてあげられたら、
さあ召し上がりなさい、
熱いから気をつけてよくふぅふぅしてね、
あさひちゃんにも、はい、ふぅふぅ、
あったかくて柔らかくて、
マリーの愛がしみこんだ女王様の味でしょう?

って、その頃にはあさひちゃんは
ずいぶん大きくなっているのかしら?

ねえ、フェルゼン。
マリーはもうホイップクリームを塗るお手伝いもできるし、
粉砂糖を振るうお手伝いもできるし、
こう見えて器用なのよ。
神様が与えてくださった才能も、時には恨めしいもの──
私がオーブンを使ってもいい日は
まだまだ、遠い先のこと。

もし私が最初に自分でおやつを作ったその時は、
フェルゼンはどこにいても飛んできてくれるわね?

今晩のメニューは、待望のスフレ。
かわいい、ふわふわよ。
スフレの型は一人分。
専用のものなんだけど、オーブンに入れる都合もあって、
優雅なレリーフに欠けるのが、気になるところ。
マリーの提案で、チョコレートスフレに粉砂糖をかけるときに
型紙でバラの花の形を飾るの。
もしフェルゼンも試したいなら
バラより、クマさんのほうがいい?
麗お姉ちゃまに言って、特別に電車の型紙を使わせてもらう?

おいしくて、家族みんなで嬉しくて、
そんな飾りは必要ないかもしれないけれど、
でも、マリーは思うの。
もしこれから、私がまた王妃になって、
フェルゼンは今度はマリーと真実の愛で結ばれた王様になって、
いつまでもいつまでも幸せに暮らす二人が、
自分たちが過ごす日々を懐かしく思い返すときがあるとしたら、
それは豪華な結婚式や戴冠式、
子供の生まれた日や、初めての日、たくさんいろいろ初めての記念日、
大事なバレンタインにクリスマスの忘れられないイベント、
そういうのよりも、もっと強く、印象的に浮かび上がるのが
ちょうど今、私たちの過ごしている
ふだんの、こういう身近な日じゃないかしら?
豪華なケーキの記念日に、素朴であたたかなスフレの日。
みんな、忘れられないものよね。

女の子が着飾るのも、きっとそうだもの。
お姫様になるだけじゃない──
ドレスアップに工夫をして、女の子は毎日変わる、
蝶になる、花になる、
猫になる、うさぎちゃんになる、
大切な日の贈り物になる。
もしかして、ラッピングのリボンをほどくようにフェルゼンは
裸のマリーを召し上がってしまえばいいのかもね?
包み紙がなくても、きらきらマリーの
いちばんのドレスが本当は、あなたを思う心だと
伝わるように──

スフレは何を入れても合うものだけれど、
あずきのスフレって、
ううん、おいしいんだけどこのごろ素材が偏ってるような……
お正月に何かあったのかしら?
霙お姉ちゃまに弱みを握られたわけじゃないわよね?
蛍お姉ちゃまは、あれで脅しには屈しないしっかりしたところがあるし、
何より、策略をめぐらす霙お姉ちゃまなんて想像がつかないし。
この時期のことだし、バレンタインに備えて考えていることがあったりなんて
まさかね?
ま、いいか。
バレンタインでもいつでも、
フェルゼンの心を誰よりも捕らえるのは、必ずマリーなんだものね。

青空の偽日記

『そらにんじゃ』

にんにん。

にんじゃ、
パンツかめん
あらわる!

はくちゅうどうどう
みんなのだいじな
ひみつのパンツを
たべちゃうぞ!
と、
はりきってうばいさる
なぞのおんな。

あいつはだれだ!

しろいパンツは
ふわふわ、わたあめ。
あおいそらに、ひらりひらりとなびかせたら
そらのおしりも
ふわふわはずむよ。

しろいパンツって
きれいだねぇ。
おもわず、にんぽうつかえちゃう。

しましまパンツは
みずいろ、しろ、
きいろ、しろ、
だいだい、みどり、
ひもにつるしてはためくとき、
そらのおなかも
ぐぅ!
ごぅ!
ごろごろ!
ドキドキ
おどる、おどるよ。

カラフル、ゆかいな
しましまパンツ。
はいたらあなたも
ゆかいななかまいりよ。

どうぶつパンツは
かぜをきるちから。
はしる、おにわをどこまでも!
とんでゆく、はいいろのくもをわたって!
りく、かい、くうが
これからはもう、
のこらずまるごとみーんな、そらのもの。
のをこえうみこえ
とびたつ、どうぶつたち。
そらのパンツがおいかける。

すけすけパンツをはいたなら
そらもすけすけ、
とびらをとおってどこへでもゆける。
おかしのくに?
きょじんのくに?
さんたのくに?
きょうもあしたも、いつでもすきなときに
ゆめのなかにゆく、すけすけにんぽう。

おにいちゃんパンツは、ぶかぶかブリーフ。
そらにはおおきい、ぶかぶか。
おにいちゃん!
ブリーフのにんぽう、なに?
そらとべる?
うたがうまくなる?
きょじんになる?
おにいちゃんは、
そらのだっこがうまくなる、
そらのこと、もっとすきになる、
そらをぶんぶんふりまわすのがとくいになる、
そらがおにいちゃんをもっとすきになる、
ずーっとぎゅーっとしたくなる。

パンツせんたくのおてつだいは
これでおしまい!
おひさまさんさん、
かぜにゆらゆら、
きれいきれいのパンツさん、
きもちよさそうね。
そらといっしょでたのしかった?
そら、パンツいっぱい、
おにいちゃんおねえちゃんのおおごえいっぱい
たのしかった!
あしたもパンツをせんたくしようねぇ、
そらとパンツは、いのちあるかぎりのともよ。
きょうはこれから、おにいちゃんをおいかけてあそぶ!
パンツがつなぐ、ふしぎなちから。
そらとおにいちゃんは、これからもいっしょうのかぞくなのよ。

吹雪の偽日記

『ブリザード』

吹雪です。

いえ、私の名前も確かに吹雪なのですが。

気象用語での吹雪です。
北海道、北陸地方は、猛吹雪の予報。
突風にも注意とのことでした。

いくら私が比較的寒い温度を快適に感じるとしても、
最高気温が氷点下を越えない気候とはどのようなものかと
いつも天気予報を見ながら、考え込んでしまいます。
同じひとつの地図で表示される、身近な場所。

現代の移動技術を考えると、
日本国内程度であれば、どこであろうと遠さをあまり感じない距離だと考えています。
これは別に麗姉に語って欲しいという意味ではありませんが
語ってもらえるのであれば興味深く聞くことができそうです。

私や、私の家族が身近に接する場所。
その場所に滞在することも、在住することも、現実的に想像できます。
わずかな距離で、大きく変わる気候──
ましてや、これから数日は
その地方の平均すら越えた寒さに警戒の必要があるとのこと。
私が住んだら、いったいどのような生活になるのでしょう。
もちろん、現時点では保護者が必要な生活になることは確かですが。
これから先も何かとあると思いますが、まだしばらくはよろしくお願いします。
そうです、キミだって、私の保護者を任せられることが多いのですから。

寒さが厳しい地域では、それに合わせた知恵と工夫で暮らしています。
以前に少し調べただけでも、人間の英知に限界がないと知らされました。
ドアの工夫なども……これは麗姉に期待しているわけではありませんが
そもそも厳寒対策と電車のドアの工夫はまるで違うものですが
麗姉が熱く語るとしたら、それはそれで話してもらえば得るものが多いと予想します。
多くの人が重ねてきた生活は、何に限らず知識の宝庫です。

まだ実用段階ではありませんが、人間が気候を制御することは
ごく限定的な条件であれば可能なようです。
もちろん、莫大なコストがかかることもありますし、
強大な自然が相手のことですから、実用は遠い未来の話ですが……
例えばコストや実用性に関してはさらに不利な条件にあった宇宙開発が
多くの成果をもたらした例もあり、
いえ、霙姉の話はしていません。
もちろん、キミや霙姉がその話に興味があるとしたら、私も反対はしません。
いずれにしろ、人の知識はいつでも数多くの難関と向き合いながら
必ず成し遂げられるものだと私は考えます。
そして、達成に至る道の全ては、
私が楽しく集めている、一見何の役にも立たないような知識の束と
そこに続く時間の喜びにのみ、あるものだと思います。
私が好きなだけ知識を吸収することを喜んでくれる家族に
いつも感謝しています。
ただ、さらに知識を求めてしまうと、現実的ではありませんが
部屋のこのあたりに、月の石を飾って眺められたらと思うときもあります。

もし仮に気候の変化が実用的な範囲で可能になったとしても
実際に活用されるかどうかは疑問です。
私たちが、高いコストを払って求めるのは、
苦難を解消することではなく、何か別のものであると感じるからです。
私が家族と暮らして、与えてもらっている大事なもの。
それはどこの場所であっても、長い歴史で積み重ねてきたもので、
人間が必ず求めるもの──確かに得ているもの。

そう言えば、夕凪姉はどうやらビーグルに興味があるようです。
はい、犬種のビーグルです。
まるで訴えかけるようなつぶらな瞳、わんぱくな行動力。
あの世話をしたくて仕方がないと言っていました。
話を聞いたときの星花姉の顔は青ざめていましたが、
夕凪姉に説得されるうちに心が動いているようです。
もちろん無理な話ですので、そのうちどこかに連れて行ってあげてはどうでしょう。
犬や猫のテーマパークでは、一緒に遊べるようですので。
家族で一緒のルールに従うと難しいかもしれませんが、必要になれば相談して
いい意見を出せたらと考えています。
私がこうして大事に思っている生活を
キミも同じくらい大事に思ってくれたら、私は幸せだと思います。

あの猛吹雪の中で暮らすときがあったら──
私の家族は、必ず、何も変わらずお互いを愛していられると、信じています。
私は、人間の歴史が積み重ねてきた知恵に助けられる、そう思いながら。
その時には、キミが私の近くにいるでしょうか。
今と変わらず、私を守ってくれる場所に、
私は、キミがいてほしいと願います。
保護者の立場でなくなっても、ずっと──

あまり夜更かしをしないほうがいいかもしれません。
吹雪が激しい地域であっても、そうでなくても──健康には気をつけてください。
もし私たちが月に住んでいるような時代であっても、
風邪の対策は、基本的にはあまり変わらない気がします。
寒い時期です。暖かくして休んでください。
おやすみなさい。

星花の偽日記

『青い空と下校時刻』

澄みきった冬の空気。
空もますます高く遠くなるような、青くどこまでも続くような。
こんな季節、
ちょっと灰色の雲が浮かんでしまうだけで──

寒い!
寒いのです!

あっという間に
ぽかぽかの陽気がすっ飛んでしまうのです!
おひさまはどこへ?
あさひちゃん大好き、お兄ちゃんのいないいないばぁのように
顔を隠しただけで、いなくなってしまったかのようです。
ああ、日差しの温かさとは、これほどまでに
嬉しいものだったのですね……
不肖星花、失ってはじめて分かるぬくもりのありがたさです。
こんな季節は寄り道もしないで、
暖かな家へ早く帰りたいものなのですけど……

ましてや、今日ときたら
観月ちゃんの言う風の神様が
体調が悪いのか、それでも仕事をしなければと熱心になって
思い出したかのようにときおり
吹き付ける突風!

神様!
真面目なのはいいのですが
休むことも大事です!

なーんて──
そんな、風の強い日でした。
お兄ちゃんのほうはどうでしたか?
やっぱり、風が吹いていて寒かった?
なまじ日が当たる時間もあるぶん、
油断して少し薄着になったりしませんでした?
家を出るときに、みんな暖かい服をしていったっけ?
星花がお側にいられたら
念のために着込んでおいた服をおひとつ、貸して差し上げることも──
かけっこして熱くなった夕凪ちゃんが放り出した上着を
荷物になる代わりに羽織っていただいて、一挙両得の計も
できたのですけれど。

さむーい日でも、
夕凪ちゃんは元気、
星花も実はつられて遊んでしまったら
それはそれで楽しくてなかなか止まらなくなる
冬の帰り道、
吹雪ちゃんも、少し低い温度なら外にいるほうが調子がいいみたいだし
でも──
ユキちゃんもいるから早く帰らなくっちゃと思うし、
たまたま時間が揃って、今日はまとめ役の小雨お姉ちゃんは
困ってしまって、
どうしよう、
どうしよう星花ちゃん!
お兄ちゃん助けて!
こんな時にお兄ちゃんがいてくれたら!
星花の手を強く握って、頼ってくれるのですが
小雨お姉ちゃん、ごめんなさい。
あまり頼りがいのない星花で……

小雨お姉ちゃんが、晴れて中学に進学すると
小学生のまとめ役は
麗ちゃんをひとつ飛ばして、いきなり星花の肩にかかってきます。
この大変な役割を、
星花は果たして勤め上げることができるのでしょうか?
お兄ちゃん、どうかなあ?
星花はまだまだ子供だから
こんな日でも外で遊んでいたいと思うの……

今日を逃したら、また明日が来るまで
こんなにゆっくり遊んでいられるかわからないし、
ううん、明日になったらもっと曇るんじゃないか、風が吹くんじゃないか、
そう思うと、今日の日差しがもったいなくって
そのまま夢中になっちゃうの。
今日だって、寒かったけど楽しかったし、
明日も夕凪ちゃんの誘惑を断る自信がこれっぽっちもありません!
もっと自信を持って
なんでもお任せください! と言える星花になれないものでしょうか。

星花、どうしたら
もっと大人になれますか?

お兄ちゃん、星花の遠い将来の夢、
澄み切った冬の空、手の届かない青い空みたいに遠くにある夢、
それは──
いつか立派になって、天下に名を轟かすお兄ちゃんの、
そのそばでお仕えすることです。
槍の扱いはうまくないけど、
軍略の智謀も発揮できないけど、
お姉ちゃんたちに似て将来は美人になるって言われても
星花はそんなに美しくなって、お兄ちゃんの苦労を少しでも和ませて差し上げる
自信だって全然ないけれど──

まだ小さい星花が、遠く憧れるだけの夢。
もしかしたら、星花のいたことなんて
お兄ちゃんを記録する歴史書のどこにも残らないかもしれない。
どんなに活躍しても、ちっぽけな星花のお仕事は
ただ、お兄ちゃんが世に出るお手伝いをしたことのほかに
名前が残らないかもしれない。
それだけのことでも、きっと星花は大満足で死んでいきます。

歴史書に語られない、たくさんのこと。
小さい星花がお兄ちゃんに楽しかった話を聞いてもらわずにはいられないこと、
星花のいろいろな悩みを、たくさん聞いてもらっていること、
お兄ちゃんをこんなに愛している家族の一人に星花がいること、
そして、星花が毎日お兄ちゃんと、こんなに楽しく過ごしていること。
何もできなくても、後世の人が星花のことを何一つ知らなくても、
こんなにたくさんのことを知っている星花は、世界一の幸せものです。

星花、もう少しがんばって、
もう少しお兄ちゃんのお役に立てるようになったら、
と思っています。
助けられてばかりの星花が言うにはおこがましい、遠い先の話──

お兄ちゃん、
星花にして欲しいこと、なにかありませんか?
これから星花は、どんどんお兄ちゃんの期待に応え、
お兄ちゃんを助けられる、そんな自身のある子を目指します。
なれるかなあ?

まずは、小雨お姉ちゃんを泣かせることがないように
しっかりするところからはじめなくっちゃ!

氷柱の偽日記

『星に願いを』

今日も元気なユキ。
擦り傷だらけになって帰ってきたわ。
目を離すと、どこにでも潜り込むし、
気がつくと、どこにでも登り出して、
あの子の行く手を阻むものは何もない。
生まれたときからいつも何かを追い掛け回して、
止まったら死ぬみたいに走り回って。
女の子とは思えないくらい暴れん坊で、すぐ何にでも首を突っ込んで
生傷が絶えないところは心配の種だけど、
これからも家族をハラハラさせ通しでいてほしい、
私の願い。
びっくりするような事件の全てが、私の喜びなんだから──

ええ、
わかってるわよ。
こんなこと言ったって意味がないって。
でも、誰だって考えるに決まってる。
あの子がもう少し元気でいられたら、
せめて、子供が当たり前に知ることができるたくさんの経験を
当たり前に手に入れることができたなら、
走って、転んで、滑って、誰かと喧嘩して取っ組み合って転がりまわって
自分のことを思ってくれる人がいることを体で受け取って、
悩んだり壁にぶつかったり、時には無茶な方法で痛い目にあったりしながら、
いつかきっと自分の願いは全部叶うんだと信じて、
大切なものをたくさん手に入れる、そんな子供時代を過ごす権利が
ユキにだって必ずあるはずなのに。
せめて、自分の体を負い目に思うことなく
無邪気に大好きな家族と遊ぶことくらい、許してもらえたっていいじゃない。
ユキみたいないい子が、まだ小さいのにつらい思いをしなくちゃいけない
残酷だって表現じゃあ、割り切れない──

残酷じゃなければ、何て言えばいいのかしらね。
願えば叶うなんて都合がいい話はないし、
明日の朝、目が覚めてみたら
夢から覚めたみたいに、全てが良くなっている──
なんてこと、世の中にそんな都合のいい話は知らないし。

ほら、あれがオリオンの三つ星。
あなただって、あれくらいは知っているでしょう?
長い冬の夜、勉強に集中していた頭を休めて見上げた空に
流れ星を見つけることだって珍しくない。

流れ星に願いを叶えてもらおうって
願う言葉なんて、結局ただの独り言なのよ。
たまには、そんな独り言をつぶやきたいときもある。
後で無駄だと思い知らされて後でつらくなるなんてこと、
もう嫌になるほど分かりきっているのに。

夜空の流れ星に、願いをかなえる力なんてない。
七夕も、クリスマスも
誕生日も、大吉のおみくじも
それに、あなたは知らないだろうけど、
まあ、知っていたら、あなたに告げ口した犯人を見つけ出して
口が軽いことを後悔するまで反省を促すつもりだけど、
私、昔は魔法使いだったのよ。
妹たちがどこに隠れてもすぐに見つけ出すし、
考えていることも顔を見ただけで当てられる。
知らないことは何もない、
できないことなんて何一つない、
不可能を可能にする、奇跡の魔法使い。
家族の誰もが認めていたし、私もそうだと思っていた。
どんなことでも、願えば叶う。
私なら何でもできる。

本当は、
世の中は叶わない願いばかりで、
かなえる手段なんて何もなくって、
自分の中でそう決め込んでしまって、
身動きも取れなくなって、
そんなのが当たり前で──

いつからだったか忘れたけれど、
私は信じることにしたの。
願えば叶わないことはない。
私は今でも魔法使いなんだ。
ただ、願いを叶える方法は、夜空に願うことじゃない。
本当の魔法の使い方は、そんなんじゃない。
いつか、夕凪がもっと難しいことを理解できるようになったら、
教えてあげるつもりのこと。
私が伝えられなくなったとしたら、あなたが教えてあげればいいわ。
だって、私がそれを教えてもらったのは──ううん、忘れたけれど、
私よりはあなたが適任かもしれないし。

なんでもできる、本当の魔法。
願いを叶える流れ星は、
他のどこでもない、
私のこの平たい胸の中に
はちきれそうに熱く、輝いているんだと。
一番大事な願いを伝える場所は、そこなんだと

小さな頃に信じていた時と違うのは、
それは私だけが持っている力じゃなくて、
誰の胸の中にでもあるって気がついたこと。
それを教えてくれるのは
願いをかなえているたくさんの人たち、
私のかけがえのない大切な人たち──
もしかしたら、願いをかなえるのは私の中の星の光じゃなくて
誰かの胸の中にあるものなのかもしれない、
そうだったとしても、かまわない。

だから私は、今でも信じている。
できないことなんて何もない。
絶対にない。

なんにでもついてきて、ぼんやり星を眺めているような
間抜けな下僕の中には、
そんな立派な星の光なんて見つからないと思うけど、
だから、私があなたに願うようなことがあるとしたら、
何もない夜の空に消えていくような、無意味な独り言だわ。
意味がないと知っていて、たまにはそんな気分になるだけよ。
今から私がつぶやくことは、みんなそれだけのこと──

これからもユキにはずっと、大好きなお兄ちゃんが近くにいてくれますように。
ユキが自分の体のことを負い目に思うことなく、お兄ちゃんと接することができますように。
いつまでもユキがお兄ちゃんを愛していられますように。
ユキがお兄ちゃんに愛され続けますように。
何があっても家族みんながお互いを大事に思い、
誰一人欠けることなく幸せに暮らせますように。
そしていつか、ユキが病気でつらい思いをすることがなくなって、
あの子がどんな素敵な未来も自由に選べるようになって、
今まで手に入れるはずだった大切なものをたくさん取り戻して、
これから手に入る素晴らしいものを残らず集め尽くして、
他の人より理不尽に悲しい思いをしなくてすむようになったユキが
愛する人たちに見守られながら、
いっぱい、私たち家族をハラハラさせてくれますように。
それから、間抜けな下僕が寒い夜に夜更かしをして
風邪を引いたりしませんように。

どうかお願い、
お星様。
氷柱のお願い、叶えてね。

なんてね。

春風の偽日記

『土曜日の午後』

王子様に
問題です。

いつもいつも、王子様のそばにいたくって、
誰よりも近くで触れていたくって、
でも決して叶わないことだと知っていて、
それでもけなげにいつも王子様のために尽くして、
もしも離れることがあったらその時には
止めようとしても止まらない涙で
ずぶ濡れになってしまうかわいそうなかわいそうなもの──

なーんだ?

正解は、
はい、これです。
半日授業の土曜日には、お疲れ様のお洗濯。
王子様の楽しい学園生活と切り離せない
真っ白でさわやかなワイシャツたち。
一週間、王子様のためにありがとう。
来週も王子様が気持ちよく学校生活を送れるように
春風、心をこめて綺麗にします。

あっ、襟の内側は少し黒くなっていますね。
こんなところだけでも、王子様とじかに触れ合えるワイシャツたち──
ああ、うらやましいです。
春風も生まれ変わったら、王子様のワイシャツになりたいな。
いつも、王子様と触れていたいもの。
ちょっとの部分だけでも──

土曜日の午後の幸せ。
春風、王子様のために尽くすことができるのが
こんなに嬉しいことだなんて、ずっと知らなかったの。
もちろん、大好きな家族たちのお世話は
昔から春風が自分から望んで買って出ていたものですけど
こんなふうに役に立つものだったなんて、
こんなに春風に嬉しいものをくれる仕事──

王子様が卒業して、学校の制服が必要なくなっても
王子様の洗濯はみーんな、春風に任せてくださいね。
春風、いつでも王子様のワイシャツをきれいにします。
誰よりもきれいにします!
それとも、王子様は学校を卒業したら、ワイシャツが必要ない仕事に就くかもしれませんね。
どんなお仕事でも、春風は王子様の側にいます。
どうしても、側にいさせてもらいたいんだもの。

本当は、ひとときでも王子様と離れたくない……
修学旅行のときが来たら、どうなっちゃうのかしら?
王子様が旅行先まで来て、こっそり合流してくれなくっちゃ。
あ、でもそれだと、おうちのみんなが王子様がいなくて寂しくなっちゃいますね。
だから春風は、一日だけで我慢します。
きっと来てね、王子様。

もちろん、それは冗談──
それとも、王子様は本当に来てくださいますか?
春風が寂しくて、王子様が恋しくて泣いているときに
他の何もかも捨てて、春風に会いに来てくれる?

ううん、春風は、わがままは言いません。
わがままを言って王子様を困らせたくない。
でも、時々は王子様を困らせるかもしれません。
だって、春風は自分だって胸の中が抑えきれないから。

いつか──
私たちにはどうにもならないことで
もしも王子様が遠く離れてしまうときが来て、
春風のことを忘れてしまうとしても
春風は王子様のことを忘れません。
何があっても、どんなつらいことがあっても
春風は王子様と過ごした記憶を、何よりも一番大切に胸に抱えていくの。

王子様に、春風のことをずっと忘れないでいて欲しいとは、言いません。
こうして王子様のお世話をするのも、春風が楽しくてやっていることで、
王子様に春風のことを愛して欲しいからじゃない。

でも、王子様がそのつもりなら……
もしかしたら王子様は、春風を一人の女の子として見てくれるのかしら。
だったら春風は決してためらいません。
春風は、大好きな家族たちを捨ててでも
あなたについて行くことを選びます。

本当は、一番嬉しいのは
春風の大好きな家族たちに祝福されて、王子様と結ばれることかもしれないって
思います。
王子様──
王子様にすぐ態度を決めて欲しいなんて言わないわ。
春風は、こんな話を聞いてもらえるだけで満足。
ううん、ただあなたの近くにいるだけでいいんです。
今は、ただそれだけで──
だから、いつか──もしも春風の気持ちが抑えきれなくなったときには
春風が王子様をさらっていくから、心配しないでくださいね。
春風のどうにもならない理由で離れ離れになるとしても
そのときに王子様が迎えに来れなかったら、必ず春風が迎えに行きます。
少しの時間も離れたくない、って思うから。

土曜日の午後は、洗濯物を干してもまだ時間があります。
小さい子を連れて近くに出かけるのはどうかしら?
今月いっぱいは寒くなる予報だから、日が暮れたらすぐに帰ってこないといけないけど。
短い時間でも、王子様と触れ合えたらみんな嬉しいもの。
今夜は冷えた体に優しい、暖かいメニューにしたいですね。

麗の偽日記

『鉄道イベント』

私、
鉄道イベントは、
苦手、
かも──

やっぱり、
好き、かも──

私も、電車であればなんでもいいってわけじゃないんだし
節操なく何にでもついていくのもちょっとね。

イベントなんてしなくても、
どんな車両も、電車として生まれた以上は、
みんな、期待された役割を果たすもので、
イベントのときにその場限りの注目を浴びるためにいるわけじゃないでしょう。
立派なものだわ……勤勉で、何の見返りも求めず、文句も言わず
けなげに人の生活を支える、滅多に日の当たらない大事な仕事──

私だけが彼の活躍を知っていればいい、
この世界にたった一人だけでも、認めてあげる人がいれば
いいって──
そう思うけど、
だけど、そう思っていても、
わかっていても、
もっとたくさんの人たちに、
彼の本当の姿を知って欲しいと思うことだってあるじゃない?
決まった時間を守って、
求められる役割だけを果たして、
くたくたになって働いて、
利用している人たちにも気がつかないほど表に出ない
そんな真面目な仕事っぷりを、

私だけは褒めてあげたい──
こんなに愛している人がいるんだって伝えたい──

そして、ちゃんと注目してもらえるなら
それは誰であっても尊敬をするに違いない、そういう仕事なんだと
あの人にもわかってもらいたい。
本人はとっくにわかっているかもしれないけれど、本当に、実際にそうなんだって
あなたが思っている以上にあなたを愛する人はたくさんいるんだって
そう伝えることができたら。
イベントって、いい機会じゃない?

霙姉様は、愛情を伝えるには
日ごろのたゆまぬ努力が大事だって言うけど
私はそうは思わない。
どんなに真剣な気持ちを伝えようとしても
伝わらないときには伝わらないものだし──
それに、霙姉様のあれは愛情表現っていうか、
あれが食べたいな、
これが食べたいな、
ゆっくり眠りたいな、
きょうだいをからかって遊びたいな、
っていう
隠すことない欲望のいいわけだし。
まるで動物だわ。
っていうか、赤ちゃんだわ。
そんなことで気持ちが伝わるなら
私だって苦労しないっていうのに、
どんなに好きって気持ちを伝えようとしても
いつまでもいてほしいって言っても
いなくなることを止めるなんて
私には全然無理で──

だから、せめて私だけじゃなくて
もっとたくさんの人が電車の良さに注目してくれたらって思うの。

学校の授業で歌舞伎を見に行ったけど、
知ってた? あのケレン味、娯楽性、物語性、迫力……
みんな電車が受け継いで発展させてるじゃない。
日本の誇るべき文化の歴史、その真実。もっと知られるべきよ。
友達はテレビのアイドルに夢中だけど
すぐ側で走ってる電車がもっと華やかだってことに全然気づいてない。
あの通勤形のラインカラーの制服が
どんなかっこいいアイドルでも簡単には似合わない素敵なステージ衣装で、
見とれてしまうかっこいい仕事着だってこと、
気づいて欲しい、もっとたくさんの人にわかってほしい。

だから、
イベントは苦手だけど、
もっと開催してくれたらいい──

口実にして家族で行けるかもしれないし。
今年も鉄道会社のバレンタインイベントは多いみたい。
家族で行ける手ごろなものは今のところ見つからないけど……

もし、あんまり大人数で行けないようなものだったら
あなたが……
あなたのことを頼りにしていい?
バレンタインの鉄道イベント。

たまに、私と一緒に
電車に乗りに出かけてくれるでしょう?
あなたなら、いつも私を見ていてくれているから──

私が妹たちの引率を
立派に果たせるってことをわかってもらえるように
お姉ちゃんたちを説得してほしいの。
ちゃーんと電車の移動に慣れているってことも
人を案内するのが得意だってことも。

あなたがちゃんと説明してくれれば、
海晴姉様たちだって分かってくれるわ。
バレンタインじゃなくてもいいけどね。
きちんと家族の面倒を見てあげられるし。

私、もう大人です。
そんなこと、
あなただって知ってるでしょう?

虹子の偽日記

『a』

おにいちゃんは
アップル・パイ。

にじこがかじって
にじこがきり
にじこがわけて
にじこがたべ
にじこはうでずく
にじこがてにいれ
にじこがのみこみ
──

どうかしら、
おにいちゃん?

マリーおねえちゃんがおしえてくれた
えいごをおべんきょうするおうた。
ほんとうは、ちょっとちがうおうたなんだけど──
クスクス。

にじちゃんのおうた、じょうずかしら?

それからね、
それからね、
きいて、きいて、
おにいちゃん、きいて。

えいごのおべんきょう、たくさんしたの。
ほーら。

あいらぶゆぅー。

まいすうぃーとはにぃー。

だいすき、
だいすきっていうことよ。
にじ、えいごできるの!

おにいちゃんがいつアメリカじんになっても
これでだいじょうぶ。

にじがいちばんつたえたいこと、
これでおにいちゃんにいえるね!

あとね、
にじね、
もっともっとおにいちゃんに
だいすきっていいたーい!

なんどもなんども、
もっともーっといってみたい
にじこのだいすき。

おにいちゃん、
だいすき!

すきすき、
おにいちゃんがすき!

おにいちゃん、
にじはおにいちゃんのことが
だいすきよ。

だーいすき!
だーいすき!

ウフフッ
まだまだ、にじこおにいちゃんにいうの。

おにいちゃん!
だいすきよ!
にじのことたーくさん、だっこしてください!
おにいちゃんがすき!
あいしてる!

おにいちゃん!
だいだい、だいだい、
だいだいすき!
にじといっしょにたくさん
おうたをうたってくれるおにいちゃん、
すき、すきよ。

おにいちゃん!
にじとたのしくおはじきあそびをしてくれるおにいちゃんが
にじはすき!
もっともっといっぱいあそんでね。
それからね、もっといっぱいいっぱいすきすき。

これからも、にじがきらいなおかずがあったら
かわりにたべてください!
おにいちゃんをすき、ぜーんぶぜーんぶ、にじのだいすき。

にじがトイレにいくときは、
いっしょについてきてね!
それからおにいちゃんがトイレにいくときも
にじをつれていってください。
とおいところにいくときも、にじをいっしょにつれていってください。
にじのだいすき、おにいちゃん。
にじをどこにでもつれていってくれるおにいちゃん。

だいすき、だいすき、おにいちゃん。
やさしいおにいちゃんが
にじこはだいすきよ!

にじのおにいちゃん。
ときどき、にじにいじわるなことをするおにいちゃんだけど
にじはだいすき!

にじのこと、おいていっちゃうおにいちゃん。
にじがたのしくしていたら、ときどきしかるおにいちゃん。
おにいちゃん、にじのこときらい?
にじはね、
おにいちゃんがすき。
すきよ、すきよ。
おにいちゃんだいすき。
にじのことおいていっちゃっても、にじはおにいちゃんがすきだもん!

にじのだいすきなおにいちゃん、
だいすきだいすき、すきすきおにいちゃん。
これからもずっとにじのかぞくでいてください。

おにいちゃん、
にじはおにいちゃんのこと、すきなの、すきなのよ。
すきすきすきすき
それでね、
もっともーっと、
いままでにすきをぜんぶあわせたより、もっと、もっと
とっても、すき!
これからも、にじのだいすきなおにいちゃんでいてね。

すきすき
あいあい

あいらぶゆぅー。

にじこのおにいちゃん。

ヒカルの偽日記

『12時のシンデレラ』

今はお昼寝しているチビたちだけど──

さっきシンデレラの絵本を読んであげていたら
こんなことを聞いてきた。

「いじわるなお姉ちゃんって、
 おうちで言うと誰なの?」

難しい問題だ。

シンデレラは汚れた服を着ていたっけ。
それで、思い出したことがあるんだ。

昔、小さかった頃の私は、
いつもほこりと泥の中を転がりまわって
みんながあきれるほど服を汚していた。

だから、着替えて遊びに行くときでも
洗濯籠の山盛りの中から
まだマシなものを掴み取っていったり、ずいぶん回りを困らせたらしい。
転んで穴が開いたものだって
擦り切れてボロになるまで平気だったんだ。

何か違うかな?
この話だと、いじわるなお姉さんは出てこないし。

シンデレラはガラスの靴だけど、
汚れた服は同じなのに、私は靴をたくさん履きつぶしてきたっけ。
夢中になって走っているうちに
気がついたら、靴のかかとが舌を出したみたいに笑っている。
もちろん靴下は真っ黒だ。
ガラスの靴なんて、すぐに破壊してしまうだろう。

シンデレラのガラスの靴はもともとは毛皮の靴だとか
最初からガラスの靴だった説もあるとか
マリーや吹雪が詳しかったけど。

どんな素材でも、私にかかれば変わらないだろうな。
少し大きくなって、ちゃんとしたスポーツシューズが足に合うようになると
やっと家族も安心したって、よく聞かされた。
それからも、たくさんの靴を壊してきたけれど。
姉妹で一番の靴持ちは、
おしゃれな海晴姉でも春風でもなくて、ずっと私だったのかな。
誰も追いつけない勢いで、靴を壊し続けてきた──
今の靴も、そろそろ買い替え時かもしれない。
オマエはどうだ?
よく私のトレーニングに付き合っているからな。
これからは、オマエと一緒に靴を履きつぶしていくんだな。

ガラスの靴を履くような立場じゃなくて良かった。
舞踏会に行く予定もないし。
だったら、家の雑巾がけでもしているほうが私は好きだ。
あれは本気でやると、案外いい運動になるんだ。
全身の筋肉を使うし、足腰もいい感じに痛めつけてやれる。

でも、思ったんだけど、
ガラスの靴を脱ぎ捨てて王子を振り切る
シンデレラの脚力って、かなりのものじゃないか?
やっぱり、雑巾がけで鍛えられていたのかな?

まだずいぶん汚れた服を着ることが多い私は、
魔法をかけられる前なのか、
それとも、もう魔法が解けた後なのか──
一生、ガラスの靴に縁のない
灰かぶり姫。
なかなか悪くない毎日だ。
だけど、なるべくスポーツシューズはあったほうが嬉しいかな。
今の時代に生きていたら、シンデレラもそう言うんだろうか?

ナイキの靴を履いたシンデレラを捕まえるには
王子にも相当の下半身が必要だな。

小雨の偽日記

『おしょうゆが!』

お兄ちゃん!
行かないで!

小雨のせいです。
悪いのは小雨なんです。
だから小雨はどんなことをされてもいい、
罰を受けたくらいですむならどんな目にあってもかまわない、
小雨にできることなら何でもします。
だけど小雨がひとつだけ、
どうしても悲しくなってしまうこと──
どうか、
どこにも行かないでください……

小雨、あまり反省していないのかもしれない。
だけど──

せっかくみんなが揃う楽しい日曜日のお夕飯が、
小雨のせいでこんなに悲しいことになるなんて。
家族のみんな、まだ小さいあーちゃんの他は、みんなわくわくしてこの時間を待って、
ううん、あーちゃんだって、自分では食べられなくても
食卓が笑顔に囲まれたらきっと嬉しかったはずなのに。

ユキちゃんも、今日の診察でも体の調子が良くて
少しだけなら、とお医者様にやっと許していただいたのに。
このときをどんなに楽しみにしていたのか、
それなのに、
もう小雨、家族みんなに顔向けできない。

小雨は、
お兄ちゃんの妹でいる資格が
なかったのかも──
悲しい、悲しいことまで考えてしまいます。

せっかくのおさしみ。
買ってくるように頼まれていたおしょうゆを、
忘れてしまうなんて。
よりによってたったひとつの買い忘れ。

おうちのどこを探しても
おしょうゆの一滴さえ、どこにもないと
知っていたはずなのに。

お夕飯の前に、
寒い冬、みんながあったまろうと早くお風呂に入った後になって、
初めて発覚した
大惨事。

一日を家族でゆっくり過ごして、
横を見れば、安心できる家族の顔。
昨日まで一週間をがんばって、
明日からの一週間も、胸を張ってすごすために、
みんなが思い思いに楽しんだ
お休みの日。
日曜日の最後のお楽しみ。

小雨、
少しでも家族の役に立ちたくって
おつかいを任せてもらったっていうのに、
それなのに……

お風呂上りのお兄ちゃんが
買い物に行くなんて
そんな怖いこと、
小雨はどうしても、
黙っていられないんです

お外はもう、暖かかったお昼から想像もできないくらい
たちまち冷え込んでしまったし、
あっという間に湯冷めをしてしまうに決まっていて、
それで体調を崩してしまうかもしれないし、
だいいち、
暖かいおうちにお兄ちゃんがいられないなんて悲しいことはしてもらいたくない──
小雨も、お兄ちゃんがいないなんて、心配でしょうがなくなってしまいます。

暗くなったら何が起こるかわからない。
どんなに注意していても、夜のお外は危険が多いでしょう?
車にぶつかってしまったら──
変質者にさらわれてしまったら──
暖かい日で間違えて冬眠から覚めたクマが
おなかをすかして襲ってきたら──

悪いのは小雨なのに、
わがままですよね。
でも、小雨、
これだけはどうしても
自分の気持ちを整理できないんです。
お兄ちゃんがいてくれればおしょうゆなんていらない、
お兄ちゃんと、
暖かいおうちでお夕飯を過ごせるなら
小雨はおさしみだっていらない。
お兄ちゃんは、小雨のおしょうゆなんです!
小雨が喜ぶ、一番のおさしみなんです!
食卓に、どんな豪華なご飯よりもおかずよりも
必要な、大事なもの。
家族みんなそう思ってくれているはずです。
お兄ちゃんの笑顔よりも食卓に欲しいものなんて
他に何ひとつありません!
きっと、みんなそうです。

お兄ちゃん、
どこにも行かないでください。
お夕飯は、おさしみのためにあるわけじゃ
ないんです。
お願い、
お兄ちゃん──

夕凪の偽日記

『真夜中のマホウ』

夕凪が最近、
知ったこと。

恋のマホウの正体、
それは!

エス!

イー!

エーックス!

なんだよぉ、
お兄ちゃん!

知ってた?
知らなかったでしょ?
夕凪もはじめてわかったときは、
びっくりしたんだ。

だって、まさか、
まさか、そんな、
それに気づいた夕凪が、もしかしたら
本当にマホウが使えるようになるかもしれないじゃん!

夕凪の一番使いたい、恋のマホウ。
恋人同士だけが知っている、特別な、ラブラブのマホウ。
お兄ちゃん、夕凪にどんどん夢中になっちゃう。
もう離れられなくなっちゃうよ。

恋に必要な、まず最初のことは、
スピード!
思い立ったらすぐに行動、
自分の本当の思いを逃がさない力だよ。

はっぴーらっきーはねむーん!
日の出の光、夕凪と走れ!
地平線まで一瞬に照らし出すスピードが、
恋する小さな体を、何より早く運ぶ。
急いで、迷わず、
お兄ちゃんの胸に飛び込んでいけ!

恋を成就する、ふたつめの秘訣は
エネルギー。
いつまでも止まらずに、どこまでも行く力。
あきらめないで続けること。思い通りに行かないなんて泣かないで、立ち上がること。

さんさん、かんかん。
真昼の太陽に乗って、夕凪に注ぐスーパーパワー。
腰に手を当てて胸を張って、
うつむかないで、
止まることなんて考えないで
山があったら飛び越えて行こう、
お兄ちゃんはきっと待っている。
夕凪の溢れる力を受け止めるために。

あのねー。
ここまでは、吹雪ちゃんが物理の勉強をしながら
一緒に考えてくれたぶんで、
次は本当に、夕凪のオリジナルだよ。
あ、でも、エックスの意味がまだ知らないってことって言うのは教わったけど
そのくらいだし。

そう、
夕凪が気づいた三番目の秘密は、
シークレット。
お兄ちゃんのことを知れば知るほど、夕凪はお兄ちゃんのことが好きになるぅ!
どれだけ秘密があっても、マホウで探り出しちゃう。
お兄ちゃんって夕凪の知らないところでどんなふうにしてるのかな、
とか、
お兄ちゃんって夕凪と同じものを見て何を考えるのかな、
とか、
お兄ちゃんって何からできているのかな、
とか。

手探りで進むよ、
夜の道。
お兄ちゃんを隠すものは、深い暗闇。
かすかな月明かりだけが手がかり。
お兄ちゃんを知りたい気持ちが、
夕凪を進ませるすべて。
夜よ、もっと奥にお兄ちゃんを隠せ。
夕凪の進む楽しい道のりを
続けさせてよ。

どうかなあ、お兄ちゃん。
夕凪、これでマホウ使えそう?

あのね、
ヒントになったのはね、
スフィンクスのなぞなぞ。
小学校の図書館の本で見たんだよ。

朝は二本足、
昼は十本足、
夜は八本足、
これなんだ?

答えは、
朝は一人で出かけた夕凪が、
昼には追いかけてきた家族の十人と合流して、
夜には引っ込み思案で方向音痴な八人と合流して、
さすがにあーちゃんだけはまだそういうわけにはいかないから、
こっちから迎えに行かなくっちゃ、
っていう話!

あれ?
これだと、昼は二十本足で
夜は十六本足だよね?
うーん。
まあいいや。

だけど、夕凪がこのごろ思う
もしかしたら、の
もう一つ。

ほら、夕凪さ、大晦日には夜更かししたでしょ。
夜遅くまで起きてることって滅多にないけど、
真夜中になるとさあ、
鐘が鳴ったり、おそばを作ったり、
いつも夕凪が起きてる夜の、ゲームしてプロレスしておふろで泳いだりする楽しさとは
なんか違うよね。
身が引き締まるっていうか。
あと、普段、夜寝てるときに部屋で目を覚ましたりすると、
あれ、
この家って、こんなに静かだったっけ──
って思うし。
そんな時、隣のベッドの星花ちゃんを呼ぶ声もこそこそ。
星花ちゃんが顔をこっちに出して
話す声もなんだか自然と、ひそひそ声になるの。
同じ部屋の吹雪ちゃんは深く眠っちゃったら、ちょっとやそっとじゃ起きないって知ってるのに
なんでかなあ。
夜の、まだ夕凪の知ってる時間は、そうじゃないんだよ。
うるさくして、よく怒られるし。
きっと、夜のマホウは、実はもう一つあるんだよ。
夜遅くまで起きていられる大人しか気がつかない
もう一つの夜。
いいなあ、
夕凪も早く、夜更かしできるようにならないかな。

朝の光がくれるスピードで、
夕凪が早く大人になれ!
昼の日差しがくれるエネルギーで
夕凪の体がぐんぐん大きくなれ!
夜の暗がりに潜むシークレットで
夕凪のハートがもっとかわいくなれ!

真夜中の、まだ夕凪が知らない秘密のマホウ。
早く夕凪のところにやって来い!
お兄ちゃんと夕凪の恋のマホウが
早く完成するように──

蛍の偽日記

『二月に向けて』

一年の最初の月も、もう少しで終わり。
あわただしかった年の瀬のあとの、少しゆっくりできたお正月。
ここしばらく──
クリスマスのサンタと天使のパーティや、年始の着物パーティ。
というのは、ホタの趣味の楽しみ方だったかもしれないけど。

そんな、
華やかだった日々が、
昨日のことのような、もうずいぶん昔のことのような。
あっという間に過ぎ去ったと思ったら、
もうすぐいよいよ
次のイベントが近づいてくるんですよね。

二月は他の月よりほんのちょっと短いけれど、
またいろいろなことがあると思います。
特にバレンタイン!

でも、今年はなぜか
みんなが蛍に、
あまりバレンタインのごちそうを作らないようにって
言うんです……

みんな、
そんなに、お兄ちゃんに自分のお料理を食べてもらいたいのかな?

そういうわけで、
今年は衣装係を担当しようかな、と考えたりもしています。
バレンタインもコスプレパーティができるかしら。
お兄ちゃんに思いっきりの愛を伝える
とびっきりのかわいい衣装、
何がいいかな?
夢見るフリル?
勇気を出して大胆な露出?
他にも、生地にまでこだわるきらきらのドレスで
お兄ちゃんがまだ見たことのない私たちの新しい魅力を引き出すのもいいな。
でもそれは、お兄ちゃんと私たちの結婚式のときのお楽しみかしら?
かっこ良くスーツで、少し大人の女を意識させるのはどうかな。
ファンタジーなコスチュームでかわいらしく揃えるのもありだと思うし。
それとも、お兄ちゃんはやっぱり裸がいいですか?
生まれたままの、素直な心。
裸の心を伝えることができれば、
本当は衣装なんて何でもいいのかもしれないですもの。

でも、大好きな人にかわいいと思ってもらいたいし、
かわいい姿を見て喜んでもらえたら嬉しいし。
ホタ、本当はいつでもこだわっていたいけど
そういうわけにもいかないので
何かあったら張り切ってしまうのは、仕方ないんです。
ちょっとだけ大目に見てください、
お兄ちゃん。

さっき、みんながお兄ちゃんにお料理を食べさせたいんだって
言ったとき、
お兄ちゃんは「えっ?」って思ったかもしれないけど、
でも、それは本当なんですよ。
このごろのホタは、家庭科の先生の気分です。
みんなのためを思うなら、なるべく手を出しちゃいけない。
でもおいしいお料理を作るために、なるべく要点は教えなくちゃ。
みんなががんばっているのは、
この機会に、お兄ちゃんにおいしいお料理を食べさせてもらいたいっていうのも
ちゃんとあるんです。
キッチンに立つ真剣な顔を見ていれば、わかります。
大好きな人に喜んでもらうことを思いながら作っているんだなって──
いつもホタがそうだから、見ればすぐわかるものなんです。

でも、ホタはダメな家庭科の先生なんですよ。
家族の料理には採点が甘くって、
おいしい、
おいしい、
とってもじょうずよ、
なんて、あんまり参考にならないって言われているんです。
もっと上手になりたいから相談してくれるのに
こんなことでいいんでしょうか?
でも、お兄ちゃんに喜んでもらいたくて作っているんだし、
きっと、お兄ちゃんの評価も同じだと思うの。
おうちの家庭科の先生に必要なものは
「たいへんよくできました」のハンコがひとつだけでいいよね。
あ、霙お姉ちゃんには「もうすこしがんばりましょう」が要るでしょうか?
でも、がんばって作っているものなんだから、ね。

バレンタインのお品書きには、
きっと「たいへんよくできました」のハンコが
ずらり並ぶと思います。
チョコ料理ばっかりじゃなくなっちゃうのは
お兄ちゃんはちょっと残念かもしれないかな?

みんなの上達が楽しみです。
その前に蛍は、
バレンタインコスの準備──
よりも先に、今日のご飯の支度ですね。
まだしばらくは、おいしいご飯で家族が喜ぶ顔は
蛍と春風ちゃんだけのお楽しみです。

今日のメニューは何がいいかな?
週の始まりの月曜日は、
元気よく、カジュアルに小倉スパゲティと
あんこたっぷりのサンドイッチにしようか。
他の候補としては、白身魚とほうれん草と小豆のグラタン──
たまには、小さい子がよろこぶおはぎもいいかなあ?
それとも、豚肉もあることだし
ヒカルちゃんが好きな、ニンニクたっぷりのぎょうざに小豆を合わせるとか、
うーん、中華の方向だと、ホタは小豆シューマイもありかなあ。
豚肉としいたけ、にんじん、春雨の小豆炒めもいいですよね。
それと、デザートは
ホタもこのごろいろいろ試しているけれど、
小豆の家庭的でやさしい甘さは、シンプルにお団子と食べるのが一番なんじゃないかと
思うんです。
でも、気になるレシピが一つ──
ホタのお料理の本の中を探して見つかった、小豆料理のひとつ。
それがこの小倉ババロア。
とろーり生クリームと、ゆであずきのつぶつぶが、
ぷるんとしたゼラチンの中に溶け合う、甘さの彩り──
食べたら、いったいどんな心地になるのかしら。
まるで、個性が混じり合って、思いもよらない味になる私たちの家族みたいに
まったく体験したことのない、
新しい甘さが発見できるかもしれません。
なんちゃって。
今日は抜けるような青い空で、
早く帰ってきて、窓の内側で日向ぼっこしていたユキちゃんたちは、
汗ばむくらいだったみたい。
こんな日は、ホットなメインメニューの後に
冷たいデザートを用意してみても喜んでもらえるかな?
この調子だと、そろそろ小豆を買い込んでこないといけませんね。

ね、
お兄ちゃんは
どんな小豆料理が好きですか?
ホタ、がんばって作ります!

あさひの偽日記

『ぎゅっぎゅっ』

おにーちゃ、
んちゃ、ちゃ?
ぎゅーっ、ぐいぐい!

ぶぅぶぅ?
んもんも。

んばばば、おにーちゃ、んばばば!
きゃっきゃっ!

ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅーっ!
ちゅっ、ちゅっ、ちゅーっ!


(おにいちゃん!
 きょうはなんだかふんいきがちがうね?
 かみきった?

 ふとったのかな?
 いや、たくましくなった?

 どんどんかっこよくなるおにいちゃん。
 なんてきゅうせいちょうだ!

 あさひもまだまだせいちょうするぞ!
 すぐにおにいちゃんよりおおきくなるからね!)

さくらの偽日記

『ゆうき』

びぇぇぇぇぇん!

うっ
うっ
うわっ
うわああああああん!

おにいちゃん!

さくらのことをほめてください!

わぁぁぁん!

さくら、
こわがりで、
なきむしで、
あまえんぼうで、
へたれだから、

せつぶんにそなえて、
ヒカルおねえちゃんと、
つららおねえちゃんと、
あと、あと、
みんながね、
さくらちゃんをつよくしよう!
おにとたたかえるさくらに
きたえあげよう!

って、
はりきってくれていたんだけど──

おにいちゃんのいもうとなんだから
さくらちゃんだって、
きっときっと、
ゆうき、
だせるよ、
って、きょうりょくしてくれたんだけど、
だったら、
さくら、
おにいちゃんのいもうとじゃないかもしれない、
こわくて、こわくて、
おにさんがきたら
ないちゃうにきまってるもの!

うわああん!
おにいちゃんのいもうとじゃないなんて
いやだよう!
そんなことがあるかも、
とおもうだけで
なきたくなるよう!

せつぶんは
つぎのにちようび。
ようちえんのおやすみのひ。

だから、
こんしゅうのうちにようちえんで
せつぶんをするの。
いつはじまるかわからないから、
きょうかえったらさくらの
とっくんをはじめようって
そうだんしていたら、

ようちえんのせつぶんが、
ようちえんのせつぶんが、
せつぶんが、
あ、
あの、
きょう、
だったの!

うわあああん!

そんなの
ないよ!

せんせいたちが
おまめをくばりはじめたとき、
あっ、
これは、
きた、
せつぶんだ!

おにだ!

さくらはもう、
なきたくて、
にげだしたくて、
かくれたくて、
おうちにとんでかえりたくて、

だけど、

かぞくのみんなが
さくらのこと、おうえんしてくれていたもの。

さくらはおにいちゃんのいもうとだって
みんないってくれたもの!

がんばらなきゃ、
がんばらなきゃ、
おにいちゃんも、おねえちゃんも、さくらががんばれるってしんじてるもの!
ふだんは、がんばらなくちゃいけないときはいつも
へなへなになるのに、
きょうはね、
むねがどきどきしてふきとびそうなのに、
かおがあつくて
めがうるうるで
しにそうなのに、
さくら、
ふしぎと、
ゆうきだせたんだよ!

しぬかもっておもいながら、おまめなげたんだから!

おにはそと!
おにはそと!
ふくはうち!
おにはそと!

おおごえで、
いっしょうけんめい、
おにがおいかけてきてもにげないで、
つかまってもにげないで、
おまめをね、
おまめをなげたの!

おにいちゃんたちが、
さくらががんばってほしいって
おもってるんだ、
だからさくら、

おにを、
やっつけたんだから!

さくら、がんばったよ!
うっ
うっ
こわかったよ、
こわかったけど、
がんばったの!
おにいちゃん!

ゆうきだしたよ!

さくらのなかに
ゆうきがあるって
ほんとうだったよ!

さくら、
おにいちゃんのいもうとだったよ!

うわぁぁぁん!
びぇぇぇん!
ぶぅぅぅ!
ぎゃぁぁぁ!
うぎゃああああん!

おにいちゃん、
ありがとう、
さくらがおにを
たいじできたのは
おにいちゃんと
おねえちゃんたちのおかげでした!

さくらはちゃんと、
せつぶんのおにたいじができました。

これでさくら、
もう、
らいねんのせつぶんしなくても、
いいかなあ?

霙の偽日記

『滅びの定め』

止めようとしても
止められないものが
たくさんある。

やがて宇宙の全てが
塵に返る定めもそうだし、

麗の好きな電車が
引退していくこと──

増加を続ける
立夏の体重──

ツイスターゲームの途中で崩れ落ちる
運動不足の体──

それから、
愛するものへと突き進む
ひたむきな思い──

蛍の様子が少しおかしいとしたら、
原因は私だ。

愛する気持ちは止められず、
あんこに向かう思いが溢れ、
どれほど小豆が至福であるかを
微に入り細に入り
余すところなく
昼夜を徹して訴え続け、
ついに真実の愛は
あまたの困難を乗り越えて
成就する──

というわけではなくて、

そういえば小豆もマメの一種なんだし
節分も近いし、あれで厄が祓えるなら
さくらも少しは怖がらないでいられるのではないか?

と、
自分でも
それはないだろうと
思いながら
雰囲気で適当なことを言ってみたら、

蛍が真に受けてしまった。
言っておくが、何の効果もなかったとしても
私は責任は取れないぞ。

思うに、もともと節分は
せっかくの行事なのに、蛍の腕を振るう部分が少なくて
物足りなかったんじゃないか。
恵方巻に力を入れてみるくらいだ。
しかもあれは、無言でまるかぶりだ。

そういうわけだから、
豆なら何でもありの勢いで、
大豆料理も試しているようだし、
豆乳なんて小さい子の好みではないだろうか、
コーヒー豆と合わせてカフェオレにしたらどうだろうかと、
張り切っている。
しかし、コーヒー豆はマメ科ではないが、いいのかな?
まあ、もともと私の根拠のない思い付きが発端だから
いいも悪いも何もないんだが。
縁起物だし、おめでたいことなら特に難しい話はいらないんじゃないかな。
いろいろやらせてみてもいいと思っている。

もちろん、小豆尽くしも
蛍の冗談だ。
私と違って料理上手な蛍のことだ、
しっかり考えてやっているし、大丈夫。
大丈夫だと思う。
もし大丈夫じゃなかったら、
その時はその時だ、それから考えよう。
頼むぞ。

何もあんこを愛していると
伝えたわけじゃない。
それは、もちろん、愛しているが
何をおいても一番というじゃない。
いざとなったら、あんこがなくたってかまわない。
私がこんなことを言うなんて、驚いたか?
別に普段から出し惜しみしているつもりではないんだが。

私はさくらのことを愛している。
泣いたりすることはこれからもたくさんあるだろうが、
私たち家族が支えてやれることがあったら、何もためらわずに手を差し出すつもりだ。
幸せになって欲しい、と私は願う。
あの子がやがて、真剣に願う幸せがどのようなものになるのか、まだ誰にも分からないが、
確かなことは、さくらがこれからどんなふうに大きくなっていくとしても
私は変わらずに愛し続ける、
ただそれだけだ。

私は蛍のことを愛している。
いつも私たちを喜ばせようと腕を振るって、
私たちが喜ぶと、自分のことのようにうれしそうに笑っている。
もしかすると、自分のこと以上に──
努力家で、たくましくて、それでいて無邪気でかわいらしい。
愛くるしい妹だ。
ときどき鋭いところもあって、意外と油断ならないのも
蛍の愛嬌だな。
もしも、蛍が料理を作らなくたって、私は蛍を変わらず愛していただろう。
ただ、私は今、こうして私たちと過ごしている蛍を
他のどのような例え話の中の蛍よりも
深く愛している。
それだけが今の真実。

やがては塵になって消えてしまう
ちっぽけな思いだ。

愛して止められない気持ちが起こす
不思議な事態だな。
やけに小豆料理が多くなったのは予想外だったが
たとえどのような展開になっていたとしても
私が幸せであることは、あまり変わらなかっただろう。
本音を言えば、子供みたいにメニューにわくわくする喜びを
久しぶりに思い出して、楽しかったかな。

マメのことで言えば、
ピーナッツバターの研究もしているようだから、氷柱の好みだ。
今度は氷柱が喜ぶ番かもしれない。
あいつもそんなふうに、一日が幸福で満たされれば
少しは丸くなるのだろうか?
あの年頃の娘が気にするちっぽけな、本人にとっては大事なことなんて──
誰かを愛する大きな気持ちの前では
いつか消えるどころか、はじめから塵に等しいものでしかないと、
氷柱もやがて気がつくかもしれない。
それとも、氷柱も気がついているかもな。
人を愛する気持ちを大事に持ち続けながら、
それでもなお、塵に等しいと分かっている
自分のちっぽけな思いを抱えることを選びたいのかもしれない。
あの子なら、それができるのかな。
できなかったら、それはまたその時だ。
頼むぞ。

オマエも、何かを愛しているだろうか?
止められない思いがあるだろうか。
私が何をすることも、止められないと分かってくれるだろうか?
私はオマエを愛している。
ずいぶん離れて暮らしていたからなのか、
他のきょうだいたちと比べても、かわいがってしまいがちだ。
愛情に差があるとか、
優先順位があるとかではない。
難しい理屈は何もない。
どんなことがあっても、オマエを愛している。

愛することに理由などない。
ただ、愛しい。
だから愛する。
私の愛は、そんな感じだ。
家族だからというのも、関係ないような気がしてくるほど
私は家族の全員を、自分でも止められない気持ちで愛している。
オマエを愛している。

ときには、愛がなかなか分かってもらえなくて、つらいときもある。
愛するもののために、悲しさに涙を流すことも、当たり前にある。
でも、全ては塵になってしまう定めだ。
愛する気持ちも、幸福も、いつかは必ず塵になる。
どうせ何もかも同じものなら、
私にとって、少しは大事に思えるものを選んでみよう。
だから私は、
この肉体が塵となって消える最後の瞬間まで
オマエを愛し続ける。
それを止めることは、誰にもできない。

オマエはどんなふうに、家族を思っているのかな。
私はオマエになって行動することもできないし、
どんなふうに行動して欲しいと強制することもできないが、
もしも愛してくれているのならば
その気持ちを存分に見せ付ければいい。

口に出したら変わってしまう思いがあると、知らない人は言うが
そんな思いくらいでうちの家族が満足してくれるなんてありえないと
オマエならよくわかっているはずだ。
だいいち、どんなに一生懸命に愛しぬいても
もっともっと
まだ足りない
たくさんちょうだい
と、いくらでもオマエの愛を待っている子ばかりだ。
あの子たちを愛したいと思うなら、いくらでも愛してあげてくれ。
大変なことはあるだろう。
でも、愛する苦しみも、愛を伝えられなくて後悔した出来事も
すべては塵に等しい。
何があっても、やめることはない。

まずはそうだな、
珍しくいいことを言った姉に
とりあえずお礼を言うことから
始めたらいい。

何事も、素直な気持ちから始まって、
素直な気持ちだけが、私たちを導いていくのだ。

さあ、
いつでもいいぞ。

星花の偽日記

『夕凪ちゃんのペット』

ワンワン、
ニャンニャン、
コンコン、
ペンペン。

ここまでは、いいんだけど──

お兄ちゃん、
ウサギの鳴き声って知ってる?

いま、みんなの間で説が分かれていて、

きゅうきゅう
っていうのと、

ぶうぶう
っていうのと、

うさうさ
っていうのと、

ぴょんぴょん
っていうのと
四つの説が、今のところ有力です。

飼育係を経験したお姉ちゃんたちの
鳴かない、って意見が出たけど、
でも、うさぎだって恋をしたら
気持ちを伝えようと、言葉にしたいんじゃないか、
うさぎにもし大好きなお兄ちゃんがいたら
一緒に遊びたいんじゃないか、
うさぎは革命の火に巻き込まれたら
愛を歌い上げたいのではないか、
うさぎだって戦場に出たら
割れるような大声で名乗りを上げたいんじゃないか、
様々な意見が紛糾して、
主に小さい子を中心に──
うさぎの想像が発展を続けているのです。
ちょっと星花の意見も入ってますけどね。
星花、もう小さい子じゃないのに、おかしいですね。
でも星花、お兄ちゃんの名乗り上げが
きっと誰よりも凛々しくてたくましいと思います。
本当は、お兄ちゃんと一緒に戦場に立つ星花が
かっこよくありたいのになあ。

観月ちゃんは、狐がかわいいって主張しています。
あまりメジャーなペットじゃないし、同意する人は少なくて──
お兄ちゃんはどう思いますか?
狐ってペットに向いてるのかな?

とはいえ、
みんな、空想上のお遊び、
なんですけどね──
はあ──

夕凪ちゃんは、もうずいぶん立ち直っているけれど
なんかもう、ペットのことはすっかり忘れたみたいにしているけれど、
星花はなんだかかわいそうで
ついつい、夕凪ちゃんの元気が出るように
お菓子を買ってきてあげてしまいます。
そういうときは、小さい子たちにも分けてあげたいし
結局、安くて量がある駄菓子を選んでいくくらいが星花の精一杯ですが
それでも大喜びの夕凪ちゃん。
ああ──
嘆いてもどうにもならないですけど──

星花、ちょっと考えてみました。
青空ちゃんが時々連れて帰ってきちゃうカエルは
あまりペットで飼っていてもかわいくないし、
家族が多い家でも、水槽で魚や亀を飼うなら、
でも夕凪ちゃんは水槽の手入れみたいに根気がいるお世話は苦手だし
それに、観賞用の魚は、体でぶつかって触れ合うのが得意な夕凪ちゃんには
合わない気もするんです。
鳥カゴで鳥を飼うとしても、すぐに逃がしてしまいそうだし……

だけど、
吹雪ちゃんが言っていたんだけど、
一人ずつ好きな動物を飼えるように分かれた家があったら
やっぱり寂しいし、吹雪ちゃんもそれはいやだって。
そんな家に住んでいたら、みんながお兄ちゃんのところに集まってしまうかな?
広い家に住む話なのに、今よりも狭いところに集まりそうな話になっていますね。
星花も、どさくさで、お兄ちゃんともっと家でも一緒にいられたらなあ。
でも、あんまりお兄ちゃんのお部屋に押しかけたりしたら迷惑だもの。
たとえば家が広くなるとかで、星花の寂しさが膨らんで耐え切れなくなったとしたら、
お兄ちゃんにお仕えする立派な武将になるはずの星花が、もしそんな弱気なことを言い出したら
そのときは、しかられてもいいし、
厳しく鍛えなおされてもいい、
もし処刑されてもかまわないので、
追い出したりしないで、お兄ちゃん、どうか星花のことを迎え入れてください。

ちょっと寂しい想像をして、ややへこんだ星花でした。
本当は、
ペットが飼えなくても、
こんなにたくさんの優しい家族に囲まれているんだから
星花が寂しがることなんてないのにね。
星花、よくばりないけない子なんでしょうか?
ペットのことだけじゃなくて、
お兄ちゃんと遊んでいるとよく
迷惑だとか考えないで、夢中になってしまう、
子供っぽいいっぱいのわがままも、思い出しちゃった。

お兄ちゃんの周りに誰もいない隙を見つけたとき、
まわりをよく確認しないで飛びついちゃうから
他の子と同時に飛びかかってしまう偶然、結構あるんですよね。

そんなときにも、慌てた顔をしながら
しっかりと星花たちを受け止めてくれるお兄ちゃん。

動物なんていなくても、
星花は、もっと嬉しいことを知っています。
お兄ちゃんは、象よりも馬よりもライオンよりも
世界中のどんな人よりも
かっこ良くて優しい、星花の憧れです。

空想しているペットの話だと、
パンダのふかふかのおなかに顔をうずめてみたい派もいます。
クマさんと人気を二分してるかな。
それとね、イルカと一緒に遊びたい意見で盛り上がったし
背中に乗って海を渡ってみたいタイプと、
イルカと協力して楽しい芸をしてみたいタイプがいるみたいです。

いつか将来、みんなと少しの距離が離れていても寂しくない
しっかりした大人になったとき、
自由に動物も飼えるのかな?
でも星花はまだ、自分がそんなたくましい大人になるなんて
全然想像できません。
まだもう少し、いいよね? お兄ちゃん。

吹雪の偽日記

『愛の性質』

愛に物理的な性質が
あるとします。

その場合、
愛の伝達とは
どのような仕組みで行われるのか?

愛の定義は様々ですが、
これまでの観察によると、
最低でも二つ以上の個体が
ともに愛を実感していることが
ひとつの条件だと考えられます。

話を分かりやすくするために
特定の個体ひとつをAと設定し、
もうひとつをBとします。

もしもAかBが人間でなく
例えば犬や猫だったら、
人間でない側からの行動が、一般的な意味における思いやりではなく
適度な食事を中心とした単なる快適な環境の構築であっても
愛は確実に成立します。
この場合でも、AはBを愛し、また、BもAを愛しているのです。

AかBの年齢も、愛において重要な要素となります。
0歳の女性が実感する愛と
18歳の女性が実感する愛とでは、細かい差異があるはずです。
お互いの性別も関わってくるでしょう。

そのため、ここでAとBに条件を設定する必要があります。
では仮に、どちらも同じく人間であり、
Aが16歳の高校生男子で、
Bが8歳の小学生女子だとします。
また、同じ両親から生まれていて、現在は一緒に生活していると想定します。
この場合、二人の間にどのような関係が成りたつとき
愛の伝達が成功した、と言えるでしょうか?
キミはどう考えるでしょう?

愛する人の言うことなら──
たとえどんな
恥ずかしい要求であっても、
一切の迷いなく
やりとげずにはいられない。
そんな関係が、二人の間に構築されている。
こういった感じでしょうか?

しかし、そう考えていると、
恥ずかしさは必要な条件ではない気がします。
愛を試す条件は恥ずかしさだけではないからです。

楽なことばかりではなくても
行動しようとすることがあり、
苦痛や悲しみを伴っていても
それらが楽しく、嬉しいものだと実感しています。

快適な環境を構築するよりも、
Aに対して何がしかの行動をとろうとします。

もちろん、
Aとはキミのことであり、Bとは私のことです。
ただし、あまり細かい条件が混じってくると
複雑になりすぎてしまうため、なるべく簡単にしました。

私はキミについてまだ知らないことが多いので
全ての条件を満たす設定は不可能です。
キミは、春風姉が言うように王子様なのでしょうか?
現時点では、王権を継承する予定はないように見受けられます。
あるいはキミは、星花姉が言う、天下に覇を競う君主なのでしょうか。
可能性は否定できませんが、
他の未来と比べて特別に蓋然性が高い予想でもない気がします。
どうなのですか?
キミは、私に何かを隠していますか?
それはいつか、私の前に明らかになるのでしょうか?

私たちの間に存在していると、
私が感じているこの愛は、
いったいなんであるのか?
計算を続けていけば、
すっきりとした式で表せるようになるのか、
果たして──

まだまだたくさんの時間があります。
私は小さい子で、キミもまだどちらかというと幼い。
気長に情報を集めていくことが許されている、と思います。
お互いを知る機会は増えていくでしょう。
私たちは家族なのですから。

今年のバレンタインが近づいています。
私は、キミに愛を伝えることができるのでしょうか?
自分でもはっきりしないこの感情を?

今年は、家族の行事として特に何かがあるとは聞いていません。
もし自由なら、これほどの困難である伝達に挑む義務はないのです。
それなのに、私を構築する感情の一つに、
キミへ愛を伝えたい気持ちがあります。
バレンタインに限らず、常に意識しているこの気持ちが
なぜか、特定の日付に向けて膨らんでいくのは不可解なことです。

私には理由は分かりません。
キミなら、あるいは答えを出してくれるでしょうか。

綿雪の偽日記

『なりきり遊び』

さむーい冬の日は
お部屋で遊ぼ。

日が暮れるのが早い季節。
夕方はすぐ寒くなって、暗くなってしまって。
なんだか怖くて、少し寂しくなる冬。

早くおうちに帰って
小さい子たちと遊ぶことが自然と多くなります。

ユキは、
小さい子たちが喜ぶ
お兄ちゃんゆうえんちとか、
お兄ちゃんの馬乗りとかみたいに
あまり体を激しく動かすようなことは
できません。

はしゃいで疲れてしまうと、
休まないと動けなくなるし……

調子が良くても、
小さい子たちを抱っこしてあげていたら
あんなにはしゃぎまわって楽しくしていた子たちも
疲れを忘れていつも、
お兄ちゃんと遊びたくって
お兄ちゃんを探しに行こうと家の中を走り回って。

本当に家のどこかにいつでもお兄ちゃんがいたらいいのに。
だからお兄ちゃん、こんな寒い冬は、早く帰ってきてね。
みんなが待っています。

最近、
小さい子たちの間ではやっている遊びは
なりきり遊び。
おままごとと何も変わらないかもしれないけど
大きなお姉ちゃんたちもよく参加してくれる、楽しい遊び。

虹子ちゃんは、お嫁さんになるのが好き。
マリーちゃんは女王様。
みんなのことを良く見ていて、手助けしてくれる
やさしい立派な女王様です。
観月ちゃんは、巫女さんの真似をするのが大好きみたいだし
さくらちゃんははちみつが好きな、かわいいクマさん。
そうしていると、たいてい、
青空ちゃんが男の子になりたがって、
お兄ちゃんの真似を始めるから、
他の子たちも、
ずるい、
私もお兄ちゃんがいい、って
お兄ちゃんの真似を始めるの。
みんな、お兄ちゃんの真似をするのが大好き。

海晴お姉ちゃんは、
普段なかなかできない
グルメリポーターをやってみてくれます。。
でも、海晴お姉ちゃんのリポートは
うちの春風ちゃんのお料理のほうがおいしいですね、
うちの蛍ちゃんのほうが上手ですね、
なんて
あんまりレポートになっていないって
小さい子たちは楽しそうに笑います。
ユキも、あんなに楽しいレポートはテレビでも見たことないの。
お兄ちゃんにも見てほしいな。

ユキは、
元気になったらなりたいもの──
楽しいお話を作って小さい子に聞かせてあげたりしたいけど、
でもね、
そんななりきりの時にユキがなりたいのは
看護婦さん。

ユキが病院で困っていても
明るい笑顔で助けてくれた
やさしくて、かっこよくて
すてきな看護婦さん。

遊んでいる最中だけは、
ユキはすっかり病気が良くなって、
今ではどんな病気でも怪我でもたちまち治してしまう
そんな設定の、
いつも元気な看護婦さん。
お嫁さんや、女王様や、巫女さんや、クマさんたちが
困っていたらすぐに飛んで行って
元気を分けてあげる、立派なお姉さんなんです。

それから、
吹雪ちゃんは普段の頭の良さを生かして、博士になるの。
どんな問題が起こっても、
たくさん新しい機械を発明して、解決しちゃう。
吹雪ちゃんとユキがいれば、
大変なことも、悲しいこともみんななくなるような、
そんななりきり遊びをしています。

お兄ちゃんも一緒に遊んでほしいな。
それともお兄ちゃんはもう大きいから、なんにでもなれるし、
こんな遊びはつまらない?
でも、何になってもいいんだよ?
お兄ちゃんは、何かなりたいものはある?
スポーツ選手?
宇宙飛行士?
芸能人?
海賊?
それともやっぱり、王子様?
ユキは、ユキのお兄ちゃんでいてくれるお兄ちゃんが
いちばんかっこよくて、
これからもユキと一緒にいてくれて、
ときどきユキと遊んでくれたらいいって
そう思うけど、
お兄ちゃんがなりたいものなら、
きっと何になっても似合うと思います。

もし、大変な仕事で怪我をしてしまったときは
ユキに任せてね。
なんでも治せる素敵な看護婦さんが、いつもお兄ちゃんの側についています。

寒い冬の日、
ちょっと寂しいこの季節。
お兄ちゃんも早く帰ってきて
一緒に遊んでくれたら嬉しいな。

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