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文化祭・綿雪

・綿雪
おひさまが傾いて、ぽうっと赤い火が灯るように染まったら
子供はおうちに帰る時間。
さみしくても
物足りなくても
やり残したことがあるような気がしても変わらない。
真っ暗になる前に、楽しく過ごしたお友達にもさよならを言わなきゃ。
帰り道が一人だって、心配しないでいいよ。
帰れば待っている人がいるんだし、急ぎ足なら少しだけ早く会える。
ちゃんとまわりを見て、車にも気をつけながら
あせらず、あわてず
だけど心は帰り道をまっすぐに。
このごろ涼しくなったお昼の気温が、重ね着をはじめたこのごろの肌に寒く感じたら
お外で遊ぶ一日の、おしまいの合図。
また明日。
目の前いっぱいに広がっていた光がだんだんと薄れて
おうちの明かりがユキを待っている。
あったかい両手を広げて
飛び込んできてもいいよ、と言おうとしているみたいな気がするのは
跳ねるほど勢いをつけてユキがぶつかっていっても受け止めてくれるお兄ちゃんが
おうちにいるからなのでしょうか?
そんないつもの帰り道と変わらない時間が
お兄ちゃんたちの学校の学園祭にも、とうとう訪れようとしている。
窓から差し込む、斜めになった日差しの白い線が
みんなの足元に届いて、影を長く描くのだって
毎日見ている夕方の眺めと何も変わらないままで
たった一つだけ違うのは
ユキたちが帰ってしまったら、この楽しいお祭りは来年までやって来ないということ。
学校に残るお兄ちゃんたちはもうしばらくイベントの時間が続いても
でも学校に関係のない人たちにとってはこれがぱさっと
幕が下りるような区切りになります。
広い体育館の特別なステージで見た演劇も、最後は閉じたカーテンでお別れ。
立夏お姉ちゃんたちの手品ショーは、
最後に紙テープと一緒に出てくる立夏お姉ちゃんと手をつないだマジシャンのお姉さんたちが
いっせいに手を上げて、また下ろして、お礼の言葉と一緒にぺこり。
手が痛くなるまでみんなでいっぱいに拍手をしたら、終わりです。
ありがとう、また会いましょう──
それはユキたちにとっては一年後の約束。
こんなふうにして、見るもの全部がにぎやかで珍しい学園祭の時間は過ぎていって
子供たちがいつもお姉ちゃんたちやお兄ちゃんにしている約束みたいに
夕方になったら帰る時間。
楽しかったからさみしい。
同じ学校のお友達とは違うから、明日になっても会えない。
また一年経ったら。
それまでは手を振って、その時になったら一つ上の学年になったお姉さんたちと
一つだけ近づいたユキたちがまた
この学校で同じ時間を重ねると思います。
はりきっても疲れやすいユキは、生徒会のお手伝いのお仕事があまりできなかったけど
来年になったら、少しはがんばったからって
霙お姉ちゃんはユキにもお手伝いの腕章をつけてくれる?
まだわからない先のこと。
でも今日はできるだけがんばりました。
いろんな出し物を見て回って、大人の人を案内したり
お仕事もだけど、楽しむのが一番だって霙お姉ちゃんが笑っていた通りに
ユキも楽しんだ学園祭。
まだまだ全然見て回っていない場所ばかり多いみたいなのに
もう時間はだいぶ経ってしまったんですね。
宝探しの謎解きも、どうやら見つかりませんでした。
でも、小雨お姉ちゃんたちが持ってきてくれた屋台の食べ物はずいぶん多くて
おばけ屋敷は刺激が強すぎて待っていたユキやさくらちゃんたちが退屈しなかったほど。
こっそりどこかで見つけていたのかな。
もう宝物は奪われてしまった後なのでしょうか?
せっかくお兄ちゃんとヒカルお姉ちゃんたちのクラスの出し物だったけれど
今年で終わりじゃないですものね。
休憩所で小さい子といい子に待っているのだって大切なことだし……
かえって来た夕凪ちゃんから様子を聞いただけでユキはおどろくのだから
やっぱりまだ本物を見るのは早すぎる。
さようなら、今年の楽しかったお祭りの時間。
来年までには心の準備をして備えます!
もっと見て回れたら
楽しむ場所は増えていたかも?
そんな少しの心残りを抱えて、次に出会う日を待つのです。
お兄ちゃんたちは、これからミスコンテストにキャンプファイアーもあるのでしょう?
まだユキが体験するには刺激的なお話をいっぱい
帰ってからこっそり聞かせてください。
きっとだよ?
そんなおみやげを
おとなしくおうちでいい子にしながら、待っています。
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文化祭・立夏

・立夏
おっ
おおっ
おにいちゃあーん!
ぐっすん。
リカ
もう
たいへんなことに
おなかいっぱいだよおー!
まだまだ目の前の、やまもりたこやき。
お好み焼き。
食べられないうちにダウンだよー!
あまーいかるーいわたあめすら入らないまま
きゅうけいじょの椅子にぐったりだヨ。
ああ……
ヨーヨーも釣りたかったのにい……
どこの模擬店もけちけちしない大盛りサービス。
お客さんの笑顔のために
赤字覚悟で
鼻血も出なくなるまで
大出血サービス!
さすが、霙おねーちゃんが
似たような屋台を一箇所にまとめて、競争をあおった甲斐がある!
って言うだけあるよ。
ほんとなのかなあ?
氷柱ちゃんが考えたところによると
考えなしにお店を並べてしまったので
生徒会のメンバーから怒られてしまって
ちょっとでも言い訳を考えておかないと肩身が狭いから言ってるだけ!
っていうことらしいけど。
おかげで、あちこちお店の呼び込みも熱狂的。
これが売れないと
われわれ生徒にはまだまだ適切な経営能力なしとみなされて
学園祭全体の、来年の予算配分に関わるといううわさ。
オニーチャンが生徒会長になったら
もうちょっと頭が良くやれると思う!
オニーチャンあたまいいし!
霙おねーちゃんもむずかしいことよく知ってるけど!
あれ?
とにかく、そんなふうに生徒会のお友達が忙しくて相手をしてもらえない霙お姉ちゃんと
氷柱ちゃんも合流して
きゅうけいじょでは、ガールズトーク。
どこがたのしい?
どこがおいしい?
今年の学園祭で一番の思い出を作るなら?
おまけに
恋人同士のふたりで行くおすすめ。
どこかにある?
学園生活に残る甘いロマンティック。
目と目があっただけで
永遠を誓う場所。
ない?
霙おねーちゃんがむちゃくちゃしちゃった今年が無理なら
来年から作らなきゃあ。
ぜったい、しめっぽいオバケ屋敷から
オニーチャンを引きずり出さなくっちゃあ!
だってだって
肩を組んで
一緒に回りたいんだもーん!
オバケ屋敷も
守ってもらいたいもん。
だってリカは怖がり。
オバケが出ても反撃しておいはらえる!
と、家族みんなが信じていたって
本当はなきむし。
そんなこと、オニーチャンは知ってるでしょう?
あーあ、休憩時間はあとわずか。
このあと自分の教室に戻ってお仕事だヨ。
たいへんだあ……
がんばらなきゃ。
でも、もしも帰りたくないって言ったら
オニーチャンは手を引っ張って
さらい出してくれるのかなあ。
よし!
腹ごなしにもう一回オバケ屋敷に行って
きゃあきゃあ大声出して
すっきりしよう!
リカがマジでびびってたら
オニーチャンだって、なにごとだって助けに来てくれるかもしれないでしょ?
あ、オバケ屋敷の内容知ってるから、べつに大丈夫だってわかってるのか。
何が起こるか全部わかってるから。
じゃあ……
オニーチャンが知らないような何かが
オバケ屋敷で起こっているかもしれないって
噂を広めて
困らせてしまったら
怒られるかなあ?
でへへ。

文化祭・さくら

・さくら
さくらが泣いてしまうのは
さみしいから。
それに
くらいから。
こわいから。
かなしいの。
おばけがでるから……
がくえんさいになると
お兄ちゃんのお教室は
おばけやしきにかわります。
おばけやしきって、
おばけがでるの。
どうして
がっこうには、おばけがでる?
がっこうって
おそろしいところなの。
いま、さくらたちはきゅうけいちゅう。
こさめおねえちゃんが
よろよろしてしまった。
まるで
こんなひとを、テレビでみた!
わるものにおいかけられるの。
なにかたいへんなことをみてしまったひとみたいに
あおいかおをして。
どうしたの?
おつかれなの?
だったら
あんないがかりのでばん!
ゆうなおねえちゃんが手をひっぱって
いま、さくらとかぞくはきゅうけいじょ。
りっかおねえちゃんもいるの。
しゅーんって。
がくえんさいの、たのしいひなのに
なにがあった!?
おなかがすいたのかな?
やきそばたべる?
さくらのたべかけで
もう、あんまりないけど。
だってやきそば
あったかいほうがいいとおもって。
お兄ちゃんにもっていってあげたくても
さめてしまうとおもって
さくらがたべたのこりなの。
こさめおねえちゃんが
あとでたべるね、っていってたけど
りっかおねえちゃん、いる?
さめたやきそば。
こんなにつめたいやきそばをみていると
さくらはもう
わるいことをしてしまったような
のこしておけばよかったような
たべほうだいの
おてつだいごほうびチケットは
あとすこし。
りっかおねえちゃんに
あげてもいいかな?
みんなでそうだんしても
こさめおねえちゃんは
どうしよう、
どうしよう!
こんなことを
たのしみにして、さがしているみんなにいちばん
はやくみつけてもらうには!
うららおねえちゃんとそうだんちゅう。
なにかむずかしいおはなしね?
うららおねえちゃんね、
そんなの、ほっとけばいいのに。
だって。
そうだんされても
こまっちゃう。
だって。
こさめおねえちゃん!
うららおねえちゃんをこまらせないであげて!
さくらね。
これからね。
こさめおねえちゃんが
げんきになったら
お兄ちゃんがにこにこしてじゅんびをしていた
おばけやしきにいくの。
こさめおねえちゃん……
もうちょっと、おやすみする?
おひるすぎには、あかるくなって
おばけがにげてしまうかもしれない。
お兄ちゃんが
おばけをやっつけてくれるかもしれない。
さくらがこれからもっと
もりもりたべてげんきになって
おばけにまけなくなるかも……
ならないかも。
でも、せっかくだから
できそうなこと
やるだけやってみたら?
こさめおねえちゃんに
やさしい、うららおねえちゃんのアドバイス。
こまってなんてなかったよ!
まじめなそうだんの
こたえだよ。
さくらも、できることをします。
げんきになります。
だから
りっかおねえちゃん!
やきそばもうひとつ
かいだしにいきましょう!

文化祭3

・蛍
中等部三年の教室が並ぶ廊下。
全校を挙げての文化祭が行われているこの日、その長い道のりは人呼んでコスプレロード。
準備の段階で、あまりにも多くの申請があった飲食店の希望。
それでも、生徒会長の英断により、全ての生徒が希望に満ちた学生生活を過ごしてほしいから。
結果、このコスプレロード。
呼び込みも熱いです!
よってらっしゃい!
たった今、この学校で一番のおすすめは私たちのクラスです!
そんな声がどこからだって聞こえてくるよ。
それにしても、さすがわれらの霙お姉ちゃん。
こうして頼りになるところを見せつづけていれば、やがては私たちだけのお姉ちゃんではなく、学校生徒みんなのお姉ちゃんとして慕われるようになるおもしろい日も、そう遠くないのかもしれないです。
想像してみるだけで……
とっても、楽しそうですよね!
おっとっと、いけない。
わがクラスも、文化祭を楽しんでいる真っ最中。
お兄ちゃん!
ようこそ、おいでくださいました!
ええっ!?
あまりに熱気がこもったこの廊下の雰囲気に、なんだかちょっとびっくりして疲れてしまったような気がするですって!?
何も言わなくても、顔を見れば蛍にはわかります。
たいへんです! それはいけません!
私たち家族の大切なお兄ちゃんに、もしものことがあったら!
そこで。
リラックスには、やっぱりほっとするお飲み物ですよね。
あら? ぐうぜんですね。
軽食も扱っている、私たちの占いの館があるの。
ちょうどいいところになぜか、お客様続きのお店のすみっこには、誰かを待ち続けているかのように一つぽっかりとあいたテーブルが!
そしてその前には、まさにこのテーブルを守り続けているみたいに仁王立ちをして、今すぐお兄ちゃんのお給士をしたくて仕方がないような顔の蛍が!
あらあらあら。
お兄ちゃん、お疲れのような気がしたら、少し休んでいくのはどうでしょうか?
クラスのみんなにお願いして、この時間だけはとっておいてもらったひとつの席。
必ず来てもらえると思っていました。
からかわれるかなって恥ずかしいけど。
きっと、蛍の目にはお兄ちゃんしか映らないから。
大丈夫なの。
長く続くコスプレロードの片隅には。
本当は誰よりも一番にお兄ちゃんにほっとリラックスのお飲み物をあげたい、たった一人の女の子が待っていて。
いつも考えていることは、といえば。
キラキラした衣装ですぐにでもかわいくなれたら。
だとか。
やっぱり作るならどうしても。おいしくてたまらないご飯と飲み物を、今日だけはいつもより上手に用意できたら。
だったり。
もちろん、少しうれしいような占いの結果を望むのだってあるし。
胸の中に詰め込んだそんな願いたちの中に一つ、他の何よりも膨らみ続ける大きな祈りは。
ただここにお兄ちゃんがいてくれたら。
蛍は輝く全ての夢が叶うのと同じくらいに幸せなのに、ということ。
どうかお兄ちゃん。
学園祭の楽しい時間を過ごすならば。
胸弾ませている蛍のとなりを、ひとときだけでも選んでくれたらうれしい。
蛍だけのお店ではないので今日ばかりはサービスには限界があるかもしれませんが。
おだいはおやすくしておきます!

・青空
おたから
どこだ?
よこせー!
ぜーんぶ、おいていけ!
みぐるみをはいで
さかさにしてつるしたって
うばえない。
ふぶきがいってた。
たぶん
それでは、みつからないんじゃないかな?
おそいかかってうばうものではないから。
がくえんさいの
たのしい、おたからなんだから!
ぜーったい。
さがすのも、ゆかいなの。
みつかったら
わらってしまうようなところ。
まちがい
ありません。
ぶんかさいだもの。
いちねんに
いちどだけだもの。
このひのために!
ぶんかさいのかみさまもわらって
たのしいいべんとおたすけします。
みづきは、ぶんかさいのかみさましらないの。
でも
どこにだって、かみさまいるから!
ぶんかさいもまもってくれるのではないかな?
おっと、そんなことよりふるほんいちじゃ。
きになる、きになるぞ。
あさからみづきはうわのそらなの。
もー!
そらにもっと、おはなしおしえなさい!
それでねー。
あのねー。
ふぶきがね。
かんがえた。
さがしてみても、いいかもしれない。
とっても
とっても
たのしそうじゃない?
って、
せいかが
とっても!
ゆうなが
とっても!
ゆきが
よーし!
さけぶので。
そらも
よーし!
こさめも
あわわわ!
いんそつの
おねえちゃんたち。
うららもいうよ。
そらちゃん!
いうことをきいて、いいこにしていましょうね。
いちにちじゅう
おねえちゃんたちが
えらいひ!
なの。
おそろいのうでわをしてるから。
みんなは
なぞのちーむ!
ひみつをみつけだす
めいたんていだん?
おたからさがしの
ぬすっとだん?
それとも、ちっちゃいあーちゃんとそらと
みんなのおせわをする
おねえちゃんだん?
でも
おにいちゃんが
どこにも
いない!
これ、そらのおせわだんじゃない!
おにー
ちゃー
ん!
どこ?
そんなとき!
あんないする
おしごと。
せいとかい……
ほちゃ。
おにいちゃん、しってた?
せいとかい……
ほちゃ。
そらはおぼえた!
ほちゃ!
なんと
それは
おねえちゃんたち。
うでわにかいてあるの。
きょういちにち
こまったひとを、たすけます!
ということ。
それが、ほちゃ。
だいじなおしごとだって!
とってもたいへんなおしごと。
がんばります!
えらいねー!
だから
そらをつれて、おにいちゃんのところへ
いっしょにいってくれるよ。
そのまえに!
もう
おなかごしらえはすんだかしら?
たりなかったら
うらないのやかたへ!
ぷらねたりうむへ!
でも
どこよりもまずは
おにいちゃんの
おばけやしきへ!
ぜったい、かっこいいおばけが
まってるよ!
ゆうながやくそくしたから。
かっこいいおばけを
そらがやっつける!
けって
さかさにしてつるす!
そしたら
おたから
みつかる?
たのしい、おばけやしき。
みんながいますぐ
かけつけたいのは
おばけやしき。
にんきのおみせよ。
すぐいこう!
たこやきたべて
まっすぐに
おにいちゃんのおみせにまっしぐら。
かぞくがいくよ。
そら
ちょー
たのしみ!
ゆうなも
ゆきも
ちょー
ちょー
たのしみ
だから。
たこやきふーふーして
のみこんだら
あんないのおしごとの
でばんだよ。
いますぐはしっていこうよ。
おたからと、おにいちゃんをさがしに。

文化祭2

バレンタインで書けなかった子の分を早くしたいと思いつつ……文化祭も進めたいと思いつつ。
せっかくだから雛祭りに全員更新は無理かなあとか、本当は何事もない普通の毎日だって全員分書きたいんだけど、その気になればいくらでもできそうとしてもかといっていいものが書けるかどうかわからないとか……とにかく今日は文化祭です。

・虹子
にじこのおなかが
ぐーぐーなりだしたら
まってました!
おねえさんたちのめがひかる。
ぴっかーん。
すぐに
よびこみがはじまるの。
おにいちゃんのがっこうの
きれいなおねえさんたちは
よびこみじょうず。
いろんないしょうで
めいどさんも
はっぴのひとも
おやすいよ。
おいしいよ。
いいにおいだよ。
たいいくかんでは
おどりのはっぴょうがあるよ。
にじこ、
どこにいったらいいの?
わかんない。
そこで!
えへん。
いいものがあるの。
これよ!
せいとかいじるしの
しょっけんです!
なんでもすきなもの
ひとつだけ
おねがいしていいんだよ。
よいこだけが
もらえるんだよ。
おにいちゃんは、もらった?
しょっけん。
なにたべた?
おいしいにおいの
やきそば?
たこやき?
カレー?
おばけ?
おばけ!?
しょっけんを、よくみると
おしらせがあるの。
おばけやしきも
ぜひどうぞ。
おにいちゃん、がくえんさいで
おばけやしきを
ひらいているんでしょう?
おばけやしきで
おばけをたべるなんて。
おにいちゃんのがくえんさいは
どんなおまつり?
そしたら、
よくみたら
おばけやしきは
ごはんがでないから
しょっけんがいらないんだよ。
おしらせしているだけだよ。
おいでください、って。
まぎらわしい!
でも、
きてほしいってせんでんして
がんばってるんだね、
すごいね、って
こさめおねえちゃんがいうの。
おにいちゃん、
がんばってますね!
ごはんをもって
たいいくかんは
おぎょうぎがわるいかも、っていうから
ちゅうもんのまえに
さきに
ちょっとみにいこう。
おどりをしています。
うたにあわせて
おどります。
まるで
アイドルのように。
かわいく
てんしのように。
ぴっかぴか
かがやくから
なんだか
もう、
めがみのよう。
おねえさんになったら
にじこも、ここでおどる?
めがみのたまごの
にじこだよ。
おどるのも
うたうのも
だいすきで
とってもじょうず。
このステージが
まっていたんだ!
がくえんさいのぶたいが
にじこを
まえからずーっと
よんでいたんだ!
にさいのちいさい
いまのにじこより
もーっと
おどりがじょうずになって
もーっと
おうたがすきな
がくえんさいにじこを
おにいちゃんも、みたいでしょ?
はやく
みたいでしょ?
じゃあ、みせちゃおう!
こさめおねえちゃんとそうだんしたの。
おうちにかえったら
にじこ、へんしんして
まってるね。
にさいのこがへんしんする
アイドルいしょうがあるよって
こさめおねえちゃんがおしえてくれたから。
おにいちゃんも
おばけやしきをがんばったら
おうちで
めがみがまっています。
いっぱい、おばけをうって
はやくかえってきてね!
にじこも、
おどりをみてから
ごはんのあと
おばけやしきに
おうえんにいくね!

・吹雪
食券は一人当たり五枚。
小雨姉、麗姉、星花姉、夕凪姉、
そして私の分があるので
合わせて二十五枚です。
私の一つ年下のユキはあいにく、
体が弱いために
これまで木花の学園祭は
来れたり、来れなかったり。
まだ生徒会の補佐を行うには
校内の知識が不足していますが
霙姉の言葉によれば、今日の働き次第では……
というのは、ユキが
家族と協力しながら、小さな妹たちを引率して
一行が学園祭を楽しんで、無事に帰宅できたら。
来年からはこの腕章をあずけて
少女生徒会の仕事をまかせることになるだろうと
そのような約束でした。
霙姉が、まず真っ先に
私たちのことを
ちびっこ生徒会と呼ぼうとして
何事もなかったように咳払いの後で、少女生徒会と言い直したのは
他の誰も、特に問題に気が付いた様子はなかったので
私も少し疑問はありましたが
ユキも喜んでいるし
おそらく呼び方や、どう見られているかよりも
どのように活動するかが大事だと考えて
深く追及する必要もないと思って、そのままにしておきました。
冷静に考えれば
小学生にあまり大きな期待はかけないかもしれない。
霙姉は、この仕事は学園祭を大きく盛り上げるはずで
自分も、仲間たちからそのような言葉で頼まれたと主張します。
私たちが預かった腕章は
生徒会補佐の仕事を堂々と主張する張り紙が
貼り付けられていますが
腕章をデザインする段階でもう少し考えていれば
はみだした大きすぎる張り紙はいらなかったような。
というよりも
現状のデザインでも、充分に必要な情報として
生徒会関係者の文字は目に付くように書いてあるので
張り紙は必要ない気がします。
これほどまでに必要以上に、お手伝いを主張する意味があるのでしょうか。
よくわかりませんが
ユキは、どうしても来年は自分も腕章をつけて
正式なお手伝いになりたいから
今年はたくさん困った人を助けて
立派な生徒会補佐をしているところを見てもらう!
と、やる気になっています。
霙姉は、学園祭を楽しめばいいと言って
そこまで困った人のお手伝いを張り切るようにとは頼んでいなかったような気がします。
建前上は、確かに腕章にはそのように書いてあるとしても
なにしろ、
実質的にはちびっこ生徒会です。
あまり気負って仕事を引き受けようとする必要もないでしょう。
今日の目的としては
この学校に通う私の兄と姉たちが
盛り上げようと準備をしてきた
一日だけのお祭りを楽しめたら、それでいいと思います。
それにしても、この食券の数は
多すぎないでしょうか?

・海晴。
文化祭は
みんなが一生懸命になって形にする
文化の一大祭典。
つまり、例えるなら
たくさんの人が集まるにぎやかな
万国博覧会みたいなもの。
……
ではないかもしれないけど
とにかく、がんばって学生たちで作り上げるお祭り。
私がまだこの学校の生徒だった頃と比べたら
変わらないのは
とにかく楽しく盛り上がって
学生時代の思い出を作りたい
お祭り好きの子たちが放つ熱気。
むんむんしていて
もう少しで、目に見えるよう。
ようこそ!
両手を広げて歓迎してくれた
校門の大きなアーチにも。
掲示板に、所狭しと貼り付けられた
宣伝の紙にも
そして見渡すと
お祭りに頬を赤く染めている生徒のみんなの表情に。
どこにだって
やるぞ!
と、若人の息吹が満ち満ちている。
年月を重ねても変わらない、文化祭の景色。
いつの時代も、そこにいる生徒たちは
ふだん見つからないものを見つけている。
大切な学生生活の思い出になる
熱い日差しも今日はどことなくやさしい、秋の一日。
時間が過ぎて
私が現役のぴっちぴちだった頃になかったものは
体育館のステージに、ダンスのそろったアイドルグループの台頭。
各教室では、定番の出し物に混じって
高まる防災意識を反映して
地元の災害対策の歴史や緊急時の対応についてのレポートなどの発表も。
増えつつあるメイドさんのお店も、お姉さんにはまぶしいものだし
それに何より
あの頃になかったもので
今の私が一番うれしく探しているのは
まだ同じ学校にいなかった家族たちの、今年の活躍。
右も左もわからなかった頃の妹が、
今度は活躍しているという噂を聞いて歩いてみると
私がいた頃と変わらない学園祭、
本当に霙ちゃんが下級生をまとめる最高学年で、
春風ちゃんがそのひとつ下で──
華やかな学園祭を中心になって引っ張っていく上級生の一人だなんて
いまだに信じられないみたい。
あわてていた春風ちゃんや、蛍ちゃんたちの姿が
懐かしい学校の景色に、今も姿を現して走り去っていくような
そんな景色が見つかりそうだよ。
ちゃんとしっかり
学園祭を盛り上げてる?
おうちではまだまだ小さな妹のままで
準備の間も、はたして間に合うのか成功するのか
聞いていてこっちまで不安になるような日々に
手を貸してあげられたら、と願う自分を抑えるだけで大変なくらいだったのに
本番を迎えた今は、どうしているだろう?
私はもうこの学校の卒業生。
さみしいけど、学校のイベントを成功させようと努力する子たちのために
できることはもう何もない。
かつて過ごした母校では、愛する後輩たちが活躍している。
私の家族が同じ学校に憧れて
二度とない青春時代を
昔私が通っていたのと同じ場所で、
たぶん、今も変わらないままの大事なものがたくさんある日々を重ねている。
懐かしく学園祭の日を歩くこんな卒業生たちのことなんか
今はまだ、目に入らないみたいに
ただ今日のことだけで精一杯に。
もちろん、卒業生がこうしてゆっくり
変わらぬ懐かしい学び舎の面影を穏やかに歩いたり
時には、今の生徒たちの顔が並ぶお祭りの感覚に
胸が高鳴る感覚。
やっぱり、卒業したあとでも
学園祭が賑やかに開催されているのを見たらうれしい。
通っている生徒たちの様子は
雰囲気だってもうすっかり慣れないものばかりになってしまったけど。
にぎやかに母校。
私の家族は、今もこの学校で
さっきは、助けてあげられることなんて何もないって言ってしまったけれど
でも、実際には失敗したときにはアドバイスできるかもしれないし。
学園祭の失敗談なら
この学校で現役の学生生活を過ごした先輩たちには
まだまだかなわないと思うわ。
いつだって、年上として見ていてあげることはできる。
でも、今年の学園祭の主役は
今この学校に通っている生徒たちなんだ、
なんてもどかしい思いもしながら
見て回って。
ずっと何年も過ごして、もう全部隅々まで知っていると思っていた
卒業した後の、大好きだった学校に
まだ知らなかった景色を発見して
ときめいている。
今日は、学校中がおめかしして迎えているような
緊張した気配も、慌ててしまう子もやっぱりそこらじゅうにいるけれど
弟と妹たちが主役の一人になって参加している
みんな、一日がんばってね。
かげながら応援しています。
来年には卒業する子も、新入生もいて
学園祭を経験したあとで成長した子もいるはずで、
今の生徒たちがそろって
こんなに楽しい学園祭を過ごせる日は二度と来ない。
どうか今年も、
私の好きだった木花学園で
たくさんの後輩たちが素敵な学園祭を過ごせますように。
今となっては、何も気負うことのない軽い気持ちで見て回りながら
いっぱいうれしそうな顔を見つける時間を
今日はたくさん、楽しませてもらおうと思います。

文化祭

はてなに書いた分をまとめて。

バレンタイン2300

バレンタイン1800

19人バレンタイン偽日記

結局、バレンタインには他にやりたいことも特になかったということで、全員分書いてみました。

・海晴
私だって、
まだ十代だし。

とうが立ってるとは
言えない気がするのよね。

そう思わない?
でしょう?

だからまだまだ、
バレンタインは
恋人気分で過ごしたい、
そんな時だってあるわよ?

みんなのまとめ役とか、それだけじゃつまらないっていうか、
でも、この立場も、それはそれでおいしいかな?

というわけで、
このチョコレートは──

姉妹いっぱいのこの家で
いつも立派な長男をがんばっている
キミへの感謝の気持ちと、

これからも一緒に過ごしていく
家族の一員に、
この機会だからということで
これからもよろしくの気持ちと、

それから、
かっこよくてやさしくて
何をしても好きな気持ちが溢れてしまう
大好きな男の子に
どうしても伝えたい
愛しているの気持ち。

今日くらいは恋人気分っていうか、
ううん、
世界中のどんな恋人たちにも負けない
キミへの強い愛を
込めました。

大好きです。
これからも、私の愛は
永遠にあなただけのものよ。

たまには私だって、
こういうのも似合うと思わない?
実は普段から結構真剣なんだし。
愛する気持ちは、いつもそうなのよ。



・霙

全ては塵になり、
消え去っていく。
滅びまでの時間をどのように過ごそうと、
決して逃れられない結末だ。

オマエは、滅びに向かう日々を
どう生きる?

私は、
全てを受け入れ、
快楽に身を任せ、
なるようになると思って、
あるがままに
生きようとしている。

だから、家族たちが思いのままに生きることを
止める理由はない。
むしろ楽しい。
見ていてかなり楽しい。

オマエは今年もずいぶん
振り回されているようだな。
いいことだ。
全てが塵になるまでに
経験しておけるだけのことをしておくというのも
また一つの正しい選択だ。
私は止めない。
どちらかというと、推奨する。
どんどんやってしまえと思う。
無責任なのではない。
そもそも、責任というものが塵に等しいだけだ。

では、私もこの一日に
ひとつの混沌をもたらそうと思う。
果たしてこれが
滅びへの抵抗なのか、
破滅を受け入れ
あるがままに過ごすことなのか、
正しいことなのか、そうでないのか──
私には分からないし、答えを求めるつもりもない。

オマエが探求したいと思うなら、
全てが塵になる前に
答えが出る可能性も
少しは残るのだろう。

チョコレートの匂いのする花だそうだ。
あまり今日一日が甘すぎると、
こういうのもいいだろう?

私は、普段から甘いほうが好みだからな。
それから、もう少し和風だとなおいいな。



・春風

王子様の夢は何ですか?

立派な大人になって、
なんでもできるようになること?

やりがいのある仕事に就いて
一生懸命働くこと?

かわいいお嫁さんをもらって
幸せに暮らすこと?

それとも──
私が考えたこともない
立派な夢があるんでしょうか?

春風の大事なことは、
春風の一番かなえたい
ささやかな夢は、
王子様から見たら
ちっぽけでつまらないものかもしれません。

でも春風は、
この夢が止まらなくて、
いつも全力で追いかけているつもりです。

叶うかどうかも分からないけど、
何があっても、これからどれだけ時が過ぎても
変わらない夢だと思います。

春風のいちばん大事なことは、たぶん
チョコを受け取ってもらうことではありません。
胸の奥のこの思いを知ってもらうことでもないし、
本当は、王子様に愛してもらうことでもないのかも。

春風はあなたを支えるために全てを投げ出し、
あなたを幸せにするために
何もかも犠牲にする覚悟です。
あなたをいつまでも愛し続けて
報われても、報われなくても
決して変わらず、永遠の愛を捧げると
ここに誓います。

でもなるべくなら、
王子様に私の気持ちを知って欲しいし、
王子様に愛して欲しいです。

春風の気持ちを込めたチョコが
王子様を虜にできますように!



・ヒカル

うん。
大変だったよ……

あれは職人芸だと思う。
我が家には、あんなにたくさんの職人がいたんだな。
大きいのから、ちいさいのまで。
上手なやつから、微妙なのまで。
かわいいのから、小生意気なやつまで。
いや、みんなかわいいかもしれないな。
私は、ちょっと──
微妙なタイプのほうだ。

長い時間、一緒にいる家族だけど。
私が自分の好きに過ごしている間に、
みんなずいぶんいろいろな技を見に付けて、
成長していたんだ。

なんだか、
取り残されたような気分なんだろうか?
自分が一人になったようで
ちょっと寂しいけど──
でも、よく知っている家族の
あまり知らないかっこいい面を知ることは
とてもよかった。

変な感想だけど、
バレンタインに感謝だ。

本当に、
感謝だらけのバレンタインになった気がするな。

春風にはずいぶん世話になった。
あいつの根気がなかったら
私のチョコはこんな感じにもならなくて
もっとこう──
詳しい話は春風に聞くといい。
キッチンで練習していた子たちも、
話してくれると思うよ。
あいつらとは、ずいぶん笑いあったもんだ。

けど、
どんなにうまくいかなくても
やめようって気にはなぜかならなかった。

あいつらみんながいてくれたからな。
それに、オマエも待ってるだろうと思って。

時間はかかったけどようやく、
まあまあのものができた。
春風も褒めてくれたし。
でも、本当はそんなにたいしたものじゃないんだ。
もっといいものをやりたいけど、そのつもりならもっと特訓しないと。

なんだかんだで、
私は努力するのが好きなのかもしれないな。
なるべく体を動かすジャンルのほうが得意だけどな。
お菓子つくりは結構重労働だったけど、
しばらくは休みたい気持ちも、正直あるかも。

ほら、あげる。
春風の上手なラッピングがいい感じにごまかしてくれた。
ちょっと形が悪いけど、一応手作りチョコレート。
これが一番うまくできたやつだ。

・蛍

お兄ちゃん!
覚悟してくださいね!

なーんて言わなくても、
お兄ちゃんはホタの料理を
普段から喜んで食べていてくれますもんね。

ちょっと挑戦的なメニューで
蛍もおっかなびっくりしているところです。

もともとメインにするつもりはなかったんだけど、
流しチョコは残念でしたね。
すぐ固まってしまって──予想外でした。
でも、意外とみんな盛り上がってくれて
良かったです!
気がついたけど、わりとチョコフォンデュみたいで
順当な感じの味になったでしょうか?

ホタね、お兄ちゃんにはおなかいっぱい食べてもらいたいし、
やっぱり、主食と合わせたらいいと思うんですけど、
ご飯とチョコの相性はもう一工夫欲しいし、
パンだと軽食みたいになるし、
麺類もどうしてもチョコのイメージからか
軽食っぽいレシピしか見つからないんです。
シェフの人たちは、チョコを何だと思ってるんでしょう!
チョコの気持ちを考えたことがあるのかって思っちゃいます!
愛を伝えるために、こんなにがんばってくれているチョコレート。
恋する女の子に勇気をくれる、あの頼もしいチョコレート。
震えそうな恋心を支える、たった一つの頼り。
大事な日に気持ちを伝えたいこんな女の子がいるって、
それほど特別なことではないと思うんですけど──

そういうわけで、どうでしたか!
いろいろ作ったけど、気に入ったものはありましたか?
特にチーズと相性が良かったかな?
お兄ちゃんのおなかを満足させるために、
ホタはどんな時も手を抜かないで
料理に愛情を込めていきます!



・氷柱

チョコレートなんて
あげるつもりはないわよ。

あなたも薄々は
予想していた通りでしょう?
それとも、そんなにチョコが欲しい?

じゃあ、チョコが欲しいって言えばいいじゃない。

それから、
バレンタインなんだし、
好きな人からチョコをもらうわけなんだから、
私のことが好きって言ってみる?
私があなたみたいな卑しい下僕を
対等な立場で好きになることはないけれど、
バレンタインだし、
死ぬ気でおねだりすれば、
少しはご主人様にも慈愛の気持ちが芽生えるかもしれないわ。

ま、多少の努力をしたくらいじゃ
あなたはまだ全然チョコを受け取る資格はないわね。

うん。

不合格!

思っていた以上に
情けない下僕ね!

使えない!

もはや見るに耐えないし、
仕方ないから、
同情のつもりでこのチョコはあげるわ。

まあ、今日はともかく、
家族みんなの下僕家業を
生まれたときから定められたとおり、
少しはがんばってるもんね。

来年は、
もう少しスマートにおねだりできるように
なりなさいよ。



・立夏

オニーチャン!
バレンタインプレゼントだヨ!

リカのすべてをあげる!

さあ、
唇をうばってネ!
もっと過激なこともしてネ!

バレンタインだもん!
しょうがないよね!
当たり前、当たり前。

というわけで、
ジャーン!
できたよ!
できちゃった!

立夏の手作り、
すごいおいしそうでしょ?
いやあ、自分で言うのもなんだけど、
この艶を出すのは、春風おねーちゃんたちにも無理だね。
バレンタインが起こした奇跡だよ!
どう? 褒めて!
いっぱい言って!
多少のひいきを込みで言って!
リカのチョコが一番おいしそうだって!

食べたら、
チョーおいしいって言ってね。
立夏のファイトを頭に入れた上で言ってね。
生まれてから今まで一度も食べたことがないおいしさって言ってね。
思わずリカのことも食べたくなっちゃうって言ってね。
二人の日ごろからの強い愛を思い出して言ってね。
愛の記念日だって言ってね。
これからも一緒にたくさん愛の記念日を過ごそうね。

まだ食べたりないときは
もう体のかなりの部分がだいぶチョコでできている
リカを食べちゃってネ。



・小雨

小雨の
チョコレート作りは、
もちろん──
失敗しました。

もうこんなところではひっかからないと思っていた
ありがちな罠を
次から次へと踏み続け、
気がついたらすでに、
この時間。

緊張のあまり
小雨の体が小雨でないようで──
だらしない小雨には
やっぱり無理でした。

いつも弱気な小雨が
大好きな人に気持ちを伝えられるチャンスは
この日以外にないって
だからがんばろうって思っていたのに──

お兄ちゃん、
これから小雨が作るチョコは
もうバレンタインのチョコではなくなってしまいました。

家族みんなが
バレンタインに込めた思いなんて
もう、この小雨のチョコには宿らないと思います。
もしうまくいっていたとしても、
みんなほどうまく伝えることはできなかったけど、
それ以前の話だったんです。

小雨のチョコがお兄ちゃんに届くのは
明日以降。
それじゃダメですよね。
でも、ダメな小雨だけど
もう一度作ってみたいんです。
ううん、もう一度っていうか、
蛍お姉ちゃんたちからも
まだ作っていいって言ってもらえたし、
いつまでも成功しないかもしれないけど、
もう少しやってみます。

バレンタインを過ぎてしまって
お兄ちゃんにどれだけ気持ちを伝えられるかわからないけど、
小雨のチョコレートは
もう少しの間、お兄ちゃんを思って作ります。

引っ込み思案の小雨なのに
こんなふうに根気が続くなんてちょっと不思議ですけど。
なんでだろう?
お兄ちゃんに食べてもらいたいって思うと
元気が出るようです。

うまくできたら、
食べてもらえるでしょうか?



・麗

バレンタインは嫌い。
家の中がムンムンしてるし。

チョコをあげるのも、
なんか納得いかないなあ、
気が進まないなあ、
って
そもそもあなたが来た
最初から思っていたわ。

別に、あなたは男にしてはマシな気もするし、お世話にもなってるけど。
でも、チョコレートをあげるのは違うんじゃないかなって。

だから、あげなくてもいいわよね?

そういうつもりだったけど。
小雨ちゃんが言ってたのかな。
もしも、あなたが将来、
誰か私たちの知らない人を好きになって
家を出て行くときが来たら、
私はどんなにがんばっても
あなたに日頃の感謝を伝える手段がなくなるんだって。

そんな薄情な男には、
ますます感謝なんてする必要ないと思う。

でも──

自分の気持ちをよく知ってるのは
自分だけだって
私は思う。
あなたに、言おうとしていたことを伝えられなくなるときが来たら
私は、
少しだけ心残りがあるような、
そんな気持ちになりそうな気もする。

後悔することがあったら
嫌だと思ったの。

はい。
これ。

もともと手先は不器用なほうだし、
他の子より特訓した期間は短いけど。
それなりの努力はしたつもりよ。

私の生まれてはじめての、
手作りの──
義理チョコ。

普段から、ときどきはお世話になっています。
いつもありがとう。

これからもよろしく。



・星花

はい、
どうぞ。

御主君様!

他の子より
妙に大きい
やけに丸いチョコレートが
姿をあらわしたな?
と、不審に思ってはおられませんか。

星花はなんだかんだで張り切る子だし、
普段の元気から盛り上がって
何か妙なことになったのでは?
と、不安を抱いてはおられませんか。

実は、
このチョコは星花の作戦によって生まれたのです。

星花、他の子よりは、ふだんお料理の手伝いをしてるからかな?
チョコ作りが少し早く、うまくいきそうだったんです。

それで、
もっと難しいチョコに挑戦して
お兄ちゃんを驚かせちゃおうかな!
と、ちょっと調子に乗っていたわけですが。

夕凪ちゃんがなかなかうまくいかないみたいで
手伝ってあげているうちに
これは! と、ひらめいたのです。

お兄ちゃんも知っているでしょう?
夕凪ちゃんの普段からの、あの発想力。
チョコ作りも、変わったことを試しすぎてうまくいってなかったみたい。
夕凪ちゃんの失敗には、星花が思いもしなかったアイデアが
山ほど盛り込まれていたんです。

そういうわけで、
星花がチョコレートを担当する、
夕凪ちゃんが中身を担当する、
二人で一つ!
チョコ作りの戦場を駆け巡る
熱い絆で結ばれた
私たちの
合体チョコになりました。

中身もすごいですよ。
大丈夫、おいしいと思います。
星花がついていてあげたんだもの。
お兄ちゃんにおかしなものを食べさせるなんてことはありません!
刺激的な発想に
試食は時々大変だったけど、
できあがったものは、ばっちりです。

星花が命をかけたチョコを、
どうかおいしく食べてください!



・夕凪

食べてくれた?
おいしかった?
もっと食べたくなった?

今年は夕凪の才能が輝く
驚きのアイデアチョコだよ。

星花ちゃんと共同開発。
最初からこうして置けばよかったね。
協力して、仲良く作るのって楽しかったー。
来年は、蛍お姉ちゃんと一緒に作ろうかな!

でも、夕凪って意外と何でもできる子だったんだ。
将来の可能性が開けた気がしない?
これからの目標は、マホウ使いだけにとどまらないね。
マホウのパティシエになろうかな?
マホウのグルメになろうかな?
マホウのアイドルもいいな?
マホウのお嫁さんになろうかなー、
お兄ちゃんは、
マホウが使えるおむこさんとして夕凪とケッコンするの?
それとも、マホウが使えないおむこさんとして夕凪とケッコンするの?

どうなっても毎年、
お兄ちゃんは夕凪のマホウチョコを食べるのは決まりだね!

夕凪の成長を楽しみにしていてね。
今日はできないマホウが
明日にはできるようになる!

今年はできなかったマホウが
来年にはできるようになる!

試してみたいこと、たくさんあったんだ。

星花ちゃんは止めたけど、
チョコに愛を込めるには、
もうちょっとお酒を入れたって
良かったよね?

ぽかぽかあったかくなるし。

春は近い、
夕凪の未来も明るい。

バレンタイン最高!



・吹雪

キミとの関係を考えています。

私とキミは
法的な婚姻関係を結ぶことができません。
ではどのような関係になることが理想的なのか?

歴史上および
世界各地の家族関係を調べています。
私たちがこれから目指す関係を考える際、
参考になるかもしれません。

しかし、
私とキミが結ぶべきは、
これまでになかった概念となる可能性もあります。

20人きょうだいは珍しいですから。
まだ目標となる概念が確立されていないことはありえます。

その場合、私たちが結ぶ関係に
キミが新しい名前を付けることになるでしょう。
私が名前を付けてもかまいませんが、
どちらかというと、普段からキミに教わることが多いですから、
知識の豊富なほうがふさわしいでしょう。

それは愛に似たものでしょうか?
恋に近くなるでしょうか?

呼び名は、
愛でいいのかもしれません。
全ての人間にとって、愛の形は個人的なものだからです。
似通った愛の形は、どこにもありません。
同じ家族で育っていてもそうであると思います。

例え、
家族愛とさられるものであっても、
恋愛とされるものであっても、
その全てが個人的な概念なのです。

私は、キミのことを愛しています。
このチョコレートは、私の愛の証明のつもりです。
万人が認める方程式で証明することはまだできませんが、
いずれそれを可能にできたらと思っています。

愛を伝える手段がチョコレートでよかったです。
あまりに高温の調理が必要な食品では、
毎年、バレンタインのたびに命の危険があります。



・綿雪

お兄ちゃんのために
ユキは心を込めて作りました。

チョコレート。
まだ子供のユキには、平凡な手作りチョコが精一杯だけど
これでもがんばって作ったの。
お兄ちゃんのいつもの笑顔を思い浮かべながら、
お兄ちゃんの喜ぶ顔を想像しながら──

よく体調が悪くなるユキは、
あまりちゃんとしたものは作れないかも、
って覚悟していたんです。
でも、今年はなぜか調子がいいみたい。
急に具合が悪くなるようなこともあんまりないし、
バレンタインの準備の間だって、
ユキちゃんが一番がんばってるみたい、ってみんな言うの。
そうなのかな?
春風お姉ちゃんや立夏お姉ちゃんや夕凪お姉ちゃんより
元気に見えたかしら?

ユキが元気でチョコを作れたのは、
お兄ちゃんがいつも励ましてくれるからだと思います。
今までできなかったことができたのは、
お兄ちゃんが喜んでくれるかも、って思っていたから。
こんなふうに、絶対望めない成功が
ユキのところにあるのは、
お兄ちゃんがいてくれるからなんです。

このチョコレートがおいしかったら、
それはお兄ちゃんがユキのことを大事にしてくれて、
ユキのことを愛してくれて、
ユキの家族でいてくれてるから──
理由は、ただそれだけ。
他には何もない。
ユキががんばれたのは、お兄ちゃんのおかげだし、
そう考えると、ユキがしたことなんて何もないみたいです。

お兄ちゃん大好きって伝えたくて作ったチョコなのに、
全部お兄ちゃんの力なんて、変な話みたい?

いつもいっぱいユキに元気をくれるお兄ちゃん。
これからも、ユキにたくさん力をください。



・真璃

もちろんフェルゼンも知っての通り、
楽しいことはみんな私のためにあるものでしょう?

美しさも──
興奮も──
全てが、マリーに捧げられるためにこの世にあるのよ。

バレンタインだってそうだわ。
楽しいイベントである以上、
このマリーが世界で一番バレンタインを楽しんでしまうに
決まっているじゃない。

だから、
マリーに愛されるフェルゼンは
男性として世界でいちばんバレンタインを楽しむことになる。
そうでしょ?

マリーのチョコは、
まだちっちゃいものが限界だし
作りもまあ、ちょっと本位じゃないけど
幼稚園から下の子では、一番うまくできてると思うわ。
こんなにがんばったことを考えると、
マリーのチョコが世界中のバレンタインのベストっていう気がしない?
これをもらえるフェルゼンが世界一のバレンタイン男であることは
もう確定よね。

いつもマリーに尽くしてくれるフェルゼン。
マリーに惜しみなく愛を注いでくれるフェルゼン。
マリーの愛は弾けそうよ。
女王の大きな心のうちにもしまっておけない。
だって女王だって人間なんだもの。
愛に全てを捧げ、
愛以上に求めることなんて何もない、ただの人間なのよ。
あなたと一緒にいられるなら
マリーはいつでも女王の座を捨ててあなたを追いかける──

でも、
フェルゼンだってマリーが女王でいてくれるほうが
なるべくだったら嬉しいわよね?

さあ、マリーのチョコを褒めてね。
バレンタインをノーブルに過ごしてみる?
あなたの小さな女王様の活躍をたたえながら──
それとも、こんな日は愛におぼれて
地位も名誉も、全てを忘れてしまうのもいいかしら。

ふふ──
革命の嵐でも消せない
二人の情熱が
チョコを溶かしてしまう前に、
マリーへの愛の言葉を
決めてくれなくちゃ。



・観月

愛し合うもの同士は、
赤い糸で結ばれているという。

だが、
わらわはそんなもの
一度も見たことがないのじゃ。

千年、二千年と生きるものどもさえも
見たことがないという。
人間でなくては見えないのであろうか?
しかし、かつては人であったものもおるしの。

相当の修練を積まねば
至れない領域であるようじゃ。
そのような赤い糸の伝説、
どこの誰が探り出し
どのようにして言い伝えられたのか、
わらわにははっきりせぬが──

ひとつ確かなことは、
兄じゃとわらわが
運命の赤い糸で結ばれていることだけじゃ。

なぜ確信を持って言えるかというと、
別の術であれこれと試してみたからじゃ。
うむ、確実に結ばれる二人。
愛称は最高、
邪魔するものは追い払うとしよう。

赤い糸は
どうして見えぬものか?
愛が通じ合ってから、もっとはっきり形を成すのか?
生まれたときに決められておるとも聞く。
わらわの修行が足りぬのか?
それとも、そもそも得意分野が違う気もしてきたぞ。
縁結びの神にも顔見知りがいることであるし、
結ぶのは別の糸であるかも知れぬ。

わらわの修行によって
赤い糸の秘密を探り出す時まで、
運命の相手は離れてはいかん。
二人がどのような結ばれ方をするとしても、
結ばれる運命はすでに決まっている──
それだけは、わらわにもわかっておるのじゃ。



・さくら

うわああん!
うわああん!
お兄ちゃん!

どうしてチョコは
おいしそうなの?

どうしてさくらは
チョコがこんなにすきなの?

うわああん!
いやしいさくらで
ごめんなさい!

お兄ちゃんにあげるはずのチョコ、
食べちゃったの。

さくらは、
お兄ちゃんよりもチョコがすきな
ダメな子なのかもしれない。

お兄ちゃん、
どうしたらさくらをゆるしてくれますか!?

どうしたら、
さくらがお兄ちゃんをすきだってわかる?

さくらは──
お兄ちゃんがしたいこと、なんでもしてあげる!
お兄ちゃんにちゅーするし、
お兄ちゃんとあそんであげるし、
なんでも、なんでも──

さくらのきれいなおようふく
きてみたい?
さくらのおもしろいえほん
よむ?
さくらのかわいいぬいぐるみ
だっこしてねる?
かしてあげる!

あっ、
お兄ちゃん!
チョコがまだあった!
さくらのチョコたべてね。
バレンタインデーっていうの。
すきなひとに、チョコをあげるひ!
ほたるおねえちゃんがいってたから
さくらもおにいちゃんにあげたくて
つくりました!
ほたるおねえちゃんにたすけてもらって
ハートのあなにどろーっていれたんだよ。

チョコがまだあるから、
すきなひとにあげるの。
ほたるおねえちゃんにあげる!
それで、
ほたるおねえちゃんもさくらのことがすきで、
チョコをくれるから、
そしたらお兄ちゃんにあげます!



・虹子

ちょこちょこ
ちょこれーと!

おーいしーい!

お姉ちゃんたちに
おしえてもらった、
ことりのおやつ!
っていう、おうた。

おにいちゃんも、
チョコレートがすきだよね?

はい!
チョコレート!
あげる!

それから、

はい!
ティッシュ!

よごれたらふいてね。

それからね、

はい!
にじこ!

どーん!
もっとほしいものある?
おにいちゃん、すきなものなに?

にじこはチョコレートだけじゃなくて、
まかまかマカロン
すきだけど、

きょうはチョコレートなんだって。
バレンタインはチョコレート。
バレンタインはチョコレート♪
これは、にじこがつくったおうたなの。

マカロンはいつ?
クリスマス?
ひなまつり?

チョコレートもすきだから、
ひなまつりがチョコレートでもいいかな?

あと、おにいちゃんもすき!
ひなまつりはおにいちゃんがいちばんいい!

きょうがチョコレートじゃなくて、
おにいちゃんだいすきのひでもいいよ?
おにいちゃんも、にじこがいいでしょ?

なにたべる?
なにがほしいですか?
なにしたい?
うたっておどるひ、
バレンタイン!
おにいちゃんのひ!



・青空

そら、しってるよ!

ちょこぷろれす!

おにいちゃん、しってる?
しらない?
しらないの?
そらがおしえる!

さっきそらがかんがえた。
ちょこぷろれす。

こっちからそらがはしって、
そっちからおにいちゃんがはしって、
どっかーん!
だっこして!
ぎゅーってして!
らぶらぶして!

ちょこぷろれす!
わかった?

やろう!
もっとやろう!

そら、もっとはやくはしる!
おにいちゃんのところにとびこむ!

とおーっ!
うけとめて!

そら、もっととぶよ!
おにいちゃん、
これ、
どのへんがちょこなの?
そら、しらない!
あのね、
そら、もっとはやくはしるよ!
とぶよ!
そらをつかまえろ、
おにいちゃん!
とおーっ!



・あさひ

あっばー、
あっばー、

ふんばっば!

わっちゃー!
わっちゃー!

あちょ!

あばばば、
おんばばば、
ふんばばばー!

(おいしい
 おいしい

 あさひがきたぞ!

 ミルクよりあまい!
 チョコよりあまい!

 きをつけろ!

 ゆだんするとくわれるぞ、
 くうかくわれるか
 やじゅうのバレンタイン!)


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