アルケイディア&キュクレイン

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真璃

『ビタミンC!』
みかんの季節がやって来ると
かわいい柑橘系の香りで
家の中が包まれる。
みかんはいいわね!
おいしいし。
体にいいし。
果物にはビタミンCも豊富だから
よく食べるといいのよ!
レモンが有名で基準になることが多いけど
みかんも
いちごもいい。
レモンはたくさん食べるものでもないし
果物が豊富なのってうれしいわね。
好きなものを食べていたら
おいしくて栄養が取れるって
乙女の理想だと思う!
一度にたくさんとるよりも
朝昼晩に分けてがいいらしい。
皮をむいてそのままでもいいし
ヨーグルトも一緒にするとか
なんとジュースにするという手もあるのよ。
果物──
あの気の利いた子は
なんて私たちの暮らしを力強く支えてくれるのでしょう。
栄養バランスを心がける
好き嫌いのない女の子は
とれたてのみかんみたいに
いつでもフレッシュなレディに生まれ変わるのよ。
さあて、今日のおやつも
あまいあまいキッスのような
みかんにしましょう。
と、優雅に歌を口ずさみながら
季節を感じるすてきな気分にひたっていると
なんだか──
くんくん。
ちょっと甘い匂いが
強くなってきた。
もしかして
これは恋の香り?
おしい!
みんながバレンタインのチョコレートに
果物で味をつけるのはどうかって試しているみたいね。
甘酸っぱい果汁と
チョコレートの出会いは
果たしてうまくいくのかしら。
初々しい青春の味が重なるとき
二人の個性を生かして手をつないでいけるといいわね!
チョコレートも体にいいみたいだし
ポリフェノールがいいのよ。
子供たちにとっては虫歯との宿命的な戦いは続くけれど
大丈夫──マリーたちはみんなで歯磨きをするんですもの。
フェルゼンもたくさんチョコレートを食べて
いっぱい元気になってね。
毎日のビタミンCと共に
おいしいポリフェノールが愛するみんなに届きますように──
マリー、バレンタインの日にフェルゼンへとお手伝いをするわ!
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氷柱

『台風の季節』
風の音はますます激しく
雨粒は強く窓を叩いて
大きな台風がいよいよ私たちの街にも近づいているわ。
午後から机に向かっていると
ひどい風の音ではっと目を覚ます。
この私としたことが──
集中力の途切れているのも気付かず
うとうとしていたなんてね。
どうも近頃は雨続きでいまいちぱっとしない。
ただひたすら目標に向かって進むことしか知らない
単純な作りの機械だったらよかったのに
私は20人きょうだいの6女なので
ノートと向き合っている時間には限りがあるの。
限りがあるといえば
そもそも一日24時間が短すぎるからいけないんだけど
睡眠、食事、身だしなみと
効率の良い気分転換、
そういうのも含めて一日というのだから
こんなにも──
秋へと変わり行く街を歩いてみるのもたまにはいいという気分の時に
こう雨が続いたら私も困るのよね。
秋雨前線も台風も北太平洋高気圧も
もうちょっと考えてくれないかしら。
なんて。
下僕はどう?
秋の日の24時間を効率的に使っているかしら?
あんまり雨続きのお天気に振り回されて
かといってきょうだいでおすもうやプロレスごっこなんて年でもないし
結局できるのは進まない部屋の片付けとタンスの入れ替えと
仕方なく付き合うしかない台所からの試食の要求で
まだ食欲の秋もこれからだというのに
毎日の体重計が正直に語る成長が最近身についた全て──
ということはないかしら。
自己管理って大切よね。
このままでは下僕の体型は早めの冬支度を整えてしまい
私は見た目が立夏と区別がつかなくなってきてしまう──
まあ、立夏がちゃんと体型や栄養やらを賢く考えていたら違うかもしれないけど
いつもおなかがすいたーって薄着の上からぽんぽこしている
秋の味覚を楽しみにしているあの様子を見たら
もうまるっきり期待ができないわけで
そうなると私がしっかりしないといけない。
わかるでしょ?
しかしまさか雨続きと言うだけで
私がまあそんな──
そういえば立夏は秋の支度というか
このごろはヒラヒラの薄着ばっかりじゃなくて
大きめサイズを重ね着して
変わりやすい天気に備える!
という感じのようなの。
ああ見えてなかなか考えているというか
実はあんまり考えていなくてただの野生の勘なのか知らないけど。
体の合うサイズのあの手の服とか
どういうところで調達してくるのかしらね。
今度聞いてみないといけないわね。
あんまり近くで脱いだり着たりで
そこらじゅうに脱ぎ散らかしてもうるさくて私が困るからで
別に私にも似合うだろうかとか
体型をごまかせるかとかそういうのでは──ないのだけども。
ちょっと立夏のほうがうるさくてめんどうみたいな話になりそうだけど
騒がしいのに慣れているといったって
ともあれ台風が何事もなく過ぎて
平穏な一日がすぐ戻ってくることを願うわ。

文化祭・綿雪

・綿雪
おひさまが傾いて、ぽうっと赤い火が灯るように染まったら
子供はおうちに帰る時間。
さみしくても
物足りなくても
やり残したことがあるような気がしても変わらない。
真っ暗になる前に、楽しく過ごしたお友達にもさよならを言わなきゃ。
帰り道が一人だって、心配しないでいいよ。
帰れば待っている人がいるんだし、急ぎ足なら少しだけ早く会える。
ちゃんとまわりを見て、車にも気をつけながら
あせらず、あわてず
だけど心は帰り道をまっすぐに。
このごろ涼しくなったお昼の気温が、重ね着をはじめたこのごろの肌に寒く感じたら
お外で遊ぶ一日の、おしまいの合図。
また明日。
目の前いっぱいに広がっていた光がだんだんと薄れて
おうちの明かりがユキを待っている。
あったかい両手を広げて
飛び込んできてもいいよ、と言おうとしているみたいな気がするのは
跳ねるほど勢いをつけてユキがぶつかっていっても受け止めてくれるお兄ちゃんが
おうちにいるからなのでしょうか?
そんないつもの帰り道と変わらない時間が
お兄ちゃんたちの学校の学園祭にも、とうとう訪れようとしている。
窓から差し込む、斜めになった日差しの白い線が
みんなの足元に届いて、影を長く描くのだって
毎日見ている夕方の眺めと何も変わらないままで
たった一つだけ違うのは
ユキたちが帰ってしまったら、この楽しいお祭りは来年までやって来ないということ。
学校に残るお兄ちゃんたちはもうしばらくイベントの時間が続いても
でも学校に関係のない人たちにとってはこれがぱさっと
幕が下りるような区切りになります。
広い体育館の特別なステージで見た演劇も、最後は閉じたカーテンでお別れ。
立夏お姉ちゃんたちの手品ショーは、
最後に紙テープと一緒に出てくる立夏お姉ちゃんと手をつないだマジシャンのお姉さんたちが
いっせいに手を上げて、また下ろして、お礼の言葉と一緒にぺこり。
手が痛くなるまでみんなでいっぱいに拍手をしたら、終わりです。
ありがとう、また会いましょう──
それはユキたちにとっては一年後の約束。
こんなふうにして、見るもの全部がにぎやかで珍しい学園祭の時間は過ぎていって
子供たちがいつもお姉ちゃんたちやお兄ちゃんにしている約束みたいに
夕方になったら帰る時間。
楽しかったからさみしい。
同じ学校のお友達とは違うから、明日になっても会えない。
また一年経ったら。
それまでは手を振って、その時になったら一つ上の学年になったお姉さんたちと
一つだけ近づいたユキたちがまた
この学校で同じ時間を重ねると思います。
はりきっても疲れやすいユキは、生徒会のお手伝いのお仕事があまりできなかったけど
来年になったら、少しはがんばったからって
霙お姉ちゃんはユキにもお手伝いの腕章をつけてくれる?
まだわからない先のこと。
でも今日はできるだけがんばりました。
いろんな出し物を見て回って、大人の人を案内したり
お仕事もだけど、楽しむのが一番だって霙お姉ちゃんが笑っていた通りに
ユキも楽しんだ学園祭。
まだまだ全然見て回っていない場所ばかり多いみたいなのに
もう時間はだいぶ経ってしまったんですね。
宝探しの謎解きも、どうやら見つかりませんでした。
でも、小雨お姉ちゃんたちが持ってきてくれた屋台の食べ物はずいぶん多くて
おばけ屋敷は刺激が強すぎて待っていたユキやさくらちゃんたちが退屈しなかったほど。
こっそりどこかで見つけていたのかな。
もう宝物は奪われてしまった後なのでしょうか?
せっかくお兄ちゃんとヒカルお姉ちゃんたちのクラスの出し物だったけれど
今年で終わりじゃないですものね。
休憩所で小さい子といい子に待っているのだって大切なことだし……
かえって来た夕凪ちゃんから様子を聞いただけでユキはおどろくのだから
やっぱりまだ本物を見るのは早すぎる。
さようなら、今年の楽しかったお祭りの時間。
来年までには心の準備をして備えます!
もっと見て回れたら
楽しむ場所は増えていたかも?
そんな少しの心残りを抱えて、次に出会う日を待つのです。
お兄ちゃんたちは、これからミスコンテストにキャンプファイアーもあるのでしょう?
まだユキが体験するには刺激的なお話をいっぱい
帰ってからこっそり聞かせてください。
きっとだよ?
そんなおみやげを
おとなしくおうちでいい子にしながら、待っています。

文化祭・立夏

・立夏
おっ
おおっ
おにいちゃあーん!
ぐっすん。
リカ
もう
たいへんなことに
おなかいっぱいだよおー!
まだまだ目の前の、やまもりたこやき。
お好み焼き。
食べられないうちにダウンだよー!
あまーいかるーいわたあめすら入らないまま
きゅうけいじょの椅子にぐったりだヨ。
ああ……
ヨーヨーも釣りたかったのにい……
どこの模擬店もけちけちしない大盛りサービス。
お客さんの笑顔のために
赤字覚悟で
鼻血も出なくなるまで
大出血サービス!
さすが、霙おねーちゃんが
似たような屋台を一箇所にまとめて、競争をあおった甲斐がある!
って言うだけあるよ。
ほんとなのかなあ?
氷柱ちゃんが考えたところによると
考えなしにお店を並べてしまったので
生徒会のメンバーから怒られてしまって
ちょっとでも言い訳を考えておかないと肩身が狭いから言ってるだけ!
っていうことらしいけど。
おかげで、あちこちお店の呼び込みも熱狂的。
これが売れないと
われわれ生徒にはまだまだ適切な経営能力なしとみなされて
学園祭全体の、来年の予算配分に関わるといううわさ。
オニーチャンが生徒会長になったら
もうちょっと頭が良くやれると思う!
オニーチャンあたまいいし!
霙おねーちゃんもむずかしいことよく知ってるけど!
あれ?
とにかく、そんなふうに生徒会のお友達が忙しくて相手をしてもらえない霙お姉ちゃんと
氷柱ちゃんも合流して
きゅうけいじょでは、ガールズトーク。
どこがたのしい?
どこがおいしい?
今年の学園祭で一番の思い出を作るなら?
おまけに
恋人同士のふたりで行くおすすめ。
どこかにある?
学園生活に残る甘いロマンティック。
目と目があっただけで
永遠を誓う場所。
ない?
霙おねーちゃんがむちゃくちゃしちゃった今年が無理なら
来年から作らなきゃあ。
ぜったい、しめっぽいオバケ屋敷から
オニーチャンを引きずり出さなくっちゃあ!
だってだって
肩を組んで
一緒に回りたいんだもーん!
オバケ屋敷も
守ってもらいたいもん。
だってリカは怖がり。
オバケが出ても反撃しておいはらえる!
と、家族みんなが信じていたって
本当はなきむし。
そんなこと、オニーチャンは知ってるでしょう?
あーあ、休憩時間はあとわずか。
このあと自分の教室に戻ってお仕事だヨ。
たいへんだあ……
がんばらなきゃ。
でも、もしも帰りたくないって言ったら
オニーチャンは手を引っ張って
さらい出してくれるのかなあ。
よし!
腹ごなしにもう一回オバケ屋敷に行って
きゃあきゃあ大声出して
すっきりしよう!
リカがマジでびびってたら
オニーチャンだって、なにごとだって助けに来てくれるかもしれないでしょ?
あ、オバケ屋敷の内容知ってるから、べつに大丈夫だってわかってるのか。
何が起こるか全部わかってるから。
じゃあ……
オニーチャンが知らないような何かが
オバケ屋敷で起こっているかもしれないって
噂を広めて
困らせてしまったら
怒られるかなあ?
でへへ。

文化祭・さくら

・さくら
さくらが泣いてしまうのは
さみしいから。
それに
くらいから。
こわいから。
かなしいの。
おばけがでるから……
がくえんさいになると
お兄ちゃんのお教室は
おばけやしきにかわります。
おばけやしきって、
おばけがでるの。
どうして
がっこうには、おばけがでる?
がっこうって
おそろしいところなの。
いま、さくらたちはきゅうけいちゅう。
こさめおねえちゃんが
よろよろしてしまった。
まるで
こんなひとを、テレビでみた!
わるものにおいかけられるの。
なにかたいへんなことをみてしまったひとみたいに
あおいかおをして。
どうしたの?
おつかれなの?
だったら
あんないがかりのでばん!
ゆうなおねえちゃんが手をひっぱって
いま、さくらとかぞくはきゅうけいじょ。
りっかおねえちゃんもいるの。
しゅーんって。
がくえんさいの、たのしいひなのに
なにがあった!?
おなかがすいたのかな?
やきそばたべる?
さくらのたべかけで
もう、あんまりないけど。
だってやきそば
あったかいほうがいいとおもって。
お兄ちゃんにもっていってあげたくても
さめてしまうとおもって
さくらがたべたのこりなの。
こさめおねえちゃんが
あとでたべるね、っていってたけど
りっかおねえちゃん、いる?
さめたやきそば。
こんなにつめたいやきそばをみていると
さくらはもう
わるいことをしてしまったような
のこしておけばよかったような
たべほうだいの
おてつだいごほうびチケットは
あとすこし。
りっかおねえちゃんに
あげてもいいかな?
みんなでそうだんしても
こさめおねえちゃんは
どうしよう、
どうしよう!
こんなことを
たのしみにして、さがしているみんなにいちばん
はやくみつけてもらうには!
うららおねえちゃんとそうだんちゅう。
なにかむずかしいおはなしね?
うららおねえちゃんね、
そんなの、ほっとけばいいのに。
だって。
そうだんされても
こまっちゃう。
だって。
こさめおねえちゃん!
うららおねえちゃんをこまらせないであげて!
さくらね。
これからね。
こさめおねえちゃんが
げんきになったら
お兄ちゃんがにこにこしてじゅんびをしていた
おばけやしきにいくの。
こさめおねえちゃん……
もうちょっと、おやすみする?
おひるすぎには、あかるくなって
おばけがにげてしまうかもしれない。
お兄ちゃんが
おばけをやっつけてくれるかもしれない。
さくらがこれからもっと
もりもりたべてげんきになって
おばけにまけなくなるかも……
ならないかも。
でも、せっかくだから
できそうなこと
やるだけやってみたら?
こさめおねえちゃんに
やさしい、うららおねえちゃんのアドバイス。
こまってなんてなかったよ!
まじめなそうだんの
こたえだよ。
さくらも、できることをします。
げんきになります。
だから
りっかおねえちゃん!
やきそばもうひとつ
かいだしにいきましょう!